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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) Z41 |
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管理番号 | 1054038 |
異議申立番号 | 異議2000-90531 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-05-19 |
確定日 | 2001-10-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第4359592号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4359592号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4359592号商標(以下「本件商標」という。)は、「エヌメッツ」の文字を横書きしてなり、平成10年4月14日登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,研修の企画・運営又は開催」を指定役務として平成12年2月4日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立の理由 本件商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の有する世界的に極めて著名な「メッツ」及び「METS」の文字からなる商標と類似しているから、申立人と何らかの関連があるものと役務の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。 3 本件商標に対する取消理由 本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第15号に該当するものとして、商標権者に対して通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 <取消理由> 申立人の提出に係る甲号各証によれば、アメリカ合衆国のメジャーリーグは、ナショナルリーグとアメリカンリーグの二つからなるアメリカのプロ野球における最大級のリーグを表すものとして広く知られているものであり、近年、野茂をはじめとする日本人選手の進出により、我が国においてもメジャーリーグの試合は数多くテレビ放映されており、新聞、雑誌にも盛んに取り上げられている。そして、その中でも、メッツ(Mets)と略称されているニューヨークメッツは、ロッテ球団の監督を勤めていたバレンタインが監督であること、ヤクルト球団から移籍した吉井投手がいたこと等から、本件商標の出願前から、メジャーリーグの中でも我が国において親しまれたチームの一つであり、また、申立人は、メッツを含む各球団のロゴを使用した商品化事業を我が国を含む世界各国において広く展開していたことを認めることができる。 しかして、本件商標は、特定の語義を有する既成語を表したものとは認められないばかりでなく、ニューヨークメッツが著名であることから、「N Mets」の欧文字を容易に想起させ、その表音を表したものと理解・認識させるものである。 そうとすれば、本件商標は、その構成中に、アメリカのプロ野球リーグの著名な球団の略称である「メッツ」の文字を含むものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務について使用するときは、これに接する取引者・需要者は、ニューヨークメッツ又はニューヨークメッツと何等かの関連を有する者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 4 商標権者の意見 「メッツ」が日本において知られている事実があるとしても、それは、あくまで、野球のチームの名としてであり、本件商標に係る指定役務のうち「技芸の教授・知識の教授」は、野球のチームとしての業務とは関係がない。実際、日本の野球チームでも米国の野球チームでも、そのような業務を行っているチームがあるという事実は知らない。また、そのような報道・宣伝もない。 そもそも、標章自体「エヌメッツ」と「メッツ」とは非類似である。 本件商標は、カタ力ナ文字「エヌ」および「メッツ」を横方向一連に同サイズ同文字形で書したものであり、その構成から、「エヌメッツ」の自然の称呼を生ずるものである。「メッツ」の音のみが分離されて称呼されるべき理由はない。したがって、本件商標の称呼は「エヌメッツ」であるとするのが妥当である。 本件商標とニューヨークメッツの著名な略称である「メッツ」とを比較すると、本件商標が語頭に「エヌ」の音を有する点において異なっており、両商標は、称呼において顕著に異なるものである。いかに「ニューヨークメッツ」の略称「メッツ」が著名であったとしても、出所について混同を生ずることがあるとは到底考えられない。また、「ニューヨークメッツ」の略称「メッツ」が著名であつたとすればするほど、多少の差異であっても、著名なあの「メッツ」とは異なるものという違和感の反応を生じさせ、「エヌメッツ」は「ニューヨークメッツの」の「メッツ」とは別異のものではないかと認識させるのである。 実際、商標の称呼中に「メッツ」の音を有する商標の登録例として、例えば、添付の資料に示すようなものが存在する。 また、「メッツ」の名が付された商品が販売されている事実があったとしても、申立人の商品は、第21類 装身具、ピン、かばん類、袋物、第14類 キーホルダー、第22類 履物、かさ、つえ、第30類 菓子、パン、第17類 被服、布製身回品、寝具類等に限られている。 5 当審の判断 (1)商標権者は、本件商標に係る指定役務のうち「技芸の教授・知識の教授」は野球のチームとしての業務とは関係がない旨述べる。 しかしながら、本件商標の指定役務は第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,研修の企画・運営又は開催」であって、プロ野球の球団のみならず、プロ野球の球団と何らかの関係を有する企業、例えば球団のロゴマーク等について商品化事業を営むグループの企業が、一般のアマチュアに対してその専門技術を指導し、或いは専門知識を教え、また、スポーツに関連する研修を開催することは、さほど不自然とはいえないものというべきである。すなわち、商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である(10年(行ヒ)85号、平成12年7月11日最高裁言渡)から、上記商標権者の意見は採用できない。 (2)商標権者は、本件商標は同書同大で一連に「エヌメッツ」と表したものであって、「メッツ」とは非類似のものであり、いかに「ニューヨークメッツ」の略称「メッツ」が著名であったとしても、出所について混同を生ずることはない旨述べる。 しかし、本件商標を構成する「エヌメッツ」の文字は、全体として特定の観念が生じるものではない。米国の大リーグの球団「ニューヨークメッツ」の略称である「メッツ」に高い著名性があり、しかも、大リーグの球団名(略称)に関して商品化事業が行われている取引の実情を考慮すれば、これを「エヌ」と「メッツ」の文字よりなるものと理解し「メッツ」の文字部分は「ニューヨークメッツ」の略称である「メッツ」を表したものと認識される蓋然性は高いものというべきである。そうすると、本件商標がその指定役務に使用された場合、本件商標に接した取引者・需要者は、その役務が「ニューヨークメッツ」球団と、親子会社、系列会社ないしは商品化事業を営むグループの企業の提供に係る役務であろうと認識することが少なくないものと認めざるを得ない。 (3)以上のとおりであり、本件商標は、他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標といわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-08-28 |
出願番号 | 商願平10-31403 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(Z41)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 津金 純子 |
特許庁審判長 |
廣田 米男 |
特許庁審判官 |
宮下 行雄 野本 登美男 |
登録日 | 2000-02-04 |
登録番号 | 商標登録第4359592号(T4359592) |
権利者 | 日立電子サービス株式会社 |
商標の称呼 | エヌメッツ |
代理人 | 関根 秀太 |
代理人 | 富田 和子 |
代理人 | 三品 岩男 |