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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 130
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 130
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 130
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 130
管理番号 1064751 
審判番号 無効2000-35519 
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-27 
確定日 2002-09-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2697195号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2697195号商標(以下「本件商標」という。)は、別記(1)に示すとおりの構成よりなり、平成3年5月20日に登録出願され、第30類「菓子、パン」を指定商品として、平成6年10月31日に登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別記(2)に示すとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は、無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第10号について
引用商標と本件商標を比較すると、引用商標は欧文字の「F」を縦長楕円形の枠の中に配し、「depuis/1886」の文字をその下に付記した構成よりなる商標である。「depuis/1886」は、英語では「since 1886」の意味であって、引用商標に係る商品が「1886年創業」である旨を表記したものである。
一方、本件商標は同じく欧文字の「F」を楕円形に白抜きし、その上に王冠の図形を配してなる商標である。
両商標は、縦長楕円形の中に「F」の文字を配した点、その「F」の文字の書体が近似している点で、類似する商標である。
請求人であるフランス国法人、フォション・エス・エイ(FAUCHON S.A.)は、1886年創業の老舗の高級食料品店であり、ロンドンのFortnum&Masonと並び、食料品店の双壁となっており(甲第3号証)、「F」のロゴからなる引用商標の正当な権利者である。引用商標はフォションの商標として長年の間使用されてきたものであるが、甲第4号証は、本国における本件商標出願前の10年間の使用を示すものである。
わが国においては、引用商標についての古い登録はないが、「FAUCHON」の文字と組み合わせて、第30類に登録第4064461号及び18区分にわたって新たに出願した商願2000-28605号がある(甲第5号証)。後者は、わが国の販売先に食料品以外の商品についてもライセンス予定であるため、新たに多岐にわたる商品について出願したものである。
引用商標に係る高級食料品は、わが国では有名デパートである高島屋により販売されており(甲第6号証)、フォションの製品が贈答用の商品としてわが国の需要者に馴染み深いものとなっていることは顕著な事実である。添付は、本件商標出願前の1987年から1990年にかけて頒布された高島屋のカタログである。1987年作成のカタログにあるように、高島屋店内に売り場面積の大きいブティックを持ち、そこには「F」のロゴマークが掲げられている。「depuis/1886」の文字を抜いた「F」のロゴマークは、フォションを代表する製品である紅茶の缶の蓋に付されているほか、本件指定商品に含まれるチョコレートやケーキに直接付されている。1990年のカタログにも明らかなように、引用商標はフォション製品全般について使用されているものである。
現在、フォション製品は、株式会社グルメールが総販売元となっている(甲第7号証)。この中で、本件指定商品に含まれるパンについて、以下のように記載されている。
「フォションが本格的にパンを手がけたのは1935年のことで、現在のパンコーナーがオープンしたのは1990年です。今では朝早くから焼きたてのバゲットを買いにくる人々であふれ、オフィスで朝食をとるビジネスマンがクロワッサンやパン・オ・レザンを買い求める姿もめずらしくありません。/フォションが日本に登場して四半世紀。その中で生まれたライセンス商品のひとつがパンです。」(甲第7号証の1)
また、「パリ、マドレーヌ広場に輝くFのマーク、FAUCHON」とあり、引用商標がアイスクリームほかの製品に直接付されてる(甲第7号証の3)。引用商標をあしらったショッピングバッグも販売されており、「フォションのステータスシンボルがお供です。」とある(甲第7号証の4)。以上、現在頒布されているカタログから、「F」のロゴの引用商標が、請求人にとって重要なシンボルマークであることがわかる。
以上のことから、引用商標は、遅くとも本件商標が出願された1991年5月以前に本件商標の指定商品である「菓子、パン」について、フォションの商標としてわが国の需要者に広く知られたものであったことが明らかである。
よって、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品、すなわち「菓子、パン」について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当する。ここで、引用商標がフランスを本国とする周知商標であることから、菓子のメーカーである商標権者が引用商標の存在を知らなかったということは考えられず、また1990年に本国でフォションのパンコーナーがオープンしたことなどから、商標権者は不正競争の目的で本件商標の登録を受けたものであると考えられる。よって、商標法第47条に定める除斥期間の適用はない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
前記のように周知商標である引用商標と、書体の近似する「F」のロゴを縦長楕円形の枠の中に配すという構成において共通する本件商標が、引用商標の主力商品である本件指定商品「菓子、パン」に使用された場合には、わが国の需要者が請求人の業務に係る商品と出所を混同するおそれがある。
従って、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当する。ここで前記と同じく、商標権者は不正競争の目的で本件商標の登録を受けたものであると考えられるので、商標法第47条に定める除斥期間の適用はない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の商品である高級食料品を表示するものとして外国及び日本国内において需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標である。そこで、日本の菓子メーカーである商標権者により本件商標が使用されると、引用商標の出所表示機能を稀釈化させるおそれがあるものである。また、甲第4号証以下により、請求人が引用商標の正当な所有者であることは明らかであるが、引用商標と類似の商標を請求人の同意なく出願し登録した商標権者には、外国の有名ブランドの名声にただ乗りしようとの不正の利益を得る目的が疑われるものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
商標権者が、本件商標を「F」のロゴマークとして周知の外国商標である引用商標の名声に便乗して登録したとすると、商標権者の行為は国際信義に反し、国際的な取引秩序を害するものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号の規定に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)引用商標の周知性について
被請求人は、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証のパンフレット及び広告が「客観的事物」ではない、引用商標の使用時期、使用範囲、使用頻度等を客観的に示すものではない、としている。
しかしながら、まず使用時期については、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証のカタログ類は、いずれも発行年が明確に記載されている。
このうち、甲第4号証は、本国で作成、頒布されたカタログであるので、使用範囲、使用頻度は必ずしも明らかではないが、本国での100年以上の伝統を伝えるわが国の新聞報道などから、引用商標の使用が長年、しかも広範囲にわたるものであることは推認できる。例えば、引用商標を「フォションのロゴ」として表示してフォション製品について紹介する記事では、「マドレーヌ広場/パリ・マドレーヌ広場界隈で果物や野菜の行商をしていたオーギュスト・フォションが1886年、同広場の角に小さな店を出したのが始まり。」とあり、また「取扱い店舗」として「高島屋各店のほか、銀座・松屋、渋谷・東急本店、池袋・東武、船橋・東武の各百貨店など。」とある(甲第8号証の1)。「フォション/パリっ子の御用達」との記事では、「100年以上の伝統の”食のデパート“」とあり、写真には「パリ・マドレーヌ広場の一角に面したフォション本店。ショーウインドーはフランス中の注目の的だ」として、ショーウインドーの上に引用商標が写っている(甲第8号証の2)。
甲第6号証は、大手デパートである高島屋がギフトカタログとして作成したものであるから、該カタログが高島屋の顧客に頒布されたものであることは明らかである。フォションと高島屋の長年の関係については、「1998―1999日本におけるフランス年」と銘打ったイベントを伝える新聞広告及びパンフレット(タカシマヤで四半世紀、パリの名門『FAUCHONフェア』)に明らかである(甲第9号証)。甲第9号証の1には、引用商標の表示とともに、「日本ではタカシマヤが1972年に初めてご紹介して以来、上質な味を皆様にお届けしています。」とあり、高島屋が本件商標が出願された1991年の約20年前からわが国において引用商標を使用していることが明らかである。
これら客観的事実から、引用商標が請求人の商標として周知であったことは明らかである。
また被請求人は、該食料品店が請求人と同一人であるかは不明である、などと述べているが、甲第4号証の1の表紙裏を見ただけでも、請求人と同一のフランス語の住所が「FAUCHON」の住所として記載されており、フォションが請求人と同一人であることは言うまでもないことである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
被請求人は、「楕円形」の中に「F」を配した商標であって、本件商標及び引用商標と同一又は類似の商品を指定した商標として、乙第1号証ないし乙第3号証を挙げている。
しかしながら、甲第10号証に示すように、これらの商標は本件商標及び引用商標とは構成を異にするものである。まず、「楕円形」といっても、乙第3号証の商標は、横長の楕円形であり、縦長の楕円形とは印象を大きく異にする。また、同商標には識別力の強い「不二家」の文字が併記されており、この点からも併存登録の例として挙げるには不適切である。また同商標及び乙第1号証の商標の「F」の書体は全く特徴のない太字であり、本件商標及び引用商標の書体と異なることは一目瞭然である。また乙第2号証の「F」の文字は特徴のある飾り文字であり、これも本件商標及び引用商標の書体と異なることは一目瞭然である。
一方、本件商標及び引用商標の「F」の文字は、乙号証の商標とは明確に異なる共通の特徴を有している。すなわち、「F」の文字の全体的構成がほぼ一致し、本件商標においては、まん中の横棒を多少図案化している点が相違するのみである。また両商標は、乙号証の商標とは異なり、楕円形の中には他に識別力を生じ得る要素を入れず、シンプルな構成としている点が共通する。
引用商標は、登録第4064461号商標では「FAUCHON」の文字と結合して登録されているが、単独で識別力を発揮していることは、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に明らかである。すなわち、引用商標は、あらゆるフォション製品の包装に直接付されており、需要者に視覚的に多大にアピールしているものである。また引用商標が「FAUCHON」の文字の併記なしに使用されていることも明らかである。甲第4号証の1のカタログが1980年作成であることから、少なくとも本件商標が出願された1991年の10年前には、引用商標が同一の態様で使用されていたことが明らかである。また甲第9号証の記載にあるとおり、わが国において1972年からフォション製品が販売されていることから、わが国においても引用商標が本件商標が出願される10年以上前から使用されていたことが明らかである。
よって、甲第6号証ないし甲第9号証に示す、高島屋及びフォション製品のわが国における総販売元である株式会社グルメールの使用により、引用商標が本件商標の出願前からわが国において周知であったことは明らかである。
(3)不正の目的について
商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」については、被請求人が挙げている(ア)から(カ)は「商標審査基準」に挙げられていることであるが、(ア)については甲第4号証及び甲第6号証ないし甲第9号証に示すとおりである。
(イ)については、本件商標が構成上顕著な特徴を有すること、引用商標の特徴がこれと共通することは、前項で述べたとおりである。
(ウ)(エ)については、これも前述のとおり、わが国において高島屋によってフォション製品の国内販売が1972年に開始されている。一方、被請求人のインターネットホームページによれば、被請求人会社の設立は1971年であるが(甲第11号証)、同じ菓子業界にあって、有名デパートと菓子の本場であるフランスの有名ブランドの提携を知らなかったという方が不自然であり、被請求人の本件商標採択に当り、引用商標に接していたことが十分推測できるものである。
(カ)については、請求人は現在,本来の食料品以外にも幅広くライセンスビジネスを展開すべく、多岐にわたる商品、役務を指定して商標登録出願をし直しているところである(甲第12号証)。よって、「F」のロゴの引用商標の価値が希釈化されるような事態は放置できないものである。
商標法第4条第1項第7号について言えば、被請求人は、「F」のロゴを含む商標を選択するにしても、無数の選択の余地があるにもかかわらず、わざわざ外国著名商標に近似する構成の商標を採択したものであり、このような商標を登録することは社会的妥当性を欠き、引用商標が外国商標であることから国際信義にも反し、公の秩序を害するおそれがある。
(4)以上述べたとおり、被請求人の答弁によっては、本件商標の登録に無効理由がない旨は何ら証明されていないので、本件商標の登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知性について
請求人は、引用商標の周知性を基礎づける証拠として請求人の会社が発行したパンフレット及び広告を提出している。しかし、当該証拠はいずれも客観的事物とは言い難く、これをもって引用商標が需要者及び取引者間に周知であることを証明することは到底できない。当該パンフレット等は、請求人が主観的な考えに基づき作成したものであり、請求人の業務、商品等に関する紹介文、写真等は、請求人が恣意的に記入し、挿入し得るものだからである。また、当該パンフレット等は、引用商標の使用時期、使用範囲、使用頻度等を客観的に示すものでもないからである。
また、請求人は「英和商品名辞典」を提出しているが、同証拠からは、「FAUCHON」が食料品店のブランド名であることは理解できるが、上記食料品店が請求人と同一人であるかは不明である。仮に同一人であるとしても、「FAUCHON」と引用商標は全く異なる商標であるから、同証拠は、引用商標が周知であることの証明にはなり得ないし、もちろん引用商標が著名であることの証明にもなり得ない。また、上記同様、同証拠には、引用商標の使用時期、使用範囲、使用頻度等が示されていない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
引用商標は、「二重枠の縦長楕円形」の中の上半部にアルファベット大文字の「F」を配し、下半部にアルファベットの小文字「depuis」と数字「1886」を2段にして配したものである。そして、「縦長楕円形」は外側が太線で、内側が細線の二重線であるが、これは特に特徴ある形状ではなく、又、「F」の文字は極めて一般的なローマン形で、「depuis」の文字は極めて一般的な筆記体で、「1886」の文字もよく知られているバンク・スクリプト形である。
しかも、上述のように、引用商標が使用により周知になったという客観的な証拠も提出されていない。
一方、本件商標は、「縦長楕円形」の上部に「王冠」を配し、この「縦長楕円形」の中に白抜きでアルファベットの大文字「F」を配したものである。
そして、「縦長楕円形」の上部に「王冠」を配することによって、あたかも人間の頭上に王冠を載せているような印象を与えている。また、「F」については、中央部の横棒を双葉の横向き模様としている。
したがって、本件商標においては、「縦長楕円形」と「王冠」とが一体不可分な関連性を有するとともに、「F」も特徴のある形状をしている。
以上のように、本件商標は、「王冠」と「縦長楕円形」とが一体不可分であること、「F」は創作された特徴ある飾り文字であること、「depuis」及び「1886」の文字を有しないことから、引用商標とは外観上明白に相違する。
また、本件商標は、外観上、図形と文字との組合せに特徴を有するから、図形と文字が密接に関連して「王冠にエフ」「エフに王冠」等の称呼を生じるが、引用商標は極めて簡単で、かつ、ありふれた図形と文字からなるため、文字に係る「エフ」の称呼しか生じない。
さらに、登録第4064461号商標の称呼は「フォーション」であるが、本件商標はそのような称呼を生じないから、両者は同一指定商品について互いに非類似商標であるとして登録されている。
また、観念においては、本件商標からは「王冠」が必ず想起されるが、引用商標からは「王冠」は全く想起されない。
上述のように、両者は明白に非類似の商標である。
ちなみに、「楕円形」の中に「F」を配した商標であって、本件商標及び引用商標と同一又は類似する商品を指定した商標として、乙第1号証ないし乙第3号証等も登録されていることから、「楕円形」の中に「F」を配した商標は、周知・著名商標とはいえない。
(3)本件商標の使用による、他人の業務に係る商品等との混同について
本件商標の商標権者は、本件商標を適法に使用しており、本件商標の使用により他人の業務に係る商品又は役務との混同が生じた事実はない。また、当該混同を裏付ける証拠も提示されていない。
したがって、本件商標の使用は、不正競争防止法第2条第1項第1号にいう「混同を生じさせる行為」には該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、平成6年10月31日に設定の登録がなされており、登録設定の日から本件審判請求の日までに5年が経過しているため、平成8年改正以前の商標法第47条第1項の規定の対象となり、除斥期間の適用がある。
したがって、上記より、本件商標に係る商標権は、平成8年度改正法施行の際既に存在していたため、従前の商標法第47条が適用されるので、本審判の請求対象とはならない。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標が商標法第4条第1項第19号の規定に該当するためには、(1)引用商標が日本国内又は外国において周知であること(2)引用商標と本件商標が同一又は類似であること(3)引用商標が不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するものであることのすべてを満たす必要がある。
しかし、本件商標は、以下の理由により、上記のいずれにも該当しない。(1)(2)については、上述したとおりである。
(3)引用商標が不正の目的をもって使用されたか否かについて
不正の目的」の認定にあたっては、以下のような資料を判断材料とすべきであるとされている。
(ア)その他人の商標が需要者の間に広く知られている事実(使用時期、使用範囲、使用頻度等)を示す資料(イ)その周知商標が造語よりなるものであるか若しくは構成上顕著な特徴を有するものであることを示す資料(ウ)その周知商標の所有者が、わが国に進出する具体的計画(例えば、わが国への輸出、国内での販売等)を有している事実を示す資料(エ)その周知商標の所有者が近い将来、事業規模の拡大の計画(例えば、新規事業、新たな地域での事業の実施等)を有している事実を示す資料(オ)出願人より、商標の買取り、代理店契約締結等の要求を受けている事実を示す資料(カ)出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあることを示す資料
しかし、引用商標における、上記の資料についての対応は以下のとおりである。
(ア)(ウ)(エ)については、上述したとおり、このような事実を客観的に示している資料が存在しない。
(イ)については、上述したとおり、引用商標は造語でもなければ、構成に顕著な特徴を有するものでもない。
(オ)については、被請求人が、請求人に対してこのような要求をした事実はない。
(カ)については、このような目的で出願した事実はないし、それを示す証拠もない。
以上のとおり、本審判請求においては、引用商標につき、上記(ア)ないし(カ)のいずれの資料も提出されておらず、かつ、本件商標が不正の目的をもって使用された事実もないため、本件商標の使用が「不正の目的」をもって行われたと認定されるべきではない。
また、上記(ア)ないし(カ)の証拠が存在しない場合に本件商標の「不正の目的」を認定するためには、引用商標が以下の各要件を満たしている必要がある。
日本国内において周知、著名な商標の場合は、その商標が、商品又は役務の分野にかかわらず、その商標登録出願以前より、全国的に著名若しくは特定の地域において極めて周知な商標であることが認められること。その周知、著名商標が造語よりなるものであるか若しくは構成上顕著な特徴を有するものである場合であって、その商標と同一又は極めて類似するものであること。
外国においてのみ周知な商標の場合は、一以上の外国において周知な商標と同一又は極めて類似するものであること。その周知商標が造語よりなるものであるか若しくは構成上顕著な特徴を有するものであること。
しかし、引用商標が上記の各要件を満たしていることを証明する証拠は提出されておらず、引用商標は上記要件を満たしているとはいえない。
したがって、本件商標は「不正の目的」をもって使用をするものとは認めらるべきではない。
4 商標法第4条第1項第7号について
商標が本号の規定に該当するか否かは、当該商標を指定商品または指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、または社会通念の一般的道徳観念に反することとなるかどうかを総合的に判断して行われるべきである。
したがって、本号の該当例としては、過激なスローガンからなる商標、文字・図形の見方・読み方によっては一般人に卑猥な印象を与えるような商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標等が挙げられる。
ここで本件商標は、過激なスローガン等ではないから、上記にいう社会公共の利益に反するものでもないし、一般人に卑猥な印象を与えるものでもないから、社会通念の一般的道徳観念に反するものでもないし、特定の国やその国民を侮辱するものでもないから、「国際信義に反するもの」でもなく、「国際的な取引秩序を害するもの」でもない。
また、本件商標については、上記の裏づけとなる証拠も存在せず、かつ、「引用商標の名声に便乗して登録した」という事実もその意図もない。
さらに、本号の適用についてはむやみにその幅を広げるべきではない。
したがって、本件商標は公共の利益又は公衆の良俗に反するものではない。
5 結論
本件商標は、請求の理由のいずれにも該当しない。
したがって、本件商標は商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるものではない。

第5 当審の判断
(1)本件商標は、別記(1)に示すとおり、黒地の縦長楕円形内に白抜きで欧文字のF(Fの中央部の横棒に当たる部分が横向きの双葉を思わせる形となっている。)を表し、その上部に王冠を思わせる図形を配したものである。
そして、本件商標の上記黒地の縦長楕円形内に白抜きで欧文字のFを表した部分(以下「本件商標下部」という。)とその上部の王冠を思わせる図形(以下「本件商標王冠」という。)は接近して配置されており、また、本件商標王冠は、付加的な図形とはいえないほどの割合を本件商標全体において占めていると認められる。
そのため、本件商標は、本件商標下部と本件商標王冠が組み合わされ一体となった商標として看取されるから、特段の理由がない限り、本件商標下部が分離独立した識別標識として認識されることはないものというのが相当である。
一方、引用商標は、別記(2)に示すとおり、外側が太線で、内側が細線の二重線で描いた縦長楕円形内の上部に欧文字の「F」を配し、その下部に欧文字「depuis」と数字「1886」を二段に配したものである。
また、甲第3号証、甲第4号証の1ないし5、甲第6号証の1ないし3を総合すれば、引用商標は、これ単独で、また、「FAUCHON」の文字からなる商標と組み合わせて、請求人が紅茶、ジャム、菓子、パンなどの商品について古くから使用してきたものであり、わが国でもその商品が販売された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時において取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められる。
(2)本件商標と引用商標を比較すると、本件商標王冠の有無を除けば、本件商標下部と引用商標が縦長の楕円形内にFの文字を大きく表している点において共通するところがある。しかし、引用商標の楕円の輪郭線が二重となっている点、本件商標のFの中央部の横棒に当たる部分が横向きの双葉を思わせる形となっている点、引用商標中には「1886年設立」を意味するフランス語で識別力のない文字ではあるが、「depuis1886」の文字が相当の大きさで楕円輪郭内に表されている点で異なっている。
そのため、本件商標下部と引用商標は、同一といえるまでにその外観が近似しているものとは認められないものであり、引用商標が、上記のとおり取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていた事実を考慮しても、本件商標をその指定商品について使用した場合、本件商標下部より取引者、需要者が直ちに引用商標を想起して、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係るものかのごとく、その出所について誤認を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
また、本件商標は、上記認定のとおり、本件商標下部と本件商標王冠が組み合わされ一体となった商標として看取されるものであって、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても引用商標と類似するとみるべきところがないから、これとは非類似の商標といわざるを得ない。
(4)請求人は、被請求人がFのロゴを含む商標を選択するにしても、無数の選択の余地があるにもかかわらず、わざわざ外国著名商標に近似する本件商標を採択したことは社会的妥当性を欠き、引用商標が外国商標であることから国際信義にも反し、公の秩序を害するおそれがある旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり本件商標下部と引用商標は、同一といえるまでにその外観が近似していないものであって、本件商標下部の採択が引用商標の名声に便乗する意図で行われたと認めるに足りる証拠はないから、この点の請求人の主張は採用できない。
(5)そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第7号に違反して登録されたものということはできない。
(6)また、請求人は、商標法第4条第1項第15号、同第19号該当を本件商標登録を無効とすべき理由に挙げる。
しかし、本件商標に係る商標権は、平成6年10月31日に設定登録されたものであり、平成8年改正法施行の際に既に存在していたため、商標法附則(平成8年法律第68号)第8条第2項の規定により、商標法第4条第1項第15号該当を理由とする商標登録の無効の審判の請求をすることができる期間については、従前の同法第47条が適用され、たとえ不正の目的で商標登録を受けたとしても、本件商標の商標権の設定の登録の日から5年を経過した後はできないところ、本件審判の請求日は、平成12年9月27日であって、本件審判の請求は、本件商標の商標権の設定の登録の日から5年を経過した後にされたものである。
また、商標法第4条第1項第19号は、本件商標が商標登録された後の立法により新たに規定されたものであり、商標登録の無効理由として遡及して適用されるものでない。
(7)したがって、本件審判の請求中、商標法第4条第1項第15号及び同第19号該当を理由とする部分は、不適法な請求であって、補正ができないものであるから却下すべきものであり、請求人の主張は採用できない。
以上のとおりであり、本件商標登録は、商標法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標

(2)引用商標

審理終結日 2002-04-03 
結審通知日 2002-04-08 
審決日 2002-04-19 
出願番号 商願平3-51702 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (130)
T 1 11・ 271- Y (130)
T 1 11・ 22- Y (130)
T 1 11・ 222- Y (130)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 山田 忠司巻島 豊二 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
上村 勉
登録日 1994-10-31 
登録番号 商標登録第2697195号(T2697195) 
商標の称呼 エフ 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 石川 義雄 
代理人 西村 雅子 
代理人 小出 俊實 
代理人 古澤 俊明 
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