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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 Z30
審判 一部申立て  登録を維持 Z30
審判 一部申立て  登録を維持 Z30
管理番号 1063435 
異議申立番号 異議2001-90594 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2002-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-08 
確定日 2002-07-08 
異議申立件数
事件の表示 登録第4472659号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4472659号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第4472659号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年5月22日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第30類 「もなか、もち菓子、その他の菓子及びパン、コーヒー豆、調味料、香辛料、食品香料(精油のものを除く。)、米、脱穀済みのえん麦、脱穀済みの大麦、食用粉類、食用グルテン、穀物の加工品、ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、すし、たこ焼き、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ、即席菓子のもと、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、アーモンドペースト、イーストパウダー、こうじ、酵母、ベーキングパウダー、アイスクリーム用凝固剤、家庭用食肉軟化剤、酒かす、ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として、平成13年5月11日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張要旨は、次のとおりである。
本件商標は、「くうや」であり、その指定商品中の「もち菓子」は「もち(餅)」を包含するものであるところ、甲第1号証ないし甲第26号証として示す各辞書類には「くうや餅」の項目が「さくら餅」や「うぐいす餅」などと同様に普通名詞として説明され、登録商標としては扱われておらず、このように多種多様の辞書類に広く、かつ、長期間記載されていることから一般名称化しているかまたは何人かの業務にかかる商品であるか認識できない状態にあり、これを「もち菓子」に使用するときは単に商品の品質を表示するにすぎず識別性がないものであり、商標法第3条第1項第1号もしくは同項6号及び同法第26条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、指定商品「もち菓子」に関して取り消されるべきである。
同様に甲第19号証及び甲第25号証に示す各辞書には「くうやもなか」が普通名詞として掲載されているから、指定商品「もなか」についても取り消されるべきである。
申立人は、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出している。

3 当審の判断
(1)当審は、商標権者に対し、平成14年3月1日付けで商標登録の取消しの理由を通知した。その要旨は次のとおりである。
申立人の提出に係る甲第1号証ないし甲第26号証によれば、「くうやもち(空也餅)」は、「蒸したもち米を半分程度につき、つぶし餡を入れて丸めた菓子」を指称する語として使用されていることが認められる。また、甲第9号証及び甲第25号証によれば、「くうやもなか(空也最中)」の項に「菓子の名、瓢(ひさご)形で、中央に『空也』と凹字で表した最中」と記載されていることが認められる。
しかして、本件商標は、「くうや」の平仮名文字を「や」の文字の縦棒の部分を「く」の文字にとどくように長くして縦書きに書してなるが、菓子業界においては、自己の商標及び暖簾などに、このように平仮名文字又は漢字をくずして使用することは通常行われているというのが実情であり、容易に「くうや」の文字を看取できるものであって、普通に用いられる方法で表示してなる域を脱したもの(特異な構成)とは認め得ないものであるから、これを本件商標の指定商品中の「もなか,もち菓子」について使用した場合、上記事実より取引者、需要者をして、その商品の品質を表示したものと認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たすことができない商標といわなければならない。
したがって、本件商標登録は、その指定商品中「もなか,もち菓子」について、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものである。
(2)これに対し、商標権者は、平成14年4月8日付け意見書をもって、本件商標は一般需要者に商品の普通名称又は商品の品質表示であると認識されている事実はなく、和菓子の商標として自他商品の識別力を十分有している旨主張し、乙第1号証ないし乙第47号証を提出している。
(3)そこで、本件商標の識別性ついて検討する。
本件商標は上述したとおりの構成よりなるところ、「くうや(空也)」の語は、一般に平安中期の僧であり、空也念仏の祖を指称するものとして知られている。
「くうやもち(空也餅)」及び「くうやもなか(空也最中)」の語については、3(1)に述べたとおりの意味が甲第1号証ないし甲第26号証に示す辞典に記載されているところである。
乙第10号証(平成12年7月31日付け岩波書店広辞苑編集部課長名作成の商標権者代理人宛書面)によれば、「空也餅」の項目は次回の改訂以降削除いたしたいと考えている旨回答していること、乙第11号証(平成12年8月10日付け株式会社学習研究社辞典編集部部長名作成の商標権者代理人宛「回答書」と題する書面)によれば、「学研国語大辞典」初版発行の昭和53年4月1日より「空也餅」に関する説明の中で商標である旨の表示をしていないことが判明したので、本書の次回改訂時には、「空也餅」について商標であることを表示するようにする旨回答していること、乙第12号証(2000年8月9日付け三省堂大辞林編集部編集長名作成の商標権者代理人宛書面)には、国語辞典「大辞林」について、今後、機会をとらえ「空也もち(餅)」が登録商標名であることを記述する改訂を行ってゆくつもりである旨回答していること、乙第13号証(平成12年8月10日付け株式会社小学館国語辞典編集部部長名作成の商標権者及び同代理人宛「『空也餅』の解説について」と題する書面)によれば、株式会社小学館の辞典で「空也餅」の語が収録されているものには「大辞泉」「言泉」「国語大辞典」「日本国語大辞典」があること、これらの辞典に「空也餅」の語が採録されたのは、夏目漱石著「我が輩は猫である」(1905年発表)に使われていることによること、その語釈は岩波書店刊「漱石全集」(1965年刊行)の注釈を基にしていること、この語の出典が明記されていない「大辞泉」「言泉」「国語大辞典」については項目を削除する方向であり、各種文献にある語をその用例とともに採録している「日本国語大辞典」についてはその出典を明記した上で、出典に則した解説を付して収録する方向で検討していること及び具体的には解説に「上野池之端にあった菓子店、空也の創製といわれる」の文言を入れる考えであることなどを回答していること、乙第14号証(平成12年8月7日付け株式会社講談社法務部次長名作成の商標権者及び同代理人宛書面)によれば、次回の改訂新版発行の機会に、「日本語大辞典」中の「空也もち(餅)」の項目を抹消することにした旨回答していることの各事実が認められる。
これらの事実によれば、申立人が証拠方法として提出した辞典の発行所の多数が、自己の発行する辞典中の「くうやもち(空也餅)」の項目について、次回改訂に際し削除する意向であること、商標であることを表示する意向であること又は出典を明記した上解説を付する意向であることなどを商標権者に表明しており、甲各号証に示された「くうやもち(空也餅)」の語の解説は、申立人が指摘するような商品の普通名称又は商品の品質表示として一般に理解され使用されていることに基づくものではないというべきである。
乙第9号証、乙第15号証ないし乙第46号証によれば、商標権者は、明治17年上野池之端に「空也」の屋号により開業して以来、昭和24年に東京都中央区銀座六丁目に移転し、現在も同地で和菓子を扱う老舗であること、明治38年頃夏目漱石の「吾輩は猫である」の小説中に空也餅が記載されたこと、その後も林芙美子の「匂い菫」などの小説中にも茶菓子として空也の最中が記載されたこと、これらの文学作品に空也の商品が取り上げられたことにより空也の取り扱う「空也餅」や「空也最中」の知名度をあげたこと、多くの雑誌、書籍が「空也」を屋号とし、その取り扱い商品として最中などの和菓子があることを記事としていること及びこのように商標権者は明治17年以来永年「空也」の商標を「もなか、もち菓子」に使用し需要者から評価を受けてきたことが認められる。
以上によれば、「くうや(空也)」並びに「くうやもち(空也餅)」及び「くうやもなか(空也最中)」の語が、「もなか、もち菓子」について、その商品の普通名称又は商品の品質を表示したものと取引者、需要者に認識させるとすべき特段の事由は認められず、かえって、商標権者が明治17年以来永年「空也」の商標を「もなか、もち菓子」に使用し需要者から評価を受けてきたと認められることからすれば、本件商標は、平安中期の僧であり、空也念仏の祖である「空也」を想起させる構成よりなるものであるから、本件商標をその指定商品中の「もなか、もち菓子」について使用するときは、自他商品の識別標識としての機能を十分果たし得るというべきである。
(4)したがって、本件商標登録は、その指定商品中の「もなか、もち菓子」について、商標法第3条第1項第1号、第3号及び第6号の規定のいずれにも違反してされたと認められないから、同法43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
なお、申立人は本件商標登録が商標法第26条第2項の規定に違反して登録されたものである旨主張するが、同法第43条の2各号中には申立人の主張する同規定が登録異議の申立てをすることができる理由とされていないから、理由がない。
よって、結論のとおり決定する。
別掲















本件商標


異議決定日 2002-06-19 
出願番号 商願2000-55605(T2000-55605) 
審決分類 T 1 652・ 11- Y (Z30)
T 1 652・ 13- Y (Z30)
T 1 652・ 16- Y (Z30)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷村 浩幸 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 2001-05-11 
登録番号 商標登録第4472659号(T4472659) 
権利者 有限会社空也
商標の称呼 クウヤ、クーヤ 
代理人 塩野入 章夫 
代理人 竹本 松司 
代理人 杉山 秀雄 
代理人 坂井 淳 
代理人 手島 直彦 
代理人 湯田 浩一 
代理人 魚住 高博 

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