• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122
管理番号 1061451 
審判番号 審判1999-35063 
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-05 
確定日 2002-06-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第2706790号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2706790号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2706790号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示したとおり、「Valentinouniversale」の欧文字及び「ヴァレンティーノウニベルサル」の片仮名文字を二段に横書きした構成よりなり、平成2年10月23日登録出願、第22類「はき物、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成7年4月28日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして、その無効の理由に引用する登録第1786820号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年6月25日に設定登録、その後、平成7年8月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
また、請求人が本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして、その無効の理由に引用する登録第852071号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲(3)に表示したとおり、「VALENTINO」の文字を肉太に横書きしてなり、昭和43年6月5日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年4月8日に設定登録、その後、同56年3月31日、平成2年6月27日及び同12年4月4日の三回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第1415314号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和55年4月30日に設定登録、その後、平成2年5月23日及び同12年4月4日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第972813号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲(4)に表示したとおり、「VALENTINO」の文字を横書きしてなり、オランダ国への1969(昭和44)年10月16日付出願に基づく優先権を主張して、昭和45年4月16日登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録、その後、同57年9月22日及び平成4年12月24日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものであり、当該指定商品中の「かばん類、袋物」については、商標登録の一部放棄を原因とする一部抹消登録が平成2年6月25日になされているものである。
同じく、登録第1793465号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年7月29日に設定登録、その後、平成7年10月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第1402916号商標(以下「引用F商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、同54年12月27日に設定登録、その後、平成1年11月21日及び同12年1月25日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。(以下、これらを一括していうときには、「各引用商標」という。)

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、概略以下の理由を述べるとともに、証拠方法として甲第1号証ないし同第62号証(枝番号を含む)を提出した。
本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第8号の規定違反について
請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」或いは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記の各種商品について使用している者であるが、上記の「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。
そして、ヴァレンティノ・ガラヴァニは世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられたことの多いことは甲第7号証の1ないし32及び同第8号証(登録異議の申立についての決定謄本)をはじめとして、甲第13号証の2、同第15号証の2ないし3、同第16号証の2、同第22号証の2、同第25号証の3、同第30号証の2、同第33号証の2、同第36号証の2、同第46号証の2ないし3、5、そして、同第48号証(報知新聞)によっても明らかである。
しかるところ、本件商標は、その構成が甲第1号証の1に示すとおりのものであって、その構成文字中、「Valentino」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されていることは明らかである。したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第8号の規定に違反してされたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号の規定違反について
本件商標と引用A商標とを比較検討するに、本件商標の構成は甲第1号証の1に示すとおりであって、全体として特定の観念を生じ難いものである。 なおかつ、「Valentinouniversale」の欧文字は、その全体を称呼するときには、「ヴァレンティノユニヴァーサル」の10音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「ヴァレンティノ」と「ユニヴァーサル」の間に段落を生ずるものであり、さらに、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名が「VALENTINO 」(ヴァレンティノ)と略称され、著名なものとなっている等の点よりして、これに接する取引者、需要者は、その構成文字中、取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引にあたる場合も決して少なくないとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。したがって、本件商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるといわざるをえない。
一方、引用A商標がその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは請求人提出の各書証によっても明らかなところであって、引用A商標は、「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼を生じ、当該称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称され、著名なものとなっていることとも相挨って、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないというのが相当である。すなわち、引用A商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるをえない。
してみると、本件商標は引用A商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用A商標のそれと抵触すること明らかであるから、結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号の規定違反について
請求人は上記の引用A商標以外にも、多数の登録商標を使用しているところ、そのうちの引用B商標は、甲第3号証の1に示すとおり、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品とするものであり、また、引用C商標は、甲第3号証の2に示すとおり、「VALENTINO GARAVAN1」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品とするものである。
同じく、引用D商標は、甲第4号証に示すとおり、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和47年7月20日にその登録がされ、その後、指定商品中の「かばん類、袋物」についての当該商標権は放棄されており、さらに、引用E商標は、甲第5号証に示すとおり、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として昭和60年7月29日にその登録がされたものであり、そして、引用F商標は、甲第6号証に示すとおり、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品とするものである。
しかして、引用B商標及び引用C商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること、引用D商標及び引用E商標がべルト、その他の身飾品に使用されていること及び引用F商標がライターについて使用されていることは甲第10号証ないし同第62号証によって明らかであり、しかも、これらの登録商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは甲第10号証(登録異議の申立てについての決定謄本写)ないし同第62号証によって明らかである。
そして、本件商標と引用A商標が称呼上類似することは上述のとおりであり、引用B商標ないし引用F商標と本件商標もまた称呼上類似する商標であるといわざるを得ない。また、本件商標の指定商品と各引用商標に係る上記商品は何れも服飾品の範疇と密接な関係にある。したがって、本件商標を被請求人(商標権者)が、その指定商品に使用した場合には、当該商品が恰も請求人の製造・販売に係る商品であるか又は同人と経済的あるいは組織的に何等かの関係にある者、すなわち、姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがある。
ゆえに、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない(被請求人は、答弁書において、答弁の趣旨を「本件審判の請求を却下する」と記載しているところ、答弁の全趣旨よりして標記記載の明瞭な誤りと認め、事実上治癒のあったものと判断し、以下、審理する。)、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、概略以下の理由を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第44号証を提出した。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号の規定に該当するから無効とされるべきである旨主張しているが、本件商標は、次の理由により前記各号の規定には該当しない。
(1)商標法第4条第1項第8号の非該当について
請求人は、「Valentino」が「Valentino Garavani」氏の著名な略称であると主張しているが理由はない。すなわち、「Valentino」はイタリア人の姓としてありふれているものである。また、本件商標の指定商品である靴業界では「Valentino Garavani」の他に「VALENTINO」(乙第1号証ないし同第2号証)、「mario valentino」(乙第3号証)、「GIOVANNI VALENTINO」(乙第4号証)、「Rodolfh Valentino(乙第5号証ないし同第6号証)[「VALENTINO RUDY(乙第5号証)」及び「ヴァレンティノ(乙第6号証)」の誤記]、「Valentino Rudy」(乙第7号証)等の商標が使用されているから、「Valentino」の文字だけから取引者や需要者が「Valentino Garavani」を直ちに連想することはない。このことは請求人の商品にも「Valentino」ではなく「Valentino Garavani」又は「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」が商標として使用されていることからしても明らかである。したがって、「Valentino」は「Valentino Garavani」の著名な略称ではない。
なお、請求人は、甲第8号証を提出して、「Valentino」が著名な略称であることを立証しようとしているが、これは本件商標の指定商品とは非類似の商品に関するものであり、事件が全く相違するから、本件商標の証拠とはなり得ないものである。また、甲第8号証では「VARENTINO」[「VALENTINO」の誤記]を著名な略称と判断した理由も明らかではないから、これのみでもって前記文字を著名な略称であると認定することはできない。さらに、請求人は、甲第7号証の1ないし32、甲第13号証の2、同第15号証の2ないし3、同第16号証の2、同第22号証の2、同第25号証の3、同第30号証の2、同第33号証の2、同第36号証の2、同第46号証の2ないし3及び5、そして、同第48号証(報知新聞)を提出して前記文字が著名な略称であることを立証しようとしているが、カタログ全体を見ると「valentino garavani」を商標として使用していることは明らかであり、カタログの一部に「ヴァレンティノ」や「VARENTINO」の記載があるのは説明の都合上「garavani」を省略しているだけであると判断できるので、これらの証拠によって「Valentino」が著名な略称であると認めることは到底できない。このように、「Valentino」は「Valentino Garavani」の著名な略称ではないから、これを前提とする請求人の主張は失当であることが明らかである。
(3)商標法第4条第1項第11号の非該当について
請求人は、本件商標が引用A商標(甲第2号証)に類似するから商標法第4条第1項第11号の規定に該当すると主張している。しかしながら、本件商標は引用A商標とは類似しないから、商標法第4条第1項第11号の規定には該当しない。そこで本件商標と引用A商標との類否について検討するに、本件商標は、上段の欧文字も下段の片仮名文字もそれぞれ同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔をもって外観上まとまりよく一体のものとして表現されており、本件商標に接する取引者・需要者は全体として特定の意味合いを有しないものと認識するとみるのが相当である。しかして、これより生ずる「ヴァレンティーノウニベルサル」の称呼も格別冗長のものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、「Valentino」「ヴァレンティーノ」の文字部分を殊更分離して看取し、称呼することはないとみるのが自然である。そうとすれば、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものと認識され「ヴァレンティーノウニベルサル」の一連の称呼のみを生ずるものである。
他方、引用A商標は、前記の文字構成よりなるものであるところ、その構成文字に相応していずれも「ヴァレンティーノ」の称呼を生ずること明らかである。そうすると、本件商標と引用A商標とは、称呼上その音構成を著しく異にし明瞭に聴別し得るものである。また、本件商標と引用A商標とは、外観上区別し得ること明らかであり、さらに、本件商標は特定の観念を生じないこと前記のとおりであるから、本件商標と引用A商標とは比較することができない。してみれば、本件商標と引用A商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても非類似の商標であり、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当するという請求人の主張は失当である。
(4)商標法第4条第1項第15号の非該当について
請求人は、甲第3号証ないし同第6号証,同第10号証、同第62号証を提出して「Valentino」が著名商標であると主張しているけれども、乙第8号証ないし同第44号証に示すように、被服、ベルト、ライターに関しても「Valentino」を含む商標が多数登録されるとともに使用されているから、これらの商標についても前述と同様に「Valentino」に自他商品識別力はなく、他の文字と結合されて初めて商標としての機能を有するものである。このように、「Valentino」は、靴業界やベルト業界では、同業者間において広く使用されている慣用商標であるから、これが請求人の著名商標であるはずがない。したがって、「Valentino」が著名商標であると主張する請求人の主張は理由がなく、それを前提とする同人の主張は失当であること明らかである。
以上の次第であるから、本件審判請求は成り立たないとの審決を求める。

5 当審の判断
(1)請求人商標の著名性
請求人は、自己の商標の周知・著名性を理由に、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当違反を述べているので、先ず、この点について判断する。
請求人提出の甲第7号証、同第13号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
(ア)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932(昭和7)年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後、フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959(昭和34)年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967(昭和42)年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っている。
(イ)我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は、前記1967年(昭和42年)の「ファッションオスカー」受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌や業界紙、一般新聞にも数多く掲載されるようになり、同氏は我が国において著名なデザイナーとして一層注目されるに至った。
(ウ)同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示される一方、同時に雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており(甲第7号証,同第13号証,同第15号証,同第16号証,同第22号証,同第30号証,同第31号証及び同第38号証等)、ファッションに関して、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば、直ちに同氏を呼称し、又はその作品群を想起させる可能性が少なからずあったものというべきである。
(エ)また、我が国において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されている(以下、「略記商標」という。)ことは、田中千代著同文書院1981年発行「服飾辞典」550頁、山田政美著(株)研究社1990年発行「英和商品辞典」447頁において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「non―no」(集英社)1989年12月5日号等の各記載から充分窺われるものといわなければならない。
(オ)以上の事実よりすると、「VALENTINO GARAVANI」「valentino garavani」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)よりなる商標又は「VALENTINO」「Valentino」(ヴァレンチノ又はヴァレンティーノ)の略記商標(以下、これらの商標ないし前記2において引用した各引用商標を一括して、「請求人商標」という。)は、VALENTINO GARAVANI氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーブランドとして、少なくとも本件商標の登録出願(1990(平成2)年10月23日)前において、我が国の取引者、需要者の間で広く知られていた事実が認められる(甲第7号証,同第13号証,同第15号証ないし同第19号証,同第22号証及び同第23号証,同第27号証及び同第28号証,同第30号証及び同第31号証,同第37号証,同第39号証ないし同第43号証,同第47号証等)。
そして、その状況は、その登録時を含む現在に至るまでの間もなお、継続しているものと認められる。
(2)本件商標の構成について
本件商標は、その構成前記1に示すとおり、「Valentinouniversale」の欧文字及び「ヴァレンティーノウニベルサル」の片仮名文字を二段に横書きした構成よりなるところ、これを構成する綴り字は極めて冗長に亘るばかりでなく、それが全体として特定の意味合いの熟語的文字と認識されるものであればともかく、本件において、そのような特別の事情は見当らず、視覚上又は意味上もこれを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由は見出せないから、むしろ、該構成は、全体として「Valentino」(ヴァレンティーノ)と「universale」(ウニベルサル)の語を結合してなるものと容易に認識し把握されるとみるのが相当である。
そして、本件商標に係る指定商品は、第22類「はき物、その他本類に属する商品」であって、これらは請求人の取扱いに係る商品「婦人服、その他の衣料品、かばん類、靴」等と同様に、いずれも身に着ける商品という点で、その用途又は需要者層を共通にするものであり、かつ、両者の商品は、ともにファッション関連分野に属する商品といえるものである。
(3)出所混同のおそれについて
以上(1)(2)の点よりして、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、その構成中、冒頭にあって請求人商標又は略記商標と綴り字又はその片仮名表記に相応する「Valentino」「ヴァレンティーノ」の文字部分に着目し、容易に請求人商標又は略記商標を想起・連想するとともに、これを請求人に係る一連のデザイナーブランド又はその兄弟ブランドないしはファミリーブランドであるかの如く誤認し、恰も上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)ないしは請求人会社、若しくは、これらの者と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。
(4)被請求人の主張について
(a)被請求人は、被服、ベルト、ライターをはじめ靴に関しても「Valentino」を含む商標が多数登録されるとともに使用されている(乙第8号証ないし同第44号証)から、これらの商標に自他商品識別力はなく、他の文字と結合されて初めて商標としての機能を有するものであると述べ、さらに、「Valentino」は、靴業界やベルト業界では、同業者間において広く使用されている慣用商標であるから、これが請求人の著名商標であるはずがない旨主張している。
しかしながら、請求人の述べる登録事例は、商標の構成等において本件とは事案を異にするものであり、かつ、それらが請求人商標又は略記商標を遙かに凌ぐほど我が国において、いずれもよく知られているとか、あるいは、請求人商標又は略記商標と明確に区別され、混同を惹起させないとする事情はなく、その証拠も見出せないから、登録事例は前記判断を左右するに足りない。
また、靴やベルト等の業界において、「Valentino」が如何なる意味で慣用的に使われているのかは定かでなく、その証拠も見出せないから被請求人の主張は俄に認め難く採用できない。
(b)被請求人は、本件商標がまとまりよく一体的に表されており、全体として特定の意味合いを有さず、これより生ずる称呼も冗長でなく一連にのみ称呼し得るから、これに接する取引者・需要者は、「Valentino」(ヴァレンティーノ)の文字部分を殊更分離せず、構成全体をもって一体不可分のものと認識するというのが自然である旨述べている。
しかしながら、本件商標は、「Valentinouniversale」と「ヴァレンティーノウニベルサル」の各文字を二段に横書きしてなるものであり、19文字の欧文字と14文字の片仮名文字とは、いずれも極めて冗長であるばかりでなく、これを構成する後半の「universale」、「ウニベルサル」の文字部分は、我が国の需要者にとって、やや馴染みの薄い語といえることから、偶々、外国語(伊語)辞典に「universale」、「ウニベルサル」の意味が記載されているからといって、直ちにその意味が我が国において広く知られていることの根拠となるものではなく、したがって、本件商標中に「universale」、「ウニベルサル」の文字が含まれていることは、本件商標に接する需要者が前半の「Valentino」「ヴァレンティーノ」の文字部分に着目することを妨げる事情とはなり得ない。
しかして、商品の出所混同のおそれの有無の判断に当たっては、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、当該他人の商標の著名性及びこの種の商品分野における需要者一般の注意力の程度等を併せ考慮の上、取引の実情に照らし総合判断するに、本件にあっては、前記認定を相当とするから、この点について述べる被請求人の主張は妥当でなく採用できない。
その他被請求人が述べる理由をもってしては、上記認定を覆すことはできない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用A,C,E,F商標

(3)引用B商標

(4)引用D商標

審理終結日 2002-01-07 
結審通知日 2002-01-10 
審決日 2002-01-30 
出願番号 商願平2-119070 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (122)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関口 博金子 茂板垣 健輔 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
泉田 智宏
登録日 1995-04-28 
登録番号 商標登録第2706790号(T2706790) 
商標の称呼 バレンティーノウニベルサル、バレンティーノ、ウニベルサル、バレンティノユニバーサル、ユニバーサル 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 暁秀 
代理人 坂本 榮一 
代理人 今村 定昭 
代理人 杉村 興作 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ