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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1055382 
審判番号 無効2000-35086 
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-02-10 
確定日 2002-02-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4048399号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4048399号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4048399号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年12月15日に登録出願、「FRANCOARMANI」の欧文字を書してなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(乗馬靴を除く),乗馬靴」を指定商品として、同9年8月29日に設定登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第1387409号商標は、別掲第一商標のとおりの構成よりなり、昭和50年9月18日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同54年8月30日に設定登録、同じく登録第1742581号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和57年6月19日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同60年1月23日に設定登録、同じく登録第2204518号商標は、別掲第二商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録、同じく登録第3127123号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第25類「帽子,その他の被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同8年3月29日に設定登録、同じく登録第4132921号商標は、「アルマーニ」の文字を横書きしてなり、平成8年7月30日に登録出願、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、同10年4月10日に設定登録、同じく登録第1676476号商標は、「GIORGIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和56年7月28日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同59年4月20日に設定登録、同じく登録第1920034号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月1日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同61年12月24日に設定登録、同じく登録第1941608号商標は、別掲第三商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録、同じく登録第3123225号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同8年2月29日に設定登録、同じく登録第1640446号商標は、「Giorgio Armani」と「ジョルジョアルマーニ」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和52年3月15日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同58年12月26日に設定登録、同じく登録第1941539号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月1日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録、同じく登録第2076955号商標は、別掲第四商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同63年9月30日に設定登録、同じく登録第2198023号商標は、別掲第五商標のとおりの構成よりなり、昭和62年2月23日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成1年12月25日に設定登録、同じく登録第2137697号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成1年5月30日に設定登録、同じく登録第2211610号商標は、「GIORGIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成2年2月23日に設定登録、同じく登録第2653840号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和63年2月10日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録、同じく登録第4076267号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器,貴金属製の花瓶および水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消しおよびろうそく立て,貴金属のがま口および財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。そして、各引用商標は、それぞれ有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第117号証を提出した。
1.デザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMANI」及び各引用商標の著名性について
請求人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)の設立した会社であり、そのデザインに係る商品の取り扱い及び商標権等の知的財産権の管理を行っており、上述した各引用商標の実質的な権利者である。
イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)は、1975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザイン会社「ジョルジォ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)の商標を付した紳士・婦人用既成服を製作、販売すると共に、1981年にはブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)を発表した(甲第22号証及び同第23号証)。これらの他に、彼の手がけた主なブランドとしては、カジュアルウェアの「ARMANI JEANS」、婦人服の「MANI」、その他「ARMANI」、「A/X ARMANI EXCHANGE」、「GIO」等がある(甲第24号証及び同第25号証)。
彼のデザインする上記各ブランドに係る商品は、紳士・婦人服だけではなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼鏡等の他、これらの商品と同一の流通経路、販売店で取り扱われるハンドバック、革小物等、さらには香水をはじめとした化粧品をも含み、非常に広範にわたっている(甲第24号証及び同第25号証)。
そして、これらの各ブランドに係る商品は、そのデザイン及び品質において大変に優れていたことから、イタリアの国内のみならず、日本を含む世界各国に商品が輸出されるようになった。中でも、男性用の衣服については、世界的に注目を浴びるようになり、世界のファッションショーの桧舞台ともいうべきミラノコレクション、パリコレクシヨン、ニューヨークコレクション、東京コレクションで次々に発表し、1979年には「ニーマン・マーカス賞」、1980年、1981年、1984年、1986年、1987年の5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ファッション・メンズ・デザイナー賞」、1981年には最高のファッション・デザイナーを選ぶ「G/Q」雑誌より「メンズ・スタイル賞」、1983年にはアメリカ・ファッション・デザイナー協会より「国際デザイナー賞」、1988年にはアメリカ・ファッション・デザイナー協会より「メンズウェア・ライフタイム・アチーブメント賞」、マドリッドにて国際ベスト・デザイナーとして「クリスタル・バレンシアガ賞」、1989年には日本で織研新聞より「織研賞」等、数多くの賞を受賞した。
こうして「GIORGIO ARMANI」(ジヨルジオ アルマーニ)は、その名を世界に知られるに至り、今や“イタリアモード界の征服者”又は “キングオブブレザー”のように呼ばれ、ファション・デザイナーの世界的大御所となったものである(甲第19号証及び同第42号証)。
また、彼のデザインする衣服が世界的に知られるようになったことから、度々映画の衣装にも取り上げられるようになり、映画「ブーメラン」で俳優エディマーフィーが彼のデザインした服を着(甲第20号証)、さらに映画「逃亡者」で俳優ミッキー・ロークが彼のデザインした服を着(甲第21号証)、またこれらの映画がいずれも世界的に大ヒットしたことなどから、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジヨルジオアルマーニ)の名声は益々高まった。
こうしてデザイナーとしての彼の名声が上がり、それに付随して彼のデザインする商品に付された商標に業務上の高い信用が化体するにつれ、そうした信用にフリーライドする模造品が世界各国で出回るようになってきた。請求人は、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)のデザインする商品に化体した高い信用を保護すべく、上述の各ブランドに係る商品を指定商品として、世界各国で商標の登録を取得しているものである。
また、紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ハンドバック、革小物、化粧品等の各ブランドに係る商品に実際使用している商標は、「GIORGIO ARMANI」のみならず、単に「ARMANI」の文字のみのもの、或いは「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI JEANS」、「GIORGIO ARMANI JUNIOR」等の「ARMANI」と他の文字との結合したもの等、様々な構成、態様のものが存在し(甲第2号証ないし同第38号証及び同第41号証)、これらの商標が付された商品は、いずれも彼のデザインした商品として高い信用を得ているものである(甲第19号証)。
彼のデザインする上記各ブランドは、日本においても上記の取り扱いに係る商品を指定商品として商標登録を取得し(甲第2号証ないし同第18号証及び同第41号証)、「ジョルジォ アルマーニ ジャパン株式会社」を設立して、東京、大阪、名古屋、神戸、札幌等の日本各地に直営店を設けて販売の強化を図ってきたところであり、その売り上げも平成7年で約150億円にも達するほどである(甲第38号証)。
特に日本においては、紳士服をはじめとするこれらの各ブランドに係る商品は、「アルマーニのスーツ」、「アルマーニのジャケット」、「アルマーニの服」の様に「アルマーニの○○○」と呼ばれ、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年にわたる継続的な努力によって、世界の超-流品としての極めて高い信用が形成されるに至ったものである。
こうした請求人の継続的な信用蓄積のための努力の結果、日本においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)及びその略称である「ARMANI」(アルマーニ)の名が専門業者のみならず、一般消費者にも広く知られるに至り、彼本人及びそのデザインがファッション誌や雑誌、書籍にも多く取り上げられた(甲第22号証ないし同第35号証)。さらにデパート主催の写真展も開催されたほか(甲第36号証)、新聞、テレビ上でも数多く取り上げられ(甲第37号証)、その結果、デザイナー「GIORGIO ARMAN1」(ジョルジォ アルマーニ)は、そのフルネームのみならずその略称である「ARMANI」(アルマーニ)と共に、いまや老若男女を問わず誰でもが知っている程に著名になっているということができる。
なお、「GIORGIO ARMANI」のブランドが世界的に著名であり、その模倣が多くあることから、その保護活動を世界的に行なっていることは、フランス国公益社団法人ユニオンデファブリカンも認めているところである(甲第39号証及び同第40号証)。
従って、本件商標の出願当時1995(平成7)年にはもちろん、その査定時である1997(平成9)年においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)及びその略称であり登録商標でもある「ARMANI」(アルマーニ)、そして彼のデザインする各ブランドに係る商品に付された各引用商標は、いずれも需要者・取引者の間に広く知られ、著名に至っているものであると言える。
2.出所混同について
本件商標は「FRANCOARMANI」の構成からなり、上述のように世界的に著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称及び請求人及びジョルジォ アルマーニの使用する著名な商標「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォアルマーニ)の略称である「ARMANI」(アルマーニ)と同一の文字をその構成中に含むものである。
またその構成全体としては、何等の意味観念を生ずるものではない。
以上のことから、かかる著名な「ARMANI」の文字を含み、全体としては何ら特定の意味観念を生じない本件商標が、請求人が各引用商標を使用している前記商品と使用態様、使用目的等を全く同じくするその指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、そこから著名商標である「ARMANI」の文字のみを分離又は抽出して認識するものであるから、恰も本件商標が付された商品が請求人若しくはジョルジォ アルマーニ又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、特に世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」のデザインする商品又はそのシリーズ商品であるかの如く認識し、アルマーニブランドの1つであるとして、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
3.結び
(1)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、その構成中に他人の著名な略称「ARMANI」(アルマーニ)を含むものであり、その他人の承諾を得ているものではないから、商標法第4条第1項第8号に該当し、無効にすべきものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジォ アルマーニ)の略称及び請求人が使用する商標として著名な各引用商標(甲第2号証ないし同第18号証)の略称及び登録商標「ARMANI」(アルマーニ)と全く同一の文字をその構成中に有するものであるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人若しくはジョルジォ アルマーニ又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当し、無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
1.本件商標は、すでに「異議申立を退ける」との審決を得ている。
2.デザイナーの氏名の一方を強調し、他人の氏名全てを否定することは非合理的である。
3.商標は元々それに携わる人の権利を守るものであるのは当然であるが、同時にこれほど多様化し拡大した日本の社会では、権利やイメージが重なり合い、影響し合うのは避けられないものとなっている。又、ブランド商品がデパート限定販売の一部の金持ちのものであった時代と異なり、現在ではスーパーやコンビ二でも売られる程身近なものとなり、一般庶民にとっても無くてはならないものとなっている。その為、商標の類似範囲も終戦直後とは異なり、影響し合い重複しあっているのも止むを得ないとの判断をしてもらいたい。同時に、今まで特定の人が独占する権利を与えられると同様、他の多数の国民が正常な競争により、好みのイメージの商品を低価格の商品として、身近に所有する権利も考えるべきである。かつて「SONY」が「ウォークマン」を考案した時、他の電機メーカーが同時に類似商品を発売したが、それにより「SONY」の売上げが減るどころか全体の市場が拡大し、逆に利益になったと言われている。「ラルフ・ローレン」の「POLO」についても、他の類似した「POLO」商品が低価格で市場に出現し、それが15 0 0億円売上げ規模となっているが、それと同時に「ラルフ・ローレン」自身も400億円の売上げを達成し、益々拡大の方向にあると言われている。ビール業界でも、或る会社が「『生』ビール」を商標登録した為、他社が「本生」「純生」と表示しなければならなくなったが、結果的に何の意味も無く、消費者に不便をかけるだけとなり、最近では「商品内容で競争すべき」との考えになり、互いに「生」と表示する様になっている。最近の商標の類似性は従来と別の広い見方をするべき時代である。その為、類似商標商品の出現はマイナスどころかその潜在的市場を拡大し、結果、先行したブランド(商標)を消費者に益々権威のあるものとして、絶対的な地位を与えられるものとなる場合も多い。終戦直後の小さな市場の場合は、類似商標の出現で先行商標が打撃を受けたとの例はあるが、最近ではその様な例は少ない。それだけ日本の市場規模が拡大していると言える。

第5 当審の判断
1.「ARMANI」(アルマーニ)標章の著名性について
請求人は、本件商標の無効理由の一つとして、請求人に係る「GIORGIO ARMANI」及び「ARMANI」商標の著名性を理由に本件商標の登録の商標法第4条第1項第15号違反を述べているので、この主張の当否について判断する。
本件審判請求の理由及び甲第19号証ないし同第42号証を総合してみるに、以下の事実が認められる。
(1)ジョルジォ・アルマーニ(Giorgio Armani)は、1935年生まれのイタリアの服飾等のデザイナーであって、1979年に「ニーマン・マーカス賞」を受賞、以後、数々の賞を受賞している。そして、1975年には紳士・婦人物既製服を扱う「ジョルジォ アルマーニ社」を設立し、以来、同社は、ジョルジォ・アルマーニのデザインに係る紳士・婦人服等の商品を製造・販売している。
そして、ジョルジォ・アルマーニのデザインに係る商品には、「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」「ARMANIJEANS」「ARMANI」等の文字よりなる標章(以下、これらをまとめて「アルマーニ標章」という。)が使用されている。
また、1991年から1992年に、世界的にヒットした映画「ブーメラン」や「逃亡者」において、俳優のエディ・マーフィーやミッキー・ロークがジョルジオ・アルマーニデザインの衣服を着用した。
(2)我が国においては、ジョルジォ アルマーニのデザインに係る紳士・婦人服等の商品を輸入・販売するために「ジョルジォ アルマーニ ジャパン株式会社」が設立され、その直営店、販売店は日本各地に及び、1995年(平成7年)の予想小売り総売上高は150億円とされている。 (3)甲第22号証ないし同第35号証をみるに、例えば、雑誌「MEN’SCLUB8月号」(平成2年8月、婦人画報社発行)における「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」の紹介記事の見出しに「着心地の良さとシンプルなエレガンスを追求したアルマーニのプロフェッショナルの服。」「イタリアン感覚を体験できるアルマーニの日本ショップ。」との記載、また、雑誌「MORE for MEN」(平成2年11月、集英社発行「モア」増刊号、)においては、その表紙に「アルマーニVSラルフローレンのスーツ」との記載、及び「GIORGIO ARMANI」の紹介記事の見出しでも「モダンに洗練された伝統が息づくアルマーニの完璧なスーツ。」との記載、さらに、雑誌「イタリアの中小企業戦略」(平成6年10月、三田出版会発行)の序章において、その冒頭から「アルマーニのスーツ、フェンディのバッグ、ミッソーニのニット製品など、イタリアのブランド商品は、・・・」等の記載があるように、アルマーニ標章が「ARMANI(アルマーニ)」の商標と呼ばれ、そのデザイナーである「Giorgio Armani」も「ARMANI(アルマーニ)」と呼ばれ、その名で知られていることを前提とした記事が多数掲載されている。
以上の事実によれば、遅くとも本件商標の登録出願時の平成7年には、アルマーニ標章は「ARMANI(アルマーニ)」の商標として、また、そのデザイナーも「ARMANI(アルマーニ)」と呼ばれて、紳士服、婦人服等について、ジョルジォ・アルマーニのデザインに係る商品に付される商標ないし同人の略称として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして、該「ARMANI(アルマーニ)」の著名性は、現在も継続していると認められるものである。
2.出所の混同について
本件商標は、前記のとおりであるところ、「FRANCOARMANI」の欧文字が一連に表示されているとしても、これより生ずる「フランコアルマーニ」の称呼も長音を含めて9音であって、その構成文字又は称呼のいずれよりみても、一つの名称のものとしては比較的冗長というべきである。さらに、本件商標中の「アルマーニ」「ARMANI」の文字が我が国においてありふれた氏として、或いは、「FRANCOARMANI」の文字が全体として特定の熟語や氏名を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているというような事情も認められない。 そして、前記1.のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、アルマーニ標章が「ARMANI(アルマーニ)」の商標と、また、ジョルジォ・アルマーニが「ARMANI(アルマーニ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないし同人の略称として著名であったこと及びアルマーニ標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品は、装身という観点からみれば、共にファッション関連の商品であって需要者層を同じくする場合も少なくないこと等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中後半の「アルマーニ」「ARMANI」の文字のみを捉え、著名な「ARMANI(アルマーニ)」標章を連想、想起し、それがジョルジォ・アルマーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から現在においても継続しているものと認められる。
なお、被請求人は、乙第4号証ないし同第6号証を提出し、同人の登録例を含め「アルマーニ」「ARMANI」を含む商標の登録例が他に多数存在する旨主張するが、これら商標と本件商標とは、その商標の構成、指定商品、判断時期等が相違し事案を異にするものであり、仮に、その中に他の登録例との関係において矛盾するもの等が存在するとしても、具体的事案の判断においては、過去の登録例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。
したがって、本件商標は、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
第一商標(引用登録第1387409号商標)

第二商標(引用登録第2204518号商標)


第三商標(引用登録第1941609号商標)

第四商標(引用登録第2076955号商標)

第五商標(引用登録第2198023号商標)

審理終結日 2001-12-25 
結審通知日 2001-12-28 
審決日 2002-01-10 
出願番号 商願平7-129432 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩浅 三彦 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1997-08-29 
登録番号 商標登録第4048399号(T4048399) 
商標の称呼 フランコアルマーニ 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 

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