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審決分類 審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z11
管理番号 1063289 
審判番号 無効2001-35345 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-08-03 
確定日 2002-08-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第4371923号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4371923号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4371923号商標(以下「本件商標」という。)は、「デシカント」の片仮名文字(標準文字)を書してなり、平成11年2月10日に登録出願、第11類「暖冷房装置,家庭用電熱用品類,冷凍機械器具,乾燥装置,蒸発装置,熱交換器」を指定商品として、平成12年3月31日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は、これを無効とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1.本件商標は、以下の理由により、商標法第3条第1項第1号、又は商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであり、商標法第46条第1項の規定により商標登録を取り消されるべきである。
2.本件商標は、「乾燥させるもの」といったことを意味する英語表記「desiccant」の日本語読みを、片仮名表記した文字を普通に用いられる方法で表してなるものであり、「デシカント」として、空調関係の商品に用いられており、その商品の一般的な名称であると認識し得るものであり、また、乾燥させるという効能、品質、用途を現わしているものである。
そして、本件商標の登録査定時には、以下に示す証拠から、空調機器業界の取引者、需要者において、除湿乾燥を表している語として認識されているものと思料される。
(1)甲第2号証は、平成7年12月10日付け日本工業技術新聞の記事であり、「高性能を誇る除湿空調システム\デシカント・クーリング・システム\ニチメン原動機販売」という見出しで、「ニチメン原動機販売は、11月21日〜24日まで開催された大阪ガス『‘95工業フェア』に、除湿空調システム『デシカント・クーリング・システム』を出展、」と記載されており、「デシカント」なる語が使われている。
(2)甲第3号証は、大阪ガスのパンフレット「都市ガスを利用した高効率吸着除湿空調システム\ ”DESICCANT”\デシカント空調システム」とあり、頒布日は1996年(平成8年)10月5日となっている。
(3)甲第4号証は、平成8年10月に、ニチメン原動機販売株式会社が、「圧縮空気乾燥システム」というタイトルで、「取引先のエンゲルハード/ICC社(米国・ペンシルバニア州・フィラデルフィア)はデシカント空調機のメーカーで、…(後略)」と記述しているリーフレットである。
(4)甲第5号証は、ASHRAE JOURNAL(アシュレージャーナル)-米国暖房冷凍空調技術者協会発行の雑誌-1997年4月号に掲載されている論文のタイトルは、「デシカントベース冷房方式の殺菌効果」(ブライアン・コヴァツク、リチャード・ハイマン、ジェイ・ハンメル共著)である。
(5)甲第6号証は、平成10年2月27日に開催された社団法人 空気調和・衛生工学会の第28回セミナー「空調技術の新しい動向」において、大阪ガス株式会社商品開発部の空調チーム副課長 原義孝氏が講演した表題「デシカント(除湿)空調」である。その序文において、「1.はじめに デシカント空調機とは、除湿剤(デシカント)を用いて除湿空調を行う熱源一体型の空調機であり、昭和30年代より低露点の産業用の除湿システムとして普及してきた。」と「デシカント」の説明をしており、昭和30年代から「デシカント」なる語が用いられていたことを示している。
(6)特許出願の状況をみてみると、本件商標の登録査定時までに、「デシカント」の語が出てくる出願が76件(甲第7号証の1)あり、特開昭60-7739号(公開日 昭和60年1月16日)発明の名称「半導体装置の製造方法」であり、「特許請求の範囲」に記載されている(甲第7号証の2)。実開昭61-115128号(甲第7号証の3)、特開平6-1019300号(公開日 平成6年4月12日;甲第7号証の4)等であり、空調機器業界においては、広く知れわっている語であると認められる。
(7)商標出願をみてみると、平成11年6月4日に、被請求人が、「第37類、指定役務 暖冷房設備工事,暖冷房装置の修理又は保守」について出願しているが、これに対する拒絶理由通知書は、「この商標出願に係る商標は、『乾燥させるもの』といったことを意味する英語『desicant』に通じる『デシカント』の文字を普通に用いられる方法で表してなるものですから、これを指定役務中、例えば、除湿効果や、衣類乾燥機能など『乾燥させる』ことを特徴とする暖冷房設備又は装置の設置工事や修理・保守といった役務に使用しても、これに接する者をして、容易にその役務が上記意味合いに照応するものを提供するためであるといったとを理解させるにとどまるもので、役務の質を表示するものと認めます。したがって、この商標出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがありますので、商標法第4条第1項16号に該当します。」との理由が示されたが、出願人は意見書を提出していない。(甲第8号証)
(8)インターネット・サーチエンジン「Exciteエキサイト」を用いて、「デシカント」の語を検索すると、検索の結果、96件であり(甲第9号証の1)、また、「infoseekインフオシーク」を用いると70件である(甲第9号証の2)。
Exciteエキサイトの、4番目に「デシカント空調」とあり、タイトル「デシカント空調」\平成9年7月 須賀工業株式会社 製図部 三木秀樹において、デシカント空調の説明が載っている(甲第9号証の3)。また、その第11番目に平成10年度省エネルギー優秀事例全国大会「省エネルギー実施事例\奨励賞『デシカント空調機とガスヒーポン導入による省エネルギー』」とあり、奨励賞のタイトルに「デシカント」なる語が用いられている。(甲第9号証の4)
(9)甲第10号証は、平成10年3月20日に、「デシカント調査報告書」を、ニチメン原動機販売株式会社が作成したものである。
(10)甲第11号証は、平成11年3月1日付けの日刊工業新聞であり、第13面に、「ニチメン原動機販売\湿空調機を納入\千葉の公共温水プールに」の見出しで、「温水プール用除湿装置『デシカント空調機・デシカントクール(「デザートクール」の誤記と認められる。)』」の記事が記載されている。
(11)甲第12号証は、社団法人「日本冷凍空調学会」が(平成11年1月31日現在)平成11年3月25日発行の平成10年度版「会員名簿」の広告ページに「ニチメン原動機販売株式会社」の広告が掲載されており、「これからの空調は\デシカント方式〈デザートクール〉」という見出しで「デシカント」の語を用いた宣伝文を掲載している。
(12)甲第13号証は、平成11年3月に東京都が発表している「東京エネルギービジョン」の「第4章 東京の将来のエネルギー需要のあり方」の中に、囲み記事で、「コラム4-9:都立化学技術大学での燃料電池の導入事例」の燃料電池システム図に「デシカント空調機」が記されている。
(13)甲第14号証は、東京ガスのパンフレット「DESICCANT\デシカント空調機」であり、頒布日が1999年6月3日となっている。
(14)甲第15号証は、東京ガス株式会社産業エネルギー事業部とニチメン原動機販売株式会社が、平成11年6月に作成した小冊子「デシカント空調機\Q&A」の表題に用いられている。
(15)甲第16号証は、「平成12年3月31日 金曜日 官報(号外第62号)(4分冊の1)」の194頁、下段中央右寄りの「表10」に、「デシカント除湿機(シリカゲルその他の吸着剤を用いて、空気の除湿をおこなうもので、・・・(中略)・・・送風機又は配管を含む。)」との記載がある。
この官報は、本件商標の登録日の発行であるが、平成12年3月以前に、「デシカント」という語が除湿乾燥を表している語として使用されていることを示していると解することができる。
3.結び
上述したとおり、「デシカント」なる語は、本件商標の登録査定時には、「暖冷房装置、家庭用電熱用品類、冷凍機械器具、乾燥装置、蒸発装置、熱交換器」等の取引者、需要者において普通に使用されるようになっており、したがって、「デシカント」を、上記商品に使用した場合、取引者、需要者において、その商品の一般的な名称であると認識し、また、取引者、需要者が何人かの業務に係る商品であると認識することができないと思料するものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、上記第2の請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。

第4 当審の判断
1.甲第2号証ないし甲第16号証によれば、「デシカント(desiccant)」の語は、「乾燥剤」、「除湿剤」を意味する語と認められ、また、乾燥剤、すなわち除湿剤を用いて冷却を行う空調機(空気調和装置)、空気冷却装置を「デシカント空調機」、「デシカントクーラー」と称している事実が認められる。
そして、デシカント空調機は、「1930年代より低露点の産業用の除湿システムとして普及してきた」こと及び「その一方で、業務用の空調用途として、アメリカでは1980(年)代よりスーパーマーケットなどに導入され始め、ここ数年業務用、産業用空調分野で大きく伸びている。日本においても、工場、スーパーマーケット、老健施設、室内遊技場、屋内スキー場、ビアホールレストランなどに採用され始めた」こと(甲第6号証)が認められ、また、1999年(平成11年)3月には既に、温水プール用除湿装置として千葉県内の公共施設に採用されたこと(甲第11号証)が認められる。
さらに、デシカント空調機の製造販売元は、該商品の宣伝広告をしている事実も認められる。
2.上記1.で認定した事実を総合して判断すれば、「デシカント」の語は、「乾燥剤」、「除湿剤」を意味するものとして、また、該語を空調機、空気冷却装置について使用した場合は、除湿剤を用いて冷却を行う商品であることを表すものとして、本件商標の登録査定前より、この種の商品分野において広く認識されていたとみるのが相当である。
3.本件商標は、前記したとおり、「デシカント」の片仮名文字(標準文字)を書してなるものである。
してみると、本件商標は、これを空気調和装置、除湿器、乾燥装置(乾燥機、乾燥器)及びこれらと関連のある商品を含むその指定商品について使用した場合は、これに接するその需要者は、「除湿剤を用いて冷却等を行う商品」なる意味合いを表したと理解するにとどまり、自他商品を識別する標識たる商標とは認識し得ないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、単に商品の品質を表示するにすぎないものと認める。
4.以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわざるを得ず、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-06-05 
結審通知日 2002-06-10 
審決日 2002-06-21 
出願番号 商願平11-10282 
審決分類 T 1 11・ 13- Z (Z11)
最終処分 成立  
前審関与審査官 巻島 豊二 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 野本 登美男
茂木 静代
登録日 2000-03-31 
登録番号 商標登録第4371923号(T4371923) 
商標の称呼 デシカント 
代理人 内野 雅子 
代理人 小橋 信淳 

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