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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 016
管理番号 1057043 
審判番号 審判1999-30609 
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1999-05-21 
確定日 2002-03-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第3141392号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3141392号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3141392号商標(以下「本件商標」という。)は、「デジタルハリウッド」の文字よりなり、商品及び役務の区分第16類に属する「雑誌、書籍、新聞」を指定商品として平成8年4月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)本件商標は、継続して3年以上、日本国内において、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれによっても、その指定商品についての使用がなされていないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
(2)被請求人は、請求人には本件商標の登録取消請求につき法律上の利益を有しないから、本件審判請求は却下されるべきである旨、また、請求人が本件商標の登録取消審判請求をなすことは権利の濫用である旨主張している。
しかしながら、本件商標の登録取消審判請求に適用される商標法第50条第1項の規定によれば、何人も本条の審判請求をなすことができる旨規定されているのであるから、本請求人が法律上の利益を有することを示すまでもなければ、本件審判請求が権利の濫用であろうはずもなく、被請求人の前記主張が失当であることは明白である。
(3)被請求人は、乙第8号証を提示して、本件商標がその指定商品である書籍に使用されていると主張している。ここで、被請求人は、本件商標が通常使用権者であるマイクロキッズ株式会社の開講したMicrokids塾においてMicrokidsカリキュラムデジタルコースの教則本として製作され発行されたと述べている。
しかしながら、この乙第8号証は通常使用権者であるマイクロキッズ株式会社自身が発行したものとされているところ、これが実際に本件商標の指定商品である書籍として流通したものであることの立証はなされていない。
そして、被請求人によれば、この乙第8号証は上記Microkids塾での特定のコースの教則本として製作されたものである。仮に、乙第8号証が上記塾内において特定のコースの受講者にのみに配布されたものであるとすれば、これは教育関係の役務に関する商標の使用とはなり得ても、それのみでは商品書籍としての流通があったことの立証にはならない。
以上のように、乙第8号証によっては、本件商標が書籍を含む指定商品について実際に使用されたことの立証はなされないのであるから、乙第8号証のみによって本件商標がその指定商品である書籍に使用されたとする被請求人の主張には全く根拠がないといわざるを得ない。
なお、乙第3ないし第7号証は本件審判請求の日の5年以上前のものであり、乙第9号証、乙第10号証の1、乙第10号証の2及び乙第11号証には本件商標が使用されておらず、更に、乙第12号証は本件商標の商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれかの使用に係るものではないので、これらによっては本件商標がその指定商品に使用されたことの立証がなされないことは明白である。
以上要するに、被請求人の答弁書によっては、本件商標が3年以内にその指定商品に使用されたことの立証はなされないのであるから、商標法第50条の規定により本件商標はその登録の取消しを免れない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本案前の答弁として、「本件審判の請求を却下する。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を、また、本案の答弁として、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人には本件商標の取消請求につき法律上の利益を有しないから、本件取消請求は却下されるべきである。
被請求人は平成11年11月5日に請求人に達した通知書(乙第1号証の1、2)をもって、請求人に対し、請求人編集の印刷物の中に本件商標を使用しているので、その使用を中止するように申し入れたところ、請求人は「デジタルハリウッド」の語句の使用は自他商品の識別機能を果たす態様での使用(商標的使用)ではなく、または自己の名称を普通に用いられる方法で表示する場合に該当するので、被請求人の商標権を侵害する事実はないと回答してきた(乙第2号証)。このように、請求人は本件商標の使用は商標的使用ではないと表明しているのであるから、請求人において改めて本件商標の取消しを求める必要はない。したがって、請求人には取消請求に法律上の利益を有しない。商標法第50条第1項は平成11年改正により何人も本条の審判請求をなすことができると改正されたが、どのような場合にも法律上の利益が一切不要になったわけではない。
(2)請求人の本件審判請求は権利の濫用であるから棄却されるべきである。
被請求人会社の代表者である宮原憲治は平成5年1月27日発行の日経エンタテインメント第217号誌(乙第5号証)において「宮ハーラ樹庵」の名前により「特集DIGITALHOLLYWOODデジタルハリウッド」と題する記事の中で潜在する未知の市場を「デジタルハリウッド」と命名した旨を発表した。また、「デジタルハリウッド」「DIGITLHOLLYWOOD」の語句と地球儀を組み合わせた標識は同人が著作権を有する著作物である(乙第7号証)。
被請求人は、上記「日経エンタテインメント」の広告企画「デジタルハリウッド」の編集に先立ち、平成4年10月1日株式会社日経BPとの間で「デジタルハリウッド」の商標登録出願の権利は、被請求人が有することを確認する契約書(乙第3号証)を締結し、同契約書に基づき本件商標の商標登録をした。
「デジタルハリウッド」の語句が社会に公表されたのは平成4年(1992年)10月に株式会社日経BPが「特集:デジタルハリウッド」と題する広告リーフレット(乙第4号証)を大量に業界に配布した時であるが、さらに平成5年(1993年)1月27日に発行された日経エンタテインメント第217号誌(乙第5号証)において上記のとおり「特集DIGITALHOLLYWOODデジタルハリウッド」と題する記事が公表されることによって、コンピュータ、エンタテインメント、ゲーム,マルチメデア関係業界並びにこれらに関心をもつ一般読者の間では広く知られるようになった。
請求人の代表者は、発行された上記の広告リーフレット及び雑誌により「デジタルハリウッドDIGITALHOLLYWOOD」の語句を知り、その後同語句を使用してThe Multimedia Schoolデジタルハリウッドの広告リーフレット(乙第12号証)を作成して頒布し、さらに社名をデジタルハリウッド株式会社とする会社を設立した者である。請求人の社名中の本件商標の使用は、被請求人の代表者の知的成果にフリーライドしたものであり、さらにそれをエスカレートさせて被請求人の有する本件商標の取消審判を申し立てることは、法秩序全体に貫かれている信義誠実の原則に反する不誠実な行為であって、権利の濫用である。本審判請求は公益上の見地からされたものでなく、被請求人を害するためにしているものであって、上述のとおり「デジタルハリウッド」の語句をフリーライドした事実と併せてみれば、権利の濫用になることは明らかである。
(3)本件商標は、通常使用権者であるマイクロキッズ株式会社が1998年4月1日に発行したMicrokidsカリキュラムデジタルコース共通テキスト「Web制作の基本」(乙第8号証)に使用されている。
上記テキストは、マイクロキッズ株式会社が東京都港区浜松町1丁目21番4号所在「君が淵会館」ビルの2階を賃借して1998年4月8日から開講したMicrokids塾の教則本として製作して発行されたものである。
なお、被請求人の代表者宮原憲治はマイクロキッズ株式会社の取締役であり、かつ上記塾の事業責任者であり、その関係から被請求人は本件商標の使用をマイクロキッズ株式会社に許諾したものである。
マイクロキッズ株式会社ではMicrokids塾の受講者に書籍代を含む受講料を取って同書籍を配布していた。同書籍はホームページの製作とGIFアニメの製作に関する基本書であり、Microkids塾の受講者だけでなく、ホームページの製作とGIFアニメの製作に関心を有する不特定多数の読者を対象としていて、誰でもが利用できる内容になっているものである。したがって、このような書籍自体の有する特徴からいって、同書籍は当然に流通性を有しているものである。それだからこそ、被請求人は同書籍に本件商標を付させて、同書籍の出所を明らかにする必要があったのである。
以上のとおり、本件商標は指定商品である書籍に使用されているものであるから、請求人の本件取消請求には理由がない。

4 当審の判断
(1)先ず、本件審判請求の利害関係、権利の濫用の有無について検討する。
商標制度は、商標に化体された商標権者の業務上の信用を保護することを目的とするところ、この信用は、商標の使用をする者により商品や役務に一定の商標が継続的に使用されることにより形成されるものである。しかし、不使用商標は、このような業務上の信用が形成されていないから、本来商標制度をもって保護するに値しないものである。
商標法第50条による商標登録の取消の審判は、このような観点に沿って設けられているものであり、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか、あるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その登録商標の存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなるから、請求をまってこのような商標登録を取り消そうとするものである。
ところで、被請求人は、本件審判請求について請求人には法律上の利益がない、さらには権利の濫用である旨主張しているが、平成8年6月12日法律第68号をもって、同9年4月1日(本件審判請求は、平成11年5月24日)から施行された商標法第50条第1項の規定によれば、同審判は「何人も請求することができる。」ものであり、被請求人の主張内容、証拠等をみても、本件審判が被請求人を害する目的で請求されたとか、請求人による権利の濫用があったとする事実は認められない。却って請求人の本件審判請求は商標制度の目的に沿った正当な権利の行使ということができるのであって、請求人の前記主張は採用できない。
(2)次に、本案について検討する。
被請求人は、乙第8号証の印刷物(Microkidsカリキュラムデジタルコース共通テキスト「Web製作の基本」)を挙げ、当該書籍に本件商標を使用している旨主張する。
しかしながら、商標法第50条の適用上、「商品」というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、「商品についての登録商標の使用」があったというためには、当該商品の識別表示として同法第2条第3項、第4項所定の行為がされることを要するというべきであるところ、被請求人が本件商標の使用の事実を証明するものとして提出の乙第8号証(テキスト「Web制作の基本」)についてみると、当該印刷物は、被請求人も答弁書において述べているように、通常使用権者であるマイクロキッズ株式会社が東京都港区浜松町において1998年4月8日から開講したMicrokids塾の教則本として制作して発行されたものであり、同塾の講座の一つ「デジタルコース」の教材として受講生に配布されるものであって、巻頭には「はじめに」と題し、同塾の塾長による短文が掲載され、巻末には講義の要点等を書き留めるためのメモ欄が3頁用意されているなど、該講座を受けることを前提にした体裁を有しているばかりでなく、定価も明示することなく、受講料に含ませた形を採っていることからすると、もとより該講座の教材として用いられることを予定したものであって、該講座を離れ市場において独立して取引の対象とされているものではないというほかなく、したがって、これを商標法上の商品ということはできない。また、その表紙に付された「デジタルハリウッド」「DigitalHollywood」の記載については、表紙全体の体裁上、直下に記載されている「Microkidsカリキュラムデジタルコース共通テキスト」と一体的に捉えられ、中段の「Web製作の基本」の記載と合わせて該講座の教材であることを示す表示の一要素として認識されるにすぎないから、題号としての使用にとどまるか、該講座に係る役務の出所又は役務の内容を表示するものであって、いずれにせよ、当該印刷物自体の識別表示と解することはできないから、当該印刷物について本件商標の使用がされたということもできない。
してみれば、乙第8号証によっては、商品「書籍」について、本件商標を使用していたとは認められないというべきである。そして、他に本件商標をその指定商品について使用していると認めるに足りる証拠はない。
したがって、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内において、指定商品についての本件商標の使用を証明していないものであり、また、使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていないものである。
(3)結語
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-17 
結審通知日 2002-01-22 
審決日 2002-02-07 
出願番号 商願平4-326069 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (016)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 和雄岡田 美加 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 林 栄二
岩本 明訓
登録日 1996-04-30 
登録番号 商標登録第3141392号(T3141392) 
商標の称呼 デジタルハリウッド 
代理人 関 智文 
代理人 山下 穣平 

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