• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1061574 
審判番号 無効2000-35315 
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-06-14 
確定日 2002-06-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4048846号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成13年2月22日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成13(行ケ)年第0114号平成13年9月20日判決言渡)があったので、更に審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4048846号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4048846商標(以下、「本件商標」という。)は、「Golden Retriever」の欧文字を横書きしてなり、第25類「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、靴下、スカーフ、手袋、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー」を指定商品として、平成5年6月30日登録出願、同9年8月29日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
1 請求の趣旨
結論掲記
2 請求の理由
(1)引用商標
請求人の所有に係る登録第2202445号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和62年12月24日登録出願、平成2年1月30日に設定登録、その後、平成11年11月16日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであって、現に有効に存続しているものである。
(2)そこで、本件商標と引用商標との類否について、以下に比較検討する。
本件商標は「Golden Retriever」の英文字を書してなるところ、その構成文字に相応して「ゴールデンリトリーバー」の一連の称呼が生じるとともに、「ゴールデン」は色彩表示的意味合いであるので、単に「リトリーバー」の称呼も生じる。一方、引用商標は「Labrador Retriever」の英文字と横向きの犬の図形との結合商標であり、「Labrador Retriever」の英文字部分から「ラブラドールリトリーバー」の自然的称呼が生じるとともに、「ラブラドール・リトリーバー」は「リトリーバー」の代表的犬種であるところからしても、需要者、取引者が、引用商標の構成部分から特徴のある「ラブラドール」の称呼、観念を生じる「Labrador」、或いは「リトリーバー」の称呼、観念を生じる「Retriever」を適宜抽出して使用するものであることは、商取引の経験則上明らかである。
したがって、引用商標は、「ラブラドールリトリーバー」の一連の自然的称呼のほか、「リトリーバー」の称呼をも生じるものである。
よって、本件商標と引用商標は共に「リトリーバー」の称呼を同一にするものである。
そして、指定商品との関係においてみるに、両者は、その指定商品の点においても抵触するものであることは明らかである。
以上の次第で、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同法第46条 第1項第1号の規定によってその登録を無効とされるべきである。
3 請求人の弁駁
(1)本件商標及び引用商標から生じる観念について
(a) 被請求人は、本件商標「Golden Retriever」(ゴールデン リトリーバー)と引用商標「Labrador Retriever」(ラブラドール リトリーバー)とは全く別個の観念を有すると主張している。
(b) しかしながら、
i)両商標は、いずれも、一般世人からすれば「大型のペット犬」が観念されるのであって、両者は観念として同一である。
ii)また、犬種としてみた場合であっても、原産国はいずれもイギリスであること、大型小型の別ではいずれも大型犬であること、いずれも「盲導犬」として評価の高い犬であること、ゴールデンリトリーバーはイエローリトリーバーと呼ばれたこともあり、ラブラドールリトリーバーにも黄色の犬がいることなどからすれば、一般世人をして、「ラブラドールリトリーバー」と「ゴールデンリトリーバー」の区別が付くほどに著名であるとまで認めるに足りる証拠はない。
iii)被請求人は、本件商標の登録時の平成9年の時点では、いずれもわが国で著名な犬種名となっていたと主張して、乙第1号証ないし同第13号証を提出しているが、その証拠の多くはいずれも「愛犬」に関する書籍類であって、「愛犬家」という特定の分野における著名性の主張立証にすぎないものである。本件商標の指定商品は「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、靴下、スカーフ、手袋、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラー」であって、「ペット犬」とは直接にも間接にも関係のない商品であり、「愛犬家」以外の取引者、需要者も多く対象となっているのであって、「愛犬家」という特定の分野において著名であるからと言って、一般世人をして著名であるとまでは言えない。
iv)まして、被請求人の会社名は「株式会社ラブラドールリトリーバー」であることからしても、本件商標は特定の犬種名である「ゴールデンリトリーバー」のみならず「金色ないし黄色のラブラドールリトリーバー」が観念される得るのである。
v)「リトリーバー」が犬の分類に用いられるものであるとしても、甲第5号証から明らかなように「リトリーバー」は「ラブラドール」と一般世人には認識されるのであって、このことは、一般的には「ゴールデンリトリーバー」も「ラブラドール」の一種と認識されることに他ならない。
(2)称呼について
(a) 被請求人は「Golden Retriever」は「Golden」と「Retriever」の不可分一体の商標であると主張している。
しかしながら、かかる一体不可分性は「Golden Retriever」は被請求人のように愛犬家における著名性が一般世人における著名性であるとする主張を前提としているところ、本件商標の指定商品は愛犬家のみを対象とするものではない以上、平均的な需要者、取引者を対象してその著名性は判断されるべきである。
しかるとき、本件商標の「Golden」は「金色の」という色彩的意味合いを持ち、また外観的にも「Golden」と「Retriever」との間に文字間隔が開いているから、「Golden」と「Retriever」とを可分な商標と見るとことは何ら不自然でもなければ不合理でもない。
被請求人は請求人が「Golden Retriever」という犬種の存在自体に触れていないことを作為的であると主張しているが、請求人は平均的な取引者、需要者の間において「Golden Retriever」=犬種と認識されているとは理解していないだけのことである。
したがって、本件商標からは「Retriever」(リトリーバー)の称呼も生じるとすることは何ら不合理ではない。
(b) また、被請求人は、引用商標「Labrador Retriever」については、「LABRADOR/ラブラドール」の登録商標が存在していたことから犬の図形との結合でようやく登録されたものであるから、「ラブラドールリトリーバー」の称呼、観念のみを生じると主張する。
しかしながら、「LABRADOR/ラブラドール」の登録商標はすでに消滅しており、また、引用商標の構成上「Labrador」と「Retriever」とは文字間が空いているうえ、犬の図柄で分断されていること、甲第5号証から「Retriever」の代表犬が「Labrador Retriever」であると一般的に認識されていることからすれば、引用商標からは「ラブラドールリトリーバー」のほか、「ラブラドール」、「リトリーバー」の称呼も生じるとすることは合理的である。
(3)よって、請求の趣旨記載のとおりの審決を求めるものである。
4 証拠方法
請求人は、証拠として甲第1号証ないし同第5号証を提出した。

第3 被請求人の答弁の要点
1 答弁の趣旨
「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決。
2 答弁の理由
(1)「Golden Retriever(ゴールデンリトリーバー)」と「Labrador Retriever(ラブラドールリトリーバー)」とは、いずれも特定の犬種、それも我が国内にて極めて人気の高いペット犬として、本件商標登録前から広く認知されているものであり、全く別個の観念を有するものである。
即ち、「Labrador Retriever(ラブラドールリトリーバー)」は、短毛の大型ペット犬であるのに対し、「Golden Retriever(ゴールデンリトリーバー)」は、長毛の大型ペット犬であって、本件商標登録時の平成9年の時点では、既にいずれも我が国内にて著名な犬種名である。
(2)(A) 請求人は、本件商標「Golden Retriever」が「ゴールデンリトリーバー」の称呼の他に、「ゴールデン」は色彩表示的意味合いであるとして、単に「リトリーバー」の称呼も生ずると主張している。
しかしながら、「Golden Retriever(ゴールデンリトリーバー)」とは、被請求人による造語ではなく、前記したように我が国でペット犬として著名な特定の犬種の名称である。
つまり、本件商標「Golden Retriever」における「Golden」は、「Retriever」と結合することにより、単なる色彩的意味合いを超えて「ゴールデンリトリーバー」という特定の且つ著名な犬種名を示すものである。
また、「Golden Retriever(ゴールデンリトリーバー)」という犬種名は、頭部の「Golden」を省いて、後部の「Retriever」のみ分離して把握・認識して、これを称呼するようなことはしないのであるから、本件商標の「Golden」と「Retriever」は、不可分である。
よって、「Golden Retriever」は、「Golden」と「Retriever」からなる不可分一体の商標である以上、その称呼も観念も「ゴールデンリトリーバー」のみであると解するのが極めて自然且つ合理的なのであって、請求人主張のように「Golden Retriever(ゴールデンリトリーバー)」という当該犬種名の著名性を全く考慮せず(それどころか、請求人は、当該犬種の存在、自体にも触れていない)、「Retriever」の部分のみ分離観察すること自体極めて不自然であり、作為的である。
(B) 引用商標の「Labrador Retriever」の英文字と横向きの犬の図形との結合商標について請求人は、「ラブラドールリトリーバー」の称呼・観念の他、「ラブラドール」及び「リトリーバー」の称呼・観念も生じると主張する。
(a) しかしながら、引用商標は、その出願前に、文字のみでの出願を請求人及び被請求人が検討し、被請求人会社の費用で杉浦正知弁理士に調査依頼したところ、当時既に「LABRADOR」と「ラブラドール」の二段からなる商標がオーミケンシ株式会社により出願登録(商標登録第1154177号)されていた。
そのため、「Labrador Retriever」の英文字のみでの登録は難しいと判断されたので、請求人と被請求人は、引用商標の通りの英文字と横向きのラブラドールリトリーバー犬の図形とを結合して構成した上、請求人名義で出願して、ようやく登録に漕ぎ着けた。
即ち、引用商標は、ラブラドールリトリーバーという短毛犬の横向きのシルエットからなる図形と、「Labrador Retriever」の英文字を重ね合わせる形で結合させ、全体を一体不可分とすることにより、前記オーミケンシ株式会社の「LABRADOR」と「ラブラドール」の二段からなる登録商標(商標登録第1154177号)との類似を回避した。
よって、かかる経緯からしても、また、結合商標の構成自体からしても、引用商標は、商標全体が一体として「ラブラドールリトリーバー」の称呼・観念のみを生ずるものであると言えるのであり、「Labrador」のみでの称呼・観念は生じない。
(b) また、引用商標からは、猟犬種一般を意味する「Retriever」の称呼・観念も生じえない。
なぜなら、前記の通り、引用商標の犬の図形部分は、短毛犬であるラブラドールリトリーバー犬を示しており、引用商標は、かかる図形と英文字とを重ね合わせる形で結合させた商標であり、全体が一体として「ラブラドールリトリーバー」の称呼・観念のみを生じるものである。
さらに、「Retriever(リトリーバー)」とは、もともと犬の分類上用いられる表現であり、犬種名の後部に「Retriever(リトリーバー)」と付く犬種は、複数存在するのであって、取り分け、日本国内においては、「Golden Retriever」が「Labrador Retriever」よりも多くペット犬として飼われてきているため、「Retriever」だけでは、どの犬種か全く特定できないからである。
これは、例えば「テリア」という犬の分類にも、ヨークシャーテリア、ブルテリア、スコティッシュテリア等の著名な別個の犬種が存在し、「テリア」だけでは、どの犬種か全く分からなしいことと同じなのである。
(c) よって、引用商標は、ラブラドールリトリーバーという著名な犬名を用いた特殊な結合商標であると言え、全体が一体不可分と構成されているものであるので、その称呼・観念も「ラブラドールリトリーバー」のみである。
(3)前記した点に鑑みれば、本件商標の「Golden Retriever」の英文字からなる商標と、引用商標の「Labrador Retriever」の英文字と横向きの犬の図形との結合商標については、称呼の点においては、「ゴールデンリトリーバー」と、「ラブラドールリトリーバー」とを比較すべきであると言えるのであって、とすれば称呼において両者は異なっている。
また、両者の観念、外観も異なっていることは明白である以上、両者はそれぞれ識別力を有する非類似の商標である。
(5)以上のとおり、本件商標については、商標法第4条第1項第11号の規定に該当しない。
よって本件審判につき答弁の趣旨通りの審決を求める。
3 証拠方法
被請求人は、証拠として乙第1号証ないし同第15号証を提出した。

第4 当審の判断
本件商標と引用商標の類否について判断するに、本件商標「Golden Retriever」に接した愛犬家及び一般消費者にとっては、この英文字から、これらを一体として観察して、「ゴールデンリトリーバー」という称呼と「ゴールデンリトリーバー犬」という観念が生じることがあり得るとしても、これらの称呼と観念のみしか生じないということはできず、外観上、「Golden」と「Retriever」との間に間隔があり、しかも15字から成る、一語とするには長い語であるから、同英文字を構成する「Golden」と「Retriever」とを分離して観察することも多いものというべきである。
一方、引用商標に接した愛犬家及び一般消費者にとっては、英文字部分の「Labrador Retriever」から、これらを一体として観察して、「ラブラドールリトリーバー」という称呼と「ラブラドールリトリーバー犬」という観念が生じることがあり得るとしても、これらの称呼と観念しか生じないということはできず、外観上、「Labrador」と「Retriever」との間に間隔があり、しかも17字から成る、一語とするには長い語であるから、同英文字を構成する「Labrador」と「Retriever」とを分離して観察することも多いものというべきである。
このように、両商標において、「Retriever」の部分が他の構成部分と分離されて観察されることになると、これらが本件商標の指定商品に使用された場合、特別の事情がない限り、それらから生じる共通の称呼「リトリーバー」、あるいは、「リトリーバー」に対応して生じる共通の観念(犬に詳しくない者も、「リトリーバー」が犬の種類の名であるという程度の認識を有することはあり得る。)を通じて、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるものというべきである。そして、本件全証拠を検討しても、上記特別の事情を見いだすことはできない。
そうとすると、本件商標「Golden Retriever」は、その構成中の後半の「Retriever」の文字部分のみが独立して認識される場合もあり、「Retriever」の文字よりは、「リトリーバー犬」の観念を生じ、これに相応して、「リトリーバー」の称呼をも生ずるものというべきである。
他方、引用商標は、別掲に示すとおり、犬の横向きのシルエット図形と「Labrador Retriever」の文字を横書きしてなるところ、引用商標の文字部分である「Labrador Retriever」の後半の「Retriever」の文字部分のみが独立して認識される場合もあり、「Retriever」の文字よりは、「リトリーバー犬」の観念を生じ、これに相応して、「リトリーバー」の称呼をも生ずるものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、外観において相違する点があることを考慮してもなお、「リトリーバー犬」の観念を生じ、これに相応して、「リトリーバー」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならず、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標をその指定商品について使用するときは出所の混同を生ずるおそれがあるということができ、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといえるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
引用商標

審理終結日 2001-01-23 
結審通知日 2001-02-06 
審決日 2001-02-22 
出願番号 商願平5-70157 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (025)
T 1 11・ 263- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 板垣 健輔 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 柳原 雪身

井出 英一郎
登録日 1997-08-29 
登録番号 商標登録第4048846号(T4048846) 
商標の称呼 ゴールデンリトリーバー、リトリーバー 
代理人 三原 研自 
代理人 吉能 平 
代理人 丸山 裕司 
代理人 稲元 富保 
代理人 中村 智廣 
代理人 馬場 恒雄 
代理人 田中 史郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ