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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない Z09 |
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管理番号 | 1059974 |
審判番号 | 不服2000-16177 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-10 |
確定日 | 2002-05-10 |
事件の表示 | 平成11年商標登録願第47690号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 この出願に係る商標(以下「本願商標」という。)は、「チャップリン」の片仮名文字を横書きしてなり(標準文字による商標)、第9類「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として平成11年5月31日に登録出願され、その後、指定商品については平成12年6月21日付けの手続補正書により第9類「モバイル端末用小型プリンタ」とする補正がされたものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、「本願商標は、『モダンタイムス』、『ライムライト』等の映画並びに独特の服装、動作で世界的に有名であった英国の喜劇俳優「Charlie Chaplin(1889〜1977)」を容易に想起させる「チャップリン」の文字よりなり、かつ、同氏の遺族の承諾を得たものとは認められないから、これをその指定商品について使用するときは、同氏の名声を冒認しようとするものであり、国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨、認定、判断して本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)本願商標について 本願商標は、「チャップリン」の文字よりなるところ、これが世界的に有名な英国の喜劇俳優「チャールズ チャップリン(Charles Chaplin)」(以下「チャップリン」という。)の著名な略称として一般に容易に理解されるであろうことは、「チャップリン(Charles Chapline):映画俳優・監督。ロンドン生れ。哀調をたたえた滑稽味をもつ独特のしぐさと扮装で、弱者・貧者の悲哀と現代西欧社会の不平等への怒りを表現。作『黄金狂時代』『街の灯』『モダン-タイムス』『ライムライト』など。(1889〜1977)」(岩波書店:広辞苑第5版)、「チャップリン(Charles Chapline)1889〜1977。英国生まれの映画監督・俳優。喜劇王といわれていたが、鋭い風刺・批判でファシズムを弾劾。・・・『黄金狂時代』『モダンタイムス』『殺人狂時代』『ライムライト』などの作品がある」(集英社:外国語辞典第2版)及び「Chaplin:チャップリン(1889-1977)英国国籍の映画俳優・監督」(小学館;プログレッシブ英和中辞典)の記載等に照らし、すでに顕著な事実というべく、これを認めるのに充分である。 また、例えば、2001年10月に、NHKのBS放送においてチャップリン映画特集と題するTV映画の放映がされたように、チャップリンの著名性は、現在に至るまで継続しており、我が国においても広く一般に親しまれているというのが相当である。 (2)「チャップリン」の商業上における利用権限について 請求人提出の甲第6号証によれば、チャップリンに係る名称等の商業上の権利は、現在、BUBBLES INCORPORATED S.A.(以下「バブル社」という。)にその専有権が存していることが推認できる。そして、バブル社は、我が国において、「タオル」「ライター」「オルゴール」等の商品に関し、「Charles Chaplin」の文字及びチャップリンの肖像の使用許諾を行っていることが認められる。 そうとすれば、チャップリンの著名な略称である本願商標の登録及び指定商品への使用にあたって、前記バブル社からの許諾等が必要と解されるところ、請求人はこれに関する何らの証左も提出していない。 (3)著名な略称「チャップリン」の登録の是非について 我が国において、その名称、氏名又はそれらの略称をもって著名な者と無関係な者が、その承諾なしに前記の名称等からなる商標について登録を受けることは、それが商標法第4条第1項第8号及び同条第15号等によって商標登録が受けられない場合に当たらないとしても、当該名称等に係るものの名声を冒用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正目的をもって登録出願されたものと認められる限り、商取引秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものというべく、公序良俗を害する行為というべきであるから、同条第7号に該当すると解すべきである(東京高等裁判所判決 平成10年(行ケ)第11号・第12号 平成11年3月24日言渡参照)。 これを本願商標についてみれば、前記(1)及び(2)のとおり、本願商標が喜劇王といわれるチャップリンの著名な略称であり、同氏に関する商品化の専有権をバブル社が有していることよりすれば、これらの者と無関係でかつ何らの承諾も得ていない請求人が本願商標を登録することは、同氏の名声に便乗し、指定商品についての独占を図るものであって不正の目的が認められ、かつ、世界的に著名な喜劇俳優の名声を一私人たる請求人が、前記バブル社又は遺族の承諾もなく独断で商標として使用することは、同氏の名声・名誉を毀損するおそれがあるばかりでなく、商取引の秩序を乱すものであって、ひいては国際信義に反し、又は、公序良俗を害する行為といわざるを得ない。 したがって、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断するのが相当である。 (4)請求人の主張について 請求人は、「『チャップリン』は姓の一つであってチャップリンにのみその帰属が許される排他的性格はなく、かつ、本願商標は同氏を特定する不可欠の要素(例えば独特の風貌やフルネーム)を含んでいないから、同氏の名声を冒認するものでない。そして、著名な『姓』の登録を排除する場合は、その者と密接な関係をもつ「録画済みビデオテープ及びビデオディスク」などのみを対象とすべきであり、チャップリンと関係のない本願指定商品に同氏の名声が影響を及ぼすとはいえないから、本願商標の使用が、同氏の名声を冒認するものでなく、国際信義に反するものではない。」旨主張する。 しかしながら、チャップリンの名声及び本願商標が同氏の著名な略称であることは、請求人もこれを認めるところであり、かつ、同氏に係る名称等を使用する商業上の専有権がバブル社に存することを承知しているにも拘わらず、本願商標を登録しその指定商品に独占的な使用を図ろうとする行為は、同氏の名声に便乗し、又は、その不正目的による使用を推認するのに十分である。 また、本願商標の指定商品「モバイル端末用小型プリンタ」は、甲第1号証によれば、パソコンショップ等で販売されるものであり、その購買層は若年層を主とする一般消費者であって、前記使用許諾商品「タオル、ライター、オルゴール」とは需要者の範囲を共通にする場合が多いといえるから、本願指定商品に付された本願商標より、著名な喜劇王チャップリンを想起し、その名声に惹かれて商品の選択・購買の動機とすることは見易いところといわなければならない。 したがって、前記判断は相当というべきであって、請求人の主張は妥当でなく、採用できない。 (5)結論 以上のとおり、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するといわざるを得ないから、本願はこの理由をもって拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-02-14 |
結審通知日 | 2002-02-22 |
審決日 | 2002-03-19 |
出願番号 | 商願平11-47690 |
審決分類 |
T
1
8・
22-
Z
(Z09)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳原 雪身 |
特許庁審判長 |
原 隆 |
特許庁審判官 |
鈴木 新五 村上 照美 |
商標の称呼 | チャップリン |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 永田 豊 |