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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 104
管理番号 1060113 
審判番号 審判1997-15431 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1997-09-12 
確定日 2002-06-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2225127号商標の登録取消審判事件について次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第2225127号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和60年5月9日登録出願、別掲に示すとおりの構成よりなり、第4類「化粧品、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年4月23日に設定登録、その後、同12年6月20日に商標権存続期間の更新登録がされているものである。

2.請求人の主張
審判請求人(以下「請求人」という。)は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び同第2号証を提出した。
(1)本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、平成9年12月8日付答弁書(以下「第1答弁」という。)において、本件商標をその指定商品中の「せっけん類及び化粧品」について、本件審判請求の登録日前3年以内に使用している旨主張し、乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
しかしながら、そのうちの乙第2号証の3には、確かに「J&J」の欧文字と「ジェイアンドジェイ」のカタカナ文字を本件商標に酷似する構成で二段に表示したものにマルR(右側Jの文字脇に小さくRの欧文字を〇記号で囲んでなる、いわゆるマルRの表示)の記号を付した表示(以下「使用態様1」という。)と、「お問い合わせ先/J&J マルR ジュジュ化粧品 お客様相談室03‐5269‐2121」の表示(以下「使用態様2」という。)のあることが認められる。しかしながら、これらの表示はいずれも不使用取消を免れることを目的とした名目的な使用にすぎず、登録商標をその指定商品との関係において使用しているものとは認められない。
(ア)先ず、使用態様1は、その構成が本件商標と同じ二段書きであるが、当該表示はスマートさや優美なイメージでデザインをまとめるのが通例といえる化粧品関係の広告としては不自然であり、その配置も唐突で、いかにも無理矢理空いたスペースに取ってつけたように見える。
また、使用態様1の表示は、マルRが付されていることから、これが登録商標を表示したものであることは読みとれるとしても、これが如何なる商品との関係において使用されているのか、あるいは被請求人のハウスマークなのか、当該表示からは全く理解することができない。この点で、被請求人は、本件商標が洗い粉とパック用化粧料について使用されていると主張しているが、使用態様1の表示に接した一般需要者が、これを洗い粉とパック用化粧料のブランドであると認識するとは到底思われない。
(イ)次に、使用態様2は、あたかも被請求人のハウスマークであるかの如く、社名に冠して「J&J」の文字を配しているが、請求人が当該広告掲載の製品を入手したところ、どの製品にも当該製品の販売者や問い合わせ先の表示はあるものの、使用態様2の表示は見当たらず、その代わりに、被請求人のハウスマークと思われる図形が社名に冠して表示されている事実がある。
請求人は当該事実を証するために、甲第1号証及び甲第2号証として、乙第1号証の3に掲載されている製品「ドウパウダーA」と「ドゥパウダーパックC」のコピーを提出する。これによれば、使用態様1の表示も一切、実際の製品について使用されていないことが明らかである。
(ウ)すなわち、使用態様1と使用態様2は、ともに、これらが如何なる商品との関係で使用されているのか不明な表示であって、少なくとも一般需要者がこれらをせっけん類や化粧品の商標であるとは認識し得ないものと言わざるを得ない。
(エ)また、乙第1号証の「情報誌」は、乙第2号証に明らかなように、年に2回発行されるダイレクトメール方式のもので、被請求人は、名目的な登録商標の使用のために当該広告媒体に1回限り広告を掲載したにすぎず、このような作為的な使用証明により登録商標が使用されていると認定されるならば、登録商標の使用義務の強化を趣旨として改正された不使用取消審判制度は全く形骸化する。
(オ)以上の理由から、被請求人の提出した乙第1号証中の使用態様1及び2は、いずれも本件商標の登録の不使用取消を免れんがための名目的使用にすぎず、本件商標が市場において、その諸機能を発揮している事実を立証するものではない。
(カ)被請求人は、平成11年7月27日付の答弁書(以下「第2答弁」という。)において、(1)乙第1号証の3に掲載の広告中の本件商標の使用は、不使用取消を免れることを目的とした名目的な使用ではなく、化粧品についての使用事実を証するものであるうえ、(2)本件商標は、商号の表記にも代えることのできる商標で、個々の商品の識別標識として使用するというよりも「ジュジュ化粧品株式会社」の取扱いに係る商品であることを示す目的で使用されているものであると主張し、さらに、(3)不使用取消審判に関する名目的使用の判例を引用しているが、これが如何なる主張を裏付ける引用であるのか論旨が不明である。
(キ)被請求人は、本件商標が化粧品について使用されていることは明らかであると主張する傍ら、本件商標は、個々の商品の識別標識として使用するというよりも同人の取扱いに係る商品を示す目的で使用されているものであると述べており、このことと同人が第1答弁において、「商標権者は、本件商標を指定商品中のせっけん類及び化粧品に使用している」と主張した事実とを総合すると、如何に本件商標の位置づけ(ハウスマークか、ペットブランドか、どの商品のブランドか)が曖昧で、不自然かがわかる。
(ク)被請求人が本件商標を使用していると主張する化粧品(及びせっけん類)は、大衆向けの大量生産品であり、当業界の常識としては、販売促進のためにマスメディアによる反復継続的な広告宣伝活動を行い、需要者に商標及び商品を良好なイメージとともに認知してもらうことが極めて重要であり、その際、商標も商品特性や需要者層を考慮して、ハウスマークであれ、ペットブランドであれ、優美なあるいは可愛らしいロゴを採用するのが常套手段であるにも拘らず、本件商標の唯一の使用が登録商標に酷似する無骨なブロック体2段書きの表示であるのは、誠に不自然な構成態様と言わざるを得ず、その唐突な表示方法と相まって、当該表示が化粧品についての本件商標の宣伝広告的使用であるとは到底思われず、当該表示に接した需要者が、これを掲載化粧品の商標と認知することはあり得ない。
現に、乙第1号証の3に掲載の化粧品(及びせっけん類)には、全て本件商標とは別のペットブランドがあり、商品の容器に付されているハウスマークが本件商標とは別異のものであることは、既に述べたとおりである。
(ケ)被請求人は、本件商標をどのように使用するかは被請求人の都合による旨述べているが、これら現実に使用され、商品イメージや業務上の信用が蓄積しているペットブランド、ハウスマークとは別に、同一商品について重ねて本件商標をハウスマーク又はペットブランドとして、敢えて使用する意図を明らかにしなければ、名目的使用でないことの反論とはならない。
(コ)請求人は、本件商標に対し、過去に登録異議申立と無効審判請求を行った経緯があり、被請求人が本件不使用取消審判請求を予想して、これに対処すべく、乙第1号証の3掲載の広告中に本件商標を表示することは容易であった。
(サ)なお、被請求人の引用する東京高裁判決、平成4年(行ケ)第144号に関して付言すれば、請求人は、本件商標こそ当該判例の法理に従って名目的使用と認定されるべきものと思料する。当該判例では、商標権者は登録商標を明らかにハウスマークとして使用し、具体的に使用対象商品を明示しているにも拘らず、名目的な広告宣伝的使用と認定されたのであり、況や本件商標のように使用の意図のみならず、使用対象商品さえも不明確な使用態様について、これを名目的な使用でないとみるべき根拠はない。
上述のとおり、化粧品やせっけん類は、良好なブランドイメージの浸透のために莫大な費用をかけて反復継続的な宣伝広告を行うのが通常であり、乙第1号証の3に示された唯1回限りの名目的使用のみにより本件商標に信用が蓄積する可能性のないことは明らかである。因みに当該判例の事案では、商標権者は、特許庁の審判段階で答弁書を提出した記録がないので、「このような広告が登録商標の使用と言えるか否かが争点となったもので、特許庁審判官も・・・・・・これを否定した。」との被請求人の記述は明らかに事実に反する。
(シ)請求人は、以上の理由から、被請求人の第2答弁による反論にも拘らず、被請求人の提出した乙第1号証が依然として本件商標の使用事実を立証するものではなく、そこでの使用は不使用取消を免れんがための名目的使用にすぎないことを確信する。
なお、本件審判の口頭審理にあっては、被請求人には乙第1号証の原本を審判請求人にご提示頂きたい。

3.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めるとして、以下のように答弁し、証拠方法として乙第1号証(枝番を含む。)及び同第2号証及び参考資料(審決取消訴訟判決の写し)を提出した。
(1)被請求人は、本件商標を商品「せっけん類、化粧品」に使用しており、不使用の事実はない。
(2)乙第1号証は、平成9年6月20日に発行された雑誌「PECO」97年夏号であり、その60頁には、商標権者が発売する商品の広告が掲載されている。掲載広告の商品は、「ドゥパウダー」シリーズの4タイプの洗顔料(洗い粉)と2タイプのパック剤(パック用化粧料)についてのもので、当該ページには、本件商標がそのままの構成態様で表示されている。
したがって、商標権者は、本件商標を指定商品中の「せっけん類及び化粧品」に使用していることは明らかである。
付言すると、雑誌「PECO」は、首都圏在住のOL1年目・2年目・3年目の女性をターゲットとした生活提案型の情報誌であり、株式会社アトラクスの企画制作により日商岩井株式会社が発行しているものである。この雑誌の表紙及び目次ページには、発行日の記載が無く「Vol.SUMMER EDITION」との記載があるのみである。しかし、乙第2号証によると、この雑誌は、上記のように1997(平成9)年6月20日に発行されたものであることがわかる。
(3)上述のように、本件商標は、本件審判請求の登録日前3年以内の平成9年6月20日に使用されている事実があるので、審判請求は理由がなく、棄却されるべきである。
(4)請求人は、平成11年2月8日付弁駁書において、被請求人提出の使用事実を証明する資料(乙第1号証の1ないし同3)について、本件商標が表示されている事実を認めながらも、「これらの表示はいずれも不使用取消を免れることを目的とした名目的な使用にすぎず、登録商標をその指定商品との関係において使用しているものとは認められない・・・」と述べ、表示されている商標の使用態様について見解を述べている。
しかしながら、この表示を目にした者は、それが化粧品に使用されているとみることは明らかであって、これを否定する請求人の主張は著しく社会通念に反する誤った独自の見解といわざるを得ない。
(5)ある商品にどのような商標を付して販売するか、あるいは、広告媒体にどのような商標を表示して宣伝広告をするかは、諸般の事情を考慮して決定されるもので、商標権者が適宜検討してなすべき事項である。甲第1号証及び同第2号証に掲載の被請求人の商品に本件商標が付されていないということは、本件審判事件においては全く関係ない。
本件商標は、商標権者の商号「ジュジュ化粧品株式会社」の要部の英文表記「JUJU」の「JU」が二つ続くところから、採択されたものであり、商号の表記にも代えることのできる商標である。したがって、個々の商品の識別標識として使用するというよりも「ジュジュ化粧品株式会社」の取扱いに係る商品であることを示す目的で使用することを狙って取得したものであり、乙第1号証の3に掲載のものも、その目的で用いている。
(6)不使用取消審判における名目的使用の当否については、東京高裁・平成4年(行ケ)第144号判決に示されているとおりである。

4.当審の判断
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または、使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取り消しを免れない。
そこで、本件についてみるに、請求人と被請求人の間には、被請求人が提出した乙第1号証(枝番号を含む。)、すなわち、平成9(1997)年6月20日に日商岩井株式会社が発行した情報誌「PECO」97年夏号Vol.5(以下「情報誌」という。)の60頁に掲載されている被請求人の取扱いに係る商品に本件商標が使用されているか否か等の点について、争いがあるので、先ず、これについて検討する。
(1)調査嘱託の結果について
当庁において、商標法第56条第1項及び特許法第151条において準用する民事訴訟法第226条の規定に基づき、平成13年12月11日付で件外「日商岩井株式会社」宛要旨下記(ア)の文面の文書嘱託を行った結果、手許に得られた当該雑誌原本(以下「嘱託文書」という。)によれば、次の(イ)以下の点が認められる。
(ア)文書送付嘱託書要旨
当庁における上記当事者間の商標登録取消審判事件(平成9年審判第15431号)に関して、被請求人より提出された証拠(下記雑誌の抜粋写し)について当該掲載内容をより正確に把握する必要があるので、下記雑誌(名称)「PECO OL Life Magazine」Vol.5 SUMMER EDITION,(発行日)1997(平成9)年6月20日,(発行元)日商岩井株式会社 DB fan clubに関して、その送付方について嘱託する。
(イ)嘱託文書の表紙には、「Vol.5 SUMMER EDITION PECO OL Life Magazine」とあり、その内容は、被請求人提出の乙第1号証の1(当該情報誌の表紙の写し)と一致していること、及び嘱託文書の60頁と乙第1号証の3(前記情報誌の写しの60頁)の掲載内容も一致していること、また、嘱託文書には、被請求人の販売する化粧品等の広告のみならず、ライバル他社の化粧品等の広告も多数掲載されていること、さらには、該情報誌が各種商品等を通信販売するための一媒体として多数の広告を掲載し、不特定多数の第三者に対して、反復継続的に頒布されていたこと等の点が認められる。
(ウ)嘱託文書の内容及び被請求人提出の乙第2号証第1頁の記載内容、すなわち、「PECO OL Life Magazine/発行 1997年度、I 97年6月20日 97年夏号Vol.5、II 97年11月20日 97年冬号Vol.6/発行元 発行:日商岩井株式会社 DB fan club/発行部数 各120,000部」の記載内容からみて、該情報誌は、1997年に真正に刊行されたこと、また、その発行部数が相当程度の部数であったこと等の点が充分推測される。
(エ)嘱託文書の60頁には、乙第1号証の3の同頁の掲載内容と同じ「J&J」及び「ジェイ アンド ジェイ」よりなる使用商標1及び「お問い合わせ先/J&J ジュジュ化粧品お客様相談室03-5269-2121」の文字よりなる使用商標2の存在並びに取消請求に係る「洗顔又はパック用パウダー」の現物写真が、その広告とともに掲載されていることが認められる。
以上の(イ)ないし(エ)の各点よりして、被請求人提出の乙第1号証及び同第2号証の書証は、真正に成立したものというべく、その成立について疑義を述べる請求人の主張は採用できない。
(2)本件商標の使用について
広告記事(乙第1号証の3)に掲載された「J&J」又は「ジェイ アンド ジェイ」という表示は、本件商標と社会通念上同一のものといえるものであり、かつ、その使用は当該広告掲載に係る「洗顔又はパック用パウダー」等の商品について、被請求人の業務全体を表彰し、或いは、個別商品について総括的にその出所を表示する、いわば、代表的出所標識としての機能・役割を果たしているものとみるのが相当であるから、その使用は前記各化粧品についての商標の使用とみるのが社会通念上相当である。
以上の点及び前記(1)の調査嘱託の結果を総合勘案すると、本件商標は、本件審判請求の登録日前3年以内に日本国内において、その取消請求に係る指定商品中の「洗顔又はパック用パウダー」に使用されていたものと認められる。
他に、この認定を左右するに足る証拠は見出せない。
してみれば、被請求人は、本件審判請求に対して、所定の事項の主張・立証をなし得たものというべきであるから、本件商標は、商標法第50条第2項の規定により、その登録を取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2001-12-28 
結審通知日 2002-01-08 
審決日 2002-01-25 
出願番号 商願昭60-45954 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (104)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 良一 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 泉田 智宏
鈴木 新五
登録日 1990-04-23 
登録番号 商標登録第2225127号(T2225127) 
商標の称呼 ジェイアンドジェイ、ジェイジェイ 
代理人 岡村 信一 
代理人 小林 十四雄 

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