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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 117
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 117
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 117
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 117
管理番号 1063181 
審判番号 審判1999-35748 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-16 
確定日 2002-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第2708816号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2708816号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和60年7月22日に登録出願され、「MADAME ASHLEY」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成7年7月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する登録商標
請求人の引用する登録第1289092号商標(以下「引用商標1」という。)は、「Laura Ashley」の文字よりなり、昭和48年12月25日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として同52年8月3日に設定登録されたものであり、同じく登録第1825121号商標(以下「引用商標2」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、昭和48年12月25日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として同60年12月25日に設定登録されたものであり、いずれも現に有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第25号証を提出した。
(1)引用商標の周知著名性について
1953年に、Laura Ashleyとその夫が家具調度織物類、スカーフのような小品を生産する布地の手染めを始めたことにはじまり、1954年にLaura Ashley社の先駆である会社が形成され、1956年に、リンネルの布巾の生産とともに「Laura Ashley」のラベルを用い始めた。これと共に「Laura Ashley」は、繊維製品のデザイナーの名前として知られ始め、1980年代には多くの店舗が世界中に広く急速に拡大していった(甲第4号証ないし同第15号証)。
日本においては、1969年に、京王デパートを通じて販売されるようになった(甲第2号証及び同第3号証)。
上記した活動を通じて、引用各商標は、英国はもとより、日本を含む世界各国において、請求人の業務に係る商品を示す標識として、本件商標の出願時においては既に取引者、需要者間において周知著名となっていたものである。
(2)商標法第4条第1項第8号について
「Laura Ashley」は、請求人創業者であり、著名なデザイナーの名前でもある(甲第16号証)ことから、「アシュレイ社」「Ashley」「アシュレイ」「アシュレイ夫人」としても需要者、取引者に知られていたものである(甲第17号証ないし同第21号証)。
そして、本件商標は、請求人の周知著名な商号の略称であり、かつ、デザイナーとして周知著名な「Laura Ashley」の著名な略称である「Ashley」を含むものであって、請求人の承諾を得ていない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「マダムアシュレイ」の称呼及び「アシュレイ」の称呼を生ずるものである。
他方、引用各商標は、周知著名な商標である「Laura Ashley」の略称として著名な「Ashley」の文字部分より生ずる「アシュレイ」の称呼をもって認識され、称呼されている事実等により、「アシュレイ」の称呼をも生ずるものである。
そうとすれば、両商標は、「アシュレイ」の称呼を共通にするものであり、「アシュレイ夫人」若しくは「アシュレイ」の観念を同一にするものである。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、周知著名な引用各商標の略称としても認識される「Ashley」の文字と同一の「ASHLEY」の文字を含むから、本件商標をその指定商品について使用することは、同一市場における商品であることと相俟って、商品の出所について混同を生じさせることは明らかである。
(5)商標法第4条第1項第19号について
ローラアシュレイがアシュレイ夫人といわれていることからすれば、本件商標「MADAME ASHLEY」は、著名な引用商標の名声にフリーライドしたものであり、引用商標の出所表示機能を稀釈化させ、名声を毀損させることを目的としたものといわざるを得ない。
(6)答弁に対する弁駁
被請求人は、「Ashley」なる語は、欧米人のありふれた氏の一つであると主張するが、これを裏付ける資料の提出はなされていない。
甲第3号証からも明らかなように、1985年以前において既に、欧米諸国においては、デザイナーであるアシュレイは、ローラ・アシュレイ社とともに国際的に周知となっていたものである。又、甲第3号証が1997年出版であり、これに「Laura Ashley」が著名人として紹介されているということは、生前、デザイナーとして著名であったことにより、故人となった1997年当時においても、著名であることを認めたうえでの紹介であることは疑いのない事実である。
したがって、「Laura Ashley」は、1985年以降より今日迄、女性のデザイナーの名前であるとともに「デザイナーブランド」として周知著名となっているものである。
全体として著名な商標は、略称されても、なお出所が同一であることは容易に認識できるものである。「アンドレ・クレージュ」が「クレージュ」、「イヴ・サンローラン」が「サンローラン」、「クリスチャン・ディオール」が「ディオール」、「サルバトーレ・フェラガモ」が「フェラガモ」と略称され周知著名となっていることをみても明らかである。
なお、被請求人は、第4条第1項第19号による無効の主張はできない旨主張しているが、同号が平成9年4月1日より施行とはどこにも規定されておらず、本号の適用は、何等違法なものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第4号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第8号について
「Ashley」なる語は、欧米人のありふれた氏の一つであって、「Laure Ashley」が周知著名な商号及びデザイナー名であるとしても、本件商標出願時に、日本国内において、これが「Ashley」と略称されているような事実を客観的に判断できる資料は見当たらず、「Ashley」を請求人の商号及び商標の略称であるとすることはできない。
ましてや、「Laure Ashley」を「マダムアシュレイ」として紹介されたり、使用されている事実はない。
請求人は、甲第3号証を例にあげ、1985年以前に「アシュレイ」は「ローラアシュレイ社」と共に周知であると主張しているが、甲第3号証は、「ローラアシュレイ」の略歴が紹介されているもので、本件に係る日付関係としては、日本で1985年に東京銀座で第一号店が開店したことが明記されているにすぎない。「アシュレイ」が「ローラアシュレイ」の略称として1985年以前に著名であることを明らかにしたものではない。
また、甲第3号証によると、デザイナーのローラアシュレイは、すでに1985年に故人となっている。よって、その後は、「ローラアシュレイ」は、すでに氏名としての人格的な要素が形骸化しているといえる。このような状況からは、「ローラアシュレイ」の略称として単独の「アシュレイ」が著名となることはない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「マダムアシュレイ」の称呼及び「アシュレイ夫人」の観念を生ずるものである。ありふれた欧米人の氏に「MADAME」という尊称を結合することによって初めて識別標識として機能し、商標登録を認められたものであって、これからは、「アシュレイ」単独の称呼及び観念を生ずることはない。
他方、引用商標は、いずれも「Laure Ashley」全体で一連一体に看取され識別されるものであり、その称呼は「ローラアシュレイ」であって、その観念は「デザイナーのローラアシュレイ」に他ならない。
引用商標は、その使用方法及び使用実態の上でも、「ローラアシュレイ」のフルネームのみにより、自他商品識別性を発揮するものと解されるものであって、「アシュレイ」単独の称呼及び観念を生ずると認められるような事実はどこにもない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、「ローラアシュレイ」とのみ称呼及び観念されるものであり、周知著名と認識されるに至っているのは、「ローラアシュレイ」のフルネームでのことである。ありふれた欧米人の氏の「アシュレイ」が、常に何人にも「ローラアシュレイ」を意味すると認識されているものではなく、「アシュレイ」と聞けば、「ローラアシュレイ」を看取するということもない。単に「ASHLEY」を含むからといって、全く異なる称呼及び観念の生ずる本件商標が、その商品の出所について混同を生ずることとなったりはしない。
本件商標同様に「ASHLEY」を含む登録商標が、本件商標以外にも存在することからみても明らかである(乙第2号証ないし同第4号証)。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本条文に関しては、平成8年の改正で追加となり、平成9年4月1日から施行することとなったものである。当該施行前の商標登録出願に係る登録に対しての無効の理由は従前のままであるから、昭和60年出願の本件商標に関して、本規定条文を根拠として無効とすることはできない。
請求人が周知著名であるとする引用商標と本件商標とは、上述のとおり、同一又は類似の商標とならないこと明らかであり、引用商標の出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させるようなものになり得ないことは明らかである。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号について
請求人の提出に係る甲第2号証ないし同第16号証によれば、「Laura Ashley(1925年-85年)」は、ヴィクトリア朝時代風の家庭装飾品、寝具、カーテン、洋服等のデザイナーとしてイギリスをはじめ世界各国に広く知られており、我が国においても、相当程度知られていたことを認めることができる。
しかしながら、上記デザイナー「Laura Ashley」が「Ashley」、「アシュレー」あるいは「アシュレー夫人」と略称され、又、請求人「ローラ アシュレー リミテッド」が「Ashley」、「アシュレー」あるいは「アシュレー社」と略称されて著名になっていたものと認めるに足る証拠は見当たらない。
この点について、請求人は、甲第17号証ないし同第21号証を提出して上記の如く略称され、広く知られていた旨主張している。
しかしながら、新聞、雑誌等の記事における人名や社名等の表示は、紙面の制約上、簡略にできるところはなるべく簡略な表示をもって表されていることはしばしば見受けるところであり、甲第17号証(日本繊維新聞 1985.2.2)及び同第18号証(新聞名不詳、発行日不詳)の新聞記事も記事の冒頭部分において、正式な名称である「ローラアシュレイ(社)」の表記がなされたうえで、「アシュレイ社」の略称が用いられており、かつ、「ローラアシュレイ社」であることを特定するために「L・アシュレイ店」とか「英・アシュレイ社」とも表記されている。又、甲第19号証の雑誌(Telegraph Magazine 1993.4.23)の場合も、「Laura Ashley」の表記がなされたうえで、「Ashley」の略称が用いられているものである。更に、甲第20号証及び同第21号証の雑誌抜粋(雑誌名不詳、発行日不詳)の記事中にも「ASHLEY」、「アシュレイ」の表記があるが、これも、最も重要な箇所であるカーテンやマット等の商品の価格や色、販売場所等を紹介している欄には、いずれも「ローラアシュレイ」の表示がなされている。
してみれば、これらの記事中の「Ashley」、「アシュレイ」あるいは「アシュレイ社」等の表記は、紙面構成の都合上あるいは記事の流れのなかで、略称をもって表記されたものとみるのが相当であり、このような表記があるからといって、該デザイナーあるいは請求人の略称が著名なものであったということはできない。又、甲第19号証の訳文中には「故アシュレイ夫人」の表記が見られるが、これは、本文中の「the late Mrs.Ashley」を「故アシュレイ夫人」と訳したものと認められるものであり、同号証のみをもって、「Laura Ashley」が「アシュレイ夫人」と略称されて著名になっていたものということはできない。
そして、その他の甲号証をみれば、該デザイナーの表記は、殆ど全てが「Laura Ashley/ローラアシュレイ」の一連の表記であり、甲第25号証の商品カタログにおいても、「LAURA ASHLEY」の表題のもとに各種商品が紹介されているのみであって、略称としての表示は見当たらない。却って、甲第3号証(「イギリス史重要人物101」1997年7月30日 株式会社新書館発行)によれば、「ローラ・アシュレイ」「ローラ・アシュレイ・ブランド」「ローラ・アシュレイ社」の表示とともに「ローラの手によるもので・・」「ローラは日本での第一号店を・・」「ローラの想像力を・・」「ローラのデザインに関する・・」のように「ローラ・アシュレイ」を「ローラ」と略称して表示していることを認めることができる。
以上を総合してみれば、デザイナー「Laura Ashley」あるいは請求人が「Ashley」、「アシュレー」「アシュレー夫人」あるいは「アシュレー社」と略称され、本件商標の出願時に著名であったものということはできないから、本件商標は、他人の氏名あるいは名称の著名な略称を含むものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上記した構成よりなるものであるところ、「MADAME」の文字と「ASHLEY」の文字とは外観上まとまりよく一体的に構成され、観念上も、「アシュレイ夫人」の如き一つの意味合いを把握することのできるものである。そして、これより生ずると認められる「マダムアシュレイ」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、他に構成中の「ASHLEY」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見い出せない。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然であり、該文字に相応して「マダムアシュレイ」の称呼のみを生ずるものというべきである。
他方、引用商標1は、上記のとおり、「Laura」の文字と「Ashley」の文字とを一連に表してなり、引用商標2は、後掲のとおり、構成中の文字部分である「Laura」の文字と「Ashley」の文字とは二段書きに表されているが、いずれも、「Laura」の文字と「Ashley」の文字とは、外観上まとまりよく一体的に構成されており、これより生ずると認められる「ローラアシュレイ」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。そして、通常、かかる姓名を表したものと認められる商標の場合には、格別の事情のない限り、これを一体のものとして捉えるのが自然であり、引用各商標の場合、前記(1)のとおり、「Ashley」の文字部分が広く知られている等、該文字部分のみが独立して認識されるとみるべき格別の事情は見出せない。
そうとすれば、引用各商標は、その構成文字全体をもって一体不可分の人名を表したものと認識し把握されるとみるのが自然であるから、その構成文字に相応して「ローラアシュレイ」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用各商標とは、その音構成において明らかな差異を有するものであるから、称呼において類似するものとはいえない。
また、本件商標は、「アシュレイ夫人」の観念を生ずるのに対して、引用各商標は、デザイナーとしての「ローラアシュレイ」を観念させるものであり、「ローラアシュレイ」が「アシュレイ夫人」と認識され著名であるとする証左もないから、両商標は、観念においても類似しないものである。
さらに、両商標は、外観においても、十分区別し得る差異を有するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出に係る甲号各証によれば、請求人は、引用各商標を「婦人用シャツ、ドレス、スカート、コート、帽子」などの女性ファッション衣料、カーテン、テーブルクロスなどの家庭装飾品等について使用し、英国をはじめ、欧州、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア等、多くの国々において事業を展開していたこと、我が国においても、1969年に京王デパートを通じて商品の販売を始めるとともに、1985年には、日本での第一号店を東京の銀座に開設したこと、そして、引用各商標は、請求人の業務に係る上記商品の商標として、本件商標の出願時においては既に、我が国における取引者・需要者の間においても広く知られていたものであることを認めることができる。
しかしながら、引用各商標が「Ashley(アシュレイ)」とも略称され、「Ashley(アシュレイ)」の文字部分のみをもって著名になっていたものと認めるに足る証拠はない。
してみれば、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、本件商標と引用各商標とは、前記のとおり、判然と区別し得る別異の商標であるから、これに接する取引者・需要者をして、引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品がデザイナー「Laura Ashley(ローラアシュレイ)」のデザインに係る商品、又は、請求人若しくは同人と経済的・組織的に何らかの関連がある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標と引用各商標との関係は、上記のとおりに理解されるものであるから、本件商標は、引用商標の著名性にフリーライドするものとはいえず、不正の目的があったことを認めるに足る証拠も見当たらない。
なお、商標法附則(平成8年法律第68号抄)によれば、平成9年4月1日以前の商標登録出願についても、本号の適用自体は可能なものと解される。
(5)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 引用商標2(登録第1825121号)


審理終結日 2001-10-11 
結審通知日 2001-10-16 
審決日 2001-10-31 
出願番号 商願昭60-75313 
審決分類 T 1 11・ 222- Y (117)
T 1 11・ 271- Y (117)
T 1 11・ 23- Y (117)
T 1 11・ 26- Y (117)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 義晴 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 宮川 久成
鈴木 新五
登録日 1995-07-31 
登録番号 商標登録第2708816号(T2708816) 
商標の称呼 マダムアシュレイ、アシュレイ 
代理人 五十嵐 和壽 
代理人 梅村 莞爾 
代理人 佐田 守雄 

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