• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200330345 審決 商標
審判199931384 審決 商標
取消200331101 審決 商標
取消200430916 審決 商標
取消200531137 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 104
審判 一部取消 商標の同一性 無効としない 104
管理番号 1063150 
審判番号 取消2000-30710 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-06-19 
確定日 2002-07-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2379771号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2379771号商標(以下、「本件商標」という。)は、「MAMA PAIPAI」の欧文字と「ママ パイパイ」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、平成元年10月26日に登録出願、第4類「せつけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同4年2月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
本件商標の指定商品中「歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く)」について登録を取消す。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。
2 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く)」について継続して3年以上日本国内において使用した事実がないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
3 弁駁
(1)被請求人の主張
商標権者は、平成12年10月6日付け審判事件答弁書(以下、「答弁書」という。)の第3頁第13行〜15行で、「2000年(平成12年)3月15日に本件商標である「ママパイパイ」を付した3個入りのハンドソープと化粧品のローションゼリーを山口薬局(千葉県流山市江戸川台西2の144)に委託販売している。」として、本件商標について、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標権者により、使用していると主張している。そして、本件商標の指定商品中「化粧品(薬剤に属するものを除く)」に属するとする「ローションゼリーを山口薬局に委託販売したこと」を証明するために、乙第2号証の納品書、乙第2号証の2の物品受領書、及び乙第4号証のラベルを証拠として提出している。
(2)被請求人の主張に対する反論
しかしながら、商標権者が使用したとする主張は、以下の通り、到底承服することができないものである。
(イ)まず、本件商標権者は、答弁書において、商標権者が山口薬局に納品したとするローションゼリーの瓶に貼着した「乙第4号証のラベル」をもって、本件商標を使用したと主張している。
しかしながら、本件商標の表示態様は、上段にローマ字「MAMA PAIPAI」を、下段に片仮名「ママ パイパイ」を、各々ゴシック書体で横一連に書してなる態様からなっているものである。すなわち、本件商標は、「MAMA PAIPAI」と「ママ パイパイ」を横一連に書してなる態様から成り、全6音という比較的短い称呼であるから、「MAMA/ママ」と「パイパイ/PAIPAI」とを分離分断する特別な事情がないため、唯一「ママパイパイ」の称呼を自然に生じるものである。
また、当庁においても、過去に本件商標からは、唯一「ママパイパイ」のみの称呼が生じるものであると判断した例があるため、それを以下に示すものである。商標「MAMMA/ママ」は、添付の甲第1号証乃至甲第2号証に示されるように、平成6年11月9日に商品区分第3類に属する商品「化粧品」を指定して、当庁に出願し、その後平成8年10月25日に公告され、平成9年5月23日に登録されている(登録番号3309011号)。この商標は、英文字「MAMMA」と片仮名「ママ」の2段からなる商標であり、その下段の片仮名部分からは「ママ」の称呼が生じることは明らかである。にもかかわらず、この商標が本件商標と並存して登録されたのは、当庁において、本件商標の称呼から「ママ」の称呼は生じないと判断したからに相違ない。
これに対し、乙第4号証のラベルに示される商標の表示態様は、上記ラベルの右上に、ローマ字を装飾した「mama」と「paipai」を上段と下段に分けた表示態様からなるため、かかる表示態様からは、「ママ」という称呼と、「パイパイ」という2つの称呼が発生するのが自然である。してみれば、上述のように本件商標から生じる唯一の称呼「ママパイパイ 」と、ラベル(乙第4号証)に示される商標から生じる称呼「ママ」或いは「パイパイ」とを比較するに、両商標の称呼は2音又は4音が相違するため、非類似の商標であると思われ、ましてや、必ずしも同一の称呼が発生しないため、社会通念上同一の商標でないことは明らかである。
さらに、本件商標は、上述のように、上段「MAMA PAIPAI」の直ぐ下段に、片仮名「ママ パイパイ」を書してなるものである。これに対し、乙第4号証のラベルに示される商標においては、片仮名「ママパイパイ」が、他の文字や、同上ラベルの大部分を占める女性の図形をはさんで、右下に、比較的小さく「ママパイパイ」と記載しているものである。してみれば、本件商標と乙第4号証のラベルに示される商標は、外観上も大きく異なり、社会通念上同一の商標であるとは言えないと思われる。したがって、商標権者が答弁書において本件商標を使用したと主張する証拠は、本件商標と外観・称呼が相違するため、社会通念上同一の商標でもなく、請求に係る指定商品についての登録商標の使用をしていることを証明しているとは言えず、商標法第50条第1項の規定により、本件商標登録の取消しを免れないと思われる。
(ロ)さらに、もし仮に、本件商標権者が本件商標を使用したとする乙第4号証のラベルに示される商標が、商標法第50条第1項かっこ書きに規定する「社会通念上同一と認められる商標」に該当したとしても、答弁書に添付された証拠により推認される事実は、以下に示すように、本件商標の単なる名目的な使用であって、商標法の目的とする使用には該当しないものと確信する。言うまでもなく、商標法の制度趣旨は、商標を使用した商品が流通過程におかれ、商標の出所表示機能等の諸機能が発揮されると、当該商標に業務上の信用が化体するため、この蓄積された信用を保護することにある。従って、流通過程において継続・反復して使用されない場合、業務上の信用は化体せず、或いは発生した信用も消滅するものであり、かかる商標に独占排他的権利を付与しておくのは、法の目的とするところではなく、そればかりか国民一般の利益を不当に害することとなる。
また、このことを明らかにするため、法は、保護客体たる「商標」を「業として、商品を生産等する者がその商品について使用するもの」と規定している(商標法第2条第1項第1号)。ここに、「業として」とは「一定の目的の下に継続・反復して行う行為として」の意味として解されている。しかしながら、商標権者が本件商標を使用しているとして提出した証拠は、唯一、「山口薬局(千葉県流山市江戸川台西2の144)に委託販売した。」とする一件に終始するものであり、何ら継続して本件商標を使用したという事実が示されていない。すなわち、テレビコマーシャル等の強大な宣伝媒体により、商標の一回限りの使用で、商標に信用が化体することも全くないとはいえないが、答弁書において主張されている使用事実は、
a.“千葉県流山市江戸川台西2の144”に所在する山口薬局に、
b.“サンプル品”を、
c.“委託販売”(店頭に並べて売れた分だけ金銭を徴収するという販売方法)をしただけで、
d.しかも、その数がロ一ションゼりー “10個”の委託販売したという事実だけである。
なお、答弁書においては、第3頁第19行〜27行にかけて、製造元や仕入元と思われる「株式会社ユゼ」「株式会社アクシス」、及び「多満喜美容研究所」なる法人を登場させているが、かかる記載は、本件商標権者が山口薬局に委託販売したとする主張における流通過程を、単に、製造から販売まで追って記載したにすぎない。また、答弁書では「薬用ハンドソープ」を納品したとする証拠(乙第2号証乃至乙第3号証)も添付されているが、かかる商品「薬用ハンドソープ」は「せっけん類」に属するものであり、本審判請求に係る指定商品とは、直接的に関係する商品ではない。すなわち、本件商標を使用したとして提出する証拠は、山口薬局にロ一ションゼリーを10個、委託販売をしたという行為のみである。したがって、答弁書に記載された商標の使用により、商標の保護対象たる業務の信用が商標に化体したものとは、到底考えることができず、むしろ、単に不使用による取消を免れる目的で名目的に商標を使用する行為であると言わざるを得ず、本件商標の使用と認めることはできないとするのが相当である。この点、甲第3号証として提出する「東京高判平4(行ケ)144号・東京高判平5(行ケ)168号の判決」でも、「単に不使用取消しの審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為があっただけでは、商品に関する広告に標章を付して展示又は頒布する行為には該当せず、登録商標の不使用による登録の取消しを免れない。」としている。
(ハ)そして、さらに、仮に百歩譲って、答弁書で主張される「山口薬局(千葉県流山市江戸川台西2の144)に委託販売した。」とする1回の使用が、登録商標の使用に該当したとしても、以下に示すように、答弁書における証拠だけでは、果たして当該「使用」が「事実」といえるのかさえも、疑問を持たざるを得ない。
a.まず、商標権者がローションゼリーと共に委託販売したというハンドソープの委託販売は、以下に示されるように、薬事法に違反するものである。本件商標権者は答弁書において、「この小箱に収容したハンドソープとラベルを貼着した瓶詰めのローションゼリーを本件商標権者にサンプル商品として納入し、さらに、これらを本件商標権者が発売元として上記山口薬局に委託販売したものである。」(第3頁最終行〜第4頁第3行)としている。すなわち、ハンドソープとローションゼリーを、「一緒に」委託販売したと主張している。そして、ローションゼリーと共に委託販売したとするハンドソープのパッケージとして乙第3号証を証拠として提出している。
しかしながら、薬事法59条においては、「化粧品・医薬部外品/製造申請ガイドブック/第三版(監修/厚生省薬務局審査課)」(甲第4号証)の第315頁に示されるように、『医薬部外品として承認された製品には 「医薬部外品」と記載する必要』がある。そして、乙第3号証の「薬用ハンドソープ」は、同上ガイドブック(甲第4号証)の第3頁に示される「10.薬用化粧品(薬用石けんを含む)」に属するものであり、医薬部外品に該当するものである。すなわち、乙第3号証の「薬用ハンドソープ」の容器には、「医薬部外品」の記載をしなければならないのである。一方、ローションゼリーと共に販売したという乙第3号証のハンドソープの小箱を展開させた状態の写しには、「薬用ハンドソープ」と記載されているため、このハンドソープは「医薬部外品」に該当する。にもかかわらず、この「医薬部外品」という記載が、乙第3号証の小箱のどこにも見つけることができない。したがって、本件商標権者が「医薬部外品」と記載せずに、「薬用ハンドソープ」である乙第2号証乃至乙第3号証のハンドソープを委託販売することは、薬事法に違反するものであるから不可能であり、このハンドソープと共に、ローションゼリーを委託販売するということは、通常あり得ない行為である。
また、仮に、かかる違法な商品を販売したとしても、継続・反復して販売することは不可能であり、そのような販売は、単に不使用による取消を免れる目的で名目的に商標を使用したものと言わざるを得ず、本件商標の使用と認めることはできないとするのが相当である。
b.次に、本件商標権者は、答弁書において、「株式会社アクシス・・・がサンプル商品として本件商標権者に納入したものである。」(第3頁第20行〜第22行)とし、そして、乙第2号証の3の納品書に示されるように、株式会社アクシスは、サンプル商品であるが故に、“無償”でこれを納品している。そうとすれば、かかる無償で仕入れたサンプル商品については、本件商標権者は、無償で山口薬局に納品することが至極当然の行為であると言える。また、販売の動向を調査したり、顧客の確保などを目的として配るサンプル商品の性格を考えてみても、無償で山口薬局に納品することが当然の商取引であるはずである。しかし、本件商標権者は、答弁書で「サンプル商品として納入し、さらに、これらを本件商標権者が発売元として上記山口薬局に委託販売したものである。」(第4頁第2行〜3行)として、商標権者は、無償で仕入れたサンプル商品を、山口薬局に “有償”で、販売したとしている。また、このことを裏付けるものとして、納品書(乙第2号証)及び物品受領書(乙第2号証の2)を提出しているが、この納品書等にも入金予定を9月末として、”有償“ で、委託販売したことを示している。無償で仕入れたサンプル品を、有償で委託販売するという取引形態は、通常の商取引ではあり得ない行為であり、かかる証拠は不自然極まりないものである。従って、乙第2号証の納品書及び乙第2号証の2の物品受領書と、乙第2号証の3の納品書とは、矛盾するものであり、具体的資料の裏付けを欠き、商標権者の主張には承服しかね、その使用さえも疑問を持たざるを得ないところである。
c.また、サンプル商品は、販売の動向を調査したり、顧客の確保などを目的として配るものであるため、通常、多数の小売店等に、同時期に譲渡される性格のものであり、通常の取引社会においては、千葉県流山市江戸川台西2の144に所在の山口薬局、以外にも多数配布しているはずであると思われる。特に、本件請求人の平成12年11月4日午前11時頃の調査によれば、山口薬局が住所を有する千葉県流山市江戸川台では、比較的人通りが多いのは東口であり、かかる東口に大手チェーンの「マツモトキヨシ」(間口3間半程度)が存在し、また、東口に比べて人通りの少ない西口には「ベンリー」なる早朝から深夜まで営業をしている安売薬局(間口5間程度)が存在し、千葉県流山市江戸川台では、かかる2店舗が繁盛をしている様子であった。従って、千葉県流山市江戸川台の販売の動向を調査したり、顧客の確保などを目的として、サンプル品を委託販売するのであれば、先ずこの2店舗に対して、委託販売することが自然であると考えられる。しかしながら、答弁書において本件商標を使用したとする証拠には、千葉県流山市江戸川台西2の144に所在の山口薬局に納品したとする証拠(乙第2号証)のみしか提出されておらず、その他の小売店等に納品された証拠が何ら示されていない。したがって、本件商標を事実使用したのか疑問を持たざるを得ず、もし、これらのサンプル商品が流通されたことが事実であれば、むしろ、単に不使用による取消を免れる目的で名目的に商標を使用した行為として、本件商標の使用であると認めることができないとするの相当である。
d.また、物理的にはあり得ないことではないが、上述のような2000年3月15日に仕入れたサンプル商品(乙第2号証の3)を、“仕入れた日と同日”に、千葉県流山市江戸川台西2の144に所在の山口薬局に納品したとする証拠(乙第2号証)に関しても、“仕入れた日と同日” に山口薬局に納品する緊急性があったのか否か不明であるが、通常の取引行為と比べて不自然であり、この証拠のみを提出したことにも、疑問を持たざるを得ない。
なお、本件請求人の平成12年11月4 日の午前11時頃の調査によれば、山口薬局の店内の視認できる範囲では、ラベル(乙第4号証)が貼着された「ママパイパイ/マリミネローションゼリー」なる商品は存在しない様子であったことも特記する。
e.その他、答弁書に示される証拠には疑問を生じる点が多々目に付くと言わねばならない。例えば、何故、本審判請求日より後日である “入金予定9月末”とする納品書(乙第2号証)のみを証拠として提出されたのか。何故、“委託販売”という特別の販売形態をとり、これのみを証拠として提出されたのか。また、ローションゼリーの瓶に貼着したとするラベル(乙第4号証)には、「ママパイパイ/マリミネローションゼリー」とあるのに対し、納品書(乙第2号証)の品名には「ママパイパイローションゼリー」として、何故か、「マリミネ」という記載を欠落させている。そして、ラベルの写し(乙第4号証)の最上段の左右2枚の四角からは、ラベルを剥離した跡が見当たらず、また、中下段にある4枚のラベルにも、剥離紙から剥離できる切れ目を発見できないなど、果たして、ラベル(乙第4号証)を本当に商品又はその包装に貼着したのか不明確であると言わざるを得ない。ましてや、かかるラベルの写し(乙第4号証)を本審判請求の日以前に貼着したことは証明できるものではなく、これをもって、山口薬局に納品した事実を推測することなど到底できない。
加えて、本審判請求に係る指定商品「化粧品」については、「化粧品・医薬部外品/製造申請ガイドブック/第三版(監修/厚生省薬務局審査課)」(甲第4号証)の204頁に示されるように、「製造しようとする製品についてあらかじめ製造所(営業所)所在地の都道府県知事に届け出」なければならない。そこで、該製品届書によって、山口薬局へのサンプル商品の納品の事実が根拠付けられるものではないが、もし「ママパイパイマリミネローションゼリー」なる販売名で化粧品を製造する意思があったのであれば、かかる販売名で届け出た製品届書を提出すべきである。
また、化粧品については、「化粧品/GMP解説(厚生省薬務局監視指導課編集)」(甲第5号証)の第16頁乃至第17頁に示されるように、製造管理責任者が製造記録を作成し、これを3年間保管する義務がある。そこで、該製造記録によって、山口薬局へのサンプル商品の納品の事実が根拠付けられるものではないが、もし「ママパイパイマリミネローションゼリーM」なる販売名の化粧品を製造したのであれば、本件商標権者は、かかる販売名の製造記録についても提出すべきである。
そして、もし、これらの製品届書、及び製造記録が提出されない場合は、本件商標権者が答弁書において主張している事実は無根であると思われる。
また、もし、仮に、製品届書等を提出していない商品を販売したとしても、本件商標件者には、継続・反復して販売する意思がないものと思われ、そのような販売は、単に不使用による取消を免れる目的で名目的に商標を使用したものと言わざるを得ず、本件商標の使用と認めることはできないとするのが相当である。
(3)以上検討したように、商標権者が本件商標を使用したとの主張に基づく証拠では、本件商標の社会通念上同一の商標の使用であるとは言えず、さらに、果たして、本件商標を実際に使用したのか否か疑問を持たざるを得ず、仮に、本件商標を使用したとしても、答弁書に示される使用は名目的な使用であるとするのが相当である。
そうすると、本件商標権者は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本審判請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標を使用していることを証明しないものであり、登録商標の取消しを免れるものではない。
4 第2弁駁
(1)被請求人は、平成13年2月5日付け審判事件答弁書(以下、第二答弁書という)で種々の主張をしている。この点、第二答弁書の主張には、平成12年10月6日付け審判事件答弁書(以下、第一答弁書という。)に比べて新しい証拠は何一つなく、各々の主張に対して反論することはあまりにも無意味な感があり、徒に争点がぼやけるおそれもある。結局、商標法第50条第1項の取消審判で取り消されるか否かは、a.登録商標を指定商品について使用したか否かのすぐれて具体的な事実問題であるため、商標を使用したとする客観的な証拠をもって判断されるものである。b.また、もし、商標権者が提出した証拠が信憑性のあるものであり、形式的に商標法第2条第3項各号の使用に該当した場合であっても、取消審判を免れるために名目的な使用ではないか否か、c.商標権者が提出した証拠に記載される商標が、登録商標と社会通念上同一の商標といえるか、判断されることとなる。
そこで、被請求人が提出した第一答弁書、及び第二答弁書をみるに、登録商標を化粧品に使用したという客観的事実を推認すること自体できるものではないと思慮するので、以下にこの点を説明する。
(2)まず、登録商標を使用したか否かの資料は審判請求後からでも作成することができることを考慮し、商標権者は、登録商標を審判請求前に使用したことが確かであると十分に心証が得られるように、客観的な証拠を提出する必要がある。しかし、第一答弁書の主張及びこれに添付された資料には、様々な矛盾点等が存在した。そのため、本件審判請求人は平成12年12月6日付け審判事件弁駁書(以下、第一弁駁書という。)において、第一答弁書における矛盾点等を述べたのである。
(イ)例えば、本件審判請求人は、第一弁駁書の第5頁第28行以降で、化粧品と伴に販売したとする「薬用せっけん」の販売が薬事法に違反するため、実際に販売できるものではなく、もし仮に販売できたとしても、そこには、継続して販売する意思が存在するとは判断することはできず、単なる名目的な使用であると主張した。
これに対して、被請求人は、第二答弁書の第8頁第19行以降で、「行政法規違反の手続の懈怠のみをもって本件商標の使用事実を否定すべき商標法上の規定も根拠もない。」と答弁する。しかし、商標法第50条第1項の取消審判は、現実に登録商標を使用したか否かの具体的事実を問題とするものであるため、その事実を確認するために薬事法を引き合いに出すのは、何ら不思議なことではなく、被請求人の主張の真偽を判断するためにも必要なこととなる。
すなわち、薬事法に違反する商品は現実に市場に流通することができないものであり、もし、薬事法に違反してでも販売したとするならば、被請求人は、山口薬局への委託販売以外の販売の事実や、例えばロット番号がついた商品そのものを提出するなどして、使用事実を客観性をもって証明すべきであった。にもかかわらず、被請求人が提出した第一答弁書、及び第二答弁書での主張は、唯一この薬事法に違反して販売したとする主張のみであり、第一答弁書で提出した全ての資料は全く根拠を欠くものである。
(ロ)ましてや、請求人は、第一弁駁書の第9頁第12行目以降にて、化粧品を製造したのならば、「製品届書を提出すべきである。・・・そして、もし、これらの製品届出書、及び製造記録が提出されない場合は、本件商標権者が答弁書において主張している事実は無根であると思われる。」と強く主張したが、この点についても、結局、第二答弁書において、被請求人は何らの資料も提出することはできなかった。この点、被請求人は、使用の証拠を提出しない理由について、第二答弁書の第3頁下から第7行目以降において、「本件商標のようにその使用の事実は多いものの、たまたまその使用事実を証明する証拠の収集管理が悪く、その証拠数が少なかったに過ぎない場合も多い。」という文書のみで答弁している。
しかし、いかに管理が悪かろうとも、そもそも被請求人の管理能力については、請求人の関知するところではない。被請求人の言う通り使用の事実が多く、或いは少なくとも使用する意思があったならば、「製品届書」「製造記録」「商品そのものの存在」「商品説明書」「商品を掲載したパンフレット類」など、その商品に絡んだ様々な資料があるはずである。そして、薬事法に違反していることなどを鑑みると、これらの証拠がない限り、客観的に使用した事実を推認することなど到底できず、不使用取消を免れることはできない。
(ハ)なお、その他第二答弁書で被請求人は種々の主張をしているが、その中には、専ら被請求人を誹謗することを内容とするものが見受けられ、これらは本件審判とは無関係な主張であるから、いちいち反論することは手続の趣旨に反するので、意味ある点だけ簡単に述べる。
まず、請求人は、第一弁駁書の第9頁第5行目以降で、「ラベルの写し(乙第4号証)の最上段の左右2枚の四角からは、ラベルを剥離した跡が見当たらず・・・」と第一答弁書に添付された乙第4号証の信憑性に疑問を投げかけた。これに対して、被請求人は、第二答弁書の第8頁第12行目以降で、「ラベルシートの各ラベルの各辺に定規を当てて上のラベルのみに特殊な技術でカッターにより切込みを入れてからシートから切り離し、・・・」と主張し、切り取った跡がないことについて、直接弁明を避けている。もし、本当にラベルを特殊な技術で切り取ったならば、第一答弁書に添付したラベルのカラーコピー」(乙第4号証)ではなく、実際に使用したラベルを添付すべきであり、単に文章の答弁のみをもって、客観的な事実を推認することなどできるはずもなく、被請求人の主張は虚偽であると判断せざるを得ない。また、a.第一弁駁書の第8頁第26行以降で本件審判請求人が投げかけた “何故、委託販売から約6ヶ月以上も後の入金を予定したのかの疑問”については、「・・・営業部員の心理が働いたに過ぎない。」であるとか(第二答弁書第8頁第2行目以降)、b.第一弁駁書の第8頁第16行以降で投げかけた “サンプル商品を仕入れた日と同日に山口薬局に納品した疑問”については、「営業部員がたまたま当社の茨城工場・・・に行く用件もあったので、」とし(第二答弁書第7頁第17行目以降)、c.また、第一弁駁書第7頁第24行以降で投げかけた “何故山口薬局だけにサンプルを置いたのかの疑問”に対しても、「繁盛している小売店等との販路を新たに開発し、拡大して長年の取引関係を築くことが営業上如何に至難なことかを全く知らない単なる素人の感想でしかない。」(第二答弁書の第7頁第1行目以降)として、山口薬局以外の商店にサンプル品をおく営業努力をしたとする打合せ書等の証拠も提出されることもなく、疑問に対して単に文書で反論するのみである。d.また、第二答弁書の第6頁第8行目以降で「サンプル商品は、・・・販売可能性の価格帯を探る目的もその一例であり、」と主張しているが、千葉県流山市の個人商店に10個のみ委託販売することで、本当に価格帯を調査することができるとは到底考えることができず、通常の商行為と比べると不自然極まりなく、単なる言い訳としか考えることができない。
(ニ)このように、被請求人は、第一弁駁書で投げかけた疑惑に対して、ことごとく単に文書のみをもって反論するのみであった。反論することは如何様にもできることであり、問題は、客観的な使用証拠を提出することができるか否かなのである。そして、請求人自体も被請求人が登録商標を使用した事実を聞いたことがなく、使用事実の客観的な証拠がなければ、使用を証明したことにはならず、商標法第50条第1項に基づく不便用取消を免れることはできない。このような商標登録を維持することは不当に第三者の商標選択の自由を制限するものであり、自由経済を不当に妨げるため、取り消すべきである。
(3)以上のように、被請求人が第一答弁書で提出した証拠は信憑性がなく、何ら使用の事実を裏付ける客観的根拠は何一つないが、もし仮に、商標法第2条第3項各号に掲げる使用に該当するとしても、登録商標を継続して使用しようとする意思のない商標は、業務上の信用が化体するはずもなく、これを保護することは商標法の目的とするところではないため、不使用取消を免れない。この点を明確にするために、請求人は第一弁駁書で東高判平5.11.30の判決(甲第3号証)を添付したのである。
しかしながら、結局、第一答弁書、及び第二答弁書で被請求人が主張し続けたのは、千葉県流山市に存在する山口薬局に、サンプル品を10個委託販売したという主張のみであり、これを継続的に販売したとする証拠も提出されることはなかった。また、継続して使用しようとする意思すらも、薬事法違反であること、製品届出書を提出しないこと等を考えると、推認することはできない。
このような使用については、たとえ仮に、他社である株式会社アクシスが製造したサンプル品を個人商店に10個配布して商標法第2条第3項第2号に該当したとしても、登録商標に業務上の信用が化体するはずもなく、不使用取消審判を免れるための名目的な使用であったと言わざるを得ない。従って、仮に百歩譲って、法上の形式的な使用に該当したとしても、このような使用が商標登録の取消を免れるものであってはならない。
(4)次に、被請求人は、第二答弁書の第2頁(2)a.において、「請求人ですら第一弁駁書第3頁第1段落において本件商標の称呼から「ママ」のみの称呼が生ずることなく、「ママパイパイ」と一連に称呼されるべきものであると認容されている。」とする。
この点、第一弁駁書第3頁第1段落において、審判請求人が述べたかったことと、被請求人が考えていることに違いがあると思われるため、以下に示すものである。
本件商標は、第一弁駁書に添付した甲第1号証に示した商標「MAMA/ママ」(登録第3309011号)と並存登録されていることから明らかなように、唯一「ママパイパイ」の称呼を発生させるのみである。すなわち、本件商標「MAMAPAIPAI/ママパイパイ」は、一連の表示態様であり、「ママ」若しくは「バイバイ」の称呼は生じないものである。一方、被請求人が第一答弁書で提出されたラベル(乙第4号証)は、上段に「mama」、下段に「paipai 」の態様からなり、同上ラベルからは「ママ」若しくは「パイパイ」の称呼が生ずることとなる。
そうすると、本件商標と乙第4号証に示される商標は、必ずしも、称呼・観念が同一ではなく、自他商品の識別力として同一の機能を発揮するものではないと主張したのである。そして、自他商品の識別力として同一の機能を発揮しない商標を使用することは、社会通念上同一の商標に該当するものではなく、商標法第50条第1項による不使用を免れることはできないと考える。
(5)なお、被請求人は、第二答弁書の第8頁第22行目以降において、「化粧品の一例であるローションゼリーについて記載した取引書類の一例である納品書を商品と共に山口薬局に頒布しており、これは商標法第2条第3項第7号で規定する商品に関する取引書類に標章を付する行為に該当する。」としているが、この取引書類は山口薬局に販売したとする行為に付随する行為であり、販売行為自体が上述のように客観的な根拠を欠くため、客観的に使用したことを証明する資料ではない。そして、第二答弁書では、上述のように「一例であるローションゼリー・・・一例である納品書・・・」と記載し、あたかも他に使用証拠が存在すると錯誤させるような記載があるが、被請求人は、第一答弁書に添付した資料以外の他の使用証拠を提出したことはない。
また、第二答弁書の第9頁第2行目以降で、「乙第4号証に示すラベルをローションゼリーを詰めた瓶の胸部外周面に貼着する行為自体が商標法第2条第3項第1号で規定する商品の包装に標章を付する行為に該当する。」としているが、上述のように、乙第4号証に示すラベル自体に信憑性がなく、それに、商標法第2条第3項第1号にいう包装は、未だ使用されていない包装に標章を付する場合を含まない意である。しかし、乙第4号証のラベルは作られたラベルそのものを添付するだけであって、またロット番号等の記載もなく、果たして商品に使用されたか否か不明である。従って、乙第4号証のラベルに標章を付する行為自体が商標の使用に該当するとの被請求人の主張は、全く根拠がなく、かつ論外の主張であると言わざるを得ない。
(6)以上のように、被請求人が第一答弁書、及び第二答弁書で主張する事項は、3年間のうち1度ローションを山口薬局に販売したとする主張のみであり、その販売を裏付ける客観的な証拠は何一つないと言わざるを得ない。また、仮に山口薬局に販売したとしても、共に販売したとする商品は薬事法に違反しており、また製品届書等も提出されることなく、製品を継続的に販売しようとする意思すらも認めることもできず、不使用取消審判を免れるための名目的な使用であると推認されるものである。なおかつ、唯一販売したと主張するローションの瓶に貼りつける乙第4号証のラベルの表示態様をみると、自他商品の識別力として同一の機能を発揮しない商標を使用することは、社会通念上同一の商標に該当するものではない。
従って、商標法第50条第1項による不使用を免れることはできないと考える。

第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
結論同旨の審決を求める。
2 答弁の理由
被請求人は、答弁の理由を以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)審判請求人は、本件商標が継続して3年以上日本国内において商標権者等により審判請求に係る指定商品につき使用されていないから、商標法第50条第1項の要件を充足する、として本件商標の登録の取消を請求している。
しかし、本件商標は以下に述べる通り、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標権者により、審判請求に係る商品について実際かつ具体的に使用されているので、上記審判請求は成り立たない。
(2)本件商標は乙第1号証の商標登録原簿に示すように平成4年2月28日に指定商品「せっけん類(薬剤に属するものを除く)、歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)、香料類」について登録されている。そして、乙第1号証の2の商標登録情報(詳細表示)に示すように本件商標はローマ字よりなる「MAMA PAIPAI」と片仮名よりなる「ママパイパイ」とを上下2段に併記して構成されている。この乙第1号証の2は特許庁の電子図書館(IPDL)からインターネットを介してダウンロードした本件商標に係る商標登録情報(詳細表示)の写しである。
この本件商標に対し平成12年(2000年)6月19日に商標法第50条第1項に規定する、いわゆる登録商標不便用取消審判が下記の商品について請求され、その審判請求日が平成12年(2000年)7月12日に予告登録されている。
不使用取消請求に係る商品:「第4類 歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く)」
(3)しかしながら、被請求人である商標権者は本件商標を、上記取消請求に係る商品中、少なくとも化粧品について、上記審判請求日前3月よりも前から実際に使用しているので、本審判請求は成り立たない。
(4)被請求人である本件商標権者は、乙第2号証の納品書(控)に示すように、2000年(平成12年)3月15日に本件商標である「ママパイバイ」を付した3個入りのハンドソープと化粧品のローションゼリーを山口薬局(千葉県流山市江戸川台西2の144)に委託販売している。また、この納品書(控)と一対をなす乙第2号証の2の物品受領書により、上記ハンドソープとローションゼリーが同日(3月15日)に山口薬局により受領されたことが山口薬局の受領印により証明されている。
すなわち、乙第2号証の3の納品書に示すように上記本件商標を付した3個入りのハンドソープとローションゼリーは株式会社アクシス(〒141-0031 東京都品川区西五反田1-17-6)がサンプル商品として本件商標権者に納入したものである。つまり、株式会社アクシスが上記ハンドソープをその製造元の株式会社ユゼ(秋田県鹿角市八幡平字駒林241)から仕入れると共に、上記ローションゼリーをその製造元の多満喜美容研究所(埼玉県新座市石神2一11一239)から仕入れる一方、本件商標権者の許諾を受けて、このハンドソープを3個ずつ収容し、かつ本件商標を印刷した小箱を作成すると共に、ローションゼリーを収容するための瓶に本件商標を印刷したラベルを貼着し、この小箱に収容したハンドソープとラベルを貼着した瓶詰めのローションゼリーを本件商標権者にサンプル商品として納入し、さらに、これらを本件商標権者が発売元として上記山口薬局に委託販売したものである。
(5)乙第3号証は上記3個入りハンドソープの小箱を展開させた状態の写しであり、この小箱には本件商標の「MAMA PAIPAI」の書体のみを若干変更した商標と、その商品名であるハンドソープと、製造元の株式会社ユゼと、発売元の本件商標権者であるコーシン株式会社等が明らかに記載されている。
そして、この小箱に記載されている商標は、本件商標の「MAMA PAIPAI」の書体のみを変更した商標であり、商標法第50条第1項かっこ書きにより規定する「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であって、社会通念上同一と認められる商標」に該当し、本件商標として認められるものである。よって、以下本件商標という場合には、このような書体のみを変更した社会通念上同一と認められる商標を含むものとする。
(6)そして、乙第4号証は上記ローションゼリーを収容する瓶の胴部外周面に貼着された複数枚のラベルの写しを示している。これら各ラベルは貼着自在のシールよりなり、例えば6枚のラベルを1枚の剥離紙上に剥離自在に貼着され、最上段の左右2枚の四角の枚は2枚のラベルを剥離紙から剥離した跡を示している。また、これら各ラベルには上記書体のみに変更を加えた本件商標と、その商品名であるローションゼリーと、製造元の多満喜美容研究所と、発売元の本件商標権者であるコーシン株式会社等が記載されている。このように、ローションゼリーを詰めた瓶に、本件商標を付したラベルを貼付する行為自体が既に商標法第2条第3項第1号で規定する「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。すなわち、本件商標の使用行為に該当する。
(7)以上説明したように本件商標権者は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標を不使用取消請求に係る商品について実際かつ具体的に使用しているから本件商標は商標法第50条第1項には該当するものではなく、本審判請求は成り立たない。
3 第2答弁
(1)請求人の平成12年12月6日付提出に係る審判事件弁駁書(以下第1弁駁書という)に対し、次の通り答弁する。
(2)第1弁駁書の第2頁以下の(2)(イ)において、請求人は、「本件商標と乙第4号証のラベルに示される商標とは、外観上も大きく異なり、社会通念上同一の商標であるとは言えないと思われる。」と主張されているが、上記乙第4号証のラベル(以下本ラベルという)には、第1弁駁書の第3頁第5段落で請求人も認容されているように「女性の図形をはさんで右下に、比較的小さく「ママパイパイ」と記載しているものである。この片かな書の「ママパイパイ」は本件商標の「mama paipai」の称呼として、この「mama paipai」の下段に併記されているものであるから、本件商標と同一性を有する。すなわち、本ラベルには本件商標が明らかに記載されている点が証明されている。
したがって、請求人が指摘されているように商標法第50条第1項かっこ書で規定する「社会通念上の同一性」を論ずる必要性は本来全く存在しないが、本ラベルに記載されている本件商標の「mama paipai」については上記「社会通念上の同一性」を備えていることは明白であるので、以下この点について述べる。
a.本ラベルには「mama」と「paipai」が上下2段で併記されているが、このように上下2段で併記されている商標の場合にはその上段部と下段部とに分離すべきであるとする審査基準も合理的根拠もないうえに、請求人ですら第1弁駁書第3頁第1段落において本件商標の称呼から「ママ」のみの称呼が生ずることがなく、「ママパイパイ」と一連に称呼されるべきものであると認容されている。
b.「mama」と「paipai」は、その周囲の記載に対して比較的大きく、かつ、その周囲の比較的小さい文字列からなる記載とは十分なスペースを置いて上下2段で近接して併記されているうえに、同形,同大,同書体,同色で一連一体に表示されている。すなわち、「mama paipai」を構成する全ローマ文字は全て紺色一色で表示されているうえに、重なり合う部分の輪郭を白線により縁取りをしてその重なり合う部分を明確に仕切った全体に丸みを帯びた特殊な書体で統一し、さらに、「mama」と「paipai」とを上下に近接させて配置することにより一体感を持たせ、周囲の小さい文字列からなる記載に対して一塊の存在感を強く印象付けている。
c.一般に長い称呼や綴りからなる商標を本ラベルのように比較的小さいスペースで表示する場合には本件ラベル表示のように上下2段で表示する等同一性を害しない形態で表示することは現実の取引において従来より行なわれている。したがって、本ラベル表記の「mama paipai」は本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当する。
(3)第1弁駁書第4頁の(ロ)において、『本件商標の使用は単なる名目的な使用であって』、『商標権者が本件商標を使用しているとして提出した証拠は、唯一、「山口薬局(千葉県流山市江戸川台西2の114)に委託販売した。」とする一件に終始するものであり、何ら継続して本件商標を使用したという事実が示されていない。』と述べられているが、この主張こそ商標法第50条第1項で規定する『継続して3年以上日本国内において登録商標を使用する』の意味を全く理解していないと言わざるを得ない。
すなわち、特許庁編工業所有権法逐条解説(第14版第1085頁)にも記載されているように『「継続して」であるから、3年間のうち1度でも使用の事実があれば本項(第50条第1項)の適用はない。』のであるから、本件商標の使用事実の証明が3年間のうち1度であっても登録商標の使用として当然に認められるものであり、その場合は第50条第1項の適用がないのは明白である。
また、本件商標の場合、その使用事実を証明する証拠が必ずしも多くないのは認めるが、そもそも商標の使用はその使用の事実を証明する証拠を収集するために行なわれるものではなく、営業ベースで行なわれるものであるから、本件商標のようにその使用事実は多いものの、たまたまその使用事実を証明する証拠の収集管理が悪く、その証拠数が少なかったに過ぎない場合も多い。しかも、第1弁駁書第4頁第6段で請求人目身でさえも『テレビコマーシャル等強大な宣伝媒体により商標の1回限りの使用で商標に信用が化体することも全くないとは言えない』と認めているように商標の使用事実の証明は回数で左右されるものではないはずである。また、商標法には、使用証拠数が少ない場合には商標の使用事実があるにも拘らず、その商標の使用の事実を否定してもよいとする規定も根拠もなく、仮に商標使用の事実を否定してその登録を取り消すのであれば、それこそ商標法第50条の規定の趣旨に反すると言わざるを得ない。
(4)第1弁駁書第5頁第2段落には『製造元や仕入元と思われる「株式会社ユゼ」 、「株式会社アクシス」および「多満喜美容研究所」なる法人を登場させているが』と記載して、あたかもこれら法人が架空の存在であるが如き表現をしているが、これは偏見と予断に満ちた主張であると言わざるを得ない。けだし、これら法人には乙号各号証において住所まで明記しているのであるから架空であるか否かの証明は容易であり、わざわざ山口薬局の店内まで赴いた請求人であってみれば、その架空であるとする証明は極めて容易であったはずである。しかしながら、これら法人は実在するから架空であることを証明することはできなかったに過ぎない。
(5)第1弁駁書第5頁第2段落にて、答弁書(第1答弁書)には薬用ハンドソープを納品したとする乙第2号証ないし第3号証も添付されているが、この薬用ハンドソープは本審判請求に係る指定商品とは直接的に関係する商品ではない旨述べているが、この点は本被請求人ももとより承知している。これは本件審判請求に係る化粧品の一例であるローションゼリーを被請求人が山口薬局に委託販売したという事実を証明する納品書と物品受領書の取引書類にハンドソープが共に記載されているから共に説明したに過ぎない。したがって以下、ハンドソープについての反論は割愛する。
(6)第1弁駁書第5頁第4段落にて、単なる名目的な商標の使用により登録商標を不使用により取り消したとする判決例として「東京高判平4(行ケ)144号・東京高判平5(行ケ)168号の判決(甲第3号証)」(以下、本判決例という)を挙げているが、本判決例は商標権者による登録商標の使用行為が平成8年改正法第50条第3項で規定する、いわゆる「駆け込み使用」に該当する行為に対して審理されたものであり、「駆け込み使用」ではない本件商標の使用行為とは全く比較対象とはならないものであり、かような請求人の主張は徒に本件審判審理の混乱と遅延を招くに過ぎない。以下、この点について述べる。
a.本判決例の商標権者は、商標法第50条不使用取消審判の請求人(以下単に請求人という)から審判対象の登録商標の譲渡交渉を平成2年6月6日に受け、この際、この譲渡交渉が不成立の場合は不便用取消審判を請求する旨通知され、当該審判請求日の平成2年7月5日後の平成2年7月16日に登録商標「VUITTON」の広告を日本工業新聞に掲載頒布したものであり、この広告の掲載頒布は平成8年改正法第50条第3項規定の駆け込み込み使用」に該当する。これに対し本件商標については本件審判請求人からの譲渡交渉は全く無く、よって譲渡交渉の不成立の場合には不使用取消審判を請求する旨の通知も当然無かった。しかも、本件商標の商標権者による使用日は平成9年3月15日であり、不便用取消審判請求日の平成12年7月12日よりも前であるから「駆け込み使用」には該当しない。
b.また、上記本判決例では、商標権者による登録商標の使用行為が新聞広告の掲載頒布であるが、その広告方法が『5種類の登録商標と13種類の商品を雑然と並べただけでどの商品にどの商標が付されるべきものか、直ぐに理解するには困難を伴うことが認められる(甲第3号証7/10ページ、第6段落)』ものであって、改正前商標法第2条第3項3号にいう商品に関する広告に標章を付して展示または頒布する行為には該当しないと認定された行為である。これに対し本件商標は乙第2号証、第2号証の2、第2号証の3および第3号証に示すように取引書類において登録商標「mamapaipai/ママパイパイ」を化粧品の一例であるローションゼリーについて使用していることは明白であり、登録商標とその使用商品との対応関係が1対1で対応している。このために、上記本判決例の商標のように『どの商品にどの商標が付されるべきものか、すぐに理解するには困難を伴う』ものでもない。
さらに、本件商標と本判決例の登録商標との相違点は種々あるが、本判決例が本件審判に対して何らの参考にもならないので、以下、その他の相違点の説明は割愛する。
(7)第1弁駁書第7頁11)の第2段落では『無償で仕入れたサンプル商品については、……無償で山口薬局に納品することが当然の商取引であるはずである。』と述べ、さらに同第4段落において、『無償で仕入れたサンプル品を、有償で委託販売するという取引形態は、通常の商取引ではあり得ない行為であり、』とまで極論している。
しかしながら、サンプル商品は、すなわち、委託販売品は販売動向の調査や顧客の確保のみを目的としたものではなく、種々の目的があり、例えば販売可能の価格帯を探る目的もその一例であり、その為に敢えて価格を付する場合もあり、極めて自然な取引行為である。また、『無償で仕入れたサンプル品を有償で販売するという取引形態は、通常の商取引ではあり得ない行為であり』という発想は単に道徳的に許せないという商取引に無縁な素人の発想である。商人としては無償で仕入れた商品を有償で販売することこそ利益の極大化を図り得るものであり、また、この委託販売品を無償で提供した株式会社アクシス側もいわゆる損をして儲ける商法を実践したに過ぎず、このローションゼリーの売込みに成功すれば、以後株式会社アクシスはこの商品を有償にて被請求人に継続的に提供することにより取扱商品の拡大を図ることができ、それによる利益確保の道も開けるからである。こうした売込みは一般に取引業界では珍しいことではない。
(8)さらに、本件請求人の商取引に関する素人ぶりは第1弁駁書第7頁c.においても遺憾なく発揮されており、長年会社経営をしているとは到底考えられない発想ないし感想を披瀝されている。すなわち、請求人は平成12年11月4日午前11時頃に上記山口薬局へ実地に赴いており、たいして繁盛しているようには見えない山口薬局なんかにサンプル商品を委託販売せずに、その近くのチェーンの「マツモトキヨシ」(間口3間半程度)や安売薬局の「ベンリー」(間口5間程度)に『サンプル商品を委託販売することが自然であると考えられる。』とまで述べられている。この発想は商品一般は商取引の有無に拘らず、何処の小売店においても簡単に販売して買うことができ、商品の委託販売もどの小売店によっても簡単に行なうことができると考える商取引に無縁な素人の発想ないし感想であると言わざるを得ない。繁盛している小売店等との販路を新たに開発し、拡大して長年の取引関係を築くことが営業上如何に至難なことかを全く知らない単なる素人の感想でしかない。
(9)第1弁駁書第8頁d.にて、『2000年3月15日に仕入れたサンプル商品(乙第2号証の3)を、“仕入れた日と同日”に千葉県流山市江戸川台西2の144に所在の山口薬局に納品する緊急性があったか否か不明であるが、通常の取引行為と比べて不自然であり、』と述べているので、この点について以下述べる。
委託販売品の仕入れ先である株式会社アクシスの所在は乙第2号証の3の納品書に記載されているように東京都品川区西五反田1-17一6であり、東京都台東区駒形1丁目2番4号所在の被請求人の事務所には道路の渋滞状態により若干異なるものの通常自動車で約30分程度の行程であり、委託販売品は当日の午前中に被請求人に納入されている。
そして、当日山口薬局担当の営業部員がたまたま当社の茨城工場(茨城県新治郡玉里村大字栗又四ヶ2395)に行く用件もあったので、当日午後1時頃この営業部員が被請求人の事務所を自動車で出発し、午後2時頃に山口薬局に到着し、ここで委託販売品を乙第2号証で示す納品書と共に頒布してから約1時間程度で茨城工場に到着したものであり、全く緊急性がなく、極めて自然に仕入れ日と同日に委託販売品を山口薬局に搬送したに過ぎない。さらに、d.第2段落にて 「なお、本件請求人の平成12年11月4日の午前11時頃の調査によれば、山口薬局の店内の視認できる範囲では、ラベル(乙第4号証)が貼着された『ママパイパイ/マリミネローションゼリー』なる商品は存在しない様子であったことも特記する。』と述べているが、これは単なる感想に過ぎず、証拠により何らも証明されているものではなく、徒らに争点を増やして審理を遅らせるに過ぎない。
(10)以下、第1弁駁書第8頁e.以下で述べられていることに対して順次答弁する。
a.委託販売の “入金予定9月末”は、委託販売の期間を単に6ヶ月間に限定したからであり、6ヶ月程度あれば委託販売品の販売動向等がある程度分析可能であると考えたからであり、委託販売品に対して被請求人が取り組む姿勢が他者から必ずしも熱心に見えず消極的に映るのは、化粧品は被請求人の主力製品ではないし、単に他社(株式会社アクシス)からの売込みに応じただけという担当営業部員の心理が働いたために過ぎない。
b.一般に、納品書等の取引書類は商取引の迅速性により商品名を簡略化することはまま見られることであり、特に商標名が長いときにはその一部を省略することがあり、「マリミネ」記載の欠落もその省略例の一例に過ぎない。
c.乙第4号証のラベルのシートは剥離紙上に剥離自在に貼着された2枚重ねの状態で6つのラベルを所定の間隔を置いて3行2列で印刷したものであり、このシートの最上段左右2枚の四角枠がラベルをシートから切り取り、かつ剥離紙から剥離した跡である。すなわち、ラベルシートの各ラベルの各辺に定規を当てて上のラベルシートのみに特殊な技術でカッターにより切込みを入れてからシールから切り離し、各ラベルを剥離紙から剥離したものであり、ラベルシートには予め切り目を入れていないものである。
d.仮に薬事法上必要な届出等の手続を懈怠して行政法規に違反したとしても、かかる手続の懈怠のみをもって本件商標の使用事実を否定すべき商標法上の規定も根拠もない。
(11)以上第1弁駁書の全ての主張に対し反論し、被請求人の主張の正当性を主張したが、いずれにしても、本商標権者は乙第2号証に示すように、本件商標の「ママパイパイ」を審判請求に係る化粧品の一例であるローションゼリーについて記載した取引書類の一例である納品書を商品と共に山口薬局に頒布しており、これは商標法第2条第3項第7号で規定する商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為に該当する。すなわち、本件商標の使用行為に該当することは明らかである。
また、乙第4号証に示すラベルをローションゼリーを詰めた瓶の胴部外周面に貼着する行為自体が商標法第2条第3項第1号で規定する「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。すなわち本件商標の使用行為に該当する。また、この「ママパイパイ」のラベルをローションゼリーの瓶に既に貼着してある商品状態で株式会社アクシスが被請求人に納付した日が乙第4号証の3の納品書の日付で示すように平成12年3月15日であるから、遅くともこの平成12年3月15日の前には本ラベルをローションゼリーに貼着しているはずであるから、遅くともこの日が本件商標の使用日であることは明らかである。
(12)以上説明したように本件商標権者は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標を不使用取消請求に係る商品について実際かつ具体的に使用しているから本件商標は商標法第50条第1項には該当するものではない。
4 第3答弁
(1)請求人の平成13年7月30日付提出に係る審判事件弁駁書(以下第2弁駁書という)に対し、次の通り答弁する。
(2)請求人は、上記第2弁駁書において種々主張されているが、その主張は前回(平成12年12月6日付提出)の弁駁書(以下、第1弁駁書という)と、殆ど同じ主張の単なる繰返しであり、被請求人の前回(平成13年2月5日付提出)の答弁書(以下、第2答弁書という)に対する主張に対しては殆ど反論されておらず、空疎な主張を繰り返しているに過ぎない。
(3)例えば、乙第4号証で示す本件商標のラベルの商標法第50条第1項かっこ書きで規定する「社会通念上の同一性」について、請求人はその第2弁駁書第7頁第4行以下において、上記第1弁駁書の主張を次のように繰り返している。 『すなわち、本件商標「MAMAPAIPAI/ママパイパイ」は、一連の表示態様であり、「ママ」若しくは「パイパイ」 の称呼は生じないものである。一方、被請求人が第一答弁書で提出されたラベル(乙第4号証)は、上段に「mama」、下段に「paipai」の態様からなり、同上ラベルからは「ママ」若しくは「パイパイ」の称呼が生ずることとなる。そうすると、本件商標と乙第4号証に示される商標は、必ずしも、称呼・観念が同一ではなく、自他商品の識別力として同一の機能を発揮するものではないと主張したのである。
そして、自他商品の識別力として同一の機能を発揮しない商標を使用することは、社会通念上同一の商標に該当するものではなく、商標法第50条第1項による不使用を免れることはできないと考えられる。しかし、被請求人は、本件商標「MAMAPAIPAI/ママパイパイ」は一連に表示されるものであり、「ママ」と「パイパイ」とに分離し得るものであると、主張したことはもとよりない。むしろ、被請求人は、「MAMA」と「PAIPAI」を2段併記したからといって、「MAMA」と「PAIPAI」とに分離すべきであるとする審査基準も合理的根拠も無いと主張しているのである。
(4)さらに、請求人は、その第2弁駁書第4頁(ハ)において、第1弁駁書第9頁第5行以下の主張と同様に、次のように再び繰り返している。
『これに対し、被請求人は、第二答弁書の第8頁第12行目以降で、「ラベルシートの各ラベルの各辺に定規を当てて上のラベルのみに特殊な技術でカッターにより切込みを入れてからシートから切り離し、・・・」と主張し、切り取った後がないことについて、直接弁明を避けている。』しかし、被請求人は、『切り取った後がないことについて、直接弁明を避けている。』事実は全くなく、この第2弁駁書よりも前に提出した第2答弁書第8頁c.において、既に『このシートの最上段左右2枚の四角枠がラベルをシートから切り取り、かつ剥離紙から剥離した跡である。』と主張している。また、『このシートの最上段左右2枚の四角枠』の枠線の大きさについては、その縦が約70mm、横が約65皿であり、その中,下段のラベルの大きさと適合していることは明らかである。すなわち、『このシートの最上段左右2枚の四角枠』がラベルの切り取り跡であることは自明である。
このように被請求人が請求人の全主張に対して全て反論しているにも拘らず、その反論に対して再反論できずに、審判請求時の主張を単に繰り返しているに過ぎない。
(5)請求人は、被請求人提出の証拠の成立性を争うために長年会社経営を行なっているとは思われないような経営に素人の発想を前提とした主張を展開する等、牽強付会の説を展開するの余り被請求人を誹謗しておきながら、今度は請求人が被請求人に誹謗されていると責任転嫁を図っているが、如何なものであるか。
そもそも請求人が被請求人提出の証拠の成立性を争う背景には、被請求人と請求人との間で1997年7月1日締結した購買基本契約書(乙第5号証)についての錯誤に基づく偏見と予断がある。
この購買基本契約は、その乙(被請求人)が甲(請求人)に対し、その製造委託品等をOEM(相手先ブランド)供給することを約定した点を骨子としたものである。
この購買基本契約書では、その第23条(類似品の販売)において、『乙(コーシン株式会社:被請求人)は、甲(ピジョン株式会社:請求人)による製造委託品と同一または類似する製品を第三者に販売する場合は、予め甲に申し出てその承諾を得るものとする。』と規定されており、甲(請求人)は乙(被請求人)から類似品の販売について承諾を求められていないから、乙は類似品を販売できないものであると誤解している。
そして、乙は類似品を全て販売できないから乙の登録商標も使用できない筈であると誤解し、今回標章「MAMAPAIPAI/ママパイパイ」に係る本件商標(登録第2379771号)のみならず、商標登録第2368002号についても、3件の商標登録不使用取消審判(審判番号2000-30710号:本審判、2000一30711号、2000一30709号)を請求し、現在特許庁に係属中である。上記購買基本契約書は、上記審判番号2000-30710号の不使用取消審判において請求人側から甲第6号証の1として提出されたものである。
しかしながら、この購買基本契約書の第23条但書において『ただし、乙の規格品(標準品)についてはこの限りではない。』と規定しており、乙である被請求人の規格品(標準品)については甲(請求人)の承諾を得ることなく、第三者に自由に販売することができることが規定されているのである。
すなわち、被請求人は、自己の規格品を請求人(甲)の承諾を得ずに第三者に販売した場合でも、この第23条に違反することはないのである。つまり、「基本契約書第23条により被請求人は本件商標をその指定商品については使用することができない。」とする請求人の予断は単なる錯誤でしかない。
請求人のこれのまでの殆どの主張はこの錯誤を前提にした偏見と予断に満ちた主張であり、被請求人が提出した証拠の成立性について種々の疑義を提出しているものの、結局、請求人は、被請求人側の本件商標の使用を証明した乙第2号証〜乙第4号証の成立を否定し得なかった。
確かに被請求人が提出した本件商標の使用証拠の点数は必ずしも多いとはいえないかも知れないが、これも全て真正の証拠であるから提出しているのであり、請求人が主張されているが如き偽造であれば、もっと直接的かつ具体的に商標の使用を証明する証拠を提出できた筈である。
しかし、いずれにしても、これら真正の証拠により遅くとも本件審判請求登録日(平成12年7月12日)前の3年以内の平成12(2000)年3月15日には本件商標を使用している事実は証明されている。
(6)そして、被請求人の本件商標の使用の継続の意思については、本件審判における請求人側の本件商標取消の攻撃に対して相当な時間と費用を厭わずに第1〜第3答弁書を提出して本件商標の使用を証明した事実によっても証明され得る。これは、本件商標と同一標章の他の2つの商標不使用取消審判(審判番号2000-30709号、2000一30711号)についても、商標の使用証明を十分に行なうことにより、これら商標の使用継続の意思の存在が汲み取られるものと確信するものである。
(7)いずれにしても、商標法第50条で規定する商標不使用取消審判においては、特許庁編工業所有権法逐条解説(第14版1085頁)にも記載されているように、『「継続して]であるから3年間のうち1度でも使用の事実があれば本項(第50条第1項)の適用はない。』のである。そして、被請求人は乙第2号証に示すように、本件商標の「ママパイパイ」を審判請求に係る化粧品の一例であるローションゼリーについて記載した取引書類の-例である納品書を商品と共に山口薬局に頒布しており、これは商標法第2条第3項第7号で規定する商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為に該当する。すなわち、本件商標の使用行為に該当することは明らかである。また、乙第4号証に示すラベルをローションゼリーを詰めた瓶の胴部外周面に貼着する行為自体が商標法第2条第3項第1号で規定する「商品の包装に標章を付する行為」に該当する。すなわち本件商標の使用行為に該当する。また、この「ママパイパイ」のラベルをローションゼリーの瓶に既に貼着してある商品状態で株式会社アクシスが被請求人に納付した日が乙第4号証の3の納品書の日付で示すように平成12年3月15日であるから、遅くともこの平成12年3月15日の前には本ラベルをローションゼリーに貼着しているはずであるから、遅くともこの日が本件商標の使用日であることは明らかである。そして、この使用日(平成12年3月15日)は本件審判請求登録日(平成12年7月12日)前の3年以内であることも明らかである。
(8)以上説明したように本件商標権者は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標を不使用取消請求に係る商品について実際かつ具体的に使用しているから本件商標は商標法第50条第1項には該当するものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証を検討するに、次の事実が認められる。
乙第2号証は、「ママパイパイハンドソープ3個入り20個」と共に「ママパイパイローションゼリー10個」を平成12年3月15日付けで請求外「山口薬局」に納品したとする被請求人(商標権者)の納品書控えの写しである。
乙第2号証の2は、「ママパイパイハンドソープ3個入り20個」と共に「ママパイパイローションゼリー10個」を受け取ったとする平成12年3月15日付けの被請求人(商標権者)に対する請求外「山口薬局」の物品受領書の写しである。
乙第2号証の3は、「ママパイパイハンドソープ3個入り20個」と共に「ママパイパイローションゼリー10個」を納品したとする平成12年3月15日付けの被請求人(商標権者)に対する請求外「株式会社アクシス」の納品書の写しである。
乙第3号証は、3個入りハンドソープの小箱の展開状態の写しである。
乙第4号証は、ローションゼリーのラベルの写しである。
2 以上の事実を総合すれば、少なくとも、本件審判請求の登録前3年以内に該当する平成12年3月15日に、本件商標の商標権者である被請求人によって、その取消に係る指定商品中の化粧品「ローションゼリー」について、本件商標と社会通念上同一の「ママパイパイ」が使用されたものである(乙第2号証及び同第2号証の2)と認められ、これに反する事実はない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、請求に係る指定商品について、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-05-28 
結審通知日 2002-05-31 
審決日 2002-06-11 
出願番号 商願平1-121451 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (104)
T 1 32・ 11- Y (104)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 宗一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 米重 洋和
柳原 雪身
登録日 1992-02-28 
登録番号 商標登録第2379771号(T2379771) 
商標の称呼 ママパイパイ、ママ、パイパイ 
代理人 岡▲崎▼ 信太郎 
代理人 波多野 久 
代理人 新井 全 
代理人 関口 俊三 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ