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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 032
管理番号 1057286 
審判番号 無効2001-35088 
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-01 
確定日 2002-04-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4075245号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4075245号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4075245号商標(以下、「本件商標」という。)は、「MALIBU PRIME」の欧文字を横書きしてなり、平成7年8月30日に登録出願され、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、同9年10月24日に設定登録されたものである。

2 請求人が引用する引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由の商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する登録第1686149号商標(以下、「引用商標A」という。)は、「MALIBU」の欧文字を横書きしてなり、昭和56年7月24日に登録出願され、第28類「リキュール、その他の洋酒、ぶどう酒、その他の果実酒、その他本類に属する商品」を指定商品として、同59年5月29日に設定登録され、現在有効に存続しているものである。
同じく登録第2135253号商標(以下、「引用商標B」という。)は、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、昭和61年5月1日に登録出願され、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、平成1年4月28日に設定登録されたものであるが、本件商標権は、平成11年4月28日に存続期間の満了により、その登録の抹消が平成12年1月19日になされているものである(以下、この2つを併せて「引用商標」ともいう。)
同じく商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第2051038号商標(以下、「引用商標C」という。)は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなり、昭和60年8月9日に登録出願され、第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品として、昭和63年5月26日に設定登録され、現在有効に存続しているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第61号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第11号に該当し、その登録は同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第15号について
(イ)引用商標の前権利者であるイギリス国、トウェルブ・アイランズ・シッピング社(以下、「トウェルブ社」という。)は、1981年頃から引用商標を付したココナッツ風味のリキュールをニッ力ウヰスキー株式会社、日本ビューブライン株式会社及びジャーディン・ワインズ・アンド・スピリッツ株式会社などを日本における代理店として輸入、販売し、鋭意企業努力を継続したものである。その結果、現在では、バルバドス産のホワイト・ラムにココナッツ果肉を配合した「ココナッツ風味のリキュールの先駆者」として我が国で権威のある輸入酒のガイドブックである「世界の名酒事典」の1989年度版、1993年度版、1999年度版及び2000年度版や「英和商品名辞典」に積極的に紹介されるまでに至ったものである(甲第4号証ないし同第5号証)。
(ロ)また、1998年4月には、高級アイスクリームとして我が国でも人気の高いハーゲンダッツ社は、引用商標の高い著名性や品質の良好さに着目して、ハーゲンダッツ・アイスクリーム・ミニカップ「マリブ」なる商品を引用商標Bをあしらったラベルを付して発売し、1998年4月下旬よりテレビを中心に大々的な宣伝活動を行った(甲第6号証)。
(ハ)引用商標は、我が国の他、オーストラリア、オーストリア、ベネルクス、デンマーク、フランス、ドイツ、レバノン、ノルウェー、スイス、イギリス、アメリカといった世界各国においても商標登録を受け(甲第8号証ないし同第18号証)、また、酒類の業界紙で最も権威がある「IMPACT INTERNATIONAL」誌の1998年2月号において、引用商標が付されたりキュールは、1996年から1997年までに世界で最も成長したブランドのトップ15の第10位として、及び、1996年から1997年までに世界で最も大量に売れたブランドのトップ100のうちの第53位として紹介され、世界的な著名性を獲得した(甲第19号証)。
(ニ)そして、引用商標の高い著名性について、請求人の所属する同業者組合である日本洋酒輸入協会が証明するところである(甲第7号証)。
このような引用商標の著名性は、インターネット上の日本語のウェブサイトにおいて頻繁に引用商標が掲載されていること(甲第20号証ないし同甲第51号証)、また、世界最大の検索サイトである「YAHOO」の公式検索エンジンであるGOOgleにより、インターネット上の英語のページを「MALIBU」および「LIQUEUR」をキーワ-ドとして検索すると、僅か0.59秒で2,530件のページがヒットしたものであり、これらのページは英語で作成されたものしても、そもそもインターネットには国境が無く、わが国国民も容易にアクセスできることからも、わが国における著名性を立証するための証左となり得るものである(甲第52号証)。
かかる品質の高さと著名性ゆえ、世界ソムリエコンクールにおける筆記試験の問題として出題された(甲第29号証)。
(ホ)以上のように、請求人の有する引用商標は、ココナッツ風味のリキュールに使用され、本件商標の出願時である平成7年8月30日には、日本その他世界各国において請求人の商標として著名となっており、現在に至っているものである。
一方、本件商標は、その構成中「MALIBU」の文字を含むため、これをその指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、引用商標を想起し、商品の需要者が請求人の業務に係る商品と出所について混同するおそれが極めて高いものである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり「MALIBU PRIME」の欧文字を一連に左横書きしてなるものである。ここで、本件商標からは、「マリブプライム」の称呼の他に「マリブ」の称呼も生じるものと考えられる。
なぜならば、まず、本件商標中「PRIME」の文字は、「最良の、最上質の」等のを意味する形容詞であり(甲第54号証及び同第55号証)、当該商品の品質が良好であることを表す商品の品質誇称表示であるところ、形容詞的文字を有する結合商標は、原則として、当該形容詞的文字が付加結合されていない商標と類似するものだからである。
さらに、本件商標は、全体として特定の意味に観念しなければならない格別の理由はないものであり、「MALIBU」の文字と「PRIME」の文字との結合は極めて弱く、その上、全体を称呼するときは「マリブプライム」と7音にも達するやや冗長な音構成からなるものであるため、これに接する取引者・需要者は、簡易迅速を尊ぶ取引裡においては、独立しても識別標識足り得る「MALIBU」の文字のみをとらえて、これより生ずる「マリブ」の簡潔な称呼のみをもって取引に資する場合が多いと考えられる。
なお、請求人の上記主張を立証すべく本件と類似の事案である審決例を挙げて自己に有利に援用する(甲第56号証ないし同第61号証)。
以上に加え、引用商標Cにおける「MALIBU」商標は先に述べたように著名登録商標であって、一般にこのような著名登録商標を一部に含む商標において、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し、当該著名登録商標の称呼、観念が生じるものであることは、裁判所の判断等においても明らかである(例えば、昭和39年(ワ)第12182号判決)。
以上のように、本件商標に接する者は、一見してこれが「MALIBU」からなるものと認識し、したがって、本件商標からは「マリブ」の称呼が生じると考えられる。
他方、引用商標Cにおける「MALIBU」の文字からは、「マリブ」の称呼が生じることはいうまでもない。
よって、本件商標は、引用各商標とその称呼を共通にする称呼上類似の商標である。
次に、本件商標は、第32類「清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、乳清飲料」を指定商品としているのに対し、引用商標Cは、第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品としているため、両商標の指定商品が抵触することは明白である。
以上より、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

5 当審の判断
(1)引用商標の著名性
請求人の提出に係る証拠の甲第4号証(「世界の名酒事典」講談社発行1989年度版、1993年度版、1999年度版及び2000年度版)、同第5号証(「英和商品名辞典」研究社発行第2刷1991年)、同第6号証(ハーゲンダッツ社のアイスクリームに関する広告)同第7号証(日本洋酒輸入協会理事長竹山満氏による引用商標が著名であることを証明する書面)、同第19号証(「IMPACT INTERNATIONAL」誌1998年2月号抜粋)、同第20号証ないし同第52号証(インターネット上の日本語及び英語のウェブサイト)及び請求人の主張の趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(イ)引用商標の前権利者であるイギリス国、トウェルブ・アイランズ・シッピング社(以下「トウェルブ社」という。)は、1981年頃から、ジャマイカ産のライト・ラムにカリブ海産のココナッツ果肉を配合したココナッツ風味のリキュールに引用商標Bを付して製造、販売し、また、日本においてはニッ力ウヰスキー株式会社、日本ビゴーブライン株式会社及びジャーディン・ワインズ・アンド・スピリッツ株式会社などを日本における代理店として輸入、販売され、また、同社リキュールは、引用商標Aである「MALIBU」とも表示し、「マリブ」とも称されているものであること、そして、前記事実が記載された「世界の名酒事典」及び「英和商品名辞典」は、世界の名酒、商標、ブランドが集約された事典類として知られるものであること、
(ロ)高級アイスクリームとして我が国でも人気の高いハーゲンダッツ社は、引用商標の著名性に着目して、アイスクリーム・ミニカップなる商品に引用商標Bをラベルに付して発売し、1998年4月下旬よりテレビを中心に大々的な宣伝活動を行ったこと、
(ハ)リキュール「MALIBU」は、酒類の業界紙である「IMPACT INTERNATIONAL」(1998年2月号抜粋)に1996年から1997年までに世界で最も成長したブランドのトップ15の第10位として、及び1996年から1997年までに世界で最も大量に売れたブランドのトップ100のうちの第53位として紹介されたこと、
(ニ)当業者の協会である日本洋酒輸入協会においては、引用商標の「MALIBU」が需要者に広く知られていることを証明するところであること、
(ホ)リキュール「MALIBU」は、現在、インターネット上の日本語及び英語のウェブサイトにおいて数多く掲載され、また同リキュールは、世界ソムリエコンクールにおける筆記試験の問題として出題されたこと、
以上の事実よりすると、引用商標は、前記リキュールに使用され、本件商標の出願時である平成7年8月30日には、需要者の間に広く知られた商標となっているものと判断するのが相当であり、この事実は現在も継続しているものと認められる。そして、この認定を覆す証拠はない。
(2)本件商標と引用商標との類似性
本件商標は、前記のとおり、「MALIBU」と「PRIME」の文字間を一文字程度の間隔を開けてなる構成であって、両文字は視覚上分離して看取され、また「PRIME」の文字は、「最良の、最上質の」等の意味を有する外来語として用いられており、指定商品との関係では自他商品の識別力を有しないか、または極めて弱く、そして、両文字が意味上等の上で常に一体のものとしてみなければならない特段の理由は見当たらない。さらに、本件商標の構成全体より生ずる「マリブプライム」の称呼にしても7音であってやや冗長感のある音構成であり、その上「MALIBU」が著名性があることから、簡潔を常とする取引界において本件商標に接する取引者・需要者は、それ自体で識別力を有する「MALIBU」の部分に着目し、印象付けられる場合も少なくないものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、「MALIBU」の文字より「マリブ」の称呼をも生じ、他方、引用商標は、「MALIBU」の構成文字に相応して、「マリブ」の称呼が生ずること明らかであるから、本件商標と引用商標とは、「MALIBU」の文字において近似した印象を与えるものであって、全体として互いに紛れるおそれのある商標といえる。
(3)本件商標の指定商品の「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」と引用商標に使用されている「ココナッツ風味のリキュール」とは同じ飲料として需要者を同一にする場合も、あり得ることが考えられる。
(4)出所の混同について
そうすると、上記認定の事実より、引用商標は、ココナッツ風味のリキュールに使用され、本件商標の出願時には、日本その他世界各国において請求人の商標として需要者の間に広く知られた商標となっており、また本件商標と引用商標とは欧文字「MALIBU」の標章において類似性があること、そして本件商標の指定商品の「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」と引用商標に使用している「ココナッツ風味のリキュール」は同じ飲料として需要者を同一にする場合もあることから、本件商標を、その指定商品に使用した場合、取引者、需要者は、引用商標を連想、想起し、該商品が請求人または同人と何らかの関係がある者の取引に係る商品であるかのように出所について混同するおそれがある。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(5)むすび
したがって、本件商標は、請求人のその余の主張について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)引用商標B

(2)引用商標C


審理終結日 2001-11-12 
結審通知日 2001-11-15 
審決日 2001-11-27 
出願番号 商願平7-89385 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (032)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1997-10-24 
登録番号 商標登録第4075245号(T4075245) 
商標の称呼 マリブプライム 
代理人 上原 空也 
代理人 中村 稔 
代理人 菊地 栄 
代理人 吉武 賢次 
代理人 塩谷 信 
代理人 神谷 巖 

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