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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 016
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 016
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない 016
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 016
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 016
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 016
管理番号 1050266 
審判番号 審判1999-35031 
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-19 
確定日 2001-11-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4170589号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4170589号商標(以下「本件商標」という。)は、平成7年12月7日に登録出願され、「シルコットエレガンス」の文字を横書きしてなり、第16類「紙類,紙袋,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製手ふき,紙製ハンカチ,合成樹脂繊維からなる紙製のウェットティッシュ,身体清浄水又は化粧水含浸ウェットティッシュペーパー」を指定商品として、同10年7月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項柱書について
請求人の調査した範囲においては、商標権者が本件商標の指定商品に係る業務を行っている事実は発見できなかった。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
請求人であるElegance Rolf Offergelt Gmbhは、1930年にドイツで設立された会社であり、子会社としてフランスにEleganceS.A.を所有している(以下、両社をElegance社という。)。請求人の商品には、すべてEleganceS.A.の表示が付されている。Elegance社は、設立以来、化粧品、靴、時計、眼鏡、衣服、アクセサリーといったいわゆるファッション関連商品の通信販売及び店舗販売を通じて世界的規模でビジネスを行っており、一般にEleganceと略称されている(甲第1号証、甲第2号証)。
Elegance社は、遅くとも昭和38年頃から我国においてビジネスを開始している。通信販売は、雑誌「Elegance boutique」と「Elegance Paris」を用いて行っており、洋雑誌としては我国最大の輸入部数を誇るものである(甲第3号証の1ないし3)。店舗販売については、各商品毎に数多くの会社を通じて全国のデパートで販売されている。
以上より、本件商標出願日以前から現在に至るまで、「Elegance/エレガンス」の語は、Elegance社の著名な略称として我国において一般に認識されていること明らかである。
したがって、本件商標は、Elegance社の名称の著名な略称である「Elegance/エレガンス」を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について
Elegance社は、我国においては、上述のように遅くとも昭和38年頃から、「Elegance/エレガンス」の語(以下「引用商標」という。)をハウスマークとしてファッション関連商品を中心に様々な商品に使用している(甲第3号証の1ないし3)。アクセサリー、生地については(株)三貴が、かばんについてはプレリーシミズ(株)が、時計についてはシチズン時計(株)がそれぞれ取り扱っている(甲第3号証の2及び3)。各々の商品に引用商標を使用しており(甲第4号証)、引用商標は、これらの商品について著名になっている。引用商標がファッション業界において著名なことは、横浜地裁、東京高裁及び最高裁も認めるところである(甲第6号証)。
また、「Elegance」の商標は、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、WIP0、ノルウェー、香港、英国、サウジアラビア、カナダ、デンマーク、韓国、メキシコ、スペイン等世界的に登録されている(甲第12号証)。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標は、「シルコット」と「エレガンス」の語を単に羅列した商標であり、一連に「シルコットエレガンス」と長く称呼すべき特段の事情もないから、本件商標が指定商品に使用された場合には、「シルコットエレガンス」の外に、「エレガンス」の称呼が生ずるものと言える。よって、本件商標は、引用商標と類似の商標であることは明らかである。
また、引用商標は、生地、ハンカチ、タオル、婦人服、せっけん、化粧品等ファッション関連分野で特に著名であり(甲第2号証)、本件商標の指定商品である紙袋,紙タオル,紙製手ふき,紙製ハンカチとは互いに類似又は近似した商品といえる。
してみれば、引用商標の著名性、商標の類似性、商品の近似性、Elegance社の業務の多角化等を考慮すれば、本件商標は、Elegance社の著名商標・略称との関係で、Elegance社の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがある商標に該当すると共に、ただ乗りに該当するから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、昭和51年1月23日に登録出願され、「エレガンス」の文字と「ELEGANCE」の文字とを二段に横書きしてなり、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同63年4月26日に設定登録された登録第2042713号商標(以下「引用登録商標」という。)と「エレガンス」の称呼において類似する商標であり、指定商品も紙製タオル、紙製ハンカチについて類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(5)答弁に対する弁駁
本件商標は、「シルコット」の部分と「エレガンス」の部分に分断されるものであり、「エレガンス」が請求人の商標として日本において著名であるため、その傾向が顕著なことは明らかである。WIPOで採択された周知商標の保護に関する共同勧告においても、この点は確認されており、日本政府も世界に向け承認しているところである(甲第13号証)。
そして、「エレガンス」は、本来的に自他商品識別力のある商標といえるものであり、最高裁も認めるように、「エレガンス」なる商標は、日本において著名であるから、かかる点からも、その識別力は強力なものである。
また、商品の類否についての特許庁の基準はあくまでも、目安であり、何ら法的拘束力をもつものではない。実際に、当該審査基準と異なる判断を下した審決、判決は多数ある。
更に、被請求人が「合成樹脂繊維からなる紙製ウェットティッシュ、身体清浄水含浸ウェットティッシュ」に係る業務を行っていることは認められるが、その他の指定商品に関する業務を行っている事実も計画も認められないから、上記商品以外の商品との関係においては、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に反するものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第3号証を提出した。
(1)被請求人は、被請求人の商品カタログ(乙第3号証)の「ベビーケア用品」の頁に示されるとおり、「合成樹脂繊維からなる紙製のウェットティッシュ、身体清浄水含浸ウェットティッシュ」に係る業務を行っているから、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとの主張は失当である。
(2)本件商標は、片仮名「シルコットエレガンス」を同書・同大・同間隔で一連に表してなるものであるところ、「シルコット」の語と「エレガンス」の語との結合語からなることは明らかであるとともに、「シルコット」の語は造語であり、かつ、「エレガンス」の語は「上品、優雅、優美」等の語義を有する外来語(乙第1号証)であって、一般に多くの商品に関して、その品質、形状等を表示するため、特にそれらを誇張的に表示するため使用されており、自他商品識別力を有する他の語と結合した商標は枚挙にいとまがないほど登録されている(乙第2号証)。
してみれば、本件商標は、取引者・需要者間においては、一連に「シルコットエレガンス」と称呼されるか、または、自他商品識別力を有する「シルコット」の文字部分から、単に「シルコット」と略称されることはあっても、決して単に「エレガンス」と略称されることはないのであって、「エレガンス」と略称されたのでは、前記語義を使用し得る商品に関しては、自他商品識別力を有さず、商標として機能し得ないこととなる。
また、引用商標が、請求人の著名な略称であり、ファッション業界において著名であるとしても、少なくとも、本件商標の指定商品に関しては、そうであるとはいえず、かつ、それを具体的に裏付けるべき立証もされていない。更に、請求人は、引用商標を使用している「生地、ハンカチ、タオル、婦人服、せっけん、化粧品等」と本件商標の指定商品「紙袋、紙製タオル、紙製手ふき、紙製ハンカチ」とは互いに類似または近似した商品であると主張するが、本件商標の前記指定商品は、いわゆる使い捨て商品であるうえに、請求人の主張に係る前記商品とは、製造部門及び販売部門等をも異にする非類似の商品である。
したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当するとの主張は、合理的根拠を欠くものというべきである。
(3)請求人は、本件商標が引用登録商標と類似するものである旨主張しているが、引用登録商標の指定商品は、旧第17類の商品であって、本件商標の指定商品とは、類似商品・役務審査基準において、非類似とされているものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項柱書について
被請求人の提出に係る乙第3号証(ユニ・チャーム 総合カタログ 1998年3月現在)によれば、被請求人は、本件商標の登録査定がなされた当時において、「合成樹脂繊維からなる紙製のウェットティッシュ、身体清浄水含浸ウェットティッシュ」の販売をしていた事実を認めることができる。
このことからみれば、被請求人は、本件商標の査定段階において、上記商品に係る業務以外にも、これに近接する本件指定商品についての業務をも行う蓋然性あるいは、その意思があったものとみるのが自然であり、これを否定するに足る証拠もない。
(2)商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号について
そこでまず、本件商標と引用商標との類否について判断するに、本件商標は、上記に示すとおりの構成よりなるところ、構成各文字は、同書・同大・同間隔をもって、外観上まとまりよく一体的に表現されていて、しかも、全体をもって称呼してもよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、その構成中の「エレガンス」の語は、「上品、優雅、優美」等の意味合いを表す外来語として広く一般に知られており、各種商品の商標としても、品質誇称的に、他の語と結合させて用いられている例が数多く存在している実情からすれば、「エレガンス」の語が他の語と一体的に構成されている商標にあっては、「エレガンス」の語自体の識別力は極めて弱いものとみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、その構成全体をもって不可分一体の造語を表したものと理解・認識され、その構成文字全体に相応して、「シルコットエレガンス」の称呼のみを生ずるものというべきであり、これが略称されるとしても、造語であって識別力の強い「シルコット」の文字部分から「シルコット」の称呼を生ずることがあるとしても、請求人が主張するように、「エレガンス」の文字部分のみを捉え、本件商標から「エレガンス」の称呼をも生ずるものということはできない。
他方、引用商標は、「Elegance/エレガンス」の文字を書してなるものであるから、その構成文字に相応して「エレガンス」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その音構成及び構成音数において顕著な差異が認められるから、それぞれを一連に称呼するも、称呼において紛れるおそれのないものである。
また、本件商標は、「シルコットエレガンス」の全体で把握される場合はもとより、「シルコット」の文字部分のみをもって略称される場合があるとしても、いずれも造語と認められるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において比較すべくもないものであり、外観においても明かな差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない非類似の商標といわなければならない。
ところで、請求人は、自己の使用に係る商標を「Elegance/エレガンス」と表示しているが、請求人の提出に係る甲各号証によれば、「Elegance」あるいは「ELEGANCE」と表記され、その読みとして「エレガンス」の文字が付記されている事例がなくはないが、使用されている多くの態様は、「Elegance(前半部のeの文字にアクサンテギュが付されている)」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)であり、しかも多くの場合、この文字商標は、ローマ字の「e」を右側に配し、これと接するように「e」を180度回転させたものを左側に配置した図案化標章とともに使用されているものである。
しかして、使用商標が本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品「婦人服その他の被服、化粧品、靴、時計、眼鏡、アクセサリー」等のファッション関連商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、本件商標と使用商標とは、上記で述べたところと同様の理由から、互いに類似するところのない十分に区別し得る別異の商標というべきものであり、加えて、本件商標の指定商品の多くは、いわゆる使い捨て商品であって、請求人の業務に係る上記商品とは、生産部門、販売部門、用途等を全く異する異種、別個のものである。
そうとすれば、商標権者が、本件商標を指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして使用商標あるいは引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と何らかの関係のある者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
また、本件商標は、上記のとおりに理解されるものであるから、請求人の略称を含むものとは認識されないものであり、引用商標に只乗りし、あるいは不正の目的をもって使用するものとも認められず、その事実を裏付ける証拠も提出されていない。
なお、請求人は、「Elegance/エレガンス」がファッション業界において著名なことは、横浜地裁、東京高裁及び最高裁も認めるところであり、かかる点からも、その識別力は強力なものである旨主張して、甲第6号証を提出している。
しかしながら、東京高等裁判所の判決理由中に「被控訴人(本件の請求人)は、流行着、衣料品等についての世界的に著名な販売業者であることが認められるほか・・・」との記述は認められるが、横浜地裁、東京高裁及び最高裁のいずれの判決中にも「Elegance/エレガンス」の文字からなる商標の著名性について、直接言及されているところは見当たらない。
また、請求人は、過去の異議決定、審決及び判決例を挙げて主張するところあるが、それらの商標は、いずれも、本件とは商標の構成を異にし、事案を異にするものであるから、本件商標と引用商標における上記した判断を左右することにはならない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、上記(2)で述べたとおり、その構成全体をもって不可分一体の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然であるから、その構成文字全体に相応して、「シルコットエレガンス」の称呼のみを生ずるものと判断するのが相当である。
他方、引用登録商標は、前記のとおり、「エレガンス」の文字と「ELEGANCE」の文字とを二段に横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「エレガンス」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用登録商標とは、その音構成及び構成音数において顕著な差異が認められるから、それぞれを一連に称呼するも、称呼において紛れるおそれのないものであり、また、両商標は、外観においても明かな差異があり、観念においては比較すべくもない。
したがって、本件商標と引用登録商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない非類似の商標といわなければならない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-06-12 
結審通知日 2001-06-22 
審決日 2001-07-03 
出願番号 商願平7-126765 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (016)
T 1 11・ 271- Y (016)
T 1 11・ 26- Y (016)
T 1 11・ 23- Y (016)
T 1 11・ 222- Y (016)
T 1 11・ 18- Y (016)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥冨 宏 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 小池 隆
鈴木 新五
登録日 1998-07-24 
登録番号 商標登録第4170589号(T4170589) 
商標の称呼 シルコットエレガンス、シルコット 
代理人 足立 泉 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 白浜 吉治 
代理人 青木 博通 

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