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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z42
管理番号 1066221 
審判番号 無効2001-35343 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-08-02 
確定日 2002-09-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4425427号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4425427号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4425427号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成11年7月27日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同12年10月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標
請求人は、本件商標の登録無効の理由として下記の登録商標及び使用商標を引用している(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
(a)昭和6年10月27日に登録出願され、「マルナケロリン」の文字を縦書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及医療補助品」を指定商品として、同7年10月15日に設定登録された登録第237343号商標
(b)昭和14年7月22日に登録出願され、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、第1類「頭痛歯痛薬(散薬、粉末薬)」を指定商品として、同25年12月12日に設定登録された登録第394746号商標
(c)昭和23年6月21日に登録出願され、「ケロリン」の文字を横書きしてなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同30年2月15日に設定登録された登録第460267号商標
(d)昭和29年6月7日に登録出願され、別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同40年6月17日に設定登録された登録第678590号商標
(e)昭和33年7月7日に登録出願され、別掲(4)に示すとおりの構成よりなり、第1類「歯痛、神経痛、頭痛用の散薬」を指定商品として、同41年10月14日に設定登録された登録第723099号商標
(f)昭和51年11月12日に登録出願され、別掲(5)に示すとおりの構成よりなり、第1類「解熱鎮痛剤(散剤)」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録された登録第1475219号商標
(g)昭和5年から現在使用している「ケロリン」の文字をその構成中に含む各種の商標(甲第3号証ないし同第8号証)

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第88号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標及び引用商標の特徴
本件商標は、上段に漫画的動物が描かれているが、これより直ちに直接的な称呼が生ずるようなものではなく、下段に記載された「ケロリン亭」より「ケロリンテイ」の称呼が生ずる商標である。そして、この「ケロリン亭」の文字は、「ケロリン」の片仮名に続き、語尾に屋号を表わす場合に付加される「亭」の漢字を有してなるところ、「ケロリン」は、独自の意味合いが考えられない造語であり、その繋がりは観念的、感覚的にも密接とは言い得ない構成となっており、又、視覚的にもその繋がりに一体感がなく、前後の段差を持って認識・理解されるところであり、更に、音調的にも連続性が薄く、分断されやすい称呼となっている。
したがって、本件商標は、「ケロリン」と「亭」が単に結合されたとのみ印象される商標であり、自他役務を識別する要部が「ケロリン」に存する商標といわざるを得ない。
他方、引用商標は、「解熱鎮痛剤」を中心として全て「薬品」の商標として、本件商標の出願日より早くから使用されており、全て「ケロリン」を要部とするものである。
(2)引用商標の周知性
(ア)請求人は、明治35年に設立、「ケロリン」商標は、大正14年12月に使用されはじめた(百周年記念誌 甲第10号証)。
(イ)昭和11年8月25日発行の「薬都の産業」なる業界新聞(甲第11号証)には、「ケロリン」に関する仮処分の決定が2件なされていることが記載されており、この仮処分取消請求事件は、大審院まで争われ(甲第12号証)、昭和14年3月29日に判決が下されており、昭和3年当時に、既に全国的に周知・著名であったことが証明されている。
また、昭和24年9月5日の「薬日新聞」(甲第13号証)には、富山地方裁判所高岡支部昭和24年(ヨ)第30号仮処分事件において仮処分決定が出された事実が記載されており、昭和24年にも周知状況が保たれていたことを証明するものである。
更に、甲第14号証ないし同第17号証は、特許庁における登録異議の決定あるいは査定不服審判の審決であり、いずれも、「ケロリン」の周知、著名性を認めている。
以上の如く、その周知・著名性は、特許庁の審査・審判のみならず、裁判所においても約80年間を通じ、再三認められているところである。
(ウ)ケロリン商標の広告宣伝
広告宣伝は、テレビも使用しているものの、ラジオ東京(現TBS)、ニッポン放送、文化放送、北日本放送等ラジオを中心に、現在まで30年継続のもの、40年継続のもの、50年継続のものと長期に亘り、継続してCMを行っている(甲第18号証ないし同第26号証)。
交通車両・駅における広告は、東京モノレール全車両の30年継続や、20年継続する西鉄バスの後部板看板、大阪地下鉄の全吊革や、30年以上に亘る大阪地下鉄の主要7駅の階段ステップ下広告があり、階段ステップ下は、大阪の一風情として認識され、現在も続く「ケロリン」を記憶に残す奇抜な宣伝方法といえるものである(甲第28号証、同第37号証)。
「ケロリン」の広告に関し、最大の地味な、そして最も費用を費やしている宣伝方法がコマーシャル入り「湯桶」の配置である。40年近く行っているこの「湯桶」の配置は、2、3個配置した民宿から、100個以上配置された大温泉旅館に至るまで、15000軒近い施設に配置され、全国民の目に触れているといっても過言ではない程親しまれている。
又、同じくコマーシャル入りの「バスタオル」「バスマット」も使用されており、商品としても購入されている状況である(甲第39号証、同第43号証)。
その他、東京タワーのチケット裏面広告は35年以上に及び(甲第41号証、同第42号証)、テレビ(甲第18号証、同第20号証、同第21号証)、新聞(甲第18号証、同第20号証、同第22号証ないし同第26号証)、雑誌(甲第18号証、同第27号証)、看板等(甲第48号証)の広告手段も行っているところである。
又、「ケロリン」の取扱い店舗数も、他の薬品に比べ明確な系列にないことから、極めて多くの店舗で取り扱われており、「配置販売」により各家庭に取り揃えられている現状からも、他の薬品に比べより著名となっている(甲第49号証、同第50号証)。
更に、インターネットにおけるヒット件数をみても、「コーラック」、「パンシロン」、「サクロン」、「トクホン」等の倍を超えるヒット件数となっている(甲第57号証、同第58号証)。
(3)出所の混同について
上記のとおり、引用商標は、本件商標の出願時や設定登録時の時期を問わず、周知・著名なものであり、「ケロリン」の語は、全くの「造語」であり、しかも、請求人にとって、「ケロリン」は、請求人の商号と直接一致するものではないとしても、「ハウスマーク」同様に使用する請求人を代表する基幹商品の商標であり、請求人自体を代表する商標である。そして、請求人は、「内外オーバーシーズ株式会社」(東京都千代田区四番町6 所在)を子会社として有しており、同社は、食品輸入及び健康食品の販売をも行ない、飲食品との関連も既に業務として行っているところであって、「薬品」と「飲食物の提供」との関連性は、人間の「栄養」を中心とした極めて密接な分野であり、両経営を同一人が行うことに何ら不自然さが見受けられない分野である。
(4)不正使用の意図について
被請求人のような会社は、若年者のみが経営するベンチャー企業と異なり、年配者の多い企業と考えられ、このようなレストランの企画が、若年層のみの判断で行われたものとは考え難いところである。そこにおいて、「ケロリン」の約80年続いた著名性は、特に、年配者には当然熟知されている筈の名称であり、請求人の出所表示機能の稀釈化を招くことを十分認識して、これを採択したこと明らかといわざるを得ず、必然的な意図が明白な「不正の目的」を有するものといわざるを得ない。
(5)したがって、本件商標をその指定役務に使用するときは、請求人の業務に係る商品又は役務とその出所について混同を生ずるおそれがあり、かつ、不正の目的をもって使用をするものといわなければならないから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反してされたものであり、無効にされるべきである。
(6)答弁に対する弁駁
(ア)本件商標の「動物様図形」は、「ミッキーマウス」や「サザエさん」の如く一般に名称が知られたキャラクターではなく、又、文字が図形中に合体し、又は、不可分となった構成よりなるものでもない。両者は、全く外観上も独立して表示され、独立して称呼・観念が生ずる部分でしかなく、かつ、その繋がりから明確な意味合いを直接理解できないため、それぞれの部分が「要部」として認識され得る構成となっている。
「カエルの愛称ケロリンの屋号の店」なる主張は、被請求人自ら「ケロリン」が要部たる「名称」であることを自白しているに過ぎない。
また、「蛙の鳴き声」として「ケロ」は一般的に通用するものであることは認めるが、「リン」なる語が「薬品の接尾語」というならともかく、愛称に付する接尾語であるとの根拠は全く理解し得ない。
(イ)被請求人の提出した乙第2号証から乙第11号証の「ケロリン」のインターネットにおける使用例は、請求人の「ケロリン」商標の著名性を利用した「しゃれ」「戯れ語」「パロディ」として使用されたものというべきであり、出典は引用商標の存在以外考えられない。「ケロリン」なる全くの造語が、これ程利用されていることこそ、引用商標が著名であることの証拠となるものである。
(ウ)ネーミングを募集した事実(乙第16号証)は認めるとしても、最多得票の優秀賞は、僅か6名の応募であり、かつ、通常ネーミング公募は、商標登録その他の審査を経て採択・発表されるのが通例である。乙第16号証によれば、応募多数は、「ケロリンズ」であって、「ケロリン」は1票も存在していない。
してみれば、「ズ」を取り除き「ケロリン」に変えるには相当な議論がなされた筈であり、インターネット等の証拠からしても、2人に1人、又は、3人に2人は引用商標の存在を想起し、これが検討されたであろうことも推測に難くないところである。
(エ)被請求人は、引用商標が使用されている商品は解熱鎮痛剤であり、極く狭い単品であると述べているが、著名性は、単品商品に用いるペットネームであるか否かではなく、世間にどの程度知られているかを基準とするものである。薬品単品からであっても、甲第60号証から同第71号証の如く「著名商標」として防護標章登録を得ているものも存在している。
(オ)被請求人は、本件商標は「解熱鎮痛剤」とは何ら関連性を有しない役務「飲食物の提供」を指定するものであると述べている。
しかしながら、「飲食物の提供サービス」は、「飲食物」の調理を行うものの、所詮「飲食物」を摂取するためのサービスに他ならず、「飲食物」とは切っても切れない関係にあることは明らかである。
この関係は、甲第72号証から同第86号証に示す通り、飲食品関連の企業は「医薬品」の製造販売や「飲食物の提供サービス」を行っているところが多く、又、医薬品製造企業は、請求人も含め、「飲食物」の製造販売を直接、間接に行っているのが常態で、一部直接「飲食物の提供」を行っている企業さえ存しているところである(甲第83号証)。
甲第59号証の「防護標章登録」は、各ペットネームの登録状況を示すものであるが、この表により一目瞭然と考えられるが、特に、「VIAGRA」(甲第64号証)や「いいちこ」(甲第69号証)の登録は、如実に「薬品」と「飲食物の提供」の関係を明らかにしているところであり、各企業が出所の混同を気にする範囲が明確となっている。
(カ)被請求人は、配置医薬品業界がこの10年間に急激に衰退しているやの主張をしているが、甲第87号証の「全国配置用家庭薬生産額および出荷額」をみれば、この10年に激減したかの被請求人の主張が全く根拠のないものであり、甲第88号証の「全国配置販売従業者数」を見ても、この12年間増加こそすれ、被請求人の主張する「衰退した」なる事実は、何らその根拠が見当たらないところである。
(キ)乙第20号証の判決に関しても、引用商標が慣用商標であるかのごとき主張を行っているが、引用文章の直後に「してみれば、同標章が慣用標章になったものとはとうてい認めることができない。」と裁判所の判断が示されている。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判請求の費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第21号証を提出した。
(1)商標法4条1項15号違反について
(ア)本件商標採択の経緯について
請求人は、引用商標は「ケロリと治る」の意味合いを有する「ケロリ」に「ン」を付加した造語である旨主張する。
しかしながら、「ケロリン」は「蛙」の鳴き声「ケロ」に、愛称に付する接尾語「リン」を付してなる蛙の愛称として広く親しまれているものであり(乙第2号証ないし同第11号証)、本件商標は「カエル」の愛称を採択したものである。このことは、本件商標が「カエル」の図形と一体として構成されていることからも明らかで、引用商標とは何ら関係がないものである。
また、「ケロリン」はニックネームとしてもしばしば採用されるものである(乙第2号証ないし同第11号証、甲第52号証、甲第56号証)。
被請求人は、平成11年3月に、営業所のある栃木県大谷のサービスエリアで、該地大谷に「蛙」に纏わる伝説があることから、先ずマスコットに「カエル」を選定して、その「ネーミング」及び「キャッチフレーズ」を一般公募の中から採択したものであり、本件商標は、前示の「カエル」の愛称から選ばれたことは明らかであって、引用商標とは何らの関係を有しないものである(乙第13号証ないし同第16号証)。
(イ)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、全体的に緑色を施し顕著に描いた「カエル」の図形の下に、「ケロリン亭」の文字を記載し、「カエル(蛙)」の図形と「ケロリン亭」の文字とが一体となったもので、引用商標とは外観、称呼及び観念に何ら共通性のない別異の商標である。
商標の類似判断は、全体観察が基本であり、本件商標と引用商標とを全体的に観察したときは、両者が類似しない商標であることは明らかである。
請求人は、両商標の類似については、何ら主張するところがない。本件商標の一部に「ケロリン」を有することは、引用商標と類似することを意味しない。
なお、本件商標中の「ケロリン亭」と「ケロリン」については、「ケロリン亭」の部分の各文字は同書、同大に表示してなるばかりでなく、「亭」の文字を語尾に有するため、指定役務「飲食物の提供」との関係では「飲食物の提供」をする店の屋号として認識、把握され、常に一体のものとして、「カエル」の図形と相俟って、「カエルの愛称ケロリンの屋号の店」といった観念を生ずるものである。商号、屋号は一体のものとして称呼、観念されるのが経験則であり、実務もこれを踏まえている(東京高裁 昭和38年1月29日判決 同37年(行ナ)第28号 乙第17号証)。
したがって、本件商標は、「カエル」図形と「ケロリン亭」の文字が常に一体のものとして認識され、把握されるものであって、「ケロリン」の部分だけが分離して認識されることはないから、引用商標と類似するものではなく、引用商標を想起することはない。
(ウ)引用商標の周知・著名性について
引用商標は、古くから使用されているとしても、配置用医薬品「解熱鎮痛剤」についての使用であって(したがって、引用商標は極く狭い単品に係る「ペットマーク」である。)、請求人も認めるように、同商品は、年に-、二度家庭訪問して販売する営業形態に係るものであるところ、現在では、医療機関の整備はもとより、薬局のチェーン化や医薬品販売の緩和などにより、衰退の一途を余儀なくされている業種の扱う商品に至り(乙第18号証及び同第19号証)、一部の家庭やかっての需要者(したがって、請求人も認めるように現在では一部の年輩者)には知られているとしても、本件商標の登録出願時及び登録査定時では、周知・著名とはいえないもので、少なくとも、役務「飲食物の提供」との間で出所の混同を生ずるおそれがある程度には、周知・著名とはいえないものである。
請求人の提出する甲各号証は、昭和2年の判決例や異議決定例も最近のものでも平成3年のものであって、10年以前の認定に係り、しかも、いずれも、相手方の指定商品を「薬剤」とする商標との関係で、「解熱鎮痛剤」についてのみ周知性が認定されたものであり、配置医薬品が全盛であった時代やその名残があった時期の認定である。
また、乙第20号証の判決によれば、昭和42年当時、引用商標は、侵害訴訟において、「歯痛、頭痛薬」の慣用商標であるか否かが争点となる程度のものであり、請求人が自認するように、引用商標は「ケロリと治る」の意味合いを有する薬剤の効能、品質を暗示する自他商品の識別力が強くない商標であることを物語っている。
したがって、時間的にも相当以前のもので、また指定商品も、配置用医薬品としての「解熱鎮痛剤」という極く狭い範囲で販売される単品についての認定であるから、引用商標の周知性はその限度のものに過ぎないというべきである。
そして、請求人の主張でも、テレビ広告は1991年まで、雑誌広告は1992年までであり、前記の異議決定における認定の時期には一応符合しているものの、本件商標の登録出願時及び登録査定時では、引用商標の周知性が衰退していることを推認させるものである。
(エ)「飲食物の提供」と「解熱鎮痛剤」との関係について
役務と商品の間において、混同を生ずるおそれの要件としては、それらの間に関連性を有することが必要であるところ、本件商標に係る指定役務「飲食物の提供」と引用商標に係る商品「解熱鎮痛剤」とにおいては、両者が同一事業主で提供し製造・販売していることが一般的ないしはそれ相当に行われているということはなく、両者の用途も明らかに相違し、提供場所と販売場所が共通する訳でもない。特に、請求人会社が飲食物の提供を行っている訳でもない。
請求人は、医薬品業を営む他社がレストラン部門に進出している例を挙げているが、いずれも大企業の例であり、立証はない。
請求人会社の多角経営の可能性の考慮も、薬剤中「配置用医薬品・解熱鎮痛剤」に係る本件事案には適切ではないとういうべきであり、また、請求人の子会社が健康食品を販売しているとしても、出所の混同のおそれの要件としての、役務「飲食物の提供」の間とでは関係がないこと明らかである(請求人も主張のみで立証はない。)。
してみれば、本件商標に係る指定役務「飲食物の提供」と引用商標に係る商品「解熱鎮痛剤」とにおいては、出所の混同のおそれを招来するような関連性は何ら見当たらないものである。
(オ)弁駁に対する答弁
「ケロリン」の「リン」が愛称として用いられている点については、例えば、タレントでも愛称・ニックネームとして、中山美穂が「ミポリン」、モーニング娘の飯田圭織が「かおりん」、同市井紗也香が「さやりん」(乙第21号証)とそれぞれ呼ばれていることからも明らかなことである。
また、単品に使用する商標が周知・著名性を得ても、出所の混同を生ずる範囲が非常に狭いことは、被請求人が答弁した通り、甲第59号証からも明らかである。同号証中、第42類に防護標章登録を得ている登録商標の使用に係る商品は「焼酎」「即席中華そば麺」である。これらの著名商標に係る登録商標と引用商標とを単純に比較しても、本件商標に係る指定役務とは混同のおそれがないものであることは明白である。
更に、請求人は、「薬品」と「飲食物の提供サービス」について、甲第71号証ないし同第86号証を提出している。
しかしながら、請求人が挙げる企業の例は僅か13社であって、その中でも、「飲食物の提供」を行っている企業は8社であるが、社内食堂や喫茶室の例も含まれると推認されるものである。そして、これらの企業はいずれも我が国有数の大企業であって、これらをもって我が国薬品会社の取引の常態というには、あまりにも極端で少ない例といわなければならない。しかも、請求人会社は、これらの企業とは比較にならない営業規模であって、現に、「飲食物の提供」に係る業務は行ってはいないものである。
(カ)以上のとおり、本件商標は、いわゆる広義の混同を含めて、何ら引用商標と出所について混同を生ずるおそれはないものであるから、商標法4条1項15号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法4条1項19号違反について
本件商標が商標法4条1項19号に該当するというには、引用商標が周知・著名であること、本件商標と引用商標が類似の商標であること及び本件商標の使用に不正の目的があることのいずれの要件をも満たす必要がある。
しかしながら、前述したとおり、引用商標が周知・著名であるとは認められないこと、本件商標と引用商標が類似の商標ではないこと及び本件商標の使用に不正の目的は存在しないことから、本件商標は、商標法4条1項19号に規定するいずれの要件にも該当するものではなく、同号に違反して登録されたものではない。

5 当審の判断
(1)請求人の提出に係る甲号各証によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)甲第10号証(「百周年記念誌」平成13年3月20日株式会社内外薬品商会発行)によれば、請求人は、明治35年に設立され、「ケロリン」商標の使用は、大正14年12月にはじまり、以後、いわゆる「配置販売薬」としての解熱鎮痛剤を中心として、近年においては、平成7年1月13日に「ケロリンIBカプレット」、平成9年6月2日に「ケロリン鼻炎カプセル」、平成10年3月5日には「ケロリン総合感冒薬」の製造品目の追加許可がなされていること(甲第6号証の1ないし同第8号証の2)。
また、甲第12号証(「大審院 昭和13年オ第1803号仮処分取消請求事件」写し)によれば、「『ケロリン』ナル文字ヲ横書セル標章ヲ附シ殆日本全国二亘リテ発売頒布シ来り該標章ハ昭和3年2月26日本件「ケロニン」商標登録出願当時既二取引者及需要者二広ク認識セラレ居り夕ルモノニシテ」と判示されていること。
(イ)甲第10号証、甲第18号証(協同広告株式会社発行の証明書)、甲第20号証(株式会社アド電弘の証明書)、甲第21号証(沖縄テレビ放送株式会社の証明書)、甲第22号証(琉球新報)、甲第23号証(八重山毎日新聞)、甲第24号証(株式会社薬日新聞社の証明書)、甲第26号証(平成13年2月22日付東京新聞)、甲第27号証(平成12年4月5日発行「nonno」)によれば、請求人は、「ケロリン」のCMについて、昭和27年から北日本放送をはじめとしてラジオ東京(現TBS)、ニッポン放送、文化放送等においてラジオCMを行い、昭和47年より現在まで沖縄テレビで月約90本のフリースポットCMを行い、昭和54年から平成2年までの10年間、北海道・東北地区にTVスポットCMを行い、平成2年、東京・大阪においてTVスポットCMを行い、平成4年、東京「ANNニュース」の番組提供及びCMを行い、平成4年、全国でTVスポットCMを行ったこと。
また、昭和22年から現在に至るまで薬業日本新聞において、昭和47年より現在まで琉球新聞「ラジオ・テレビ欄」において、昭和47年より現在まで八重山毎日新聞の「記事」中において、昭和60年から数年間、「朝日新聞」「読売新聞」等の全国紙において、平成5年から現在まで「東京新聞」において、それぞれ「ケロリン」の新聞広告を行い、昭和52年から現在まで「月刊文芸春秋」誌において、平成4年頃から「レタスクラブ」等の女性誌において「ケロリン」の広告を掲載したこと。
(ウ)甲第28号証(株式会社近宣金沢営業所の証明書)、甲第32号証(株式会社宣広社の証明書)、甲第33号証(株式会社東急エージェンシー関西支社の証明書)、甲第37号証(株式会社エーシージャパンの証明書)及び甲第29号証ないし同第31号証、甲第34号証ないし同第36号証の写真によれば、請求人は、大阪市地下鉄の吊革に、西鉄路線バスの後部板看板に、東京モノレール全車両内に、黒部峡谷鉄道の軌道車内に、大阪地下鉄の主要駅7駅の階段ステップ下に、小田急新宿駅、山手線渋谷駅、東横線渋谷駅、JR高岡駅等の大型看板に、渋谷駅前広場の電子掲示板に、山手線車両内に、冨山空港出発待合室のショーケースディスプレイに、それぞれ「ケロリン」の広告を行ったこと。
(エ)甲第38号証及び同第39号証(いずれも、有限会社睦和商事の証明書)によれば、請求人は、昭和38年から継続して、湯桶に「ケロリン」の広告を付すという広告宣伝方法を採用しており、公衆浴場1600箇所、旅館・ホテル・民宿13000箇所、ゴルフ場・国民宿舎・公益施設300箇所、合計15000に近い施設で、総数300万の湯桶を配置、使用したこと。
(オ)その他、甲第41号証ないし同第47号証によれば、請求人は、東京タワーチケット広告、ケロリン湯桶キーホルダー、ケロリンバスタオル、ケロリンタオル、ケロリンシール等を各所で販売しており、平成2年から現在まで、国民宿舎における「ガイドブック」や「しおり」等にも「ケロリン」の広告を行ったこと。
(2)上記認定の事実によれば、請求人の使用に係る「ケロリン」の商標は、本件商標の登録出願当時、請求人の業務に係る商品「歯痛頭痛薬、解熱鎮痛剤」等を表示するものとして、取引者・需要者間において広く認識され、全国的に著名になっていたものと認めることができる。
この点について、被請求人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時では、引用商標の周知性は衰退していた旨主張しているが、甲号各証の中には、極く最近まで継続して宣伝広告されていた事実を認め得る資料も多く含まれており、その周知・著名性は、昭和13年(オ)第1803号大審院判決(甲第12号証)当時以来、本件商標の出願時、査定時においても、なお引き続き存在していたものといわなければならない。
(3)しかして、本件商標は、別掲(1)に示したとおり、蛙を可愛らしく変形・誇張したと思しき図形の下部に「ケロリン亭」の文字を書してなるところ、該図形部分と文字部分とを常に一体のものとして把握しなければならない特段の理由は見当たらない。
そして、構成中の「ケロリン亭」の文字中「ケロリン」の文字は、特定の意味合いを認識させることのない造語と認められるものであり、又、「亭」の文字は、その指定役務である「飲食物の提供」との関係においては、「料理屋、旅館」等を表す語として屋号中に普通に用いられているものということができる。
また、甲第72号証ないし同第86号証によれば、近年、医薬品製造企業の中には、飲食物の製造販売を直接、間接に行うばかりでなく、飲食物の提供を行っている企業さえ存している実情にあり、出所の混同のおそれを判断するにあたり、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る商品との間の関連性も一概には否定し難いところである。
(4)してみれば、本件商標は、その構成中に「ケロリン」の文字を明らかに含むものであるから、被請求人が本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記した事情よりして、その構成にあって強く印象づけられるというべき「ケロリン」の文字部分に着目し、容易に著名な引用商標を想起し、その役務が請求人又は請求人と事業上何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 〈別掲〉
(1) 本件商標


(色彩は原本参照)


(2)引用登録第394746号商標


(色彩は原本参照)

(3)引用登録第678590号商標


(色彩は原本参照)

(4)引用登録第723099号商標


(色彩は原本参照)

(5)引用登録第1475219号商標


(色彩は原本参照)
審理終結日 2002-07-16 
結審通知日 2002-07-19 
審決日 2002-08-06 
出願番号 商願平11-67224 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z42)
最終処分 成立 
前審関与審査官 末武 久佳 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 山口 烈
高野 義三
登録日 2000-10-20 
登録番号 商標登録第4425427号(T4425427) 
商標の称呼 ケロリンテイ、ケロリン 
代理人 工藤 莞司 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 光野 文子 
代理人 矢野 公子 
代理人 佐藤 英二 
代理人 豊崎 玲子 
代理人 松田 治躬 
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