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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 124 |
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管理番号 | 1047304 |
審判番号 | 無効2000-35136 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-11-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-03-13 |
確定日 | 2001-09-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2719292号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2719292号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第2719292号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和59年5月21日登録出願、「少林寺拳法」の漢字を横書きしてなり、第24類「拳法用運動具」を指定商品として平成9年1月31日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、請求の理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証、同第2号証及び資料1を提出している。 (1)「少林寺拳法」の自他商品役務識別力 1997年1月1日付け少林寺拳法連盟発行「少林寺拳法創始五〇周年記念出版少林寺拳法五十年史第一部正史」76頁〜77頁には、「古来、中国でも日本でも、中国河南省の嵩山少林寺に源を発する拳法を『少林寺拳法』と呼んだ事実はない。『少林拳術』が普通の呼び名で、時には『少林拳』または『少林拳法』と呼ばれることもあった。武器術も同様で、槍は『少林槍術』、剣なら『少林剣術』であり、少林寺の武術の総称は『少林武術』であった。『少林寺拳法』は、開祖自身が付けた名称である。もちろん、開祖の『少林寺拳法』は、中国の『少林武術』、『少林拳術』と同じではない。若いころ中国で習得した各種の拳技が基になってはいるが、自分の創案を加え、日本の風土に適するように整理、編成した戦後日本の新しい武道である。何よりも、その修行の目的と本質において、まったく異質で独自のものなのである。」(原文転記) 上記より明らかなように「少林寺拳法」なる語は、体系的武術として開祖宗道臣が独自に案出した語であって、自他商品役務識別機能を十分に発揮するものである。なお、この点については、最高裁判所でも認定されている(資料1)。 (2)「少林寺拳法」の歴史 前掲「少林寺拳法創始五〇周年記念出版 少林寺拳法五十年史第一部正史」712頁〜732頁に掲載の「少林寺拳法略年表」には、「少林寺拳法」に関する出来事が時系列で詳細に記載されており、これより、以下の事実が明らかである(甲第2号証その2)。 (ア)「少林寺拳法」の創始について 「少林寺拳法」は、1947年(昭和22年)10月25日に、中野理男(後の「宗道臣」)により創始され、翌年10月には、「日本北派少林寺拳法会」が正式に発足した。 (イ)「少林寺拳法」を扱った小説の新聞紙上での連載について 1950年(昭和25年)1月から2年に亙り、作家村上元三氏が、大阪新聞などの地方有力紙に、宗道臣を主人公とする小説「風流あじろ笠」を連載し、大好評を博した。この小説の連載が、「少林寺拳法」がわが国において有名となる一因となった。 (ウ)「少林寺拳法」を扱った映画・TV番組の制作・公開・放映 (a)1954年(昭和29年)4月には、上記新聞小説「風流あじろ笠」が、東宝株式会社により映画化され、その後、「少林寺拳法」を扱った映画やTV番組が多数制作されることになった。 例えば、1959年(昭和34年)東宝映画「飛びっちょ勘太郎」(主演:森繁久弥)、1964年(昭和39年)松竹映画「コレラの城」(主演:丹波哲郎)、1964年(昭和39年)9月〜1965年(昭和40年)2月放映読売テレビ連続TVドラマ「坊主拳法」、1974年(昭和49年)東映記録映画「拳豪の祭典」などなど枚挙にいとまがないほどである。 (b)映画、TV番組はともに、一般世人の手軽な娯楽であり、極めて大衆的なものであることに鑑みれば、上述のように、「少林寺拳法」を扱った映画やTV番組が次々と公開、放映されたことから、本件商標の出願日(昭和59年5月21日)前から、「少林寺拳法」は、これに関心を持つ者ばかりでなく、一般需要者の間で広く知られるに至った。(c)出願前に周知であったことは、顕著な事実であり、裁判所でも普通名称でないことが数回認定されているに拘らず、むしろ周知すぎて、拳法と同義に用いられ、その誤りを正すために古くから封筒、雑誌などに「『少林寺拳法』は(財)少林寺拳法連盟固有の名称です。」と表示し、その誤りを正すために努力を続けている位で、周知については資料が膨大であるのでその一部を提出するにとどめる。 (3)「少林寺拳法」の著名性 上記より明らかなように、「少林寺拳法」なる語は、請求人の開祖である宗道臣が、武術について独自に案出した語であり、1957年(昭和32年)5月に任意団体として「全日本少林寺拳法連盟」が発足する以前から、「拳法の教授」について自他役務識別標識として使用され、「全日本少林寺拳法連盟」及び、1963年(昭和38年)10月に組織変更により設立された「社団法人日本少林寺拳法連盟」により、永年に亙り発展的に継続して使用されてきた結果、遅くとも、本件商標の出願時(昭和59年5月21日)には、わが国のみならず、世界的に需要者等の間で広く知られるに至っていたものである。 なお、「少林寺拳法」の著名性は、1992 年(平成4年)1月に組織変更により設立された財団法人少林寺拳法連盟(請求人)に事業とともに承継されている。 (4)「拳法の教授」と「拳法用運動具」の関連性 「拳法用具」は、「拳法」のための道具であり、これなしには、「拳法の教授」をなすことはできない。さらに、一般に「拳法その他の技芸・スポーツの教授」については、その技芸・スポーツに必要な道具を当該役務の提供場所で、又は、同一事業者により、販売されることが一般的である。 してみれば、「拳法の教授」と「拳法用運動具」は、密接な関連性を有するものである。 (5) 著名商標「少林寺拳法」と本件商標の同一性 本件商標は、「少林寺拳法」なる文字を書してなるものであり、著名商標「少林寺拳法」と同一である。 よって、両商標は、称呼、外観、観念上、彼此相紛れるおそれがある。 (6)結語 本件商標は、請求人の前身である「社団法人日本少林寺拳法連盟」の著名な略称を含む商標であるにも拘らず、その承諾を得ずに出願されたものであるから、商標法4条1項8号に該当し、さらに、同第15号に該当するから、同法46条1項1号により無効にすべきものである。 3 請求人の請求に対し、何ら答弁していない。 4 当審の判断 まず、商標法第4条第1項第15号に該当するかどうか判断するに、請求人の提出した甲第2号証に添付したその2の「少林寺拳法略年表」によれば、「少林寺の拳法」の語については、「年代」の欄の「五〇(昭25)」の「組織」の「1月」に「作家村上元三氏が、大阪新聞・・・に、新聞小説『風流あじろ笠』の連載を始める。少林寺の拳法の使い手を主人公とするこの小説は二年間にわたって連載されて大好評を博し、・・・」と記載され、同じく、「年代」の欄の「五四(昭29)」の「組織」の「4月」に「村上元三の新聞小説『風流あじろ笠』、東宝によって映画化。(この映画を機に、少林寺の拳法を扱った映画が多数世に出ることになる。」と記載され、同じく、「年代」の欄の「五五(昭30)」の「組織)」の「4月」に「少林寺の拳法の使い手を主人公とする村上元三氏原作の『天保六道銭』東宝で映画化。」がそれぞれ記載されているものである。 また、同じく、「少林寺拳法」の語については、「年代」の欄の「五六(昭31)」の「組織」の「8月」に「少林寺拳法の使い手を主人公とする村上元三氏の『花頭巾』、大映にて映画化。」と記載され、同じく、「年代」の欄の「六一(昭36)」の「組織」の「10月」に「NHKの連続テレビドラマ『黒百合城の兄弟』の放送が始まる。少林寺拳法をモデルに一年間、二百五十六回にわたり放送。・・・」と記載され、同じく、「年代」の欄の六三(昭39)」の「組織」の「8月」に「『秘伝少林寺拳法』光文社よりカッパブックスとして刊行。」と記載され、同じく、同「10月」に「『社団法人日本少林寺拳法連盟』設立・・・」と記載され、同じく、「年代」の欄の「六六(昭41)」の「組織」の欄の「4月」に「キングレコードより『少林寺拳法の歌』(歌・春日八郎)発売・・・」と記載され、同じく、「七五(昭50)」の欄の「組織」の「2月」に「東映映画『少林寺拳法』・・・封切。・・・」と記載され、同じく、「年代」の欄の「七七(昭52)」の「組織」の欄の「4月」に、「・・・『少林寺拳法入門』徳間書店より刊行・・・」と記載され、同じく、「年代」の欄に「八二(昭57)」の「組織」の欄の「2月」に「NTV『宗教の時間』で少林寺拳法が紹介される。」と記載され、同じく、同「10月」に「映画『少林寺』東宝東和の配給で全国一斉封切。」と記載され、同じく、「年代」の欄の「八三(昭58)」の「組織」の欄の「4月」に「レコード『少林寺』ビクター音楽産業より発売。」と記載され、同じく、「5月」に「講談社スポーツシリーズ『少林寺拳法』講談社より刊行。」と記載され、同じく、「年代」の欄の「10月」に「日本武道全集『日本の武道』全十五巻、講談社より刊行。第十巻が『少林寺拳法』編」と記載され、同じく、「年代」の欄の「八四(昭59)」の「組織」の欄の「3月」に「『女性と少林寺拳法』文化出版局より刊行。」の記載がそれぞれされ、本件商標の登録出願前に「少林寺拳法」の文字が認められるものである。 さらに、本件商標の登録査定時前においても、「少林寺拳法」の文字については、同じく、「年代」の欄の「八九(平1)」の「組織」の「9月」に「・・・写真集『少林寺拳法』日本少林寺拳法連盟出版部より刊行」と記載され、同じく、「年代」の欄の「九二(平4)」の「組織」の欄の「1月」に「財団法人少林寺拳法連盟」、文部大臣許可を得て、全国法人として発足・・・」と記載され、同じく、同「会長」の欄に「財団法人少林寺拳法連盟会長に就任。」の記載がそれぞれ認められるものである。 してみれば、以上の事実から、財団法人少林寺拳法連盟の使用に係る商標「少林寺拳法」(以下「引用商標」という。)は、役務「拳法の教授」に使用し、本件商標の登録出願時(昭和59年5月)には、わが国において、新聞、テレビ及び書籍等に取り上げられ、紹介され、取引者、需要者の間において広く認識されていたものと認め得るものである。 また、本件商標の指定商品は、「道衣を含む拳法用運動具」であるのに対し、引用商標に係る係る役務「拳法の教授」は、需要者層を共通にし、該運動具の用途及び提供に関連する用具を共通にする密接に関連するものと認められる。 そして、本件商標と引用商標は、「ショウリンジケンポウ」(少林寺拳法)の称呼及び観念を共通にする類似の商標と認められる。 そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合には、上記事情よりして、これに接する取引者、需要者は、「少林寺拳法」と同一の文字よりなるものであることから、引用商標を連想、想起し、請求人若しくは同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-06-22 |
結審通知日 | 2001-06-27 |
審決日 | 2001-08-07 |
出願番号 | 商願昭59-51687 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(124)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
米重 洋和 宮下 行雄 |
登録日 | 1997-01-31 |
登録番号 | 商標登録第2719292号(T2719292) |
商標の称呼 | ショーリンジケンポウ、ショーリンジ |
代理人 | 小野 昌延 |
代理人 | 樋口 豊治 |
代理人 | 大西 育子 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 小野 昌延 |
代理人 | 大西 育子 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 樋口 豊治 |