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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200589039 審決 商標
無効200589076 審決 商標
無効200489106 審決 商標
異議200690007 審決 商標
無効200589025 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1053735 
審判番号 無効2000-35406 
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-24 
確定日 2002-01-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第3370277号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3370277号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3370277号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成6年9月5日に登録出願、別掲(1)に表示したとおりの構成よりなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成10年9月25日に設定の登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第62号証を提出している。
(1)請求人の名称の略称と同一である下記の登録商標は、請求人の業務に係る商品、運動用特殊靴、運動用特殊衣服、運動用具、履物、被服、ベルト、バンド、布製身回品、かばん類等について長年にわたり請求人会社のハウスマークとして使用されており、世界的に著名な商標である。
本件商標は、引用各商標に係る「adidas」と同一と認められる表示「ADIDAS」をその構成中に含むものであるから、請求人に精神的かつ経済的損害を与えることが明らかであり、請求人は本件商標の登録無効審判の請求について利害関係を有するものである。

(A)登録第1499855号商標
商標の構成 別掲(2)に表示したとおり
指定商品 第24類 運動具、その部品および附属品
登録出願日 昭和52年11月30日
設定登録日 昭和57年 2月26日
更新登録日 平成 9年11月 7日
平成13年 9月11日
(B)登録第1551631号商標
商標の構成 別掲(3)に表示したとおり
指定商品 第21類 かばん、その他本類に属する商品
登録出願日 昭和54年 3月27日
設定登録日 昭和57年11月26日
更新登録日 平成 5年 5月28日
(C)登録第1838770号商標
商標の構成 別掲(2)に表示したとおり
指定商品 第17類 被服、その他本類に属する商品
登録出願日 昭和55年 7月31日
設定登録日 昭和61年 2月28日
更新登録日 平成 8年 8月29日
(D)登録第1893754号商標
商標の構成 別掲(2)に表示したとおり
指定商品 第22類 はき物、その他本類に属する商品
登録出願日 昭和55年 7月31日
設定登録日 昭和61年 9月29日
更新登録日 平成 9年 2月27日
(2)引用各商標は、請求人の業務に係る商品、運動用特殊靴、運動用特殊衣服、運動用具、履物、被服、かばん等について長年にわたり継続してハウスマークとして使用されており、本件商標の出願日前より日本国内のみならず世界的規模で著名性を獲得しているものである。
これに対して、本件商標は引用各商標「adidas」と同一と認められる表示「ADIDAS」と他の文字「PASC」とを結合してなる商標である。
本件商標の指定商品は、上記のとおりであるから、引用各商標が著名性を獲得している商品と一致する。
さらに、本件商標は格別の意味合いを生じさせない造語と認められ、さらに、引用各商標に相当する「ADIDAS」が既成語の一部となっているものとも認められない。
したがって、本件商標における「PASCADIDAS」の表示は外観上は同書同大同間隔に表記されているものであっても、常に全体が一体不可分として需要者に認識理解されるものとは認められず、造語と看取される前半部分の「PASC」と著名な引用各商標「adidas」と一致する後半部分の「ADIDAS」との間で段落を生ずる。
よって、本件商標が指定商品について使用されたときには、請求人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがある。
(3)本件商標は、請求人の名称の略称として、本件商標の登録出願日前より著名と認められる「adidas」と同一の表示「ADIDAS」を含む。また、本件商標が使用される商品は請求人の名称の略称が著名性を獲得している商品と一致する。しかしながら、被請求人は本件商標の登録出願について請求人から承諾を得ていない。
したがって、本件商標が本件商品に使用されたときには、これに接した一般世人は、本件商標に含まれる「ADIDAS」の表示に基づき請求人「アディダス社」を直ちに認識理解すること明らかであり、本件商標は、請求人の人格権を毀損するものである。
(4)本件商標は、その登録出願日前に請求人によって登録出願され、かつ、本件商標の指定商品について著名と認められる引用各商標と一致する「ADIDAS」の表示と他の文字とを結合してなる商標である。
したがって、本件商標は、引用各商標と類似する商標であり、引用各商標に係る商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
(5)本件商標は、請求人のハウスマークとして世界的な名声を獲得している引用各商標と一致する「ADIDAS」の表示とこれより生ずる称呼「アディダス」を顕著に含むから、引用各商標に類似する。また、本件商標が使用される商品は、引用各商標が著名性を獲得している商品と同一の商品である。したがって、本件商標が指定商品に使用されたときには、引用各商標が獲得した強力な出所表示機能を希釈化し、また、引用各商標の顧客吸引力・名声にただ乗りするものである。
また、本件商標が使用される商品と引用各商標が著名性を獲得している商品との同一性、並びに引用各商標が請求人による創造語であるという観点に照らせば、本件商標の出願時において被請求人が引用各商標の名声について不知であり、偶然に引用各商標と一致する「ADIDAS」の表示を含む本件商標を案出したとは考え難い。そして、被請求人が配布するブランドライセンスリストにおいて、本件商標が使用されている態様は、引用各商標の態様と酷似するものであり、本件商標は不正目的をもって使用することを窺わせるものである。
そうすると、本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして著名な引用各商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであり、かつ、国際信義に反するものである。
(6)本件審判請求時の権利者(以下「前権利者」という)は、米国法人として原簿に登録されているが、請求人が行った調査によれば、前権利者は、本件商標の登録出願に係る名義変更届の提出年月日(1997年2月4日)の約3月前である1996年12月8日に法人組織として設立され、その後、1999年3月24日以前に解散している(解散の時期は不明)。
さらに、前権利者は本国米国において本件商標の登録に係る商品の製造販売に従事した形跡が認められないのみならず、商業活動に携わった形跡も一切認められない。
上記事情に照らせば、本件商標の設定登録時において、前権利者には法人としての実体を伴っていたとは考え難く、本件商標は、前権利者が自己の業務に係る商品について使用するものとは認められない。
(7)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第8号、同第11号、同第19号、同第7号及び同法第3条第1項柱書きの規定に違反して登録されたものであるから、その登録は無効にされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証を提出している。
(1)一般に、欧文字からなる商標に片仮名文字の振り仮名が付されていれば、片仮名文字は、欧文字の読みを特定する役割を果たすものであり、需要者・取引者も親しみ易い振り仮名から、称呼を導き出すのが通常である。
このように、欧文字と片仮名文字からなる商標については、片仮名文字が欧文字の読みを特定するとした判断は、数多くの審決でされている(乙第1号証ないし乙第9号証)。
本件商標も、欧文字と片仮名文字よりなるものであるから、これらの審決例のように、片仮名文字のみの称呼が生じることは明らかである。
このため、本件商標は、「パスクアディダス」のような称呼が生じるようなことはなく、「PASC」と「ADIDAS」に分離して観察されるようなものでもない。
仮に、本件商標が分離されるとしたら、その称呼から「PAS/パス」と「CADIDAS/キャディダス」に分離されると考えるのが妥当である。
したがって、請求人の主張は、妥当性を欠くものである。
被請求人の上記主張については、本件商標に関する異議の決定でも裏付けられ(商願平6-90392号、乙第10号証)、平成6年(行ケ)第157号審決取消請求事件判決においても支持されている(乙第11号証)。
したがって、本件商標は、一体不可分の商標であり、「PASC」「パスク」と「ADIDAS」「アディダス」に分断することを前提とした請求人の主張は、妥当なものではない。
(2)次に、本件商標については、前権利者より、今回答弁書を提出した被請求人に商標権移転登録申請を行った。
この移転登録申請は、既に譲渡が行われていたものを見過ごしていたため、手続きが遅れたものであることを付け加えておく。
本件商標は、被請求人により使用されるものであり、商標法第3条第1項柱書きの規定にも違反しないものである。
(3)以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第8号、同第11号、同第19号、同第7号、又は、同法第3条第1項柱書の規定のいずれにも違反して登録されたものではない。

4 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)に示したとおり「PASCADIDAS」の欧文字及び該欧文字に較べて極めて小さくその下部に表された「パスキャディダス」の片仮名文字よりなるところ、下部の片仮名文字部分は上部の欧文字部分に較べて極めて小さな文字で付記的に表されていてその外観印象に格別の差異があることからすると、欧文字より受ける印象は、仮名文字に比して圧倒的に強いというべきである。
かかる場合、本件商標にあって該片仮名文字部分は欧文字部分の読みを特定する役割を果たすものとして無理なく認識し得るかどうかの点はやや疑問であり、かつ、これを振り仮名表示であると仮定したとしても、その一体性は希薄なものというべきであるから、これに接する需要者は、構成中視覚印象に占める割合の圧倒的に大きい部分というべき前記欧文字に着目し該部分に強く印象づけられるものといえる。また、該欧文字又は片仮名文字のいずれをとっても、特定の意味合いを看取させるものではないから、意味上において、これらを常に一体のものとして把握しなければならないような特段の事情は存しない。
そして、本件商標はその指定商品を「被服類,ベルト類,履物類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)等」とすること前記のとおりである。
(2)引用各商標の著名性について
引用各商標は、別掲(2)及び(3)に示すとおり「adidas」の欧文字よりなるところ、請求人提出の証拠(甲第2号証ないし甲第62号証)を逐一精査するまでもなく、引用各商標は、請求人がその事業全体を表彰するハウスマークとして、また、運動用特殊靴、運動用特殊衣服、運動用具、履物、被服、かばん等の各商品を表示するものとして、わが国を含む世界各国において長年に亘り継続して使用しているものであり、また、引用各商標に係る各商品は、オリンピック競技大会を始め国際的な陸上競技大会、水泳競技大会などにおいて世界各国の多くの選手に広範に使用され、かつ、これらの競技大会はテレビ、新聞、雑誌などのマスメディアにより広く視聴者一般に報道されていることは周知の事実である。また、これらの商品に関しては、長年に亘って広告、宣伝活動が反復継続されているところと認められる。
そうすると、引用各商標は、請求人事業を表彰するハウスマークとして、また、前記取り扱いに係る各商品の商標として、本件商標の登録出願時である平成6年9月5日前においてすでにわが国の取引者、需要者の間に広く認識され、著名性を獲得している商標であって、また、それが独創的な創造語であることと相俟って、その著名性は極めて高いものと認められる。
(3)出所混同のおそれについて
本件商標をその指定商品に使用した場合、引用各商標(「adidas」)が極めて著名であること、「PASCADIDAS」の文字全体としては特定の意味合いを看取し得ない一方、後半の「ADIDAS」の文字部分は引用各商標と同一の欧文字綴りであること、本件商標に係る指定商品は引用各商標に係る商品と殆ど同一であるか若しくは密接な関連性を有する商品であること等の点よりして、本件商標に接する取引者、需要者は、構成中の「ADIDAS」の文字部分に注意を惹かれ強く印象づけられると同時に、容易に引用各商標を連想、想起し、該商品が請求人又は請求人事業と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について誤認するおそれがあると判断するのが相当である。
(4)被請求人の主張について
被請求人は、本件商標は片仮名文字部分が欧文字部分の読みを特定する役割を果たすものであり、したがって、これを「PASC」と「ADIDAS」とに分離されることはない旨述べているが、仮に、該片仮名文字を欧文字の振り仮名表示であるとしても、これに接する需要者が構成中圧倒的に視覚印象に占める割合の大きい部分というべき欧文字に着目し強く印象づけられるとした前記認定は相当というべきであり、かつ、商標自体と諸般の事情を考慮に入れて取引の実情に照らし総合勘案するに、本件における出所混同のおそれについては、前記判断を相当とするから、その主張は採用することができない。このほか述べる被請求人の主張はいずれも妥当でなく、前記認定を左右するに足りない。
(5)結語
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがある商標というべきであるから、その登録は商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
(1) 本件商標


(2) 引用登録第1499855号商標、同第1838770号商標、同第1893754号商標


(3) 引用登録第1551631号商標


審理終結日 2001-11-19 
結審通知日 2001-11-22 
審決日 2001-12-04 
出願番号 商願平6-90392 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 涌井 幸一大川 志道 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 野上 サトル
小池 隆
登録日 1998-09-25 
登録番号 商標登録第3370277号(T3370277) 
商標の称呼 パスキャディダス 
代理人 足立 勉 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳田 征史 

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