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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z03
管理番号 1059937 
審判番号 無効2000-35549 
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-11 
確定日 2002-05-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4352548号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4352548号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4352548号商標(標準文字による商標、以下「本件商標」という。)は、「ニューウエイズジャパン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成11年4月2日に登録出願、第3類「化粧品,せつけん類」を指定商品として、同12年1月21日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4382873号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成11年3月25日に登録出願、次に示す商品又は役務を指定商品及び指定役務として、同12年5月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3類「せっけん類,香料類,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」
第4類「工業用油,工業用油脂,燃料,ろう,靴油,固形潤滑剤,保革油,ランプ用灯しん,ろうそく」
第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,医療用腕環,失禁用おしめ,人工受精用精液,乳児用粉乳,乳糖,はえ取り紙,防虫紙」
第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,型紙,裁縫用チャコ,紙製テーブルクロス,紙製ブラインド,紙製のぼり,紙製旗,紙製幼児用おしめ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにやく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書紬断機,郵便料金計器,輪転謄写機,印刷用インテル,活字,装飾塗工用ブラシ,封ろう,マーキング用孔開型板,観賞魚用水槽及びその附属品」
第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしよう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,魚ぐし,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具,デンタルフロス,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製又は陶磁製の包装用容器,かいばおけ,家禽用リング,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,紙タオル取り出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),ねずみ取り器,はえたたき,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,コッフェル」
第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」
第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」
第31類「あわ,きび,ごま,そば,とうもろこし,ひえ,麦,籾米,もろこし,うるしの実,コプラ,麦芽,ホップ,未加工のコルク,やしの葉,食用魚介類(生きているものに限る。),海藻類,獣類・魚類(食用のものを除く。)・鳥類及び昆虫類(生きているものに限る。),蚕種,種繭,種卵,飼料,釣り用餌,果実,野菜,糖料作物,種子類,木,草,芝,ドライフラワー,苗,苗木,花,牧草,盆栽,生花の花輪,飼料用たんぱく」
第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール製造用ホップエキス」
第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,ゴルフの興行の企画・運営又は開催,相撲の興行の企画・運営又は開催,ボクシングの興行の企画・運営又は開催,野球の興行の企画・運営又は開催,サッカーの興行の企画・運営又は開催,競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,当せん金付証票の発売,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,スキー用具の貸与,スキンダイビング用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,教育情報の提供,運動用特殊衣服の貸与,運動用特殊靴の貸与」

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第19号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)無効理由1について
引用商標の出願日は平成11年3月25日であり、これに対して本件商標の出願日は平成11年4月2日である。したがって、本件商標は引用商標の後願に係るものである。
また、本件商標に係る指定商品「化粧品,せつけん類」は、引用商標に係る指定商品に含まれており、両商標の指定商品が抵触することは明らかである。
本件商標「ニューウエイズジャパン」の構成中「ジャパン(日本)」は地理的表示であるから本件商標の識別力を発揮する部分(要部)は「ニューウエイズ」である。したがって、本件商標からは当該文字に相応して「ニューウエイズ」の称呼も生じることは明白である。
引用商標はその構成文字及び商標権者の名称から「ニューウエイズ」の称呼が生じることは明らかである。このことは、本件商標及び引用商標の商標公報の称呼(参考情報)の欄にいずれも「ニューウエイズ」の称呼が記載されていることからも窺うことができる。したがって、本件商標と引用商標とは称呼において類似するものである。
したがって、本件商標は商標法第8条第1項及び商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものである。
(2)無効理由2について
本件商標「ニューウエイズジャパン」は、請求人の商号「ニューウエイズ株式会社」の要部である「ニューウエイズ」を含むものである。この「ニューウエイズ」は請求人の商号ではないが、一般の取引において商号が要部のみに略称されて当該会社自身を指標するものとして使用されていることは一般に認められるところであり、「ニューウエイズ」は請求人の名称と認められるべきものである。
ここで、「ニューウエイズ」が請求人の略称又は自己の取り扱いに係る商品「化粧品、洗剤等」を指標するものとして日本国内のみならず広く外国においても周知、著名であることを、請求人は甲第3号証ないし甲第10号証をもって立証する。
ニューウエイズ社は1986年に米国で設立され、1998年には米国以外のイギリス、カナダ等の世界40ケ国で化粧品、健康食品、洗剤等の製造販売の事業を展開している国際企業である。ニューウエイズ社の1996年、1997年、1998年の売上は、それぞれ約1億4400万米国ドル、約3億米国ドル、約5億米国ドルであり、飛躍的にその業績を延ばしている。日本においては平成9年10月1日に日本における営業所が設立登記され、平成11年1月に正式に事業をスタートしている。事業をスタートする前の予備登録のディストリビューターの数が約15万人、その後3ケ月を経過した時点においてはディストリビューターが約24万人となり、平成11年では約43万人となり、平成12年には約50万人になる見込みである。さらに、これらのディストリビューターは個々に他人に対して営業活動を行っており、ニューウエイズ社およびその取り扱い商品がいかに多くの者に知られているかを窺うことができる。
その結果、「ニューウエイズ」の名称は日本においても広く多数の需要者に周知、著名となっているものである。これに伴って、ニューウエイズ社の事業活動は各種業界誌に大きく取り上げられている。なお、ニューウエイズ社はニューウエイズジャパン株式会社を設立し平成12年9月25日付けでその登記を完了している。
このような事実から明らかなように、「ニューウエイズ」は、請求人の名称としてはもとより、請求人の取り扱い商品を指標する商標として少なくとも平成11年4月2日当時から日本国内及び外国において取引者、需要者間で広く知られているものである。
本件商標「ニューウエイズジャパン」は、少なくとも.平成11年4月2日当時から周知、著名となっている請求人の名称あるいは当該名称の略称である「ニューウエイズ」を含むものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するにもかかわらず登録されたものである。
(3)無効理由3について
本件商標は、無効理由2の項で述べたように請求人の取り扱いに係る商品「化粧品、洗剤類」を表示するものとして少なくとも平成11年4月2日当時から周知、著名となっている引用商標と類似し、引用商標が使用される商品とも同一ないしは類似するものであり、本件商標は引用商標と彼此混同されるおそれが十分にある商標である。
また実際の取引においても、引用商標と誤認、混同されるおそれのある本件商標の使用によって、請求人に係る商品と被請求人に係る商品との誤認、混同が生じ、取引界における混乱が生じている。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号、第15号に該当するにもかかわらず登録されたものである。
(4)無効理由4について
本件商標は、前記したように請求人の業務に係る商品を表示するものとして少なくとも平成11年4月2日当時から日本国内及び外国における需要者の間で周知、著名となっている引用商標と類似するものである。
また、一般の取引において商号が要部のみに略称され、その略称が当該会社自身のみならず、その取り扱い商品を指標するものとして使用されていることは現在広く見られるところである。因みに、請求人も「ニューウエイズ」の略称で自ら営業活動を行い、またこの略称で取引者、需要者に認識され今日に至っている。
本件商標について考察するに、本件商標の権利者の商号は「ニューウエイジャパン株式会社」であり、「ニューウエイジャパン株式会社」を商号または商標として観察した場合、識別機能を発揮しない部分と認められる「ジャパン」(地理的名称)及び「株式会社」を省略した要部に該当する部分は「ニューウエイ」であるから、会社自身又はその取り扱い商品を表示する名称として実際に使用されるのは要部の「ニューウエイ」であって、本件商標の要部である「ニューウエイズ」が使用されるとは到底考えられないものである。
してみれば、被請求人が、被請求人の商号の要部である「ニューウエイ」とは異なる「ニューウエイズ」の商標登録を取得してこれを使用することは、請求人に係る世界的に周知、著名の引用商標に化体された信用を利用する行為であると推測されても当然であるということができる。すなわち、本件商標は不正の目的をもって使用するものであると認めるのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するにもかかわらず登録されたものである。
したがって、本件商標の登録は同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
(5)答弁に対する弁駁
被請求人は乙第1号証〜乙第8号証を提示し、「商標の文字構成中に地名が含まれている場合、その類否判断は、地名を識別力がないとして取り去った状態で判断するのではなく、逆に地名を無視することなく地名が一体となった全体としての商標に基づいて行わなければならないことを示している。」と断定して、本件商標と引用商標とは称呼において類似するものではないと主張するが、この被請求人の主張は誤りである。
先ず、被請求人が提示している乙第1号証と同第2号証との関係、乙第3号証と同第4号証との関係、乙第5号証と同第6号証との関係、乙第7号証と同第8号証との関係が、本件商標と引用商標の類否関係の判断に適用されるものではない。
請求人の調査によれば、「ジャパン」又は「JAPAN」と他の文字との組み合わせに係る商標の類否判断において、「ジャパン」又は「JAPAN」の文字は「日本」の意を表す語として何人にも知られている語であり、産地を表示する場合に普通に使用されるものである。したがって「ジャパン」又は「JAPAN」の文字部分は単に該商品の産地名を表したものに過ぎないから、他の構成文字が自他商品の識別機能を発揮する場合には当該文字のみの称呼をも生じる、と認定して両商標は類似すると判断された審決例、審査例(甲第11号証ないし同第17号証(枝番を含む。))がある。
また、被請求人が提示した乙第6号証と乙第8号証に係る商標は当該商標権者の商号商標である。請求人は乙第8号証に係る商標を確認するために甲第18号証として当該商標公報を提示する。また、乙第3号証と同第4号証に係る商標はいずれも商号の要部に係る文字を片仮名又は英語表記したものである。
これらの事実を考慮して検討するに、当該法人の商号に係る商標は、特段の事由がない限り一体として把握されて人格権、商号権として保護されるべき(商標法第4条第1項第8号)であり、他の商標との類否判断においては、全体として外観上のまとまりの有無、全体として一定の意味観念を有するか否か、称呼する場合冗長でないか否か等を総合的に判断してなされるべきものと考えられる。
なお、国際的な商取引が盛んな今日においては特に、当該取り扱い商品の生産地、販売地、又は取引地を示すために、商号の要部の前又は後に「JAPAN」、「フランス」、「東京」、「パリ」等の地名を表示して使用される例は極めて多く見受けられるところであり、このような現状において、本件請求人の商号の要部「ニューウエイズ」に「ジャパン」を付加して使用される商標「ニューウエイズジャパン」(本件商標)と、本件請求人の商号の要部を英文字表記した「NEWAYS」およびその称呼「ニューウエイズ」を含む商標(引用商標)と、に接する取引者、需要者がその営業主体、営業に係る商品について誤認混同をするおそれがあることは明白である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判請求費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
(1)無効理由1について
本件商標は、「ニューウエイズジャパン」の称呼を生じる。
請求人は、「本件商標『ニューウエイズジャパン』の構成中『ジャパン(日本)』は地理的表示であるから本件商標の識別力を発揮する部分(要部)は『ニューウエイズ』である。したがって、本件商標からは当該文字に相応して『ニューウエイズ』の称呼も生じることは明白である」と断じ、これを本件商標と引用商標とが類似する根拠とする。
しかし、この判断は誤っている。例えば、(ア)商標登録第1908000号(乙第1号証)と商標登録第4278991号(乙第2号証)、(イ)商標登録第4253691号(乙第3号証)と商標登録第4318697号(乙第4号証)、(ウ)商標登録第4178837号(乙第5号証)と商標登録第4214702号(乙第6号証)及び(エ)商標登録第1139927号(乙第7号証)と商標登録第2358638号(乙第8号証)との関係を見れば、明らかである。
なお、これら(ア)から(エ)で対比された商標の各指定商品は、各号証に示すように同一あるいは重複しており、その区分も本件商標と同じかそれに近い区分のものである。
このことは、地名のみから成る商標が識別力を有しないのは当然のこととして(商標法第3条)、商標の文字構成中に地名が含まれている場合、その類否判断は、地名を識別力がないとして取り去った状態で判断するのではなく、逆に地名を無視することなく地名が一体となった全体としての商標に基づいて行わなければならないことを示している。また、特に、(エ)で挙げた乙第8号証の商標は本件商標の権利者所有の商標である。この商標と乙第7号証の商標との関係は、乙第8号証商標が商号商標であることから「株式会社」及び「KABUSHIKI KAISHA」の部分を捨象して類否判断を行なうことになり、比較すべき商標の関係態様が本件商標と引用商標の関係と同じ態様になる。したがって、類否判断は、同じ結論になるのでなければ、判断の一貫性が保たれない。なお、公報中に記載されている「称呼」の欄は、単に検索に際しての参考のためのものであり、これによって類否が決定付けられるわけではない。
上記したことから、引用商標が「ニューウエイズ」の称呼を生じるとしても、本件商標の称呼は「ニューウエイズジャパン」であり、両商標は厳然と区別できるものである。
ところで、引用商標は、前記したように特徴ある図形内に文字を絡ませた商標である。この文字部分は、それだけを取り出した場合、前記した乙第7号証商標との関係が問題となる。乙第7号証商標は、第4類の「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品とし、上記した構成を有する。乙第7号証商標の称呼である「ニューウエイ」と、引用商標の文字部分の称呼である「ニューウエイズ」とは、「ウエイ」が単数であるか複数であるかの違いを有するに過ぎない。したがって、乙第7号証商標がありながら引用商標が登録されたということは、引用商標は、「NEWAYS」という文字が男女ペアの横顔図形内に取り込まれ一体となった状態であってはじめてまとまりのある単一の商標を構成すると考えるべきである。
いずれにしろ、本件商標と引用商標とは、称呼において類似するものではない。なお、そもそも引用商標は、既に登録されており、商標法第8条第3項に規定する同条第1項の先の出願にはあたらないのであるから、本件商標が同条項に違反するという無効理由は当を得ない。
(2)無効理由2について
商標法第4条第1項第8号に規定する「他人の名称」に商号が含まれることについて異論はない。しかし、「株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた部分は、同号にいう『他人の名称の略称』に該当するものと解すべきであって、登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた略称を含むものである場合には、その商標は、当該略称が他人たる株式会社を表示するものとして『著名』であるときに限り、登録を受けることができないものと解するのが相当である」(最高二小昭57.11.12判『民事集36巻11号2233頁』)。したがって、請求人が問題とする「ニュ一ウエイズ」なる名称は、本件商標の出願日において著名でなければ、本件商標について商標法第4条第1項第8号の適用はない。この点、請求書に散見される「周知」とか「広く知られている」という程度では、本条項を適用する余地はない。
本件商標の出願日は、平成11年(1999年)4月2日である。
請求人の提出した甲第3号証は、2000年2月時点での商品カタログである。また、甲第9号証は、1999年4月とあるだけで、発行日が本件商標の出願日前であるかどうか解らない。甲第10号証は、発行月が1999年5月で出願後のものである。したがって、これらの甲号証は、請求人の主張する商標法第4条第1項第8号違反を裏付ける証拠には形式上なり得ない。
請求人は、請求書で、「『ニューウエイズ』が請求人の略称又は自己の取り扱いに係る商品『化粧品、洗剤等』を指標するものとして日本国内のみならず広く外国においても周知、著名であることを、請求人は甲第3号証ないし甲第10号証をもって立証する」と記載しているが、各号証において具体的に何を立証しようとしているのかが定かでない。請求書に記載された日付や数字についてもどの甲号証が対応し、これを証明づけるのか判然としない。例えば、請求書に、「ニューウエイズ社は1986年に米国で設立され」とあるが、甲第9号証には「1996年、トムとディー・マウア夫妻が設立」とあり、10年もの開きがある。甲第3号証のカタログには、設立が1992年8月とある。日本国内のディストリビュータの数も、請求書に「平成11年では約43万人となり、平成12年には約50万人になる見込みである」と記載しているが、甲第3号証に「日本におけるディストリビューター数の推移」とあり、そこには「1999年(平成11年)37万人、2000年約40万人とある。ディストリビュータとは、通常は、販売、営業員をいうが、請求人のビジネス形態は「アムウエイ社」と同様のものであり(甲第7号証、甲第9号証等参照)、ディストリビュータ自身が顧客を兼ねる。登録をし、商品を購入したものが新たな顧客(販売員)を勧誘し、自分から派生したディストリビュータの勧誘数に応じてコミッション収入を得るシステムである。したがって、一般ユーザーに商品を販売するのとは異なり、登録され、かつ商品を購入したディストリビュータの数の把握に6万人とか10万人の違いが生じるのは、理解できない。ディストリビュータの数に関しては、甲第6号証に「ロシアでは50万人」とあり、甲第7号証ではニューウエイズ社長が「日本と同じくらい15万人ほどです」とインタビュアに答えている。甲第6号証と甲第7号証は、1998年10月と12月の「NETWORK BUISINESS」と称する雑誌(発行元不明)の記事である。
また、売上に関し、請求書に、「1996年、1997年、1998年の売上は、それぞれ約1億4400万米国ドル、約3億米国ドル、約5億米国ドルであり」とあるが、甲第3号証には1997年約1.7億米ドル、1998年2.5億米ドルとある。更に、甲第9号証にデイリー・ブレント社長が「現在の売上げ数字は120万ドル」と述べている。甲第9号証は、先に記したように1999年4月号の「ビューライフ」と称する雑誌(発行元不明)の記事の写しである。請求書によれば、平成11年1月の事業スタート時点で約15万人、本件商標の出願時点であるその3ヶ月後には約24万人のディストリビュー夕がいることになっている。120万米ドルを1ドル120円換算で置き換えると、1億4,400万円になる。これを24万人のディストリビュー夕で割ると、600円である。ディストリビュ一夕の登録時には商品を多少とも購入するわけであるから、この数字も矛盾に満ちたものである。ビジネスの立ち上げ時にはディストリビュータを数多く獲得しなければならないから、売上を過少に答える必要性はない。とすれば、ディストリビュータの数自体に客観性がないことになる。また、化粧品やせっけん類の販売業において、上記した売上額は、120万米ドルを含めて何ら多いものではない。
更に、請求人は、請求書に、「世界40カ国で化粧品、健康食品、洗剤等の事業を展開している」とあるが、甲第3号証の「世界の営業中の国々(1999年7月現在)」としては、20カ国しか記載されていない。
以上のように、請求人の主張は、甲号証を参照すると、逆に数字及びその内容において矛盾に満ちたものであり、本件商標の出願時点において、著名性を獲得していたとする客観的な証拠に裏付けられたものではない。
また、甲第6号証によれば、ニューウエイズ社は秘密主義を通し、米国でのディストリビュータが20万人あまりしかいないこともあって日本に情報が入ってこなかったと、記載されている。
著名商標であるためには、地方レベルでは足らず、全国的規模で需要者あるいは取引者が当該商標を知っている必要がある。請求人の主張は、証拠に裏付けられた根拠を欠くものであり、本件商標の出願時点で全国的レベルで著名性を獲得していたとは到底いえない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
(3)無効理由3について
引用商標は、請求人所有の商標登録第4382873号に係る前記特異な構成を持つ商標である。無効理由2で請求人が挙げた商号商標とは異なる。したがって、請求人は、引用商標の周知性あるいは著名性を何ら立証していない。
請求人は、「実際の取引において、…本件商標の使用によって、請求人に係る商品と被請求人に係る商品との誤認、混同が生じ、取引界における混乱が生じている」というが、具体的にいつどのようにして誤認混同を生じたのか、明確にしてもらいたい。事実と証拠に基づかない主張は、無意味である。
請求人は、引用商標と無効理由2で述べている商号商標を区別して考えていないが、上記したように両者は別の商標である。「NEWAYS」の文字のみから成る商標について考えると、請求人は、この商標について引用商標から離れて単独で商品商標として使用している事実を、主張も立証もしていない。甲各号証に商品の写真が掲載されているが、それらは引用商標の使用を裏付けるに過ぎない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号あるいは第15号に該当するものではない。なお、付言するに、被請求人は、「NEWAYS」の文字のみから成る商標は、前記した乙第7号証の商標と類似するものであると考える。
(4)無効理由4について
本件商標の商標権者は、昭和63年より地道な営業努力と商品開発努力を重ね、その商号商標(前記乙第8号証)を指定商品に継続使用することで、国内の主として美容師業界においてはある程度名を知られた会社である。本件商標は、乙第8号証の商標の「ニューウエイジャパン株式会社」の構成中「ニューウエイ」の部分についてこれを複数形に改めて商品商標としたものであり、商標権者の営業戦略上、何ら根拠を欠くものではない。乙第8号証商標と本件商標とは、被請求人にとっては対を成す商標である。
請求人は、無効理由4においても、引用商標と請求人の商号商標を区別することなく使っている。引用商標が周知、著名でないことは上記した通りである。また、仮に周知、著名であったとしても、「無効理由1について」で述べたように、引用商標と本件商標とは非類似の商標である。
請求人は、請求書において、本件商標についての考察と称して、被請求人の会社名が「ニューウエイジャパン株式会社」であることからして、「ニューウエイ」と使用することはあっても「ニューウエイズ」という文言を使用することはない、などと分けの解らないことを述べている。会社名が「ニューウエイジャパン株式会社」だから、「ニューウエイズジャパン」という商標を使うことは到底考えられない、という主張は、請求人の勝手な論理であり、自己の商号に関連してどういう商品商標を採択しようが請求人には関係ない。
前記したような営業戦略上の見地から、被請求人は、自己の商号商標と近い範囲の文字商標を選択し、正規に登録を受けたのである。
商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的」について、審査基準では、具体的な要件を挙げている。被請求人は、請求人に対して本件商標の買取を要求したこともなければ、代理店契約の締結を要求したこともない。特異な引用商標と本件商標とが類似するものでもない。したがって、本件商標が同条項号に該当するものでないことは、明らかである。

第5 当審の判断
本件商標は、「ニューウエイズジャパン」の文字を横書きしてなるところ、その構成文字全体より特定の観念を有するものとは認められず、また、これより生ずると認められる「ニューウエイズジャパン」の称呼も冗長というべきものであって、他に、これを常に一体のものとしてのみ把握しなければならないとする特段の事情を見出せないものである。
そして、本件商標の構成文字中の「ジャパン」の文字が「日本」を意味する地名を表すものと理解されるばかりでなく、国際的な商取引にあって、国際企業が、日本支社の名称として、「ジャパン」(JAPAN)を用い、「〇〇〇ジャパン」等の表示がよく使用されているといえるものであるから、商標中の語尾部分に「ジャパン」の文字を有している場合、これに接する取引者、需要者は該文字を自他商品の識別標識としての機能を有するものとは理解、認識せず、簡易迅速を尊ぶ取引の場においては、前半部の文字部分に着目して、これより生ずる称呼をもって取引にあたることも決して少なくないものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「ニューウエイズジャパン」の一連の称呼を生ずるほか、構成文字中の前半の「ニューウエイズ」の文字部分に相応して、「ニューウエイズ」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
他方、引用商標は、別掲に示すとおり図形と文字との組み合わせよりなるものであって、その構成中の「NEWAYS」の文字部分は、成語として知られているものとはいえないことより、図形部分との観念上の結びつきが認められず、本件商標を構成する図形部分と文字部分とは、常に一体のものとしてのみ把握しなければならないとする特段の事情を見出せないものであるから、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「NEWAYS」の文字部分に着目して、これより生ずるといえる「ニューウエイズ」の称呼をもって取引にあたることも決して少なくないものとみるのが相当である。
そうとすれば、引用商標は、その構成中の「NEWAYS」の文字部分に相応して、「ニューウエイズ」の称呼を生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標は、引用商標と「ニューウエイズ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品「化粧品,せつけん類」は、引用商標の第3類の指定商品中「せっけん類、化粧品」と同一又は類似する商品と認められる。
そして、本件商標は、引用商標の登録出願の日より後の登録出願に係るものであって、商標登録出願人を異にするにもかかわらず、先に商標登録されたものであることは、前記1及び2並びに当該商標登録原簿の記載に徴して認めることができる。
なお、被請求人の援用する登録例は、いずれも本件と事案を異にするものであるから、それに基づく被請求人の主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標は、他の無効理由について検討するまでもなく、商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
引用商標


審理終結日 2002-04-02 
結審通知日 2002-04-05 
審決日 2002-04-16 
出願番号 商願平11-28476 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (Z03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 幸一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 野本 登美男
茂木 静代
登録日 2000-01-21 
登録番号 商標登録第4352548号(T4352548) 
商標の称呼 ニューウエイズジャパン、ニューウエイズ、ウエイズジャパン、ウエイズ 
代理人 川浪 薫 
代理人 植田 茂樹 

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