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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 024 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 024 |
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管理番号 | 1055406 |
審判番号 | 無効2000-35495 |
総通号数 | 28 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-04-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-09-13 |
確定日 | 2002-02-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3355096号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3355096号商標(以下「本件商標」という。)は、「PACO」の欧文字と「パコ」の片仮名文字を上下二段に横書きしてなり、第24類「布製身回品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」を指定商品として、平成5年11月5日登録出願、同9年10月31日に設定登録されたものである。 2 請求人の引用する登録商標 請求人の引用する、登録第913205号商標(指定商品及び区分:第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」、以下、「引用商標1」という。)、登録第926513号商標(指定商品及び区分:第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」、以下「引用商標2」という。)、登録第1062776号商標(指定商品及び区分:第23類「眼鏡とその部品および附属品」、以下「引用商標3」という。)、登録第1459377号商標(指定商品及び区分:第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」、以下「引用商標4」という。)、登録第1498993号商標(指定商品及び区分:第16類「織物、編物、フエルト、その他の布地」、以下「引用商標5」という。)、登録第1519490号商標(指定商品及び区分:第17類「被服、布製身回品、寝具類」、以下、「引用商標6」という。)、登録第1720669号商標(指定商品及び区分:第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」、以下、「引用商標7」という。)、登録第4080894号商標(指定商品及び区分:第18類「皮革(革ひもを除く。),かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」、以下、「引用商標8」という。)、登録第2108875号の2商標(指定商品及び区分:第4類「化粧品」、以下、「引用商標9」という。)及び登録第4163404号商標(指定商品及び区分:第3類「化粧品」、以下、「引用商標10」という。)は、別掲に表示したとおりの構成よりなるものである。 3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第106号証(枝番を含む。)を提出した。 (1)デザイナー名である引用商標及びその略称の著名性について (a)請求人であるパコ ラバンヌ パルファンは、フランスのファッションデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)が創立したトータルファッションメーカーである。デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)は、1965年以来、プラスチックやメタル素材のドレス、アルミのジャージ等独創的な素材によるデザインを発表した。現在ではパリ・オートクチュール界を代表する一人として世界的に広く知られているものである。また、パコ・ラバンヌのデザインする商品は、衣料品・アクセサリー・バッグ・靴・香水・オードトワレなど多岐に及んでいるものであるが、特に、1968年に香水の分野に進出して以来、現在では高い評価を受けているものである(甲第10号証ないし甲第37号証及び甲第47号証ないし甲第51号証)。 (b)日本においては、1982年に株式会社そごうとライセンス契約を締結し(甲第15号証及び甲第38号証)、翌年以降、多数の雑誌に、パコ・ラバンヌのデザインする服飾品が広告された(甲第20号証、甲第21号証及び甲第39号証ないし甲第46号証)。また、化粧品については、ブルーベルジャパン株式会社を通じて販売されている。 (c)一般的にデザイナー名は、姓又は名により略称されることが多く、例えば「PIERRE CARDIN」は「CARDIN」と、「CHRISTIAN DIOR」は「DIOR」と略称されている。 これらと同様に、デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)も、「PACO」(パコ)又は「RABANNE」(ラバンヌ)と略称され広く知られている(甲第13号証及び甲第32号証ないし甲第43号証及び甲第50号証ないし甲第52号証)。例えば、前各号証の刊行物においては、「パコって感じる」「パコってまぶしい」「パコって知ってる」といったキャッチコピーと共に広告されているだけでなく(甲第39号証ないし甲第43号証)、他にも「パコの服」等のように紹介されている(甲第50号証)。 このように、デザイナーとしての「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)及びパコ・ラバンヌのデザインする商品は、その略称である「PACO」(パコ)と共に日本国内においても、1982年以来販売され、また数々の刊行物に紹介されたことにより、著名に至っていたものである(甲第10号証ないし甲第37号証及び甲第47号証ないし甲第51号証)。 すなわち、本件商標の出願時である1993年(平成5年)以前には、すでに「PACO」(パコ)は、ファッションデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称及びパコ・ラバンヌのデザインする商品を表示するものとして、特にファッション業界の取引者及び需要者の間に広く認識されていた。 さらに、その後、本件商標の出願時以降も依然として、「PACO」(パコ)は継続して著名となっているものである。 (d)本件商標は、「PACO/パコ」の文字からなる商標であり、「パコ」の称呼が生ずる。 一方、引用商標1ないし7は、デザイナー名である「paco rabanne」の文字より、「パコラバンヌ」の称呼が生ずる。また、引用商標8及び10は、「paco」と「paco rabanne」の文字からなり、「パコ」又は「パコラバンヌ」の称呼が生ずる。 さらに、引用商標9は「パコ」の文字からなり、「パコ」の称呼が生ずる。 そして、デザイナー名でもある各引用商標は、本件商標の出願時以前に「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)全体としてだけでなく、「PACO」(パコ)と略称され、世界中で広く知られている。 してみれば、本件商標「PACO/パコ」はデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の著名な略称と同一の文字からなる商標であるということができる。 (2)商標法第4条第1項第8号、同第15号について 本件商標は、フランスのファッションデザイナー、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称及びパコ・ラバンヌのデザインする商品を表示するものとして、著名な「PACO/パコ」の文字からなる商標である。 すなわち、本件商標は他人の著名な略称を含む商標というべきものである。 そして、本件商標の出願人は、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)の略称からなる商標を出願することについて、本人の承諾を得ていない。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 さらに、著名なファッションデザイナーの略称と同一の文字からなる本件商標が、本件指定商品に使用された場合、本件の指定商品もファッションに関係するものであり、その取引者・需要者を共通にするものであるから、これに接する取引者・需要者は、その商品が著名なデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)がデザインする商品、又は、請求人の製造・販売に係るものであるかの如く、あるいは請求人と何らかの経済的・組織的関連があるものと認識し、その出所について混同を生ずるおそれがある。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (3)答弁に対する弁駁 (a)「PACO」と共に「PACO RABANNE」が併記されていることのみを理由として略称として成り立たないと言うべきではない。むしろ併記していることにより「PACO」が「PACO RABANNE」の略称であることを取引者、需要者に認識させるものである。 また、「PACO」のみでの使用例が全く無いわけではなく、甲第39号証ないし甲第43号証及び甲第50号証においては「PACO」のみでの表記がなされており、略称だけでも著名性を有しているというべきである。 (b)デザイナーの略称として「名」による略称で呼ばれている人物も存在する。例えば、「VALENTINO GARAVANI」は「VALENTINO」と略称され、「KENZO TAKADA」は「KENZO」と略称されている(甲第106号証)。一人のデザイナー名から略称が一つしか生じないとする格別の根拠はなく、「姓」「名」ともに略称が生じることに何ら問題はない。重要なのは略称がデザイナーの「姓」によるか「名」によるかということではなく、実際に著名となっている略称は何かということである。 (c)被請求人は、「PACO」の登録例を挙げているが、それらは、いずれも指定商品、指定役務がおよそ請求人の販売する商品とは関連性の極めて薄い分野の指定商品、指定役務であるから、本件とは事案を異にするものである。 4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 請求人が「PACO」(「パコ」)が著名な略称であることを証するために提出した証拠の殆どには、「PACO」(「パコ」)と一緒に「PACO RABANNE」(「パコ・ラバンヌ」)も表示されており、「PACO」(「パコ」)のみが表示されているのはわずかに、甲第33号証ないし甲第37号証に限られており、請求人の著名な略称は、「PACO」(「パコ」)ではなく、「RABANNE」(「ラバンヌ」)であることは明白である。 請求人は、甲第52号証において、一般にデザイナー名は、姓により略称されることが多く、例えば「PIERRE CARDIN」は「CARDIN」と、「CHRISTIAN DIOR」は「DIOR」と略称されており、それと同様に、「PACO RABANNE」は「RABANNE」(「ラバンヌ」)と略称されている事実があると主張していることからも、「PACO RABANNE」の略称は「名」である「PACO」ではなく、「姓」の「RABANNE」である。 更に、商標「PACO」(「パコ」)は、例えば、登録第3262709号(第25類)、登録第4099335号(第7類)、登録第4139111号(第19類)、登録第4216003号(第28類)等、数多く登録されていることからしても、「PACO」は、請求人の著名な略称でないことが明らかである。 以上のことから、本件商標は、請求人の著名な略称ではなく、商標法第4条第1項第8号には該当しないことから、本件商標をその指定商品に使用しても請求人の業務に係る商品と混同することはないので、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。 5 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第8号について 請求人の提出に係る甲各号証に徴すれば、「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)は、フランスのファッションデザイナーとして著名であり、我が国においても知られていることを認めることができる。 しかしながら、上記デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)を「PACO」(パコ)と略称している証左は見あたらない。 この点において、請求人は、甲第10号証ないし同第32号証、同第33号証ないし同第37号証及び同第50号証を提出し「PACO」(パコ)と略称している事実を主張しているが、甲第33号証ないし同第37号証をみると、外国で発行された刊行物の文章中に「PACO」の文字を用いて「PACO THE PLASTIC KING TURNS TO PAPER」、「Paco the Plastics Man」、「CRAZY PACO」、「Les seductrices de Paco」等記述的に記載されていることは認められる。また、甲第39号証ないし同第43号証をみると、我が国において、広告として掲載されている新聞、雑誌の中で「パコ」の文字をもって、「パコって知ってる」、「パコってまぶしい」、「パコって感じる」の如く使用し、さらに、甲第50号証をみると「パコの服」の如く使用していることは認め得るとしても、これらの証左をもって、「PACO RABANNE」が単に「PACO」と略称され、我が国において著名に至っているものということはできない。 してみれば、上記デザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)が我が国で「PACO」(パコ)と略称され、本件商標の出願時に著名であったものということはできないから、本件商標は、他人の氏名の著名な略称よりなるものということはできない。 (2)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、前記したとおり、「PACO」の文字と「パコ」の文字とを二段に横書きした構成からなるものであるから、該文字に相応して「パコ」の称呼を生ずるものであり、特定の意味合いを認識させることのない造語よりなるものと認められる。 請求人は、引用商標1ないし10を挙げて、これらの商標が「PACO(パコ)」とも略称され「衣料品、アクセサリー、バッグ、靴、香水、オードトワレ」等の商品に使用されて著名である旨主張している。 しかしながら、甲第10号証ないし同第51号証によれば、請求人が上記商品に使用しているのは、専ら「PACO RABANNE(paco rabanne、パコ・ラバンヌ)」の一体の構成からなる態様の商標であり、「PACO」の文字が併記されている事例は見当たらない。そして、前記4(1)において認定したとおり、一部の甲号証には、「PACO(paco、パコ)」の文字が記述的に使用されている例があるとしても、これをもって、「PACO RABANNE(paco rabanne、パコ・ラバンヌ)」の商標が「PACO(paco、パコ)」とも略称され、著名になっていたものと認めることはできない。 また、請求人が「香水」について使用しているとして提出した甲第53号証ないし同第102号証には、「paco」の文字のみの商標あるいは、「paco rabanne」に「paco」の文字が併記された商標が使用されている事実を認めることができる。 しかしながら、これらの甲号証は、いずれも、本件商標の出願日である平成5年11月5日以降(1件は平成7年、それ以外はすべて平成8年)に発行された雑誌等であるから、本件商標の出願時には、「PACO(paco、パコ)」の文字からなる商標が商品「香水」について使用され著名であったということはできない。 そうとすれば、本件商標の出願前において、請求人が上記商品について使用していたのは「PACO RABANNE(paco rabanne、パコ・ラバンヌ)」の文字からなる商標であり、これが著名であったとしても、請求人の使用に係る商標と本件商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似するところのない別異の商標といわなければならない。 してみれば、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、その商品がデザイナー「PACO RABANNE」(パコ・ラバンヌ)のデザインする商品、又は、請求人若しくは請求人と経済的・組織的に何らかの関連がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。 (3)結論 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
引用商標1及び2 引用商標3 引用商標4ないし7 引用商標8及び10 引用商標9 |
審理終結日 | 2001-09-27 |
結審通知日 | 2001-10-02 |
審決日 | 2001-10-16 |
出願番号 | 商願平5-111911 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Y
(024)
T 1 11・ 23- Y (024) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 滝沢 智夫、小出 浩子 |
特許庁審判長 |
為谷 博 |
特許庁審判官 |
鈴木 新五 小池 隆 |
登録日 | 1997-10-31 |
登録番号 | 商標登録第3355096号(T3355096) |
商標の称呼 | パコ |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 田中 克郎 |