• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Z09
管理番号 1054018 
異議申立番号 異議2000-90496 
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2002-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-11 
確定日 2001-12-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第4360859号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4360859号商標の商標登録を取り消す。
理由 1.本件商標
本件登録第4360859号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成10年12月8日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第9類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープ,その他の電子応用機械器具」を指定商品として、同12年2月10日に設定登録されたものである。

2.登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)は、パソコンソフトウエア業界の世界的大企業であり、日本においては、1995年に、ワ-プロ、表計算ソフト、電子メールなどをはじめとした多彩な機能を組み込んだビジネス統合ソフト「Office95」を開発・発売し、その後、「Office97」の発売後は、次なるヴァージョンアップソフト「Office2000」の誕生にパソコン業界の期待は高まり、発売前から新聞雑誌を通じて広くその存在を知らしめていた(甲第3号証乃至甲第9号証)。
「Office」シリーズはその多彩な特長ゆえ、1995年の発売以来、ヴァージョンアップとともに着実にユーザを増やし、現在の最新ヴァージョンである「Office2000」にいたっては新聞雑誌での特集、多方面にわたるパソコン・電気メーカーやパソコン関連のホームページ上において今なお広く紹介され、個人ユーザーから企業まで、あらゆる場面において使用されるビジネスパソコン用ソフトの定番としての地位を築くまでに至っている(甲第2号証乃至甲第38号証)
以上より、申立人の使用に係る「Office」や「オフィス」ひいては「Office2000」は、本件商標の出願時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、既に我が国において著名であったものである。
しかして、本件商標は、別掲に示すとおり「iOffice2000」の文字よりなるところ、語頭の「i」の文字を小文字筆記体により付記的に配してなることから、当該文字の後の大文字「O」から続く「Office 2000」の文字部分が要部と考えられる。従って、本件商標と引用商標は外観、称呼及び観念において類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標1乃至18の使用商品とは同一又は類似するものである。
そうとすれば、引用商標は、申立人の業務に係る商品「パソコン用ソフト」を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されている商標であるところ、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、本件商標をその指定商品に使用するときは、申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当する。
さらに、本件商標は、著名商標「Office2000」に識別力の弱い小文字の「i」を結合することにより、全体として著名商標「Office2000」とあたかも非類似を装うように商標を構成せしめたものであって、当該著名商標に只乗りする意図が容易に見受けられるものであって、公正な競業秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

3.本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第19号に該当するものとして通知した取消理由は、つぎのとおりである。
<取消理由>
本件商標は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成10年12月8日に登録出願され、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年2月10日に設定登録されたものである。
申立人の提出に係る甲各号証によれば、申立人は、パソコンソフトウエア業界の世界的大企業であり、日本においては、1995年に、ワ-プロ、表計算ソフト、電子メールなどをはじめとした多彩な機能を組み込んだビジネス統合ソフト「Office95」を発売した。「Office95」は、95年暮れに投入、わずか1年余りで300万本以上を販売した日本で最も売れているアプリケーションソフトであり(甲第38号証 日経テレコン記事検索 日経産業新聞1997年2月27日記事)、以後、1997年に「Office97」を、1998年には「Office98」マック版を発売し、現在の最新ヴァージョンである「Office2000」は、新聞雑誌での特集、パソコン関連のホームページ上において今なお広く紹介されており、「Office」シリーズのパソコン用ソフトは、ヴァージョンアップとともに着実にユーザを増やし、個人ユーザーから企業まで、あらゆる場面において使用されるビジネスパソコン用ソフトの定番としての地位を築くまでに至っていることを認めることができる。
以上の事実に照らしてみれば、申立人の使用に係る「Office」シリーズのパソコン用ソフトは、本件商標の出願時においては既に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていたものということができる。
しかして、本件商標は、全体として特定の意味合いを把握することのできないものであること、申立人の「Office」シリーズの商標が著名であること、及び本件商標の指定商品は、申立人の業務にかかる商品と同一又は類似の商品を含む密接な関連性を有するものであることから、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標を構成する最初の筆記体小文字の「i」は付記的なもの、捩り的なものと理解するにとどまり、「Office2000」の文字に強い印象を受け、記憶し、申立人の業務に係る「Office」シリーズの商品を容易に想起するものというべきである。 ところで、本件商標の出願時においては、申立人の業務に係る「Office2000」は未だ発売されてはいなかったが、「Office」シリーズのパソコン用ソフトは、前記のとおり、「Office95」にはじまり「Office97」、「Office98マック版」と年を追ってヴァージョンアップされてきた経緯からすれば、「Office2000」の開発・発売も行われるであろうことは容易に推測し得たところである。
そして、申立人の使用に係る商標は、「Office」の文宇に西暦表示を付加する構成からなるものであるから、「Office2000」を認識させる本件商標は、申立人の使用にかかる「Office」シリーズの商標と類似のものとみるのが相当である。
してみれば、商標権者は、本件商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であることを承知のうえ、不正の利益を得る目的等のもとに先取り的に出願し、権利を取得したものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用をする商標に該当するものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
なお、本件取消理由とする商標法第4条第1項第19号については、申立人の主張、証拠に照らし、商標法第43条の9第1項の規定(職権による審理)に基づき適用した。

4.商標権者の意見
(1)申立人の使用に係る「Office」シリーズのパソコン用ソフトは、本件商標の出願時においては既に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていたものと判断されている。
しかし、本件商標の査定時(平成11年12月14日)において、「Office」は既に、本件商標の指定商品の分野においては、オフィスで使用するビジネス用アプリケーションソフトを集めたものであると認識されており、このようなソフトの品質表示あるいは用途表示として認識されていたものである。このことは、本件商標の査定時において、申立人以外の開発元あるいは販売元から、既に「Office」を名称の一部として含むビジネス用アプリケーションソフトが多数発売されていることからも明らかなことである(乙第2号証ないし乙第16号証の2及び、これらに記載されている製品ごとのリリース時期などを表にしてまとめた乙第1号証)。
また、本件商標の査定時において、既に本件商標の指定商品の類似群において、「Office」を含む商標が多数登録されていることから、「Office」という語は、品質表示あるいは用途表示としてのみ機能し、「Office」自体には識別力がないものといわざるをえない(乙第17号証に示す項番95までの登録日は、本件商標の査定時よりも前のものである)。
(2)申立人が「Office」を使用する場合には、「Office」単独ではなく、「Microsoft」という文字が必ず併記されて使用されており(乙第18号証の1乃至2)、製品のパッケージに使用する場合にも必ず「Microsoft」が併記されている(乙第19号証の1ないし4)。また、申立人の「Office」シリーズを意味するものとして他人が掲載あるいは報道する場合には、「Microsoft」あるいは「MS」の文字が必ず記載されている(乙第20号証の1ないし7)。このような記載によって始めて、取引者・需要者は申立人の商品であるという認識をもつものであり、「Office」のみによって申立人の商品であるという認識をもつものではない。
申立人が「Microsoft」あるいは「MS」を付記して「Office」を使用するのは、「Office」だけでは自社商品と他社商品との区別がつきにくいと考えているからに他ならない。このことは、申立人が「Microsoft\Office\Compatible」(出願日:平成6年10月14日)あるいは「M1crosoft Office2000」(出願日:平成11年5月17日)という商標登録を受けていることに照らせば、申立人においても認識しているものである(乙第21号証及び第22号証)。
以上のように、本件商標の査定時において「Office」は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者・需要者の間において広く認識されていた商標ではなく、オフィスで使用するビジネス用アプリケーションソフトの品質表示あるいは用途表示として広く認識されていたに他ならないものである。
(3)また、申立人の「Office」シリーズの商標が著名であること及び本件商標の指定商品は、申立人の業務に係る商品と同一又は類似の商品を含む密接な関連性を有するものであることから、本件商標を構成する最初の筆記体小文字の「i」は付記的なもの、捩り的なものと理解するにとどまり、「Office2000」の文字に強い印象を受け、記憶し、申立人の業務にかかる「Office」シリーズの商品を容易に想起するものというべきであると判断されている。
しかし、上述のように「Office」は品質表示あるいは用途表示として、一般的に用いられていることは明らかである。さらに、本件商標を構成する最初の筆記体小文字の「i」は付記的なもの、捩り的なものという判断は、本件商標の指定商品の分野に登録されている「Office」に一文字を付加しただけの登録商標「J-Office」(乙第23号証)の存在を考えれば、理のないものである。
本件商標や「J-Office」が登録されたのは、「Office」を含む名称からなる多数の異なる商品を取り扱うこの分野の取引者・需要者は、一文字のアルファベットの相違があれば、ある商品を他の商品と区別することが可能であり、混同を生じることはないと、この種の商品に関して使用されている商標の実態に照らして、判断されているからに他ならない。
(4)なお、「Office95」にはじまり「Office97」、「Office98マック版」と年を追ってヴァージョンアップされた経緯からすれば、「Office2000」の開発・発売も行われるであろうことは容易に推測し得たところであると判断されているが、「Office96」や「Office99」は存在していないため、定期的にヴァージヨンアップされているとは言えず、「Office2000」の発売がなされることを容易に推測できたとはいえないものである。
また、仮に、申立人が2000年に「Office」シリーズを発売するかもしれないと推測できたとしても、千年の節目として「Y2K」や「Millennium」あるいは「00」などが採択されることは充分に考えられることであり、本件商標の出願後に「2000」をたまたま申立人が採択したからといって、それによって事後的に本件商標権利者に不正の目的があったと判断されることには承服できない。
さらに、本商標権者は、本件商標を使用して平成11年2月より現在に至るまでグループウェアソフトを販売しており、約4000サーバ、約40万人のユーザに使用され、発売当初より、インターネット上の各種ウェブサイトやメール広告、コンピュータ関連雑誌、各種コンピュータ関連の展示会出展など、幅広い広告展開を行い、日本経済新聞などのマスコミにも記事として多く取り上げられ(乙第24号証)、申立人とは全く異なるソフトウエアとして取引者・需要者に認知されている。また、本件商標の使用態様は、申立人とは全く異なっており(乙第25号証の1〜7)、本件商標の出願が不正の利益を得る目的や申立人に損害を与える目的などの不正の目的で出願されたものでないことは明らかである。
(5)以上、述べたように、「Office」は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ではなく、オフィスで使用するビジネス用アプリケーションソフトの品質表示または用途表示として認識されるべきものである。
したがって、本件商標は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需用者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標ではないことは明らかであり、また、本商標権者に不正の目的がなかったことも明白であるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

5.当審の判断
(1)本件商標は、別掲に示すとおり「iOffice2000」の文字を横書きした構成よりなるところ、構成中語頭に位置する「i」の文字は、他の構成文字「Office2000」とは明らかに相違する小文字筆記体により表示されているものであるから、該「i」の文字は付記的なものとして看取されるとみるのが相当であり、本件商標は構成中の「Office2000」の文字をもって取引に資される場合が少なからずあるものというべきである。
(2)申立人の提出に係る甲各号証によれば、申立人は、パソコンソフトウエア業界の世界的大企業であり、日本においては、1995年に、ワ-プロ、表計算ソフト、電子メールなどをはじめとした多彩な機能を組み込んだビジネス統合ソフト「Office95」を発売した。「Office95」は、95年暮れに投入、わずか1年余りで300万本以上を販売した日本で最も売れているアプリケーションソフトであり(甲第38号証 日経テレコン記事検索 日経産業新聞1997年2月27日記事)、その後、1997年には「Office97」を、1998年には「Office98」マック版を発売し、「Office」シリーズのパソコン用ソフトは、ヴァージョンアップとともに着実にユーザーを増やし、個人ユーザーから企業まで、あらゆる場面において使用されるビジネスパソコン用ソフトの定番としての地位を築くまでに至っている事実を認めることができる。そして、現在の最新ヴァージョンである「Office2000」は、1999年7月9日の発売から3日で9万パッケージ以上が売れた(甲第10号証)という人気のパソコン用ソフトである。
してみれば、申立人の使用に係る商標「Office」(以下、「申立人使用商標」という。)シリーズのパソコン用ソフトは、本件商標の出願時においては既に、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間において広く認識されていたものとみるのが相当である。
(3)以上の事実よりすれば、商標権者は申立人使用商標が、本件商標の出願前より世界的に周知・著名であった事実を知りながら、申立人使用商標である「Office」と同一の文字をその商標中に含み、申立人使用商標と商標において類似する本件商標を出願したものであり、商標権者が本件商標を採択使用する行為には不正の目的があったものと推認せざるを得ない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
なお、商標権者は、本件商標の査定時(平成11年12月14日)において、「Office」は既に、本件商標の指定商品の分野においては、オフィスで使用するビジネス用アプリケーションソフトを集めたソフトの品質・用途表示として認識されているものであるから、自他商品識別標識としての機能を有しない旨主張しているが、商標権者が提出した乙各号証によっては、そのような事実を認めるに不十分であるというべきであり、この点に関する商標権者の主張は採用できない。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標


異議決定日 2001-03-30 
出願番号 商願平10-105248 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (Z09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 巻島 豊二 
特許庁審判長 廣田 米男
特許庁審判官 江崎 静雄
宮下 行雄
登録日 2000-02-10 
登録番号 商標登録第4360859号(T4360859) 
権利者 株式会社ネオジャパン
商標の称呼 アイオフィスニセン、アイオフィスニゼロゼロゼロ、アイオフィス、イオフィス 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 大賀 眞司 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ