• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない(当審拒絶理由) 122
管理番号 1055362 
審判番号 審判1999-6417 
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-20 
確定日 2002-02-28 
事件の表示 平成 3年商標登録願第 77476号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲に表示したとおりの構成よりなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成3年7月25日に登録出願されたものである。

2 当審の拒絶理由
当審において「本願商標は、その構成中の一部に、米国ニューヨーク生まれの著名なデザイナーである『ラルフ・ローレン』(注、同人の関連企業『ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ』)が、1970年代より現在まで『眼鏡、紳士服、シャツ』等の商品に長年に亘って使用してきた結果、本願商標の登録出願時に、我が国で、当該文字よりなる商標は、上記デザイナーである『ラルフ・ローレン』(『ザ ポロ/ローレンカンパニー リミテッド パートナーシップ』)の業務に係る商品を表す商標として、取引者・需要者間に広く認識されていた『POLO』の文字を有してなるものであるから、これを請求人(出願人)が、その指定商品に使用した場合には、上記『ラルフ・ローレン』(『ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ』)の業務に係る商品又は同人と何等かの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認められる。」との新たな拒絶理由を出願人に通知した。

3 当審の拒絶理由に対する請求人の意見
(1)本願商標は「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の一連の表現と真横を向いたポロプレイヤーの図形を円形的にまとまりよく構成したものであり、構成全体として看者にはラルフ・ローレンの商標とは外観上全く異なった印象を与える上、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の表現が単なる「POLO」の表現とは観念的に異なって認識されることは、東京高裁の判決平成11年(行ケ)253号判決が明示している。
(2)請求人は平成11年4月20日付の本件審判請求書において、出願人とラルフ・ローレンとの間で締結された合議書の存在を指摘し、その書面の写しを提出したが、この合議書は、その文中に記載があるように、そもそも、アメリカに於ける両当事者間の商標をめぐる訴訟事件に於いて、それぞれが各自の商標を認め合って、訴訟に終止符を打つために締結した和解契約書であり、当事者間に訴訟判決と同等の拘束力を有する。
(3)ラルフ・ローレンの商標は基本的に「POLO BY RALPH LAUREN」の表現と前向きのポロプレイヤーの図形を結合して使用されている。この商標が「POLO」と略称されることがあるとしても、その使用に際しては、上記図形やその商品の出所の表示が併用され、それが「RALPH LAUREN」の「POLO」であると認識される使用態様になっている。そうしなければ、衣服や身回品を中心とする商品に関して、単なる普通名称に過ぎない「POLO」の語のみでは商標としての識別・出所表示機能が働かない。
(4)商標の出所の混同の恐れとは、両商標の実際の使用態様を観察して、更に、これらの商標にかかる具体的な商品の取引事情を総合的に観察したうえで、判断されるべきものである。「POLO」の語を含む商標は一律、抽象的に、すべてラルフ・ローレンの商標と出所の混同を生ずるとするような本件の拒絶理由は、商標の類非認定の他に、商品の出所の混同の条件の認定の2点において誤っており、ラルフ・ローレンの商標の不当な拡張解釈である。
(5)商品としても、アメリカの東部を根拠にアイビーリーグファッションを基本とするラルフ・ローレンの商品と、アメリカ西海岸を根拠にし、その解放的なカジュアルファッションを基本とする本件出願人の商品はそれ自体明らかに区別されるものであり、本願商標にかかる商品はラルフ・ローレンの商品のイメージとは全く異なるものであり、本願商標がラルフ・ローレンの商標と出所の混同を生ずるようなおそれは全くない。

4 当審の判断
(1)「POLO」の周知性について検討する。
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは1967年(昭和42年)に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服のデザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年(昭和49年)に映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、「POLO」又は「polo」の欧文字よりなる商標、横長四角形中に記載された「Polo」の文字と共に「by RALPH LAUREN」の文字よりなる商標及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形(別掲「引用A商標」に表示)の各商標(以下、一括して「引用商標」という。)が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、株式会社洋品界昭和55年4月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報株式会社昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述及び昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、株式会社スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、前記「男の一流品大図鑑」、株式会社講談社昭和54年5月発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、株式会社チャネラー昭和54年9月発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年5月発行)、婦人画報社昭和55年12月発行「MEN’S CLUB1980,12」、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年5月発行)、前記「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、株式会社講談社昭和60年5月発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、メガネについては、「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決(東京高裁平2年(行ケ)第183号、平成3.7.11言渡し 東京高裁平11年(行ケ)第251号、平成11.12.16言渡し 東京高裁平11年(行ケ)第267号、平成11.12.16言渡し)がある。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、我が国においては、遅くとも本願商標の出願時には、既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、引用商標が取引者・需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(2)本願商標が商品の出所について混同を生ずるものであるか否かについて検討する。
請求人は、「本願商標は『BEVERLY HILLS POLO CLUB』の一連の表現と真横を向いたポロプレイヤーの図形を円形的にまとまりよく構成したものであり、構成全体として看者にはラルフ・ローレンの商標とは外観上全く異なった印象を与える上、『BEVERLY HILLS POLO CLUB』の表現が単なる「POLO」の表現とは観念的に異なって認識される。」と主張しているが、本願商標は、別掲のとおりゴシック体で書した「BEVERLY HILLS」と「POLO CLUB」の欧文字の間にポロ競技のプレーヤーの図形を描いてなるものであるところ、これらの文字と図形とは常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事由が存するものとも認められないものである。
そして、該「BEVERLY HILLS POLO CLUB」の欧文字部分は、我が国の需要者間に特定の観念を生じさせるものとして知られているものとも言い得ないものである。
また、その構成中には、上記(1)で認定のとおり、ラルフ・ローレン(関連企業「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」)が「紳士服、紳士靴、眼鏡、サングラス」等に使用するものとして周知著名な「POLO」と類似する「POLO」の文字及び引用A商標に類似するポロ競技のプレーヤーの図形を有してなるものである。
さらに、本願商標の指定商品は、ファッションに関連する商品であって、統一ブランドの下にトータル的にファッションをまとめようとする昨今にあっては、引用商標が使用されている被服、眼鏡等とは少なからぬ関係を有するものである。
そうとすれば、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、前記した実情から、その構成中の「POLO」の文字及びポロ競技のプレーヤーの図形に注目し、引用商標を想起し、該商品がラルフ・ローレン(「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」)又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について誤認・混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、請求人は、「出願人とラルフ・ローレンとの間で締結された合議書の存在を指摘し、この合議書は、それぞれが各自の商標を認め合って、訴訟に終止符を打つために締結した和解契約書であり、当事者間に訴訟判決と同等の拘束力を有する。」旨述べているが、提出の資料10の同意契約書(抄訳)によれば、同合議書は、カリフォルニア州地区の米国地区裁判所における民事第83-3342号事件及び民事第84-162号事件の続行にこれ以上の費用を費やすのを避け、両当事者間の論争を終結するためになされた合議書と認められるから、同合議書が我が国における本件事件の判断を拘束するものでも、影響を及ぼすものでもない。
さらに、本件と東京高裁の平成11年(行ケ)253号判決とは、商標の構成態様及び指定商品が異なるものであって、事案を異にするので、該判決を引用して行う請求人の主張は採用し難い。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当し、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標



引用A商標


審理終結日 2000-04-27 
結審通知日 2000-05-16 
審決日 2000-05-29 
出願番号 商願平3-77476 
審決分類 T 1 8・ 271- WZ (122)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 涌井 幸一鈴木 新五 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 大渕 敏雄
酒井 福造
商標の称呼 ビバリーヒルズポロクラブ、ビバリーヒルズ、ポロクラブ 
代理人 神林 恵美子 
代理人 照嶋 美智子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ