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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z06
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z06
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z06
管理番号 1064653 
審判番号 無効2001-35332 
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-07-31 
確定日 2002-08-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4408996号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4408996号商標(以下「本件商標」という。)は、「よこダンルーフ」の文字を横書きしてなり、平成11年8月10日に登録出願、第6類「金属製屋根材」を指定商品として、平成12年8月18日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は商標法第46条第1項第1号により登録を無効にすべきものである。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第30号証を提出した。
本件商標は、請求人が古くから自社独自の工法により製造される横葺の屋根材について使用し、建築業界において請求人の製造する商品として周知、著名となっている「段ルーフ」なる商標(以下「請求人商標」という。)に類似するものである。これより本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号ないしは同第19号に該当し、よって同法第46条第1項第1号に基づいて登録が無効とされるべきものである。
なお、請求人は、建築業界において屋根材、建材等の製造、販売を行っている企業であり、屋根材「段ルーフ」の製造、販売を行っている。以上より、本無効審判の請求については利害関係を有し、請求人適格を有するものである。
(1)本件商標と請求人商標の類似性
ア 本件商標
(ア)本件商標の構成は、「よこ」なる平仮名文字と「ダンルーフ」なる片仮名文字からなる、いわゆる結合商標である。
ここで「よこ」とは、「縦に対して垂直の方向。上下に対して、垂直の方向。立っているものが寝た位置。また前後に対して、左右の方向・位置」を意味する。例えば、「本を横(向き)に置く。」「〜を横に並べる。」といった使われ方をする。
すなわち、「よこ」は商標の一部として使用される場合は、その商品が置かれている状態を示唆する語にすぎないものである。したがって、「よこ」それ自体は自他商品識別力を有するものではない。仮に有するとしても、それ自体では極めて自他商品識別力が弱いといえる。
(イ)また、本件商標の指定商品である金属屋根材が製造・販売・使用されている建築業界においては、「横葺」なる言葉が頻繁に使用されている。この「横葺」は、「横から葺いていく」の意味合いを有し、「成型屋根葺材」等の商品の品質(工法)を表示するものとして普通に採択・使用されている語である(甲第1号証)。「よこダンルーフ」の「よこ」は、この「横葺」をも想起させるものである。
(ウ)本件商標は、標準文字にて出願されている。これより出願時に使用しようとした商標が特に文字の体裁自体には特徴がないことは自明である。
しかし、そうであるならば、「ヨコダンルーフ」とすべて片仮名で表示してもよいはずである。それを敢えて「よこ」と「ダンルーフ」とを別の仮名文字を使用している。これより、被請求人に商標「よこダンルーフ」の中の「よこ」と「ダンルーフ」とを区別し、「ダンルーフ」を明瞭に際立たせようとする意図が存在していたことは明白である。
(エ)このことは、同時に出願した「ダンルーフ」なる商標が存在することからも思料できる(甲第2号証)。つまり、「ダンルーフ」に対して、横葺仕様の「ダンルーフ」であることを明瞭にするために「よこダンルーフ」なる出願をしたものと容易に推察できる。
(オ)以上より、本件商標は、「よこ」と「ダンルーフ」の関係は一連不可分ではなく、十分に分離し得るものである。
したがって、その称呼として、「ヨコダンルーフ」のほかに「ヨコ」、「ダンルーフ」なる称呼をも生じることは明白である。
イ 請求人商標
請求人が多年に亘って使用しつづける商標に「段ルーフ」の文字からなる請求人商標がある。この請求人商標の称呼として生じ得るものは「ダンルーフ」、「ダン」、「ルーフ」である。この点について、特段争うべき事情はない。
ウ 商標及び商品の類似性
以上より、両商標は、共に「ダンルーフ」なる同一の称呼を生じ得る。
これより、本件商標と請求人商標の称呼は、全体として類似することは明らかである。
また、本件商標は、「金属製屋根材」を指定商品としており、請求人商標は、屋根材について使用されているものであるから、商品も同一又は類似関係にある。
(2)請求人商標の周知・著名性
ア 請求人商標
請求人商標は、請求人が自社の金属製屋根材について昭和58年以来現在に至るまで一貫して使用しつづけてきたものであり、通常「段ルーフ」と明朝体にて書して使用しているものである。
イ 請求人会社
請求人会社は、昭和24年の創業以来一貫して建築用の屋根材、壁材等を開発・製造・販売・施工することを主たる業務としている。現在、東証第1部に上場されており、全国に支店、営業所を多数有する全国規模の会社であり、建築業界においては金属製屋根材の製造メーカーとしてはトップの位置にある著名な会社である(甲第3号証)。
ウ 請求人商標の著名性
「段ルーフ」なる請求人商標は、上述した背景を有する請求人が自社独自の工法により製造される横葺の屋根材について昭和58年より使用している商標であり(甲4号証)、業界においては「段ルーフ」といえば請求人により製造された屋根材の商品名であることは周知の事実である(甲第5号証ないし同第29号証)。
以上より、請求人商標は、本件商標の登録出願時においては、既に需要者の間において周知、著名なものであることが容易に推認できる。また、請求人は、請求人商標については現在も使用しているものであるから(甲第29号証)、本件商標の査定時においても周知・著名であることも容易に推認できる。
なお、請求人の製造商品は、一般消費者ではなく、建築業者等に対して販売されるものであり、ここでいう需要者は、建築業界におけるいわゆる業者が対象となる。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 商標の類似性
未登録周知商標の請求人商標と本件商標は、その構成中に「ダンルーフ」なる同一の称呼を有するものであるから、全体としては類似関係にある。この点については上記(1)で詳述した。
なお、改正された審査基準に「需要者の間に広く認識された他人の未登録商標と他の文字又は図形等を結合した商標は、その外観構成が纏まりよく一体に表されているもの又は観念上繋がりがあるものを含め、原則として、その未登録商標と類似するものとする。」との記載があることからも、請求人商標と本件商標が類似するものであることは明らかである。
イ 商品の類似性
また、請求人商標は、既に述べたように屋根材に使用されているものであり、これに対し、本件商標は、指定商品を「金属製屋根材」としていることから商品が同一・類似であることは明らかである。
ウ まとめ
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 請求人商標を使用する屋根材
特に注目すべき点は、周知・著名性を獲得している請求人商標は、単なる屋根材について使用しているのではなく、請求人独自の工法により製造された横葺の屋根材について使用されているという点である。なお、請求人が横葺の屋根材について独自に開発した工法は多数特許出願或いは実用新案登録出願がされ、出願公開、出願公告、特許、登録されている。
イ 評価書
さらに、業界内においても一定の評価を得ており、これは建設省による「評価書」(甲第25号証)からも明らかである。
ウ 段ルーフシリーズ
請求人商標は、「段ルーフシリーズ」として「段ルーフ」「TS段ルーフ」「美段ルーフ」が製造・販売されている(甲第17号証ないし同第26号証、同第28号証及び同第29号証)。これより、「よこダンルーフ」についても請求人の製造・販売する「段ルーフ」シリーズの1つであるとの印象を与える可能性がある。
エ 出所の混同の有無
したがって、周知・著名な請求人商標に類似する本件商標「よこダンルーフ」なる商品名を付した屋根材が建築業界において出まわることとなれば、請求人独自の工法により製造された屋根材であるとの認識を与えることは容易に思料されることである。特に、本件商標の「ヨコ」なる語からは、建築業界において屋根材の建築工法として普通に採択使用されている「横葺」が容易に想起される。このことからしても、請求人の製造製品であるとの認識を与える可能性はかなり高いものといえる。更にまた、被請求人が請求人と業務上提携関係にあるとの印象を他社に与えることも避けられない。
すなわち、出所の混同が生ずるおそれがあるのである。
オ まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであることは明らかである。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
不正の目的
請求人商標については、長年使用しつづけ、加えて上述のような実績を有しているという厳然たる事実が存在する以上、本件商標の使用は、被請求人が請求人の業界内における業績を利用した上で、或いは、「段ルーフシリーズ」の1つとして認識されるような形で商品販売を行おうとの意図があるものと推認せざるを得ず、まさに「不正の目的」をもって使用される商標であるといわざるを得ない。
イ まとめ
これより、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであるといえる。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)本件無効審判に先立つ登録異議申立て
請求人は、本件商標に対して登録異議申立てを行っている。その異議申立ての理由及び証拠は、本件無効審判のそれとほとんど同一であり、その論述の進め方にもいささかの違いもない。
そして、この登録異議申立てに対する異議決定(乙第1号証)では、
本件請求人の商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号違反の主張を退け、本件商標の登録が維持された経緯がある。
(2)請求人商標「段ルーフ」の識別力について
「段ルーフ」中の「ルーフ」の部分は、「屋根」を意味する英語「Roof」を指称するものとして、「ルーフガーデン(屋上庭園)」や「ルーフィング(屋根葺き)」等のようにも用いられて、比較的なじみのある語であり、特に建材を扱う業界では常識的な一般用語となっている。
したがって、「段ルーフ」の語は、建材を取り扱う業界に属する者ならば、「段(段々)の付いた屋根又はその屋根材」を意味する語であると直ちに認識するものであって、商品「屋根材」についての「段ルーフ」の語自体は商品の品質、形状、用途等を表示するものとして本来自他商品識別力のない語である。
請求人は、未登録ながら請求人商標は周知となっていると主張する。
何故、請求人は、100件近くも登録商標を所有しているのに、かように周知であるとする商標を登録することができないのか。これは要するに「段ルーフ」の語は未だもって「自他商品識別力を具有していない」ので、登録性すなわち独占適応性がないからにほかならない。
請求人が提出した甲第3号証ないし同第29号証は、使用により「段ルーフ」の語が識別力を有するに至ったか否かを判断する材料の一つとはなり得ても、更に周知の商標となっているか否かを判断するための証拠としては全く不充分である。
すなわち、請求人は、証拠として会社の記念誌や会社機関誌、カタログ等を多数提出しているが、「使用による識別力の発生」や「周知性」の判断に最も重要な証拠、例えば請求人が多種類の屋根材を製造・販売している中で、「段ルーフ」の語を使用した屋根材はどの位の数量を年間或いは現在まで製造・販売し、どの位の金額を売り上げたのかを示す資料や、新聞、雑誌或いはテレビ、ラジオ等での「段ルーフ」に関する広告宣伝の内容や回数、同業団体や商工会議所或いは取引先、需要者の証明書等の証拠の提出や説明もなく、これでは、証拠資料からは、ただ単に請求人が確かに「段ルーフ」なる語を屋根材に使用していることを確認することができるにすぎず、「段ルーフ」の語が未だ自他商品識別力を有するに至ったことを客観的に証明するものとは到底いえないのである。
(3)請求人商標の周知性について
請求人は、「段ルーフ」の語は請求人が製造販売する屋根材(横葺屋根材)を表示する未登録周知商標であるとする。
一般に、その商標が意味を有しない造語商標であったり、ハウスマークのように取り扱い商品の全てについて統一的に使用される商標なら、周知となる度合いは大きいかも知れない。
しかし、請求人の「段ルーフ」のように「横葺屋根材」という単品についての商標であるときには、大々的な広告宣伝と相当量の商品の製造・販売数量の実績がなければ、周知商標に至ることは極めて難しい。
ましてや、本来、自他商品識別力がない商標(語)は、いかに長年盛大に使用しても、それが識別力を有するに至ることは可能であっても、更にそれが周知商標となることは稀有に近いのである。
ちなみに、請求人商標は、平成11年7月から実施の「改正された商標審査基準」のいずれにも当てはまらない。
このように、自他商品識別力の存否自体に問題のある請求人商標が、周知商標であるとの主張は、全く暴論というほかない。
(4)本件商標と請求人商標との類否
仮に請求人商標に自他商品識別力があるとし、しかも請求人の屋根材についての商標として周知であるとした場合でも、両商標は何ら類似するものではない。
すなわち、「金属製屋根材」を指定商品とする本件商標は、平仮名と片仮名の組み合わせにはなっているものの、「よこ」と「ダンルーフ」に区別して称呼、観念すべき格別の理由はないから、よどみなく一連に「ヨコダンルーフ」と称呼され、一方、同じく「金属製屋根材」について使用している請求人商標からは「ダンルーフ」の称呼が生じ、両者はその音数や語頭音が全く相違するので、称呼上区別することは極めて容易である。
また、両商標における「ルーフ」の部分は取引者・需要者ならば「屋根」を意味する英語「Roof」を指称するものと容易に理解でき、いわば商品の普通名称或いは商品の用途等を表示する識別力なき部分であり、商標の要部はそれぞれ「よこダン」、「段」の部分に存し、「よこ」と「ダン」に何ら軽重の差はないので、本件商標からは単に「ヨコダン」、また引用商標から「ダン」の略称も生じるが、しかるときも、称呼上非類似であることは明白である。
なお、請求人は、甲第1号証の審決例を提出して、本件商標の語頭部分「よこ」は「横葺」を想起させるとするが、この審決は商標中に漢字で「横葺」と表示した場合に、屋根材の施工法を表示するにすぎないとしたのものであって、平仮名「よこ」が「横葺」を意味するとしたものではない。
したがって、両商標は、上記のように著しく異なった称呼及び外観を有するので、請求人商標が仮に周知のものであっても、両者は容易に区別できる非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第10号の規定には何ら該当しないことは明らかである。
(5)商標法第4条第1項第15号及び第19号について
請求人は、請求人商標が更に周知の程度が高いいわゆる著名商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号違反でもあると主張している。 ちなみに、「改正された商標審査基準」によれば、この第15号の適用がある著名商標の判断基準として、ア その商標が創造商標(造語商標)であるか否か。イ その商標がハウスマークであるか否か。ウ その商標使用者の多角経営の可能性。等々が参考とされるが、請求人商標がこれらの基準を満足していないことは明々白々である。要するに、前記したように周知でもない商標が著名である筈がないのである。
さらに、請求人は、被請求人が請求人商標の名声にタダ乗りする等の不正な利益を得る目的で本件商標の登録を得たかの如く主張して、本件商標が商標法第4条第1項第19号違反でもあるとするが、もともと自他商品識別力のない商標に多大な信用や名声、顧客吸収力等が生じる筈もなく、周知でも著名でもない商標を引用して、この第19号違反を主張されることは、被請求人に対するいわれなき誹謗というほかない。
(6)まとめ
以上説明したように、自他商品識別力がなく、したがって独占適応性のない請求人の屋根材についての請求人商標が、周知かつ著名であって、被請求人が不正の目的をもって本件商標の登録を得たとする請求人の主張は、全くナンセンスであり、しかも前記したとおり、本件商標がこの請求人商標とは明らかに非類似なのであるから、商品の出所について混同を生じさせる筈もないので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号の規定には何ら該当しないことは明白である。

4 当審の判断
(1)本件商標と請求人商標との類否
ア 本件商標
本件商標は、上記に示すとおりの構成よりなるところ、構成各文字は、外観上まとまりよく一体的に表現されており、特に軽重の差を見出すことはできないものである。また、これより生ずる「ヨコダンルーフ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであり、他に構成中の「ダンルーフ」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せないから、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然である。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ヨコダンルーフ」の称呼のみを生ずるものというべきである。
請求人は、本件商標中の「よこ」の文字は商品が置かれている状態を示唆する語にすぎないものであり、それ自体は自他商品識別力を有するものではなく、仮に有するとしても、極めて自他商品識別力が弱いといえる、また、この「横葺」は、建築業界において頻繁に使用されている「横葺」をも想起させるものである旨主張する。
しかしながら、本件商標は、「よこ」が平仮名文字で、「ダンルーフ」が片仮名文字で表されているものではあるが、その構成は上記のとおり一体不可分の構成よりなると認識されるものであって、仮に「よこ」の文字部分に着目した場合であっても、該文字が商品がおかれている状態を示唆する語と認識されるものとは判断し得ず、これを認めるに足りる証拠はない。また、建築業界において「横葺」の語が頻繁に使用されているとしても、「よこ」の文字が「横葺」を表すものと認識され使用されている事実を示す証拠もない。したがって、上記請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、被請求人に「ダンルーフ」を明瞭に際立たせようとする意図が存在していたことは明白であり、このことは、同時に出願した「ダンルーフ」なる商標が存在することからも思料できる旨主張する。
しかしながら、被請求人の意図の如何はともかく、本件商標の構成において、「ダンルーフ」の文字部分が明瞭に際だっているとは看取し得ないものである。また、本件商標と同時に「ダンルーフ」の文字からなる商標が登録出願されていることが認められるが、該商標の登録出願の事実が本件の判断に影響を及ぼさないことは明らかである。
イ 請求人商標
請求人商標は、上記に示すとおりの構成よりなるものであるところ、「段ルーフ」の文字が自他商品識別力を有しているとしても、これより生ずる称呼は「ダンルーフ」である。
ウ 類否
本件商標と請求人商標とは、その音構成及び構成音数において顕著な差異が認められるから、称呼上十分区別し得るものであり、外観、観念においても類似しない商標である。
(2)出所の混同の有無
ア 請求人商標の周知、著名性
申立人の提出に係る証拠によれば、本件商標の登録出願前に、「段ルーフ」の文字からなる請求人商標を付した「金属性屋根材」が製造、販売されていたことは認められる。
しかしながら、請求人の提出に係る証拠は、請求人の発行に係る、請求人会社の社史(甲第4号証)、社誌(甲第5号証ないし同第15号証)、商品価格表、商品カタログなど(甲第16号証ないし同第24号証及び甲第29号証)のほか、建設省が「段ルーフ」シリーズの屋根材について技術評価をした「評価書」(甲第25号証)、出版社の発行に係る建築資材の価格等が列記されている、建築業者の利便に供される性格の雑誌(甲第26号証ないし同第28号証)及び、印刷されている文面の内容を証明者が証明する形式の証明書であって、証明者がいかなる資料のもとに該事実を証明し得るに至ったものか定かでない証明書(甲第30号証)であって、これらの証拠を総合しても、該商品の取引の数量、取引地域など取引の状況を具体的に示すものはなく、また、その広告・宣伝の方法、時期、地域等を示す証拠もないから、請求人商標が、本件商標の登録出願時において、取引者、需要者間に広く認識され周知、著名性を獲得するに至っていたものとは判断することができない。
イ 出所の混同
前述のとおり、本件商標は、請求人商標に類似する商標でないばかりでなく、本件商標の登録出願の時に、請求人商標が周知、著名であったとも認められないことからすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これより直ちに請求人商標を連想、想起するものとは判断することができないから、請求人又は請求人の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(3)不正の目的
以上からすると、本件商標は、不正の利益を得る目的、他に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用する商標でないことは明らかである。
(4)まとめ
以上のとおりであり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-06-26 
結審通知日 2002-07-01 
審決日 2002-07-12 
出願番号 商願平11-72028 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Z06)
T 1 11・ 222- Y (Z06)
T 1 11・ 271- Y (Z06)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 2000-08-18 
登録番号 商標登録第4408996号(T4408996) 
商標の称呼 ヨコダンルーフ、ヨコダン、ダンルーフ 
代理人 岩堀 邦男 
代理人 浅賀 一樹 

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