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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 025
管理番号 1055532 
審判番号 審判1999-35605 
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-10-28 
確定日 2002-02-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4074828号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4074828商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年5月30日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第25類「被服」を指定商品として、平成9年10月24日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
(1-1)請求人「ヒルトン インターナシヨナル カンパニー」は、1948年(昭和23年)に設立され、現在3万人以上の従業員を擁し、世界各地で数多くのホテルを運営し、年間3億ドル(約360億円)以上の売上高を計上しており、また請求人の関連会社である「ヒルトン ホテルズ コーポレーシヨン」は、1946年(昭和21年)に設立され、現在3万人以上の従業員を擁し、主として米国内において数多くのホテルを運営し、年間16億ドル(約1920億円)以上の売上高を計上している。
更に、日本国内においては、請求人の関連ないし系列会社が、「ヒルトン東京ベイ」ホテル(開業:1988年(昭和63年)7月2日、客室数743)、「ヒルトン東京」ホテル(開業:1984年(昭和59年)9月1日、客室数807)、「ヒルトン名古屋」ホテル(開業:1989年(平成元年)3月1日、客室数451)、「ヒルトン大阪」ホテル(開業:1986年(昭和61年)9月10日、客室数525)を運営している。日本国内において運営されているこれらのホテルは、いずれも高級ホテルとして著名なものであることは多言を要しない(甲第7号証)。
そして、請求人及びその関連ないし系列会社は、上述した日本を含む世界各地におけるホテル運営に際し、請求人の所有に係る登録第4237289号商標「HILTON」を使用している。また、請求人の商号中の「インターナショナル」及び「カンパニー」は夫々「国際的」及び「会社」を意味するありふれた英語である等に起因して、請求人及びその関連ないし系列会社は「HILTON」と略称されている。
以上の事実に鑑みれば、請求人の商標であり且つ請求人及びその関連ないし系列会社の略称でもある「HILTON」(以下「引用商標」という。)は、本件商標登録の出願前から日本国内のみならず世界的に著名なものであったことが明らかである。
また、引用商標「HILTON」が本件商標の出願前から日本国内のみならず世界的にも著名であったことは、審決及び東京高等裁判所の判決においても既に確固たる事実として認定されている。
(1-2)本件商標は、欧文字「HILTON」を含んでおり、請求人の著名な引用商標を含むものであることは疑問の余地がない。加えて、本件商標中の欧文字「TIME」は、時間、期間等を意味する英語であって、我が国においても極めてありふれた日常用語として常用されているものであり、従って、本件商標の指定商品である「被服」の需要者及び取引関係者が本件商標に接した場合、称呼及び観念のいずれにおいても、本件商標中の欧文字「HILTON」の部分に着目して本件商標を認識することが少なくないことも明らかである。
一方、本件商標の指定商品「被服」について考察すると、請求人及びその関連ないし系列会社が所有するホテルのみならず、中規模乃至大規模なホテルにおいては、単に宿泊施設の提供及び飲食物の提供に止まらず、室内プール、テニスコート、ジム、サウナ等の施設、貸衣裳店、ショッピングアーケード等も運営しており、これらの運営に付随して各種被服(例えばテニスコート、ジム等で着用する所謂ポロシャツ、Tシャツ等、ホテルで宿泊客に貸与する寝巻又はナイトガウンと同一ないし類似の寝巻又はナイトガウン等)を販売している。即ち、ホテル運営、特に高級ホテル或いはリゾートホテル運営においては、一般に、各種被服の販売も行なわれている。
したがって、本件商標の商標権者(被請求人)が本件商標を指定商品「被服」に使用すると、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることが明白であり、従って、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定により商標登録を受けることができないものである。
(2)商標法第4条第1項第8号について
上記(1)において述べたとおり、欧文字「HILTON」は、本件商標の出願前から請求人及びその関連ないし系列会社の略称として著名なものである。一方、本件商標が欧文字「HILTON」を含んでいることは明らかである。
したがって、本件商標は、請求人及びその関連ないし系列会社の著名な略称を含むものであることが明らかであり、商標法第4条第1項第8号の規定によっても商標登録を受けることができないものである。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定により商標登録を受けることができないものであり、よって、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものである。

3.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第40号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)まず、本件商標が登録された際に、請求人は商標登録異議申立てをしたが、「本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものではない」として、その異議申立てが退けられた経緯がある(乙第1号証)。
次に、本件審判において証拠として提出されている甲第1〜8号証のうち、甲第2号証および甲第5〜8号証はいずれも上記の異議申立ての際に証拠として提出されていたものと実質的に同じであり、新しい証拠は甲第3号証と甲第4号証だけである。
しかるに、請求人が新たに証拠として提出したこれらの甲第3号証および甲第4号証は、請求人の所有する商標登録第4237289号の原簿と当該商標の公報であるが、この請求人の引用商標は本件商標の出願日(平成7年5月30日)より後の平成8年3月26日に出願されたものである。
(2)本件商標登録について
請求人は、本件商標「HILTONTIME」について、本件商標は欧文字「HILTON」を含んでおり、本件商標中の欧文字「TIME」は時間、期間等を意味する英語であって、我が国においても極めてありふれた日常用語として常用されているから、「本件商標の指定商品である『被服』の需要者及び取引関係者が本件商標に接した場合、称呼及び観念のいずれにおいても、本件商標中の欧文字『HILTON』の部分に着目して本件商標を認識することも明らかである」と述べている。
そこでまず、本件商標「HILTONTIME」の使用実績について、以下に述べる。
本件商標「HILTONTIME」を付した被服類は、昭和62年秋に日本市場に登場した(乙第2号証)。
そして、本件商標は積極的な宣伝活動が繰り広げられた結果、商品の品質が優秀であることも相まって、「HILTONTIME」はファッション界での有名ブランドに成長した。このことは、講談社発行の1990年版「世界の一流品大図鑑」に「HILTONTIME」の女性用スーツならびに男性用のシャツ、スーツおよびネクタイが掲載されていることからも明らかである(乙16号証の1)。
上記で紹介した宣伝広告や記事は1990年から1991年にかけてのものであるが、その後も宣伝・販売活動が積極的に繰り広げられた。
このように、「HILTONTIME」は、「HILTON」として有名になったものではなく、また、「TIME」として有名になったのでもなく、あくまでも「HILTONTIME」として今日の地位を築き、服飾界では押しも押されもせぬ、極めて有名なブランドとなったものである。しかも、その称呼は決して冗長でなく「ヒルトンタイム」とリズミカルに発音できるため、これをわざわざ「ヒルトン」と呼ばなければならない理由はない。
したがって、本件商標は、一体不可分のものとして認識されるべきものであり、現に取扱者や需要者の間ではそのように取り扱われ、かつ認識されている。
よって、本件商標が「HILTON」の部分に着目して認識されるという請求人の主張は、認識不足に基ずく誤った認識であると言わざるを得ない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
(3-1)請求人は、引用に係る商標登録第4237289号を所有していることを示すために甲第3号証及び甲第4号証を提出している。しかしながら、請求人はこれらの証拠に関連して、請求人が第42類の指定役務「ホテル・モーテル及びその他の宿泊施設の提供」について該登録商標を所有していると述べるだけで、これらの証拠に基づいていかなる主張もしていない。
しかして、本件商標の指定商品(第25類)と引用商標に係る指定役務(第42類)とが明かに異なっているにもかかわらず、本件商標が引用商標と混同を生じるおそれがあるというのであれば、無効にされるべきは本件商標ではなくて、請求人自身の商標であることをまず認識すべきである。なぜならば、前記の通り、引用商標は本件商標よりも後に出願されているからである。
(3-2)請求人は、請求人自身および関連会社によるホテル経営の状況を紹介し、「引用商標『HILTON』は、本件商標の出願前から日本国内のみならず世界的に著名なものであったことが明らかである」と述べている。
被請求人(商標権者)は、「HILTON」が「ヒルトンホテル」の略称として、ホテル業界で著名であることは承知している。
しかし、それはあくまでも、ホテルと関連がある場合に限られたことであり、他の場面において「ヒルトン」と言えば、ヒルトンホテルとはまったく関係のない別の企業とか商品を指すものと一般には理解されている。
したがって、「HILTON」が請求人を表す商標として通用するのは、すなわち「ヒルトン」と言って請求人又はその関連企業が想起されるのは、あくまでもホテル業界とかホテルに関連の深いレストラン業界に限られる。
よって、引用商標「HILTON」が、産業分野のいかんを問わず、請求人およびその関連企業を表す商標として認識されるという前提には、明らかな事実の誤認がある。
(4)商標法第4条第1項第8号について
請求人は、本件商標が引用商標「HILTON」を含むから、本件商標は商標法第4条第1項第8号の規定によって登録を受けることができないものであると主張している。
本件商標は、前記のとおり日本国内の取引者および需要者の間で極めてよく知られており、かつ一体不可分のものとして認識されているから、この商標の中から「HILTON」の部分だけを分離して認識するなどということは、取引の実態から余りにもかけ離れており、机上の論理にすぎない。
したがって、「HILTON」の文字を有する商標が商標法第4条第1項第8号によって登録され得ないのは、あくまでもホテル業界とそれに関連の深いレストラン業界に限られるべきである。
このことは、「商標審査基準」にも明記されている。すなわち、第4条第1項第8号に関して、「本号でいう『著名』の程度の判断については、商品との関係を考慮するものとする」と明記されている(乙第29号証)。
(5)まとめ
以上、本件商標を付した商品は永年にわたって国内外で幅広く取り扱われてきたが、請求人の業務と混同されたことはなかった。
逆に、我国の服飾業界で極めて有名になった本件商標の登録が無効にされるようなことでもあれば、市場に大きな混乱が生じることは明らかである。

4.当審の判断
(1)本件商標と引用商標の比較
本件商標は、別掲に示したとおり「HILTONTIME」の文字よりなるところ、その構成文字は籠文字風に表され、その構成文字全体が同書同大等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されていて、これより生ずると認められる「ヒルトンタイム」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一気に称呼し得るものであるから、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが相当である。
しかして、本件商標は、その構成文字全体から「ヒルトンタイム」の称呼を生ずるにすぎないのに対し、引用商標は「HILTON」の文字からなり、「ヒルトン」の称呼を生ずることが明らかであるから、本件商標とは、外観上は「TIME」の有無により、また、称呼上は「タイム」の有無により、いずれも明確に区別され相紛れるおそれはないというべきである。
また、本件商標は「HILTON」と「TIME」の結合による造語と解されるから、特定の観念を生じさせるものとはいえず、観念においては比較することはできない。
そうすると、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するということはできない。
(2)本件商標の出所の混同の有無
本件商標と引用商標は、前示認定判断したとおり類似しない商標であり、かつ、本件商標は、被請求人より提出された乙第2号証ないし乙第21号証(枝番を含む。)によれば、被請求人(商標権者)が製造、販売する被服類(特に、高級紳士服)のブランド(商標)として、我が国において本件商標登録出願前、既に取引者、需要者間に相当程度認識されていたことが認められるものであって、他に両商標間に誤認混同を生じさせる事由はなく、別異の商標といわざるを得ないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、本件商標から引用商標を想起させるものではない。
したがって、本件商標は、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれは認められない。
(3)本件商標が他人の著名な略称を含む商標であるか否か
請求人の提出に係る証拠によれば、引用商標がホテルの経営及びこれに関連する業界において広く認識された商標であるとしても、本件商標は、前示のとおりであって、他人(請求人)の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものではなく、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2001-09-18 
結審通知日 2001-09-25 
審決日 2001-10-18 
出願番号 商願平7-54189 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (025)
T 1 11・ 271- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 旦 桂子 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 1997-10-24 
登録番号 商標登録第4074828号(T4074828) 
商標の称呼 ヒルトンタイム 
代理人 小野 尚純 
代理人 野河 信太郎 

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