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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 036 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 036 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 036 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 036 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 036 |
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管理番号 | 1063142 |
審判番号 | 審判1999-35329 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-09-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-06-30 |
確定日 | 2002-06-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4097161号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4097161号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年6月29日に登録出願され、「SHINAGAWA INTER CITY」及び「品川インターシテイ」の文字を二段に横書きしてなり、第36類「プリペイドカードの発行,クレジットカード利用者に代ってする支払代金の精算,預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,当せん金付証票の発売,企業の信用に関する調査,慈善のための募金」を指定役務として、同9年12月26日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第128号証を提出している 1 請求人が引用する商標 「本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第8号、同第7号、同第15号及び同第19号の規定に該当し、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効にすべきである。」として、請求人が引用する商標は、「インター・シティ」、「インターシティ」、「INTER CITY」、「INTER・CITY」及び「インター・シティ株式会社」の文字を書してなるものであり、「建物の管理、建物の賃借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介、建物又は土地の情報の提供」等を使用役務とするものである。 2 本件商標が出願された経緯及び該商標がどのような状態で使用されているのかの事実関係について (1)請求人は、「インター・シティ株式会社」であり、当該会社は、本店を東京都港区麻布十番三丁目6番10号に置き、昭和61年6月19日に株式会社として商号登録している。 これに対して本件商標の登録出願人及び権利者である興和不動産株式会社(以下「被請求人」という)は、東京都港区西麻布四丁目12番24号に本店を構え、昭和27年10月15日に設立されたものである。 更に、被請求人の関連会社として、平成9年1月20日に東京都港区西麻布四丁目12番24号に「品川インターシティマネジメント株式会社」が設立され、当会社は、被請求人の役員が一部役員として参画し、「品川インターシティ」関連の業務を目的として設立された会社である。 請求人及び被請求人は、同一地域において、それぞれの定款(甲第2号証、同第3号証)に示すとおり、ともに不動産関係業務を行っており、請求人と被請求人とは、お互いに同一業務を行う会社として、熟知しているところである。 上記お互いに熟知している事実は、下記に述べる不動産売買契約書(甲第6号証)の当事者であること、或いは大手の不動産販売の情報誌「AT HOME NETWORK MEMBER’S LIST」(平成2年1月発行 発行 アットホーム株式会社)のリストの13-12の港区欄に「インター・シティ(株)」と「興和不動産(株)営業第四部」と両者が併記されているように、同情報誌の会員であり、お互いに不動産物件の情報を交換し合っていること等よりも明かである。(甲第5号証) (2)請求人と被請求人とは、上記の通り、単に同一地域で同一業務を行う会社というだけではなく、当時、売主とその媒介業者という立場で、取り引きもあり、両者は同一契約書に署名、捺印しているところである。(甲第6号証) この不動産売買契約書の契約に至る経過は、(a)この契約書締結の数カ月前から、不動産の情報が流れる、(b)契約の数日前に契約の内諾がある、(c)平成7年11月30日買付証明書を取り交わす、(d)平成7年12月6日契約(担当、興和不動産株式会社不動産営業第2部次長 伏見泰典)、(e)平成7年12月7日残金の決済を行う(担当、興和不動産株式会社不動産営業第2部部長 取締役 和田康彦、同次長 伏見泰典)である。この契約の当事者は著名人であるし、この契約には上記の通り、被請求人の役員の和田康彦取締役も立ち会っている。 (3)本件商標の使用場所 住宅新報の平成10年11月20日の紙面によれば「・・品川駅の東口の新しい顔として、・・建物は地上32階建てなど超高層棟3棟と低層部、ホール棟で構成され、延べ床面積は33万7千平方メートル、2階レベルに位置するスカイウェイが各棟を結びながら品川駅に直結、低層部の商業ゾーンには約30の物販や飲食店が入居する。ホールはセミナーや展示会などの・・運営は品川インターシティマネジメント(株)が担当する。品川駅周辺はインターシティを皮切りに・・」等と記載され、それらの開発地域を総称して「品川インターシティ」(港区)とか、「インターシティ」として使用している。(甲第7号証) また、日本経済新聞の平成10年12月2日の紙面によれば「品川インターシティ誕生」が全面広告として記載されている。(甲第8号証) 更に、産経新聞の平成10年12月2日の紙面によれば「インターシティ」のオープンの記事が記載されている。(甲第9号証) 被請求人は、上記開発地域に於いて、本件商標を使用しているが、この不動産開発地域は、その一部が品川区に位置しているものの、そのほとんどは東京都港区港南2丁目である。上記甲第7、8、9号証にもそのように記載されている。 本件商標の「SHINAGAWA」とか「品川」は、品川駅のそばを意味しているものであり、品川区を意味しているものではない。 ちなみに、品川駅は港区に位置し、その近隣の品川税務署、品川北埠頭公園、品川プリンスホテル、品川ボーリングセンター等は、すべて港区内であるし、港区に位置する会社も、例えばコクヨ(株)東京品川オフィスのようにして品川を使用している。 (4)本件商標の使用方法 本件商標は「SHINAGAWA INTERCITY/品川インターシティ」であるが、甲第10号証のように品川を削除し「INTER CITY」として使用したり、また、甲第11号証のように「SHINAGAWAINTERCITY」として、SHINAGAWAの文字を小さくして使用したり、更にSHINAGAWAとINTERCITYとの文言の背景の色を赤と黒とに色分けして使用している。(甲第12号証) また、上記のように、文字の大きさを変えるだけでなく、甲第13号証のように文字の大きさを変えるのに加えて文字の色も変えており、品川をその開発地域の地名であることを認識させ「INTERCITY」の標章を取引者及び需要者に強く印象付けさせている。 3 引用商標が需要者の間に広く認識されていた事実について (1)業者間及び需要者を対象として頒布されたチラシより 甲第14号証ないし同第19号証のチラシは、昭和63年から平成5年において情報公開した不動産物件の広告であり、不動産物件広告のほんの一例を示したものであるが、この広告は、後述するアットホーム株式会社を通じて被請求人を含めた不動産業者に配布されたものである。このようにして、継続的に不動産業者間或いは需要者に不動産情報を提供している。そしてそれらチラシには全て「インターシティ」なる請求人使用商標が記載されている。 (2)一般住宅に新聞の折り込みチラシとして頒布された広告より甲第20号証は、平成4年11月に完成する新築高級賃貸マンション「シャトー・デ・エスポワール麻布」の広告である。 上記不動産物件の広告にも、「インターシティ」なる請求人使用商標が記載されている。 この広告は、新聞の折り込みチラシとして各家庭に配布されたものであり、直接需要者が見ることのできる広告である。 (3)本件商標の出願以前に作成頒布した請求人の会社の営業案内書よりこの営業案内書は、当該会社の宣伝として本件商標の出願以前に、不動産業者間或いは需要者に広く頒布されたものである。当該営業案内書には、資本金500万円と記載されている。当該会社は昭和62年10月に資本金1000万円に増資している。これは、甲第21号証の登記簿の写しより明かである。従って、本件営業案内書が本件商標の出願以前に作成され、配布されたことが明白である。 その表紙及び裏面に「INTER・CITY」なる請求人使用商標が記載され、内側の2頁目にも「INTER・CITY」なる請求人使用商標が単独で記載されている。(甲第22号証) (4)同業者の情報誌より 上記の通り、不動産販売の情報誌「AT HOMENETWORK MEMBER’S LIST」(平成2年1月発行 発行:アットホーム株式会社)のリストの13-12の港区欄には「インター・シティ(株)」と「興和不動産(株)営業第四部」とが併記され、供に会員になっている。(甲第5号証) この不動産情報会社は、その会員相互に不動産の物件情報を送ることにより成り立っている会社であり、多数の会員が参加している。 (5)挨拶状より 甲第23号証は、請求人が「インター・シティー株式会社」を設立した時の挨拶状である。この挨拶状は、昭和61年7月に印刷し、約500名に投函している。また、その文面から当会社をスタートした時の状態が判断できる。その文中、不動産総合商社として会社を設立した趣旨が記載されている (6)年賀状より 甲第24号証は、1987年の年賀状の文面である。ここには、A Happy New Year l987と記載されていると同時に「INTER CITY」と大きく印刷されている。これも上記同様昭和61年の末に印刷し、約500名に投函している。 会社の出す年賀状は、挨拶の役割の外、広告機能をも兼ねているものであり、多数の需要者に行き渡る。 (7)封筒より 甲第25号証は、封筒の表面である。ここには「REALESTATE INTER CITY」と記載されている。この「REALESTATE」は会社設立当初より使用している文言である。この文言は前記1987年の年賀状にも記載されている。 また、TEL:456-3941 FAX:454-7696と記載されている。このFAX番号は請求人が以前に使用していたものであること、東京の局番が4桁となったのは1991年であること等を勘案すると、明らかに本件商標が出願される前に作成された封筒であることが判断できる。 封筒はその目的からして、多目的に且つ数多く使用される性格のものであり、この封筒が多数使用されたことは容易に想像つくものである。 (8)宅地建物取引業者免許証より 甲第26号証は、宅地建物取引業者免許証であるが、この免許証番号は東京都知事(5)第47965号である。この括弧内の番号は免許証を更新するたびに増加していくものであり、この番号から当該会社が昭和61年の設立より継続して不動産関連業務を現在に至るまで行っていることがわかる。また、括弧内の番号が5であれば、不動産会社という性格上、同業者間或いは需要者に広く知れ渡っている会社と判断できる。 (9)同業者の証言より、 甲第27号証は、同業者の証言であり、被請求人の本件商標の出願以前より「インター・シティ」なる請求人使用商標が、請求人に係る不動産業務という役務を表現するものとして、同業者間及び一般需要者間で広く認識されていたことを示している。 (10)間違い電話より、 請求人が使用している「インター・シティ」なる請求人使用商標は、商号としてはもちろんのこと、「インター・シティ」という呼称で単独で使用され、愛称として会社設立当時より親しまれて来たところであり、同業者間及び一般需要者間に広く知れ渡っている。これに対して、被請求人は、請求人と同一地域の港区において不動産開発をした地域を、請求人の使用している同一名称の「インターシティ」を単独、或いはその頭に「品川」という港区に於ける著名な地域名称をつけて使用し、且つ港区内を含めて新聞や広告等で多数宣伝広告をしている。従って、被請求人の不動産の開発地域が、請求人の会社に関わる事業であるとの誤認が多く、今までに、数百本もの間違い電話が寄せられている。 4 本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当することについて (1)不動産業界に於ける周知性の概念 「インターシティ」、「INTER CITY」なる請求人使用商標は、請求人の会社に係る不動産業務の役務を表示するものとして、本件商標の出願以前より、現在に至るまで継続的に使用しているものであり、同時に自他の不動産業を識別する力を備えた周知の商標である。 一般的にサービス業は、地域密着型が多く、不動産業もその業務上、特定の地域に根ざした業種であり、全国的に認識を必要としないいわゆる地方的なサービス業である。 通常、商標に於ける周知性を判断する時には、その指定役務との関係を考慮して決定されるべきものであり、不動産業のような地域に根ざしたサービス業の場合は、全国的に知られている必要はなく、その地域をもって周知であれば十分であるとするのが、通例である。 従って、「インターシティ」、「INTER CITY」なる請求人使用商標は、上記甲第5、14〜27号証等より、商標登録人と同一地域で同一業種である不動産業界はもとよりのこと、需要者の間にも、広く知れ渡っている商標であり、請求人の業務を認識させるに十分なものである。 (2)使用の概念 サービス業においては、サービス自体の流通ということは有り得ないから、サービスマークが周知となるのは、多くの場合、広告によるものであると解して差し支えない、とするのが通例である。 特に不動産業界は、広告がその生命線であり、その広告が広く取引者、需要者間に行き渡るように営業活動をすることはいうまでもない。 そして、商標法での標章の「使用」の行為として、商標法第2条第3項第7号には「商品又は役務に関する広告、定価表又は取引書類に標章を付して展示し、又は頒布する行為」であり、ここにいう広告には、新聞・雑誌・パンフレット・カタログ等の広告書類が含まれるのは言うまでもない。請求人は、上記甲第5、14〜27号証で示したように、不動産情報を提供すると言う立場から、その広告に「インターシティ」なる請求人使用商標を付して使用している。 従って、「インターシティ」なる請求人使用商標は、商標法で規定する商標の使用の概念に該当する。 (3)上記で説明したように、請求人は「インターシティ」、「INTER CITY」成る請求人使用商標を、不動産業に係る業種として、昭和61年より、現在に至るまで継続的に使用している。 そして当該請求人使用商標は、取り引き上、商標としての機能を営み、長年且つ毎日に渡る広告活動により不動産業界及び需要者のイメージに強く刻み込まれている。 且つその使用の方法・態様も、上記の通り、不動産業界に係る業種として、被請求人が本件商標を出願する以前より継続的に広く頒布された広告等には必ず「インターシティ」なる請求人使用商標が付されて使用されてなるものであり、当該商標が請求人に係るものであることは、広く取引者、需要者間に知れ渡っていたことである。 従って、本件商標はその出願以前に周知と成っている商標或いはこれに類似する商標を、上記に記載した同一役務或いは類似する役務に於いて使用しているものであり、登録されるべきものではない。 5 本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当することについて 本件商標は、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標であり、商標法第4条第1項第8号に該当し、商標登録を受けることが出来ない。 「インター・シティ株式会社」は、前述したように、本件商標の出願以前より商号登記している商号であり、且つ商標登録の対象となる請求人使用商標である。 また、上記規定での「名称」の解釈として、「インターシティ」なる請求人使用商標が含まれることに争いはない。ここでいう「名称」とは、法人等の名称であって商号も略称で無ければ含まれるとされている。請求人使用商標の「インターシティ」は、略称ではなくフルネームの商標と判断できる。 しかも、前述の通り「インター・シティ株式会社」は、被請求人とは、同一地域の同一業者であり、上記甲第5、6、14〜27号証等の事実からして、請求人に係る会社の存在を知らなかったはずはなく、従って商標出願をするに当たって請求人の承諾を得ないどころか、故意に承諾を得ていないものと認められる。 そして、本件商標が請求人と同一地域の同一業界において使用されていることにより、本件商標と請求人の不動産業との間に何らかの関係があると取引者及び需要者に誤認されている。このことは、「インターシティ」なる請求人使用商標を使用している請求人にとって極めて不快であり、人格権を棄損されている。 本条文の趣旨は、商号権者個人の人格的利益の保護を目的としているものであり、本件商標は、その出願に際して承諾のなかったことにより、人格権の棄損が客観的に認められるし、また、請求人は当該商標を使用されたことによりその使用を不快に感じる客観的事実も存在する。 従って、本件商標は、本件商標出願以前より使用している他人の名称を含む商標であり、且つその他人の承諾を得ていないもので、無効とすべきである。 6 本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することについて 本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり、商標法第4条1項第7号に該当し、商標登録を受けることは出来ない。 商標法にいう「公序良俗」とは、民法第90条の規定に表現されている公序良俗とはその内容に於いて異なるものである。商標法に於ける公序良俗は、商標法第1条「この法律は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」という法の精神により維持される商品流通、サービス等に於ける秩序良俗をも包含するものと解釈される。 従って、商品の出所や役務の混同を生じるおそれのある場合は、商標法第4条第1項第15号の規定により処理できるが、もし仮に、そのおそれが無いとした場合においても、本号の規定が適用される。 また、本件商標は「インターシティ」という請求人が使用している独創的な請求人使用商標と同じ商標であり、独創的であるが故に、偶然の一致などということは認めがたく、上記甲第5、6、14〜27号証等より明らかな通り、他人の使用商標を盗用したものと推認でき、これを覆す明白な事情が無い限り、当該規定に該当するものである。 従って、本件商標は、請求人に係る、同一地域での同一業務に使用する「インターシティ」なる請求人使用商標を使用する者の業務上の信用を害し、商品流通、社会の秩序を侵害するものであり、本号の公序良俗に違反し、商標登録されるべきものでは無い。 7 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて 上記各号の規定に該当しないということであれば、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条1項第15号に該当し、商標登録を受けることができない。 この規定は、具体的出所の混同を意味するものとされている。 本規定は、具体的出所の混同を生ずるようなおそれのあるものをすべて登録しないことを定めたものである。 本件商標は、本件商標出願以前に、請求人の業務に係る商標として使用されていたものであり、被請求人の本件商標が同一或いは類似した業務で使用されれば、取引者及び需要者にその取扱者、販売者ないしはサービスの提供者を、請求人と何等かの関係があるかの如く出所について混同を生じさせる要因となり、商標登録を受けることは出来ない。 8 本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当することについて 更に、上記各号の規定に該当しないということであれば、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当し、商標法第4条1項第19号により、商標登録を受けることは出来ない。 上記のように「SHINAGAWA INTERCITY」「品川インターシティ」を権利者たる興和不動産が使用しているが、この品川インターシティの不動産の開発場所は、東京都港区港南2丁目であり、品川駅東口に位置している。 また、甲第9号証には「倉庫街から新都心へ『インターシティ』オープン」と記載されているように、「インターシティ」のみが独立して使用されている。 上記「品川」とはあくまで品川駅のそばを意味しているもので、「インターシティ」なる請求人使用商標が単独でも使用されていることからして、取引者及び需要者は品川駅のそばの「インターシティ」であると認識している。 そもそも権利者が「インターシティ」なる商標を得る目的であれば「品川」成る文言を入れることは更々無く、「インターシティ」なる標章で商標を取得したはずである。 にも係わらず、敢えて「品川」なる文言を加えたのは、権利者が同一地域内で「インター・シティ株式会社」成る会社の存在を承知しているが故に、それと全く同一では問題ありという認識で、あたかもそれを回避したかのごとく「品川」という文言を加えて権利を取得したものである。 これは、「INTERCITY」のように単独で使用したり、「SHINAGAWA」の文字を「INTERCITY」より小さく書するように、実際の登録商標とは異なった小文字と大文字との組み合わせとして使用したり、或いは両者の色を変えて使用していること等からも明かである。 つまり、実際の使用時は「インターシティ」のみを前面に打ち出すという、不正の目的をもって使用している。 従って、本件商標は、本件商標出願以前より請求人の役務を表示する請求人使用商標として需要者間に認識されており、且つ不正をもって取得し、不正の目的をもって使用する正に信義則に反するものであり、本規定により、本件商標は、無効とすべきである。 9 上記に詳述したように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第8号、同第7号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。 10 答弁書に対する弁駁 (1)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないとしていることについて (ア)「広告チラシは、僅かな件数といえる6件の物件に係るものである」との被請求人の主張について 需要者に対して不動産物件を売買或いは賃貸等を行うことを主目的とした不動産業にあっては、広告チラシ等の広告手段を介して取引者間及び需要者に当該物件を知らせしめることは、その仕事の主なるものの一つであり、甲第14〜19号証に示すような広告チラシなくしては当該不動産業は成立しない。従って、甲第14〜19号証の6件の広告チラシが請求人の取り扱った全ての物件であるなどと言うことは有り得ない。 請求人は当該場所において、昭和61年より現在に至るまで、継続して「インターシティ」なる標章を使用して不動産の売買或いは賃貸等を主目的とした不動産業を営んでいるものであり、様々な不動産物件に対してその広告手段の一つとして多数の広告チラシを頒布してきたことは事実である。 現存しているものでも多数種類の広告チラシがあり、これらの広告チラシから請求人が活発な営業活動をしていたことが事実であることは容易に証明出来る。 また、これら広告チラシの内、対象物件の多くは、港区地域と成っており、当該広告チラシが港区を中心として頒布されたことも確認できる。 不動産業は、他社の扱う物件の仲介をした場合においても、契約が成立した時には、その仲介手数料金の半分が収入となるシステムに成っており(甲第29号証の下欄に、手数料 分かれ と記載されている)、他社の広告チラシが自社に送られてくるようにしている業界である。従って、甲第14〜19号証に示した広告チラシもアットホームという不動産情報会社の会員であることより、当然のことながら被請求人に送られる。送られてくる広告チラシを、相当の関心を持って検討することは、不動産業の日常の業務である。また、その行為において、当該不動産を扱っている会社を確認することもこれまた日常の業務である。 このようなシステムの不動産業に対して、当該関係者が広告チラシが僅か6件しか無い等と主張することは、当業界を無視した暴論としかいいようが無い。この6件から推定すれば十分であると考える。 しかしながら、被請求人は、広告チラシは僅かな件数にすぎないと主張しているので、甲第28〜43号証として、上記甲第14〜19号証に示す以外の請求人の取り扱った他の不動産物件の広告チラシの一部を提出する。 更に、アットホーム株式会社(旧社名は不動産ニュース株式会社)からの請求書を甲第44〜74号証として提出する。上記アットホーム株式会社は、会員相互へ不動産の物件情報を送っている。同時に、物件の作図、印刷等も行っている。甲第44〜74号証には、広告チラシの印刷部数も記載されている。 例えば甲第14号証は、その下欄に物件番号03070129と記載され、情報公開日は63.6.24と記載されている。他方甲第57号証の請求書には、売上日は63.06.24と記載され、受注番号は03070129と記載されている。備考欄は港区白金、数量は1980と記載されている。 また、甲第15号証は、同じくその下欄に物件番号として03233690と記載され、情報公開日は1.3.14と記載されている。他方甲第61号証の請求書には、売上日は01.03‐14 と記載され、受注番号は03233690、備考欄には港区東麻布、数量は3160と記載されている。 更に、甲第28号証のように、その下欄に物件番号として3-0418264と記載され、情報公開日は63.4.4と記載されている。他方甲第56号証の請求書には、発行日は63.04.01と記載され、品名には印刷料、受注番号として30418264、所在地には港区東麻布、数量は3、460と記載されている。 上記のように、甲第14〜19号証及び甲第28〜43号証の広告チラシに記載された情報と甲第44〜74号証に記載された情報とは、その物件番号と受注番号、情報公開日と売上日(発行日)、或いは物件名と備考欄(所在地)等を比較することにより、同一の物件に係わる証拠であることが容易に判断出来る。これらにより、上記広告チラシがアットホーム株式会社を通じて印刷され、頒布されていたこと及びその部数等が証明出来る。 また、請求人が多数の物件を扱っている証拠として、1987年4月〜11月までの短期間の株式会社リクルートの請求書の一部を提出する(甲第75〜118号証)。その他の請求書も多数ある。 株式会社リクルートは「週刊住宅情報」なる分厚い住宅情報誌を発行しており、該「週刊住宅情報」は、駅の売店、コンビニ、書店等の様々な場所で、且つ多くの部数が頒布され、多くの取引者及び需要者に利用されている情報誌である。 甲第75〜118号証の摘要欄には「週刊 住宅情報 首都圏版 沿線別賃貸情報」、「不動産流通物件情報 住居用賃貸 事業用賃貸」、「不動産流通物件情報 事業用売買」及び「週刊 住宅情報 首都圏版 沿線別総物件情報」等が記載され、更に、数量、金額等も記載されている。 そして、上記「週刊住宅情報」には、上記ジャンル別に該摘要欄に示された内容の情報が、広告として掲載される。当然のことながら、当該広告には「インター・シティ株式会社」なる文言も掲載される。 上記甲第28〜118号証より、請求人は多くの種類の広告チラシ或いは多くの種類の広告をしており、その発行部数は多くに及び、僅かな物件しか扱っていなかったとする被請求人の主張は失当である。 (イ)「折り込みチラシは、頒布数が不明であるうえに、これが実際に頒布されたことを認めるに足りる資料を伴っていない」との被請求人の主張について 折り込みチラシを作成することは、それを頒布することによって、当該内容である不動産物件を直接需要者に知らせる手段として有効であることは不動産業に限らず常識であり、不動産業を営んでいる以上、作成したチラシが頒布されないということは有り得ないことである。頒布することを目的とする以外に折り込みチラシが作成されることは無い。そしてその頒布数は、その有効性から考えて数百枚の単位でないことも事実である。 甲第ll9号証は、請求人が(株)東都工芸印刷に甲第20号証の折り込みチラシを依頼したときの見積の提示書である。甲第120号証は、折り込みチラシを納品したときの納品書を示し、甲第121号証は、その前金に対する平成4年10月22日付けの領収書を示し、甲第122号証は、残金の平成4年11月6日付けの領収書である。 上記甲第120号証の納品書には、品名欄に「新築高級賃貸マンション チラシ」となっており、その納入日は92/10/29となっている。甲第20号証の折り込みチラシには「新築高級賃貸マンション シャトー・プ・エスポワール麻布平成4年11月末日完成予定」と記載されており、甲第119〜122号証の証拠が、甲第20号証に関連する一連の物であることは、容易に判断できる。 また、甲第123号証は、甲第20号証の折り込みチラシを新聞に折り込ませた時の朝日新聞十番専売所発行の領収書である。上記折り込みチラシは、印刷会社より直接、新聞の専売所へ持ち込まれ、当該専売所は、折込代を徴収して自社の新聞或いは他社の新聞に該折り込みチラシを折り込むことになる。この甲第123号証より甲第20号証の折り込みチラシが実際に頒布された事実が証明できる。 更に、甲第120号証の納品書には、数量として30、000枚と記載され、甲第123号証の領収書にも、折込代30、000枚と記載されている。また、甲第121、122号証の領収書からもその領収金額を単価9.64円で割ればその数量が容易に計算できる。これらの事実より、甲第20号証の折り込みチラシが30、000枚印刷され、頒布された事実が証明出来る。 不動産業を営んでいるものであれば.上記折り込みチラシの印刷から頒布までの一連のシステムは当然承知していることである。 また、甲第20号証に「インター・シティ株式会社」と記載されていることも事実である。 上記の通り、頒布部数も30、000枚と明白であるし、実際に頒布されたことも事実である。従って、ここでの被請求人の主張も失当である。 (ウ)「営業案内書の頒布数は不明である」との主張について 営業案内書の印刷部数を示すものは現在手元に無い。しかし、請求人は営業案内書の更新、資本金の変化等にともなって営業案内書を増刷しており、開業から現在に至るまで、相当部数の印刷をし、頒布していることは事実である。不動産業は営業を主体とする業種であり、会社の信用或いは宣伝等に営業案内書が有効であり、原盤を作成して印刷する以上、相当の部数のものが印刷され、頒布されることは、その趣旨からして常識と考える。現在までに少なくとも5、000部は印刷し、頒布している。 また、被請求人に甲第22号証の営業案内書を渡しているのも事実である。 (エ)「挨拶状は約13年前のものである」との主張について 被請求人がここで何を主張しようとしているのかその趣旨が不明であるが、少なくとも請求人が13年前に印刷し、頒布している事実には変わりはない。 被請求人は請求人に係わる「インター・シティ株式会社」の使用事実を容認しているが、13年前から使用している「インターシティ」なる標章が現在も使用され、その間に於いて、継続的に同一場所で不動産業を営み、その営業内容も広告を主体とした営業であることを考慮するならば、挨拶状が、これから不動産業を営む者にとっての挨拶として、相当な部数を印刷し、頒布されることは容易に想像つくことである。被請求人が挨拶状の存在を容認していることは、その後、継続してこの地域において「インターシティ」なる標章を使用している以上、該標章が13年前より存在していたことを被請求人自ら認めていることになる。 (オ)「封筒は、これが実際に使用されたとしても、例えば、請求人の業務形態が専らダイレクトメールによるものであって、一定の期間定期的に多数といえる同一人宛の書状の送付に使用されているといった特段の事情がない限り、有効な広告手段とは成り得ないといえるところ、かかる特段の事情を認めるに足りる資料の提出がない」との主張について 封筒は、宣伝手段として極めて有効であることはいうまでもなく、特定者或いは不特定者に限らず郵送手段及び持ち運び手段等として使用されるものであり、多数印刷され、営業が主体の不動産業であれば、消耗品として使用されるのは常識であり「定期的に多数といえる同一人宛の書状の送付に使用されているといった特段の事情がない限り、有効な広告手段とは成り得ない」等と言った被請求人の主張は不当である。 (カ)「宅地建物取引業者の免許は、法律上要求されているにすぎない」との主張について 請求人は、上記宅地建物取引業者の免許を示すことによって、不動産業を営んでいること、及び更新を示す番号によって、当該地城に於いて継続的に不動産業を営んでいた事実を示す公的な証拠として提出したものである。 免許証番号として東京都知事(5)第47965号に示されている(5)は、継続的に不動産業を営んでいる証拠であり、不動産業として信用度も高く、当該地域内に於いて取引者及び需要者に広く知れ渡っている証拠の一つとして提出したもので、被請求人の主張は失当である。 (キ)甲第27号証の同業者の証言に対して、被請求人がなお書きで示した「その証言内容は信用することは出来ない」旨の主張について 信用出来ないとしながら、どの部分の主張が信用出来ないのか、何ら具体的な言及がない。証言内容の内、不動産業の実態の説明が信用出来ないのか、「インター・シティ株式会社」がアットホーム株式会社の会員であったことが信用出来ないか、当該会社名がこの地域で周知であったことが信用出来ないのか等、具体的にどの部分が信用出来ないのかの指摘が一切なされていない。 甲第124、125号証として、上記甲第27号証の互恵産業株式会社と請求人との間に取り引きが有ったことを示す不動産売買契約証書を提出する。 甲第124、125号証により、甲第27号証で提出された証明書の上記会社と請求人の会社とが昭和61年8月より取り引きがあった事実と、同業者であった事実を証明する。 (ク)被請求人の主張の反論として上記の通り、請求人の「インター・シティ株式会社」が周知で有ったことを述べたが、周知の程度についての考え方を以下に述べる。 「商標」【第4版1網野 誠著(株)有斐閣刊 平成10年2月25日発行の第342頁によれば、「周知商標として他人の商標の登録を排除するためには、それが取引者・需要者間において広く認識されていなければならない。ただし、その地域的範囲は必ずしも全国的に知られていることを必要とせず、北海道一円、九州一円等相当広範囲の需要者・取引者間に知られていれば足りる。しかしながら、これは一般的な原則であって、地域的範囲については指定商品や指定役務との関係を十分考慮して決定されなければならない。鉄鉱・金属、紡績、産業機械、通信・運輸等、需要者・取引者が全国的にわたっているのが通例であるような産業部門については、その地域的範囲も全国的にわたっていなければ周知商標とはいい得ないかもしれないが、菓子や雑貨類等の地方産業に属する商品の商標については、一府県内でも地方の名産としてその地方の者が広く認識している商標は、周知商標として扱われることが多いであろう。特に理容、美容、飲食店等地方的なサービス業についてはそれが通例である。」としている。 上記考え方からすれば、不動産業と言う地方的なサービス業であれば、正に特定の地域に於いて需要者・取引者に知られていれば十分であり、請求人の「インター・シティ株式会社」は、上記甲各号証より周知であったことは前記の通り事実であり、被請求人に係る本件商標が登録されるべきもので無いことは明白である。 (2)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないとしていることについて (a)「インター・シティ」は、既成語であって、独創的なものとはいえないこと、(b)本件商標と「インター・シティ」は同一の商標といえないこと、(c)引用商標が需要者、取引者間において広く知られていたものとは認められないこと、(d)アットホームネットワークを通じての情報交換相手として請求人の存在を全く認識していなかったこと、(e)甲第6号証の契約書について全く記憶に残っていないこと、(f)本件商標の出願は、甲第6号証の契約書の契約日より前になされていること、等の理由を述べて、本件商標の選択は、偶然の一致であったといわざるを得ないとしている。 しかし、上記主張は虚偽或いは事実を歪曲しているものであり、以下にその理由を申し述べる。 (ア)通常、会社の登記をする場合には、その設立地域の商号を調べることから始まる。甲第4号証に示すように、被請求人に係わる小会社である「品川インターシティマネジメント株式会社」は平成9年1月20日に会社設立している。 当該会社は、その目的に記載されているように、不動産関連の業務を成す会社であり、且つ本件商標に係る「品川インターシティ」の敷地の管理をすることを目的として設立しており、その所在地は、東京都港区西麻布四丁目12番24号であり、請求人の会社と同一地域の同一業種に係る会社である。 従って、当該会社を設立するにあたっては、必ず登記所に於いて商号登記の確認手続きをしており、「品川インターシティマネジメント株式会社」なる名称を採用するとなれば、当然のことながら、同一管轄である請求人に係る「インター・シティ株式会社」なる商号を確認している。そうであれば、その親会社の取締役である和田氏の乙第4号証での「請求人の存在を全く認識していなかった」等との証言は有り得ないはずである。 (イ)被請求人は、乙第5号証を示し、本件商標の選定にあたって、(株)共同広告社等を選定し、1993年11月4日より検討を始めたとしている。 ところが、この証拠のどこにも(株)共同広告社の記載がなく、その示唆も無い。更に、当該制作会社側からの本件商標の選定に関与したとの証明もなされていない。 通常、制作会社への依頼であれば、その会社からの提案書等の形での報告が成されるはずである。名称選定にあたっての同一或いは類似の調査等も当然成されるはずであるが、その報告書等も示されていない。 そうなると、乙第5号証は捏造されたものか、それに類するものと推定出来る。(株)共同広告社のような広告代理店が、ここに示されているような、その作成責任について何も記載していない報告書を作成することは無い。 更に、乙第5号証の2ないし同第5号証の7を見てみると、同第5号証の7の最終報告書に於いても「品川インターシティ」に決まった正式な報告はされておらず、すべてが計画の段階で終わっている。 しかも、上記したように、誰が検討したのかの主体が一切示されておらず、報告書の体裁もなく、信憑性の全くない書類としか言いようが無い。 (ウ)本件商標と「インター・シティ」は同一の商標といえないと主張しているが、本件商標の「品川インターシティ」は、「インター・シティ」と同一或いは類似の範囲から決して逃れることの出来ない商標である。 前記の通り、請求人に係る「インター・シティ株式会社」は、周知商標であり、且つある文字(A)と株式会社、有限会社、商事会社、協同組合・・等の商号の一部に使用される文字(B)と結合して成る商標(A)+(B)は、文字(B)の部分が語尾、語頭にあるとを問わず(B)の部分がないものとして商標の類否を判断するのが原則である。 他方、被請求人に係る「品川インターシティ」の「品川」は、著名な地名であることから「品川」を削除した商標と判断される。従って、本件商標は請求人の標章と同一或いは類似のものであることは、争う余地のないところであると確信する。 (エ)乙第4号証の証言について、 乙第4号証の「アットホームネットワークについて」の項で、和田氏は以下のように述べている。 「興和不動産(株)営業第四部の名が平成元年9月20日現在の同ネットに正会員として記載されているが、同組織は昭和63年度中に廃部名称変更されており、平成元年にも同様の名称が記載されていることは、同アットホームネットワークなる組織についての当社サイドの認識が浅く、変更連絡もしていなかったものと推測される。」としている。 これは被請求人側の管理上の不手際を露呈しているにすぎず、重きがあろうが無かろうが所定の会費を払っている以上、名称が変わればそれなりの手続きをするのが当然である。ただ、名称変更され無かったとしても電話番号は変更されておらず、何の実害も無かったから届出をしなかったと解釈するのが自然である。 甲第126号証は興和不動産(株)不動産流通部のアットホームネットワークの会員情報である。甲第126号証によれば、被請求人は1986年(昭和61年)に入会し、1998年10月30日に脱会している。その間継続して会員となっている。 更に、和田氏は「請求人インター・シティ(株)が港区内に立地する多数の不動産仲介会社のひとつとして存在していたとしても、当社としては、同ネットワークを通じての情報交換相手として同請求人の存在を全く認識していなかったと言わざるを得ない。」としている。 先にも述べたように、不動産の仲介は、他の会社に係わる物件に関しても、買主を見つけるとそれ相応の仲介手数料が得られるシステムになっており、自社の物件同様、他社の物件にも強い関心を持つのは当然のことであり、同一地域であれば、ことさら関心は深く、当該地域を希望する顧客を何人かは確保しているのが実体である。 そのような業界であり、アットホームネットワークの同一会員であれば、「インター・シティ株式会社」に係わる不動産物件情報が、被請求人の会社へ送られるのは当然のことである。 そのような不動産業界にあって、同一地域での、同一業務としての不動産の仲介を行っている会社が、不動産の情報が広告チラシとして頻繁に送られて来る会社の存在を全く認識していなかったと証言することは、虚偽の証言と言わざるを得ない。 また、和田氏は「平成7年12月6日不動産売買契約書について」の項で下記のように述べている。 「今回の一連の取引は、仲介取引の上では商慣習的にも最も典型的且つ一般的なものである。即ち、当社としては、当社側の仲介人である昭和地所(株)の紹介のもとに、同席を機に名刺交換をした訳で、買手側の仲介人に対しては、極めて印象が薄く、全く記憶に残っていないのが実状である。」としているが、これは全くの虚偽である。 本件の不動産の買主は、サッカーで有名なラモス瑠偉であり、興和不動産にはサッカー部があり、サッカーに関心が高く、和田康彦氏はわざわざ契約に立ち会い、彼からサインをもらっているのである。同時に立ち会った伏見泰典氏もシャツに彼のサインをもらっているのである。通常の立ち会いでも記憶に無いなどということは有り得ないことであるが、上記のように、著名人の契約であり、その仲介者で且つラモス瑠偉の紹介者でもあった請求人に記憶が無いなどということは、常識からして有り得ないことである。 また、その時、会社案内書を渡しているが、その後の商標登録出願(平成8年6月7日)に成る乙第7号証の「INTARCITY」の字体は、請求人の同会社案内書(甲第22号証)と同一或いは極めて類似した書体となっている。 答弁書における上記乙第4号証の内容を見るならば、然るべき地位にいる者が不動産業の商常識を偽って証言していること、決して忘れることの出来ない事実に対して隠ぺいするような証言をしていること、そして本件契約の前に商標登録出願がされているようだ、などと主張をしていること等を総合的に判断するならば、正に請求人に係る標章を盗用したことを自ら証明しているようなものである。 つまり、常務取締役であれば当社に関わる登録商標が出願されていることの認識は容易に推測出来ることであるし、例えそうでなくても、前述したように、いつかの時点では知り得ていたはずである。そうであるならば、その時点で請求人の標章と同じであるとの認識は当然得ているはずであり、平成11年8月16日付けでの「請求人の存在を全く認識していなかった」等の証言は虚偽以外有り得ない。 (オ)被請求人は、その答弁書で、「インターシティ」の使用例は、「インターシティ」という施設内におけるものであるから、これが請求人標章の表示であるなどと混同されるようなことは有り得ずと主張している。 甲第10〜13号証は、被請求人の本件商標の一使用例を示したものにすぎず、これをもって施設外での使用が無いというのは全くの虚偽である。 施設外での使用例は、その列挙に暇がない。甲第127号証は、品川駅での使用例を示す写真であり、甲第128号証は、公道の電柱に取り付けられた広告を示す写真であり、施設外での使用は既成の事実である。また、甲第7、8、9号証も新聞記載であり、施設外での使用例である。 (3)上記の通り、商標法第4条1項10号及び7号の答弁に対する反論を主としてしたが、上記事実より、請求人に係る「インター・シティ」なる標章は、特定の地域において、需要者及び取引者に於いて周知のものである。また、被請求人とは、同一の情報会社に長年所属していた同じ不動産業を営む関係にあり、客観的にみて、当該標章を盗用するに十分な状態であり、且つそのような状態であった事実を否定する極めて不自然な答弁書が提出されたこと等を総合判断するならば、本件商標が登録されるべきものでないことは当然と考える。従って、先の審判請求書の請求理由及び本件弁駁書の弁駁理由より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第8号、同第7号、同第15号及び同第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は無効とされるべきである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証(枝番を含む。)を提出している。 1 請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第8号、同第7号、同第15号、同第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第46条の規定により、無効とされるべきであると主張する。 しかしながら、以下に述べる理由により、請求人の主張はいずれも失当である。 2 本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するとの主張について 請求人は、「インターシティ」なる標章(なお、証拠上「インターシティ」の使用例はないが、請求人が主張するところは、「インターシティ」は「インター・シティ株式会社」の表記における「インター・シティ」をいうものと解して)及び「INTER・CITY」なる標章(以下、両者を「請求人標章」という。)は、同人の業務に係る役務「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」等(以下「請求人役務」という。)を表示する標識として、本件商標の登録出願前において取引者、需要者間において広く認識されていたものであると主張するところ、この主張事実は、これが事実と認められるに足りる資料によってなされるべきである。 そこで、これを請求人がその主張事実を立証すべく提出した甲第14号証ないし27号証及び5号証についてみると、これら各号証によれば、請求人は、同人会社の設立以来、請求人標章を表記した広告チラシ、折り込みチラシ、営業案内書、挨拶状、年賀状の頒布、封筒の使用により請求人役務の広告を行ってきていること、及び宅地建物取引業者の免許を受けていることが認められる。 しかしながら、(a)広告チラシは、僅かな件数といえる6件の物件に係るものであり、(b)折り込みチラシは、頒布数が不明であるうえに、これが実際に頒布されたことを認めるに足りる資料を伴っておらず、(c)営業案内書は頒布数が不明であり、(d)挨拶状は約13年前のものであり、(e)封筒は、これが実際に使用されたとしても、例えば、請求人の業務形態が専らダイレクトメールによるものであって、一定の期間定期的に多数といえる同一人宛の書状の送付に使用されているといった特段の事情がない限り、有効な広告手段とはなり得ないといえるところ、かかる特段の事情を認めるに足りる資料の提出はなく、(f)宅地建物取引業者の免許は、法律上要求されているにすぎないものである。 しかして、上記程度の広告・営業活動は、その量及び手段において、およそ不動産業を営む者であれば通常行っていることといえるから、甲第14号証ないし27号証によって請求人の主張事実が立証されているということはできない。 なお、甲第27号証は、同業者の証言の形式をとった証明書であるところ、その内容は、上記の認定とは相容れないものである。 しかるに、この文書には、その証言内容がいかなる根拠に基づくものであるかを示すなんらの資料も伴っていないから、俄かには信用することはできない。 もっとも、どの程度の広告によって商標が広く知られるに至るかというような尺度はないところ、上記程度の広告・営業活動によって、請求人標章が需要者、取引者間において広く知られるに至っているとするのであれば、請求人の上記の活動がこの程度でも、同業他社のそれより突出して活発、盛大なものといえることが求められるところ、これを認めるに足りる資料の提出はない。 以上によれば、請求人標章は、本件商標の出願時において、需要者、取引者の間において広く知られるに至っていたものということはできない。 3 本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するとの主張について 商標法第4条第1項第8号でいう「他人の名称」は、自己以外の法人の名称をいうものであるから、その他人が株式会社組織の法人である場合のその他人の略称は、その名称から株式会社の文字を除いた部分がその他人の名称の略称に該当するものと解される(乙第2号証)。 そうすると、請求人の名称は「インター・シティ株式会社」であり、「インター・シティ」は請求人の略称といわざるを得ない(略称の場合、これには著名であることが求められるが、これを認めるに足りる資料の提出はない。)。 してみれば、「インター・シティ」を請求人の名称であるとし、これを前提に本件商標を商標法第4条第1項第8号に該当するものであるとする請求人の主張は、その前提において既に失当である。 4 本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するとの主張について 請求人は、本件商標は請求人が使用している「インター・シティ」という独創的な商標と同一の商標であって、独創的であるが故に、偶然の一致などということは認め難く、甲第5号証、6号証、14号証ないし27号証等より明らかなとおり、他人の使用商標を盗用したものと推認することができると主張する。 しかしながら、(a)「インター・シティ」は、「(大)都市を結ぶ(急行)」なる意味の英語「INTERCITY」に通ずるものであるから、既成語であって、独創的なものとはいえないこと、(b)本件商標と「インター・シティ」は同一の商標といえないこと、(c)甲第14号証ないし第27号証によっては請求人標章が需要者、取引者間において広く知られていたものとは認められないことは前記認定のとおりであること、(d)甲第5号証をもって主張している事実関係は、乙第4号証の「アットホームネットワークについて」の項で釈明しているとおりであること、(e)甲第6号証をもって主張している事実関係は、乙第4号証の「平成7年12月6日不動産売買契約書について」の項で釈明しているとおりであること、(f)本件商標の登録出願は、甲第6号証で示す契約の日(平成7年12月6日)より前の平成7年6月29日になされていること、から本件商標の採択は偶然の一致であったといわざるを得ない。 以上に加えて、乙第5号証の1ないし7で示す本件商標の商標登録出願に至るまでの経緯を考慮すれば、本件商標の採択に盗用と非難されるべきところはない。 すなわち、施設としての「品川インターシティ」の名称の制作には制作会社として株式会社共同広告社を選定し(乙第5号証の1)、一定の手順で名称制作作業が行われた。 5 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張について 商標法第4条第1頃第10号でいう「需要者、取引者の間において広く認識されている商標」(以下、「周知商標」という。)の他人の商標登録を排除できる範囲は、当該周知商標と同一又は類似の範囲、商品又は役務においては、当該周知商標の指定商品又は役務と同一又は類似の範囲に限られるのに対して、商標法第4条第1項第15号でいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」にはその排除範囲に制限はないから、これをもって他人の登録商標を排除する場合には、当該商標には周知商標に較べより一層の高い周知性が求められると解されている。 しかるところ、請求人標章が周知商標ともいえないものであることは、前記認定のとおりである。 してみれば、本件商標は、周知商標より高度の周知性を有するものといえないから、これを被請求人がその指定役務について使用しても、その出所を混同させるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 6 本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとの主張について 商標法第4条第1項第19号でいう商標によって排除される商標は、少なくとも他人の周知商標と同一又は類似のものであって、不正目的をもって使用するものと解されるところ、請求人標章が周知な商標といえないものであることは前記認定のとおりであり、また、前記したとおりの本件商標の採択の経緯からみて、被請求人による本件商標の使用が不正の目的をもってするものでないことは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。 7 まとめ なお、請求人は、被請求人は本件商標をその態様を変えて使用していると主張して甲第10号証ないし12号証を提出しているが(かかる主張は、無効審判という審判の趣旨には副わないものであるが)、このうち甲第10号証の使用例は、「品川インターシテイ」という施設内におけるものであるから、これが請求人標章の表示であるなどと混同されるようなことはあり得ず、また、甲第11号証及び12号証の使用例は、被請求人が所有する登録第4153328号商標(乙第7号証)の使用といえるものである。 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第15号、及び同第19号のいずれにも該当するものではないから、その登録は、無効とされるべきものではない。 第4 当審の判断 1 引用商標の特定について 本件商標を無効にすべきであるとして請求人が引用する商標について、審判請求書及び弁駁書における記載と証拠方法として提出した甲各号証で相違する点があるため、以下のように認定、判断し、その特定を行う。 請求人提出の甲第22号証より「INTER・CITY」、同じく甲第24号証及び同第25号証より「INTER CITY」を引用商標としていることは、請求の理由の記載と齟齬がなく、認定できるものである。 そして、請求人の提出に係る甲第14号証ないし同第19号証及び甲第28号証ないし同第43号証に関し請求の理由等において「チラシには全て『インターシティ』なる請求人使用商標が記載されている。」等の記載があるが、該証拠において記載されている商標と認められる文字は「インター・シティ株式会社」であり、「インターシティ」ではない。該証拠及び請求の理由の記載等により、「インター・シティ株式会社」を引用商標としていることが認められる。 また、「インターシティ」及び「インター・シティ」に関する商標としての使用例等は甲各号証には存在しないが、請求の理由、被請求人の答弁に対する弁駁及び甲第27号証において、請求人が引用する商標とする旨の記載があるので、これらについても引用商標とする。 2 引用商標の周知・著名性について 上記1のように特定した引用商標について、その周知・著名性を検討するに、請求人の提出に係る甲各号証により、請求人である「インター・シティ株式会社」が「東京都港区麻布十番三丁目」において、昭和61年から現在に至るまで、継続的に不動産業を営んできたことは認められるが、提出された書証によっては、引用商標が本件商標の登録出願時において取引者、需要者間に広く認識されているものとは言い難いものである。 3 本願商標と引用商標との類否について 本願商標は、前記1で述べたとおり、「SHINAGAWA INTERCITY」及び「品川インターシテイ」の文字を二段に書してなるものであるところ、それぞれ外観上まとまりよく一体的に構成され、しかも、全体をもって称呼してもよどみなく一連に「シナガワインターシティ」と称呼できるものである。そして、たとえ、「SHINAGAWA」、「品川」の文字が著名な地名を表すものであるとしても、本件商標の指定役務においては、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然である。また、その構成中の「INTER CITY」、「インターシテイ」の文字部分が、他に周知・著名商標が存在するなど、それのみで独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。 そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して「シナガワインターシティ」の称呼のみを生ずるものである。 一方、引用商標は、それぞれ「インターシティ」あるいは「インターシティカブシキガイシャ」の称呼が生ずるものである。 そして、本願商標から生ずる称呼と引用商標から生ずる称呼とは、音構成の差等により区別できるものである。 また、両商標は、前記の構成よりみて外観、観念において相紛れるおそれはない。 そうとすると、本願商標と引用商標とは外観、称呼、観念のいずれの点よりみても、類似しない商標といわざるを得ない。 4 本件商標の商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号の該当の可否について 本件商標が上記の法条に該当するか否かについてみるに、当該各号は引用商標が本件商標の登録出願前より我が国又は外国において広く認識されていることを前提とするものであり、引用商標がそれに該当しないことは前記2で述べたとおりであるから、これに関する請求人の主張はいずれも採用することができない。 5 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当の可否について 商標法第4条第1項第8号でいう「他人の名称」は、自己以外の法人の名称をいうものであるところ、その他人が株式会社組織の法人である場合のその他人の略称は、その名称から株式会社の文字を除いた部分がその他人の名称の略称に該当するものと解される。 そうすると、請求人の名称は「インター・シティ株式会社」であり、「インター・シティ」は請求人の略称といわざるを得ない。そして、「インター・シティ」又は「インターシティ」の表示が著名と言えるものでないことは上記2で認定したとおりである。 してみれば、本件商標は、「インター・シティ株式会社」を含むものでもないし、またその著名な略称を含むものでもないから、本件商標を商標法第4条第1項第8号に該当するものであるということはできない。 6 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当の可否について 商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標等が含まれるものと解されるところ、本件商標がこれに該当するものとは認められないし、また、上記2で認定のとおり、引用商標が本件商標の登録出願前に広く認識していたとは認められないものであり、さらに、上記3で認定のとおり、本願商標と引用商標とは非類似の商標と言い得るものであって、請求人が提出した甲各号証によっては他人の使用商標を盗用したものであると推認できないものであるから、本件商標は、これを商標権者がその指定役務に使用しても、社会の秩序を害するおそれがあるとも認められない。 7 結論 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同15号及び同第19号のいずれの規定にも違反されて登録されたものではないから、その登録は同法第46号第1項の規定により無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-07-25 |
結審通知日 | 2001-07-31 |
審決日 | 2001-08-20 |
出願番号 | 商願平7-64740 |
審決分類 |
T
1
11・
222-
Y
(036)
T 1 11・ 22- Y (036) T 1 11・ 271- Y (036) T 1 11・ 25- Y (036) T 1 11・ 23- Y (036) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 末武 久佳 |
特許庁審判長 |
滝沢 智夫 |
特許庁審判官 |
田口 善久 酒井 福造 |
登録日 | 1997-12-26 |
登録番号 | 商標登録第4097161号(T4097161) |
商標の称呼 | シナガワインターシテイ、シナガワ、インターシテイ |
代理人 | 瀬戸 昭夫 |
代理人 | 成合 清 |
代理人 | 伊藤 哲夫 |