• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200689125 審決 商標
審判199935719 審決 商標
取消200230832 審決 商標
取消200431326 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 110
管理番号 1053658 
審判番号 取消2000-30895 
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2000-08-03 
確定日 2002-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第2168132号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2168132号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ASSIST」の欧文字を横書きしなり、昭和61年10月13日に登録出願、第10類「医療機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として平成1年9月29日に設定登録がされ、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標は、「その指定商品中『医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器』についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び審判事件意見書(以下「意見書」という。)において要旨次のように述べ証拠方法として甲第1号証ないし同第7号証を提出した。
(1)取消事由
本件商標は、その指定商品中「医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により上記商品について取り消されるべきものである。
(2)意見書の内容
(イ)本件審判請求の性格
被請求人は、平成9年10月20日、本件商標権者であった国籍アメリカ合衆国のテクニコン インストルメント コーポレーションに対し、指定商品中、「医療機械器具」について不使用による登録取消の審判を請求したうえ、国籍アメリカ合衆国のバイエル コーポレーションを経由して、平成10年5月11日に本件商標権の譲渡を受けた者である。
請求人は、医療器機、理化学器機の製造、販売並びに輸出入等を目的とする株式会社(甲第1号証)であって、会社設立以来「アシスト」及び「ASSIST」を「血液検査器」について商標として使用してきたものである。
被請求人は、本件商標を、単に「血液検査器」について使用していないのみならず、「診断用機械器具」等の「医療機械器具」についても使用していなかった。
ところが被請求人は、平成11年12月7日に至り、長期間にわたり商標とし使用してきた小規模事業者である請求人に対し、突如、その使用の中止等を請求したが(甲第2号証)、請求人から、平成12年1月7日付の回答書(甲第3号証)をもってその要求を拒絶され、その後交渉が行われたが、決裂した。
しかるに、答弁書において、被請求人は、請求人と同一の商号を有する第三者に対し平成12年6月1日、「医療機械器具」のうち「医療用サポーター」について、同年5月1日に遡って通常使用権を許諾したところ、通常使用権者において「医療用サポーター」について本件商標を使用しているから「医療用機械器具」について商標を使用している旨主張している。
しかしながら、右契約は、被請求人が、請求人が前記交渉において被請求人の要求を拒絶し不使用による取消の請求の動きを見せるや、いわば「駆け込み」的にとった措置であるから、被請求人の主張は、明らかに権利の濫用である。
(ロ)審判請求の趣旨
ところで、請求人の本件請求の趣旨は、被請求人の本件商標に関し、「医療機械器具」のうち「診断用機械器具」である「血液検査器」について商標を使用していないと主張し、この商品について商標の不使用による取消しを請求するものである。現行法は、旧法において指定商品が複数の場合は、その中のいずれか1つについて商標を使用していれば商標の不使用による取り消しを免れた(旧法14条1号但し書き)のとは異なり、指定商品が2個以上あるときは、その1つ1つについて登録商標を使用する義務があるという前提をとっている(網野・662頁)。
更に、請求人は登録商標の指定商品中、取消を必要とする商品の範囲を任意に指定して取消を求めることができ、その指定方法は、出願人が商品を包括的に指定しているか、具体的に列挙して指定しているか等に制約されるものでないことはもとよりであるとされている(同663頁)。
したがって、「医療機械器具」のうち、ある商品について使用していたとしても、「血液検査器」について使用していなければ、使用していない商品である「血液検査器」について商標は取り消されるのである。
本来、医療の分野は基礎と臨床にわたり、かりに臨床の分野で使用される機械器具についても、臨床の専門分野を見るだけでも極めて広範であることがそれ自体示唆するように、「医療機械器具」は極めて多岐広範にわたるのである。したがって被請求人が、このように広範にわたる指定商品について全面的に商標を実施しているとは到底言い得ない(甲第6号証及び同第7号証)。
商標法上、「どの程度の範囲をもって一つの指定商品と考えるのかということは、その範疇に属する商品に商標が使用されている限り、不使用取消しを免れるという効果にかかわるから、出願人の自由に定めさせるわけにはいかない」(網野誠「商標・新版増補」653頁)と言われている。また、かりに、複数の商品が一つの商品であるかのごとく願書に記載されて出願され、登録が認められたとしても、あくまでも指定商品が複数あることに変わりはない(田村善之「商標法概説」<弘文堂,平成10年>17頁)とされており、省令別表に掲げられた指定商品のリストは、一応の参考にすぎず、出願人の指定の仕方には拘束力がないために、出願人が一つの商標に関し、包括的に商品を指定する例は少なくないと言われている。
商標法が、商品の区分という概念を採用し、商標登録の出願は政令で定める商品の区分ごとになされなければならないものとしたのは、さしあたり出願の単位を明らかにしたにすぎない。したがって、その単位中に商標を使用しない商品があるときであっても、その商品以外の単位中の商品について商標を使用している限り、不使用の商品について商標権の取り消しを認めない趣旨を定めたものではあり得ない。
省令別表が、「医療機械器具」について「診断用機械器具」というような中項目を設けたうえ、「血液検査器」等の商品を列挙しているのは、商標権を必要な指定商品について保護する反面、過大な範囲の指定商品を一網打尽に独占することを許さない趣旨を端的に示しているものと理解することができる。のみならず、このりストに掲げられた商品は、例示にすぎないから、リスト以外の新しい商品を指定して商標の出願をすることも妨げられないと解されており、商品の区分は、登録商標の保護範囲等を決する商品の類似性とも無関係の概念であるとされている(田村・前掲19頁)ところである。
(ハ)指定商品「血液検査器」に関する不使用
請求人は血液検査器等に関する商品分野の販売業を多年にわたって継続してきたが、被請求人がこの分野で競業した事実は、全く存在しない。
現に、審判に先立つ当事者間の交渉において被請求人会社の担当者も、本件商品を含む請求人の取扱商品について、双方の「商品」がバッティングしていないから、条件次第では商標の使用を許諾すると述べており、本件商品を含む請求人の取扱商品について商標を使用していない事実を自認していたところである(甲第5号証)。
(ニ)「使用」の立証責任
多数の商品を具体的に列挙することなく、本来、使用する意思のない商品までも包括する商品分類によって過度に多数の商品を包括的に指定した被請求人に対し、請求人が、その包括的な指定商品に含まれる商品のうち商標権者が明らかに使用していないと目される商品を特定して、その商品について不使用の取消しを請求する場合には、被請求人に、その請求の対象とされた商品についての商標の使用の事実の立証責任がある。被請求人が仮に請求の対象とされた商品について商標を使用しているのであれば、その立証は極めて容易であり、そのことにより不使用の主張は、証拠上、否定できるからである。
しかるに被請求人は、請求の対象が複数の指定商品に跨がる場合、商標権者はそのうちの一つの商品に登録商標を使用していれば、請求にかかる指定商品全てについて取消を免れると解する見解に立って、本件の場合にも指定商品単位としての「医療器械器具」の全部について使用の効果が及ぶとして、その取消請求は認められるべきではないかのごとく主張している。
しかし本件での請求は、「医療機械器具」の全部について不使用による取消を請求しているのではなく、「血液検査器」について不使用による取消を請求しているのであるから、前提が異なる。
その上、請求にかかる10の指定商品のうち9まで不使用であることが明らかにされたのであれば、たまたま余分にくっついていた1の指定商品について使用が認められたからといって、9の指定商品にかかる商品登録を維持する合理的な理由を探すことは困難であると解されている(田村・前掲29頁)。
本件では、請求人は、被請求人が「医療機械器具」のほとんど全部について、商標を使用していないと窺われるにもかかわらず、包括的にその全ての不使用による取消を請求することなく、被請求人が使用している事実がないから、被請求人において使用の事実を立証できないものと請求人が確信した「血液検査器」に絞って、不使用による取消請求に及んだのである。
なお、商標法50条2項は、商標権者等が取消請求にかかる商品のいずれかについて登録商標を使用していることを証明した場合には、逆に請求人が他の商品に関して不使用を証明しなければならないことを明らかにした規定であると解されているが、文言上、明らかなとおり、それは取消請求の対象にかかる商品が複数である場合に、その1つについて商標権者等が使用の事実を証明した場合を述べているにすぎない。本件はもともと、「血液検査器」のみを審判の請求の対象としているのであるから、被請求人が「血液検査器」の使用の事実を立証すべきことは明らかであり、「医療機械器具」のうち、「血液検査器」以外のある商品について商標の使用の事実を立証したからといって、審判の対象となる商品について商標の使用を立証したことにならないことは自明である。
(3)答弁に対する弁駁
(イ)本件審判の請求の趣旨について
被請求人は、本件請求の趣旨を、取消請求の対象たる商品は、請求に係る指定商品のいずれかについての使用を証明すれば足りるところ、「医療機械器具」については、通常使用権者が「医療用サポーター」に使用していたから本件請求には理由がないかのごとく、主張している。
しかし、本件請求の趣旨は、請求人が平成13年1月16日付審判事件意見書において詳しく主張したとおり、指定商品中の「医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器」についてとあるのは、もとより、第10類の全部ではなく、その一部である「医療機械器具」のうち、その一部である「診断用機械器具」に属する「血液検査器」を取消しの対象商品として請求したものである。
(ロ)「血液検査器」について本件商標が使用されていないことについて
被請求人は、第2答弁書において、「血液検査器」について、本件商標を使用していないことを自認している(同書面4頁)。
(ハ)本件請求の趣旨は、すでに述べたとおりであるが、万一、審判請求書上の請求の趣旨の記載が明瞭でないとされる場合には、釈明、補正、訂正の機会を与えて頂けるものと存ずる。
しかし、仮にその機会をお与え頂けず、しかも被請求人が理解したように請求の趣旨を捉えて判断される場合に鑑み、請求人としては、被請求人の主張に対し、つぎのとおり反論する。
被請求人は、埼玉県八潮市の株式会社アシスト(以下、「八潮アシスト社」という。)が商標を審判請求前3月以前から「通常使用権者」として本件商標を「医療用サポーター」に使用していたし、それゆえ、商標法第50条3項にいわゆる「駆け込み使用」でないと主張している。
しかしながら、被請求人は、答弁の理由において自ら認めているように、八潮アシスト社に対し、請求人との交渉上、審判の請求がされることを知った後(甲第4号証など)である平成12年6月1日に至り、通常使用許諾に関する契約を締結したものであるから、本件審判請求の日である平成12年8月3日のわずか約2月前に八潮アシスト社は本件商標について通常使用権を設定されたことになる。
したがって、同社が仮に同年5月1日に「医療用機械器具」に属する「医療用サポーター」について本件商標を使用したとしても、それは通常使用権者としての使用ではない。
被請求人と八潮アシスト社の間で、契約の効力の発生日を遡り、たとえば、過去の商標の無断使用について損害賠償請求権を放棄するなどの方策をとることが、当事者間においては自由であるとしても、およそ、商標法における「商標の使用」に関する事実を、商標権者の意思によって恣意的に遡及させることは法律の趣旨を没却させることとなり、商標法50条の法律解釈としては到底容認できないと考えられる。
商標法第50条における「使用」は、まさに「商標権の行使としての使用」の事実が、審判の請求前3ヶ月の当時にあったか否かという歴史的事実を問題としており、後に商標権者と商標を使用していたという者との間で契約上、どのように整理するかとは、異なると思うのである。これに反し、仮に当事者間の契約により通常使用権の許諾の効果を遡及し、商標法50条の「通常使用権者による使用」として認めれば、同条の不使用の期間に関する規定は事実上、潜脱を許すことになりかねない。取消しを免れさせる「使用」をこのような方策によって認める解釈は、およそ立法者の意思にも反し、極めて不合理である。
のみならず、八潮アシスト社の請求書(乙第7号証及び同第8号証)、ちらし(乙第4号証ないし同第6号証)および外装箱(乙第2号証)には、同社の社名として片仮名による「アシスト」を通常の表記方法によって記載しているものの、これをもって「ASSIST」の表記を片仮名に変換した「アシスト」が、商品を特定ないし識別する商標として使用されているものとは言えない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出した。
(1)請求に対する答弁
(イ)乙第1号証は、八潮アシスト社を通常使用権者として、被請求人との間で、平成12年6月1日に締結された本件商標の通常使用許諾に関する契約書の写しである。
この契約は、契約書第11条の規定に基づき平成12年5月1日に遡って効力が発生しており、使用許諾の対象商品を「医療用サポーター」としているが、この「医療用サポーター」は、八潮アシスト社→→医療用品卸、薬品卸業者→→整形外科、接骨院→→腰痛・肋骨骨折患者、切開手術患者(術後帯)等を経て流通し、患者への給付が健康保険の適用になっており、「医療用機械器具」に属する商品であることが明らかである。
したがって、この乙第1号証からは、八潮アシスト社が、本件商標に係る商標権についての通常使用権者であること、通常使用許諾の対象とする商品が本件商標の指定商品中「医療用機械器具」に属する「医療用サポーター」であること、及び八潮アシスト社の通常使用権者たる地位は、本件審判請求登録の日である平成12年8月30日前3年以内で、本件審判請求の日平成12年8月3日から3ヶ月以上前の平成12年5月1日には確立していることが明らかである。
(ロ)乙第2号証は、同第1号証の本件契約の対象商品「医療用サポーター」の一種である「骨盤ベルト」の包装箱を展開したものの写しである。
この商品は、包装箱の裏側の使用方法等が説明されている部分の下部に商標「アシスト」の表示がなされている。
この商品「骨盤ベルト」は、本件契約書に添付された別紙カタログに示されたもので、そのようなカタログの存在から本件契約の発効日たる平成12年5月1日前に販売を開始され、平成12年5月1日には現に販売されていたことが判る。
したがって、この乙第2号証からは、平成12年5月1日現在、株式会社アシストにより、商品「骨盤ベルト」について商標「アシスト」が使用されていたことが明らかである。
(ハ)乙第3号証は、御庁審判便覧の一部写しである。これによれば、商標法第50条第1項の規定における「社会通念上同一と認められる商標」と認識される「平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」の例として「アップル」と「apple」の関係が掲げられており、この例よりして、「アシスト」も「ASSIST」と社会通念上同一と認められるものであると確信する。
したがって、この乙第3号証から、商標「アシスト」は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることが明らかである。
(ニ)乙第4号証は、同第2号証と同様、株式会社アシストの商品で本件契約対象商品「医療用サポーター」の一種である「骨盤ベルト」のカタログで、これにも左下の部分に商標「アシスト」が表示されている。
(ホ)乙第5号証は、同第2号証と同様、八潮アシスト社の商品で契約対象商品「医療用サポーター」の一種である商品「腰部固定用コルセット・ウエストサポート」のカタログで、右下の部分に商標「アシスト」が表示がされている。そして、「このカタログの記載内容は、1996年9月現在のものです。」との記載からも明らかなように、この商品は、少なくとも平成8年9月以降、本件契約発効日平成12年5月1日現在販売に供されている。
(ヘ)乙第6号証は、同第2号証と同様に、八潮アシスト社の商品で契約対象商品「医療用サポーター」の一種である「骨盤バンド」のカタログで、右下の部分に商標「アシスト」が表示がされている。そして、乙第5号証と同様「このカタログの記載内容は、1996年9月現在のものです。」との記載からも明らかなように、この商品は、少なくとも平成8年9月以降、本件契約発効日平成12年5月1日現在販売に供されている。
(ト)以上詳述したように、乙第1号証ないし同第6号証から明らかなように、本件審判請求の日である平成12年8月3日より3ヶ月前に当たり、本件審判請求の登録の日である平成12年8月30日から遡ること3年以内に当たる平成12年5月1日に被請求人から通常使用許諾を受けた株式会社アシストにより、本件商標が、その指定商品「医療用機械器具」に属する商品「医療用サポーター」について、平成12年5月1日以降、適法に使用されていたことが明らかである。
(2)意見書に対する答弁
(イ)本件商標の使用が「駆け込み使用」でないことについて
本件商標が審判請求前3月以前に使用されていることの証明を補強するため、乙第7号証及び同第8号証を提出する。
乙第7号証は、通常使用権者である八潮アシスト社から株式会社エムジーエムコーポレーションへの請求書の写しである。この請求書は、乙第5号証として提出したカタログに掲載されている商品である「腰部固定用コルセット」が、本件審判請求前3月以前である平成12年5月1日において実際に取引に供されていたことを示すものである。なお、参考として、乙第5号証(平成12年10月18日提出の答弁書に添付のものと同一)を本書に添付して再度提出する。乙第5号証のカタログに掲載される商品と、この乙第7号証の請求書に記載される商品とが同一であることは、乙第5号証のカタログに示される商品名「メディナース(MEDINURSE)」「ウエストサポート」、及びカタログの右下に示される品番(JANコード)のうちサイズLLの商品に該当する品番「4995256000897」が、乙第7号証の上段に記載された商品名「メディナース ウエストサポート LL」及びその下段に記載される品番「4995256000897」と一致していることからも明らかである。
また、乙第8号証も、通常使用権者である八潮アシスト社から株式会社エムジーエムコーボレーションへの請求書の写しであり、この乙第8号証の請求書は、乙第6号証として提出したカタログに掲載される商品である「骨盤バンド」が、本件審判請求前3月以前である平成12年5月1日において実際に取引に供されていたことを示すものである。なお、参考として、乙第6号証(平成12年10月18日提出の答弁書に添付のものと同一)を本書に添付して再度提出する。乙第6号証のカタログに掲載される商品と、この乙第8号証の請求書に記載される商品とが同一であることは、乙第6号証のカタログに示される商品名「メディナース(MEDINURSE)」「骨盤バンド」、及びカタログの右下に示される品番(JANコード)のうちブラウン色のサイズMの商品に該当する品番「4995256000453」が、乙第8号証に記載された商品名「メディナース 骨盤バンド(ブラウン)M」及びその下段に記載される品番「4995256000453」と一致していることからも明らかである。
以上証明したとおり、本件商標は、通常使用権者により、本件審判請求前3月以前である5月1日の時点において使用されていたものであるから、商標法第50条第3項の規定によるいわゆる「駆け込み使用」に該当しない。
(ロ)取消請求の対象は「血液検査器」のみであって、被請求人はこの商品に対する使用証明をしていない、という請求人の主張について
本件審判請求書中の「請求の趣旨」の欄において、請求人は、本件商標の指定商品中の取消請求の対象たる商品として「第10類 医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器」と記載している。
したがって、商標法第50条第2項に規定されるとおり、被請求人は、請求に係る指定商品「医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器」のいずれかについて登録商標の使用を証明すれば足りるものであることは言うまでもない。
上記取消請求の各対象商品は、「血液検査器」が「診断用機械器具」に属し、この「診断用機械器具」は一つの類似群を構成する「医療用機械器具」に属するという関係を有しており、このような関係にある商品を並記してあること自体、理解に苦しむところであるが、更に請求人は意見書において商品「血液検査器」についてのみ登録を取消すことが本件審判請求の趣旨であると強く主張しているようであって、被請求人には理解し難いところである。
しかしながら、請求人の意見書に鑑み、商品「血液検査器」についてのみの登録商標の使用の有無を答弁すると、被請求人はこの商品「血液検査器」については本件商標を使用していない。
以上のとおり、意見書における請求人の主張に対して答弁を行うとともに、本件商標の「医療機械器具」(医療用サポーター)についての使用証明を補強する証拠を提出した。
したがって、請求人の主張が商標法第50条の規定に照らして失当なものであることは明らかになったものと確信する。

4 当審の判断
(1)被請求人が本件商標の使用の事実を示すために提出した乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
乙第1号証は、被請求人と八潮アシスト社との間で平成12年6月1日に、本件商標に係る商標権について商品「医療用サポーター」の使用に関し、その効力を平成12年5月1日に遡って締結した通常使用権許諾の契約書であり、八潮アシスト社は本件商標に関する通常使用権者と認められる。
乙第5号証及び同第6号証は、通常使用権者の八潮アシスト社が商品「腰部固定用コルセット」及び「骨盤バンド」に使用する商品カタログと認められる。
そして、「腰部固定用コルセット」及び「骨盤バンド」は、前記通常使用権許諾の契約書に添付の商品説明書及び請求人の説明によれば、同商品の機能、用途、流通経路及び患者への給付が健康保険の適用になっていることからみて、指定商品中の「医療用機械器具」の範疇に属する商品の「医療用サポーター」の一種と認められる。なお、「腰部固定用コルセット」及び「骨盤バンド」が本件指定商品中の「医療器械器具」の範疇に含まれることについて、当事者間に争いはない。
しかして「このカタログの記載内容は、1996年9月現在のものです。」との記載から少なくとも平成8年9月頃以降に同商品の販売活動があったものと推認できる。
そして、乙第7号証及び同第8号証は、本件審判請求の登録前3年以内である平成12年5月1日に、実際に「医療用サポーター」及び「骨盤バンド」の商品の納品が行われたことを示す納品書であって(商品カタログ中の品番と納品書中の品番とが符合する。)、商品の販売がされたものと認められる。
また、同カタログ中の「アシスト」の片仮名文字は、表示されている他の文字の「製造元」、「メディナース事業部」、「埼玉県八潮市大曽根1123」の文字をもって、製造元表示としての機能を果たすものである他に、明らかに商号と認識される「株式会社」の文字を伴なわず、また太く顕著に表示されていることもあって、これ自体が他の文字に独立し、カタログに表示されている商品を化体し、自他商品の識別力を有してなるものと認識され、かつ、該文字からは本件商標の綴りを直ちに理解、認識でき、他の観念を有した文字(語)が想定されることもなく、片仮名文字と欧文字の相互の使用と認められ、本件商標とは社会通念上同一のものというのが相当である。
(2)以上、被請求人が本件商標の使用の事実を示すために提出した上記乙各号証の証拠を勘案すれば、本件商標は、被請求人により、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、請求に係る指定商品の「医療機械器具」中「医療用サポーター」の一種である商品「腰部固定用コルセット」及び「骨盤バンド」について使用されていたものと認めることができる。
(3)請求人の主張について
(イ)本件商標の使用が駆け込み使用であるとの主張について
被請求人と八潮アシスト社との間で平成12年6月1日に締結した、本件商標に係る商標権について商品「医療用サポーター」の使用に関する通常使用権許諾の契約は、審判の請求の日である平成12年8月3日の僅か約2月前であるとしても、これは、両者の今までの使用権を確認するという意味で、平成12年5月1日に商品の納品があったので、その日に合わせた正式な契約と推認しても不合理ではない。
なぜなら、乙第5号証及び同第6号証により、本件商標の使用について前示の認定のとおり「このカタログの記載内容は、1996年9月現在のものです。」との記載から少なくとも平成8年9月頃以降に商品「医療用サポーター」の販売活動があったものと推認し得るものであるし、そして実際に平成12年5月1日に「医療用サポーター」の商品の納品が行われたことが納品書により認められる。さらに、被請求人は、既に平成11年12月7日に請求人に対し、本件商標の使用の中止を警告し、請求人によるその回答が同12年1月7日になされたが、この一連の事実経過の流れの中で、正式な契約がなされたというのが相当である。
以上、被請求人と八潮アシスト社との間で締結された前記通常使用許諾の契約は、審判の請求の日である平成12年8月31日の僅か約2月前になされたものであることの事実により、その契約自体が、本件商標の使用が請求人のいう「請求人が前記交渉において被請求人の要求を拒絶し不使用による取消の請求の動きを見せるや、いわば『駆け込み』的にとった措置である」といえるとしても、本件商標の使用自体は駆け込み使用であるとはいえない。そして、この認定を覆す証拠はない。
(ロ)請求の趣旨(取消審判の性格)について
請求人は、医療機械器具のうち、ある商品について使用していたとしても、血液検査器について使用していなければ、使用していない商品である「血液検査器」について商標は取り消されるのである、との主張をしている。
しかしながら、商標法50条は、「各指定商品について登録商標の使用をしていないときは、その指定商品に係る商標登録を取り消すについて審判を請求することができる」と規定しているところ、この場合の請求は、「その一部の指定商品を一体とする一つの請求であって、その一部の指定商品に属する個々指定商品ごとに請求があるものではない」(工業所有権逐条解説 特許庁編)と解され、本件商標の取り消し請求に係る商品及び本件商標の使用の認定は、前記とおりであり、請求人の主張は採用できない。
(ハ)本件請求の趣旨が適切でない場合は、釈明、補正、訂正の機会が与えられるものとの主張について
本件審判請求の趣旨は、「指定商品中の『医療機械器具、診断用機械器具、血液検査器』について取り消す」と記載されているものであるところ、請求人はこの点につて、第10類の商品である「医療機械器具」のうち、その一部である「診断用機械器具」に属する「血液検査器」を取消しの対象商品としたものであると述べるが、「医療機械器具」が表示されている以上、その全部について取消を求めるものと解され、その表示が大概念、中概念、小概念の表示であるとしても、そのことから直ちに最終的に「血液検査器」の取消しを求めるものと解釈すべき合理的理由が見当たらず、審判の請求の趣旨に記載されている指定商品を「血液検査器」と訂正することは要旨の変更に当たり、認められない。
したがって、上記請求の趣旨は、その補正の対象になり得るのものと解することができない。
以上、請求人の主張は、いずれも採用できない。
(4)むすび
したがって、本件商標の指定商品中の請求に係る商品についての登録は、商標法第50条の規定により取消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-26 
結審通知日 2001-10-31 
審決日 2001-11-27 
出願番号 商願昭61-108153 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (110)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 工藤 莞司涌井 幸一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 1989-09-29 
登録番号 商標登録第2168132号(T2168132) 
商標の称呼 アシスト 
代理人 弁護士 更田 義彦 
代理人 植木 久一 
代理人 小谷 悦司 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ