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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Z16
管理番号 1049194 
異議申立番号 異議2000-91179 
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2001-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-31 
確定日 2001-10-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第4407412号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4407412号商標の指定商品中「文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第4407412号商標(以下「本件商標」という。)は、平成11年9月30日に登録出願され、「グリップ」の文字と「GRIP」の文字を2段に横書きしてなり、第16類「紙類,紙製包装用容器,写真,写真立て,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。),青写真複写機,あて名印刷機,印字用インクリボン,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機」を指定商品として、平成12年8月11日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、筆記用具の「握る部分」を指称する用語として取引者・需要者に認識されている事実が存在するから、商標法第3条第1項第1号、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由
本件登録異議の申立て(2件)があった結果、本件商標を商標法第3条第1項第3号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消理由は、つぎのとおりである。
〈取消理由〉
本件商標は、「グリップ」の文字と「GRIP」の文字とを二段に横書きしてなるものであるところ、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠によれば、文房具を取り扱う業界においては、筆記具などの握り部分をグリップといい、その機能、使い勝手などの面からグリップの形状、材質などに特徴を持たせた商品が開発されて販売がされており、新聞、雑誌、商品カタログなどにおいて、「グリップ部すべり止め付」(登録異議の申立て1の第5号証)「ラバーグリップ」「メタルグリップ」「ステンレスグリップ」(同第6号証)、「ヤングに、ノベルティーに握り易いグリップの実用タイプ」(同第7号証)、「手になじむ凹型グリップが筆記作業をアップ」(同第15号)など、商品の特徴としてグリップ部の形状、材質などを挙げてグリップ部を強調した広告、宣伝がされている実状が認められる。
以上の事実からすると、「グリップ」の文字は、文房具類の取引者、需要者の間においては、文房具類の部分の名称或いは部品の名称と認識し理解されているというべきであり、また、「GRIP」の文字は、「グリップ」を英語で表したものであり、上記「グリップ」を意味するに止まる平易な英単語といえるものである。
そうとすれば、本件商標を「文房具類」について使用した場合、商品のグリップ部分の名称或いはその部品の名称を表したと理解されるに止まるものであって、商品の識別標識とは認識されないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「文房具類」については商品の品質を表示するものであるから、その登録は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

4 商標権者の意見
上記3の取消理由に対し、商標権者は要旨次のように意見を述べた。
(1)そもそも本件商標に係る標章「グリップ GRIP」は、商標権者がすでに昭和41年11月22日に出願し、昭和44年12月9日に設定登録された商標登録第840669号(商公昭44-20214号)に係る標章「グリップ」と類似する商標に係るものであり、この登録商標は昭和55年、平成2年及び平成12年に更新登録され、現在有効に存続中の商標権である(乙第1号証)。この先登録商標の指定商品は、「第25類 紙類、文房具類、但し、三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」と記載されているとおりのものである。この指定商品の記載中の但し書は、旧旧18類に属する商品であり、これは除外したわけであるが、その他の旧25類の文房具類中の旧旧50類,51類に属する全商品については除外していない。したがって、鉛筆類(筆記具)については、登録商標「グリップ」が完全に商標権を専有している商品分野である。そして、この商標登録第840669号に係る商標権に対しては、登録無効審判などは全く請求されていない。したがって、本件商標に対し特許庁が、登録異議申立を受けたことによりその登録を取り消そうと考えていることは、前記先登録商標「グリップ」に対して実質的に登録取消の宣言をしようとすることを意味するものであるから、断じて許されるものではない。
(2)審判官は、申立人らが最近になって使用し始めた「グリップ」なる標章に係る主張と証拠を鵜呑みにして、文房具業界において筆記具などの握り部分をグリップと称することが、あたかも商品の品質を表示するかのように説示しているが、それは一方的かつ独善的である。申立人らも審判官らも、前記登録商標「グリップ」に関する商標登録第840669号に係る商標権の存在を忘れていることは、甚だ遺憾である。
申立人の1人である株式会社パイロットは、商標権者との間で、平成8年(1996)9月30日、平成11年(1999)12月9日まで、商標登録第840669号に係る商標権の有償の使用許諾契約を締結していた(乙第2号証の1、の2)。
また、ぺんてる株式会社は、商標権者との間で、平成5年9月30日、平成11年(1999)12月9日まで、商標登録第840669号に係る商標権の有償の使用許諾契約を締結していた(乙第3号証の1,の2)。
さらに、申立人ではないが、別件三菱鉛筆株式会社に対しては、本件商標権者は商標登録第840669号に係る商標権の侵害行為に対する警告をしており、これに対し、同社担当者からは商標権者の担当者に謝罪の回答書が宛てられている(乙第4号証の1、の2)。
以上のように、商標権者にあっては、本件商標と明らかに類似する商標登録第840669号の商標権に対する侵害者には権利行使をしており、申立人らの前記2社はこれに対応して使用許諾契約書を締結していたのである。
しかし、申立人らは、本件商標権者との間に、前記商標権の使用許諾期間の更新をすることなく、こんどはあからさまに商標権侵害を行う方針に切換えたのであり、今回の登録異議申立は、自分らの商標権侵害の使用行為を正当化するための演出であるといわねばならない。
(3)会社によっては、筆記具のネック部分(首部)にはそれぞれ独自のネーミングを与えて使用しているのである。
例えば、オート株式会社は、株式会社文研社が、昭和58年2月25日発行(乙第5号証)、昭和61年6月10日発行(乙第6号証)の各書籍「現代筆記具読本」及び平成1年11月1日発行(乙第7号証)の書籍「新時代の筆記具」における各広告において、ネック部分に特徴のあるボールペンの商標として「Gripper グリッパー」の標章を使用している事実を証明している。「書きよい 疲れない」というキャッチフレーズは、正にボールペンを握るネック部分の機能的特徴を表現して前記のネーミングを与えたものと思われる。
審判官らは、各異議申立人らが、「グリップ部を強調した広告、宣伝がなされている」のが実状だといわれるが、野球バットやテニスラケットやゴルフシャフトであればともかく、筆記具において「グリップ部」と命名することはたとえ文房具業界とはいえ、前記に示したとおり現状でも一般的であるわけではない。そうでなかったら、彼らは本件商標権者との間で商標権の使用許諾契約などは締結しなかったはずである。
申立人らの営業戦略は、談合により行動していることが明らかであり、その上に立っての今回の共同の異議申立であったと思われる。
したがって、筆記具のネック部分を言い表す標章としての「グリップ」は、商品の品質を表示するような意味をもつ言葉では決してなく、筆記具を含む文房具類について使用できる特殊な言葉といえるのである。そして、申立人らが異口同音に使用しているという共通の標章「グリップ」は、商標登録第840669号及び本件商標の存在をよく知りながら、あえて筆記具のネック部分に命名して挑戦しようとしているものといえる。
(4)本件商標に対する申立人の1人である株式会社パイロットは、商標登録第4356559号(平成11年5月20日出願,平成12年1月28日登録)に係る登録商標「SUPER GRIP」の商標権を専有するが(乙第8号証)、この標章態様こそ商品の品質表示用の言葉「SUPER」が加わりながら、商標法3条1項3号が適用されることなく登録されている事実がある。したがって、もし申立人の主張理由をこの登録商標に対して適用するならば、いずれも品質表示を意味する自他商品の識別力を欠如する2つの言葉を結合したにすぎないものといわねばならないから、その主張には矛盾があるというべきである。
なお、前記登録商標に対しては、商標登録第840669号との類似性から、商標法4条1項11号に適用する商標として登録無効審判を請求していることを付言する(無効2000一35527)。
以上の理由から、拒絶理由通知の前記認定には合理性がなく、十分な証拠に基いた客観的に説得力のある判断とはいえないのである。

5 当審の判断
本件商標は、前記したとおり「グリップ」の文字と「GRIP」の文字を普通に用いられる方法で併記し、第16類に属する前記のとおりの商品を指定商品としてなるものであるが、申立人の提出した「国語辞典(1993年2月25日 株式会社集英社発行)」(登録異議申立ての1の甲第2号証)の「グリップ〈grip〉」の項によれば「テニスのラケットや野球のバットなどの手で握る部分。また、その握り方。」と記載されており、また、文房具を取り扱う日本の代表的な企業(11社)の商品カタログ」(登録異議申立ての1の甲第5号証ないし同第15号証)においても、筆記具(特に、シャープペンシル、ボールペン)などの握り部分を「グリップ」と指称しており、長時間の筆記や製図にも疲労を感じさせないことを目的とした、握り部分への指先のフィット感や握りやすさを追求して、その機能、使い勝手などの面からグリップの形状、材質に特徴を持たせた商品が開発され、販売されている実状があり、各社の商品カタログ中に「ステンレスグリップ、ラバーグリップ、エラストマー製グリップ、合成ゴムグリップ、ステッチグリップ、凹形グリップ」等と記載され広告、宣伝されていることが認められる。
してみれば、本件商標をその指定商品中の「文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」について使用した場合、取引者・需要者をして商品のグリップ部分の名称又はその部品の名称と認識、理解させるに止まり、単にその商品の品質、形状等を表示するにすぎず、商標としての機能を有しないものとみるのが相当である。
そうとすると、本件商標は、その指定商品中「文房具類(昆虫採集用具)を除く。」について、その登録は商標法第3条第1項第3号に該当するとの理由により、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記3)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見は、以下の理由により、採用することができない。
(1)商標権者は、本件商標と類似する登録第840669号商標を所有しているものであるから本件商標も登録されるべきである旨述べているが、当該登録商標は昭和41年に出願されたものであり、審査に当たってはその指定商品との関係及びその当時の指定商品を取り扱う業界の取引の実状などが総合勘案されて登録されたものといえるから、この点に関する商標権者の主張は認めることができない。
(2)商標権者は、本件異議申立人の中には過去に上記の登録第840669号に係る商標権について有償の使用許諾契約を締結していた企業があり、それを今度は自分らの商標権侵害の使用行為を正当化するものである旨述べているが、商標権者のいう商標権の使用許諾契約はあくまでも私人間の契約に基づくものであって、本件商標については上記認定のとおりであるから、これを左右するものではない。
(3)商標権者は、会社によっては筆記具のネック部分(首部)にはそれぞれ独自のネーミングを使用している旨述べているが、これとて1社に過ぎず、それも該ネック部分(グリップ部分)について一般に使用されているものではなく、むしろ当該会社の商標といえるものであるから、この点に関する商標権者の主張も認めることができない。
その他、商標権者の主張は、本件商標についての上記認定に影響を及ぼすものとは認められない。
したがって、本件商標に対する前記3の取消理由は妥当なものと認められるから、商標法第43条の3第2項の規定により、結論掲記のとおり取り消すべきものである。
しかしながら、本件登録異議の申立に係るその余の指定商品については、その品質を普通に用いられる方法で表示する標章として取引者・需要者の間に認識されているものとは認められない。また、その指定商品について誤認を生ずるおそれがあるものとは認められないから、商標法第43条の3第4項の規定により、登録を維持する。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-08-29 
出願番号 商願平11-87793 
審決分類 T 1 651・ 13- ZC (Z16)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 飯島 袈裟夫 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 中嶋 容伸
滝沢 智夫
登録日 2000-08-11 
登録番号 商標登録第4407412号(T4407412) 
権利者 株式会社ライオン事務器
商標の称呼 グリップ 
代理人 村橋 史雄 
代理人 遠藤 祐吾 
代理人 石田 昌彦 
代理人 石田 昌彦 
代理人 遠藤 祐吾 
代理人 遠藤 祐吾 
代理人 牛木 理一 
代理人 赤澤 日出夫 
代理人 石戸 久子 
代理人 遠藤 祐吾 
代理人 村橋 史雄 
代理人 橋場 満枝 
代理人 石田 昌彦 
代理人 村橋 史雄 
代理人 石田 昌彦 
代理人 村橋 史雄 

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