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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 126
管理番号 1063133 
審判番号 審判1999-31183 
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-08-27 
確定日 2002-07-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第1706704号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1706704号商標(以下「本件商標」という。)は、「TOTAL ENGLISH」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年11月19日登録出願、指定商品を第26類「雑誌、新聞」として、同59年8月28日に登録、その後、平成7年5月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標について登録を取り消す、との審決を求め、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品「雑誌・新聞」について継続して3年以上日本国内において使用された事実が存在しないので商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)弁駁
(イ)被請求人は、通常使用権者の株式会社秀文出版(東京都豊島区駒込4丁目12番7号)が本件商標を本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において指定商品中「雑誌」に使用していると主張しているが、株式会社秀文出版は、本件商標権の通常使用権の許諾を商標権者に申し出た事実はない(甲第1号証の1及び2)。そして、被請求人は、株式会社秀文出版が本件商標権の通常使用権の許諾を申し込んだ事実を明かにしていない。また、株式会社秀文出版は、本件商標権について、「商標権通常使用権許諾契約」を締結した事実もない(甲第1号証の1及び2)。そして、被請求人は、株式会社秀文出版を本件商標の「通常使用権者」と称し、その証として乙第6及び第7号証を提出しているが、株式会社秀文出版にはかかる書面は存在しない(甲第1号証の1及び2)。
(ロ)被請求人は、本件商標を乙第3ないし第5号証の定期刊行物(雑誌)に使用しているとしているが、その印刷物は、その内容、使用目的等から書籍であって、雑誌ではない。
(3)再弁駁
本件の争点は、通常使用権の許諾が実際に行われたものであるか、本件商標の使用商品が雑誌に相当するかにあり、この二点は、本件商標の不使用取消しについての必要条件であり、うち一点でもこの条件を満たさないならば、本件商標の不使用取消しの対象となるので、この点についてさらに詳述する。
(イ)通常使用権の許諾について
本件商標「TOTAL ENGLISH」は、中学校用英語教科書の題号として文部省検定のもとに昭和52年新学期より株式会社秀文出版によって発行してきたものである。
商標権者は本件商標発行者たる株式会社秀文出版の同住所にて印税を処理する会社として存在していた。
ところが、「TOTAL ENGLISH」とした中学校用英語教科書発行の4年6月後である昭和56年11月19日に指定教科書発行者である株式会社秀文出版の知らぬ間に本件「TOTAL ENGLISH」が商標登録出願がなされ、旧第26類中書籍を除いた「雑誌、新聞」を指定商品として、同59年8月28日に登録になり、平成7年5月30日に存続期間の更新登録がなされていたものである。
株式会社秀文出版は、中学校用英語教科書及びその指導資料(指導書)が書籍の範疇に入り、「TOTAL ENGLISH」は、自他商品の識別力がない語であるから、使用するに当たり全然気にすること無く使用してきたものであり、まして本件商標の指定商品の中には書籍は包含されていないので、たとえ本件商標が存在していることを知ったとしても、積極的に被請求人の使用許諾を得る必要もないのである。
許諾の契約を証する書面を必要とするのは、被請求人の方であって、本件商標の登録後においても株式会社秀文出版は商標権者である被請求人との間で、必要のない乙第6及び第7号証記載の使用許諾の「申し出」をしたこともないし、通常使用権の許諾契約を如何なる形態においても締結していないのである。そして甲第1号証の1に示すごとく、破産管財人からの回答を受け、乙第6及び第7号証に相当する書面は存在しない事を立証したものである。
(ロ)本件商標の使用商品について
被請求人提出の乙第3ないし第5号証(甲第5号証中 No.82ないし84と同じ)の教師用指導資料(指導書)は、定期的に刊行される雑誌ではない。
また、該教師用指導資料(指導書)は、株式会社秀文出版によって発行される中学校用英語教科書を採用している中学校に、教師用指導資料(指導書)として編集し、株式会社秀文出版の営業部員が、その中学校に持参し、営業活動の一環として学校(担当先生)に無料で配布しているものである。
被請求人は、同商品の裏表紙に定価100円と表示され、同価格で販売されたのであるから、商標法上の商品(雑誌)と述べているが、先の通り、実際は中学校用英語教科書を販売するに当たり付随的に行われるサービスといい得る商品であり、サービスであるがゆえに教師用指導資料(指導書)についても過剰なサービスを防ぐ意味から社団法人教科書協会において頁数などの規制もある。
教師用指導資料(指導書)は、このような目的でもって発行されるものであるからして、たとえ同商品の裏表紙に定価100円と表示されているからといっても一般の書店にては販売されてはいないし、何人も100円にて求めることはできない。このことは、この業界においては常識であって、同じ業界にある被請求人も十分承知のことである。
したがって、本件商標の使用商品は、中学校用英語教科書を販売するに当たり付随的に行われるサービスとしての商品であり、商標法上の商品に該当せず、一歩譲っても、定期的に刊行される雑誌ではない。
(ハ)被請求人は、本件商標の存続期間更新登録の際、本件商標が通常使用権者によって商品「雑誌」に使用されていたことは審査において認定を受けた旨述べているが、存続期間更新登録の審査は、もともと性善説にてなされ、積極的に職権でもって審査されるものではないので、本件商標が通常使用権者によって商品「雑誌」に使用されていたと認められたからといって絶対的なものとはいえない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、請求の理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第13号証を提出した。
(1)請求の理由に対する答弁
(イ)被請求人は、本件商標を通常使用権者である株式会社秀文出版(東京都豊島区駒込4丁目12番7号在)に、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品中「雑誌」に使用させている。
(ロ)本件商標の使用説明
(a)被請求人は、株式会社秀文出版に対し、本件商標の使用範囲を「教科書の内容の扱い方を、使用する教師の為に説明・解説する定期刊行物(雑誌)の題号に使用する」ことを含め、1993年(平成5年)4月より4ヶ年、使用することを許諾し(乙第6号証)、引き続き1997年(平成9年)4月より4ヶ年、使用することを許諾した(乙第7号証)。
(b)通常使用権者の株式会社秀文出版は、本件商標を題号とした乙第3号証の定期刊行物(雑誌)を、平成8年6月15日に発行し、これを平成8年の後半から平成9年にかけて、主に全国の中学校へ販売しており、引き続き乙第4及び第5号証の定期刊行物(雑誌)を平成10年にも発行・販売している。このように、定期刊行物(雑誌)は、年数回継続的に刊行しているものである。
(c)通常使用権者の使用商標は、本件商標と実質上同一の機能を果たし得るものであって、社会通念上同一の商標を使用しているとみて差支えないものである。
(ハ)以上、通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、請求に係る商品の一部である「雑誌」について本件商標を使用しているものである。
(ニ)したがって、本件商標は、審判請求に係る商品につき、商標法第50条第1項の規定により、これを取り消すことができない。
(2)弁駁に対する答弁
(イ)乙第6及び第7号証の許諾書は、許諾時の1992年12月及び1996年11月に株式会社秀文出版(東京都豊島区駒込4-12-7 サニーハイツ302)の代表取締役であった請求人(長谷川信夫)と、被請求人の株式会社トータル英語研究会(東京都豊島区駒込4-12-7 サニーハイツ203)の代表取締役R.C.ゴリスとの当事者間において本件商標の使用許諾について合意が整い作成されたものである。
(ロ)株式会社秀文出版に許諾した商標を使用する権利は、その許諾内容を総合勘案すれば、通常使用権を許諾したものと認めるのが相当である。
(ハ)株式会社秀文出版の代表取締役であった請求人(長谷川信夫)は、平成6年7月中旬頃、被請求人の株式会社トータル英語研究会の代表取締役R.C.ゴリスに本件商標の存続期間更新登録出願の手続を求めた。被請求人は、その求めに応じ、本件商標の存続期間更新登録願を平成6年8月12日付で提出(乙第13号証)、平成7年5月30日付で更新登録がなされたものである(乙第2号証)。前記更新登録願(乙第13号証)に添付した登録商標の使用の事実を示す書類には、本件使用商品(乙第3ないし第5号証)と掲載内容を共通にする雑誌の現物(更新出願平6-725881に添付のものを援用)を提出し、これが「雑誌」として認定され、かつ、商標の使用者である株式会社秀文出版と商標権者との関係も、本件使用許諾書(乙第6号証)の原本(更新出願平6-725881に添付のものを援用)を提出したことにより、通常使用権者の使用と認定され、更新登録が認められたものである。してみれば、本件商標が通常使用権者によって商品「雑誌」に使用されていたことは、既に本件商標の前記更新登録の審査において認定を受けていたものである。

4 当審の判断
被請求人提出の乙第6及び第7号証(商標使用許諾書)によれば、被請求人は「株式会社秀文出版」(東京都豊島区駒込4-12-7)に対し、本件商標の使用を許諾しているものであることが認められる。そして、乙第3ないし第5号証(商品現物)によれば、「株式会社秀文出版」は少なくとも平成8年6月から同10年にかけて、本件商標をその取扱いに係る商品「教科書の指導用資料」(以下「本件商品」という。)に使用しているものであることが認められ、かつ、本件商品が本件審判の請求に係る指定商品中の「雑誌」の範疇に入ることも明らかというべきである。
請求人は、乙第6及び第7号証記載の使用許諾の「申し出」をしたこともなければ、通常使用権の許諾契約を如何なる形態においても締結していない旨、そして、株式会社秀文出版には乙第6及び第7号証に係る書面は存在しない旨(甲第1号証の1及び2)述べ、被請求人と株式会社秀文出版との間の使用許諾の事実を否定するが、乙第6及び第7号証には、被請求人である株式会社トータル英語研究会が株式会社秀文出版に対し、本件商標「TOTAL ENGLISH」を中学校英語教科書に関連する部分について、前者(乙第6号証)が1992年(平成4年)12月当時に、また、後者(乙第7号証)が1996年(平成8年)11月当時に、それぞれその翌年4月より4年間使用することを許諾する内容が開示されているところ、その内容に不可解、不自然とされる点はなく、これを架空のものと断ずべき理由は見当たらない。
ところで、請求人は、当時、株式会社秀文出版の代表者であったと認められ、普通一般には当該使用許諾に関し、その存在を知り得る立場にあったとみるのが相当であるから、このような者が上述の如く使用許諾の事実を否定しているということはその事実の存在を疑わせるに十分であり、決して軽視できないものである。しかしながら、請求人がその主張の証とする甲第1号証の1及び2についてみるに、甲第1号証の1は、請求人からの問い合わせに対する破産管財人の回答書であるところ、その内容からは破産管財人が平成12年5月25日現在保管している関係書類中に「乙第6号証」「乙第7号証」に相当する書面その他通常使用権の許諾を内容とする契約書類がないことが証明されたにとどまるものであり、過去において紛失、破棄等があった可能性は否定できず、また、同じく甲第1号証の2は、請求人自身が請求人の主張に沿うよう陳述した内容の証明書であって、何ら客観性のないものであるから、いずれの証拠もその証明力は低く評価せざるを得ず、結局、請求人の主張は、記憶に依拠した不確実なものに帰着し、錯誤の可能性も否定できないものである。
さらに、被請求人(商標権者)は、当該使用許諾書作成当時、株式会社秀文出版と同住所において同社出版物の印税を処理する会社として業務を行っていたのであるから、この両者間には、業務上緊密な関係があったと認められるところ、本件商標の登録出願(昭和56年11月19日)から本件審判の請求(平成11年8月27日)までの約18年もの間、被請求人会社が株式会社秀文出版に知られることなく、本件商標の出願、登録、更新出願、更新登録の各手続を独自に行ったとするには、被請求人において意図的に隠匿する等特段の事情がない限り、一般的にみて不自然といわざるを得ないが、本件審判を通じて両者間にそのような特段の事情があったと認めるに足りる主張も証拠もない。
これら諸事情を総合勘案すれば、株式会社秀文出版は、少なくとも平成5年4月以降、本件商標に関し、通常使用権者の地位にあったと解するのが合理的である。請求人の前記主張は客観的妥当性に乏しく、採用できない。
また、請求人は、本件商品について、中学校用英語教科書を販売するに当たり付随的に行われるサービスとしての商品であり、商標法上の商品に該当せず、また定期的に刊行される雑誌ではない旨主張する。しかしながら、たとえ中学校用英語教科書に付随するものであっても、本件商品は、それ自体独自の商品価値を有し、教科書本体とは別個の取引形態をもって独立して商取引の対象となり得るものであって、そうである以上、これを商標法上の商品でないとまでいうことはできない。そして、乙第3ないし第5号証並びに甲第10号証によれば、本件商品は、教科書の内容や扱い方について使用した教師等の意見、感想などを紹介しているものであり、毎号その内容を異にしながら号を追って発行され、1999年(平成11年)現在、その号数も第86号を数えるに至っており、その発行形態、内容、題字、裏表紙等の体裁からみて、商品「雑誌」の範疇に入ると判断して何ら差し支えないものと認められ、また、定期に刊行されないことを理由に「雑誌」でないということもできない。したがって、この点に関する請求人の主張も採用し得ない。
以上のとおり、本件商標は本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内においてその請求に係る指定商品中「雑誌」について、通常使用権者「株式会社秀文出版」により使用されていたものと認める。
したがって、本件商標は商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-11-27 
結審通知日 2001-11-30 
審決日 2001-12-11 
出願番号 商願昭56-96493 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (126)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 照雄 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 岩本 明訓
林 栄二
登録日 1984-08-28 
登録番号 商標登録第1706704号(T1706704) 
商標の称呼 トータルイングリッシュ 
代理人 小原 英一 
代理人 大房 孝次 
代理人 佐々木 弘 
代理人 白濱 國雄 
代理人 三瀬 和徳 

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