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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 005 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 005 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 005 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 005 |
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管理番号 | 1045593 |
審判番号 | 審判1998-35564 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-10-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-11-12 |
確定日 | 2001-08-29 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4123918号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4123918号の指定商品中「第05類 薬剤」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4123918号商標(以下「本件商標」という。)は、「ウルソール」の片仮名文字を横書きしてなり、平成8年2月7日に登録出願、第5類「薬剤、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、耳帯、眼帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液」を指定商品として、平成10年3月13日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 参加人が本件商標の登録無効理由として引用する登録第492420号商標(以下「引用A商標」という。)は、「ウルソ」の片仮名文字を書してなり、昭和31年3月7日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同31年12月4日登録され、その後、同52年5月9日、同61年11月13日及び平成9年1月30日の3回に亘って商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく登録第514093号商標(以下「引用B商標」という。)は、「URSO」の欧文字を横書きしてなり、昭和32年4月8日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、昭和33年2月17日登録され、その後、同53年7月3日、同63年1月22日及び平成10年2月17日の3回に亘って、商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく登録第1658786号商標(以下「引用C商標」という。)は、「ウルソサン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和56年2月14日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として、同59年2月23日に登録され、その後、平成6年4月27日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。同じく登録第1364004号商標(以下「引用D商標」という。)は、「ハイウルソ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和49年8月21日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同53年12月22日に登録され、その後、平成元年1月27日及び同11年1月19日の2回に亘って商標権存続期間の更新登録がなされたものである。 第3 参加人の主張 参加人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として、丙第1号証ないし同第455号証を提出した。 (1)引用商標の周知・著名性 (イ)引用各商標の使用の経緯と販売実績等 参加人の営業被承継人である東京田辺製薬株式会社(以下「東京田辺製薬」という。)は、引用A商標「ウルソ」及びこれと同一の称呼を生じる引用B商標「URSO」を、昭和32年以降、同社の主力商品の一つである消化器官用薬等の商標として使用し、取引者又は需要者間に周知・著名な商標となっている。 東京田辺製薬は、明治34年に創業され、昭和32年に、消化器官用薬としての「ウルソデオキシコール酸」の開発・商品化に成功し、商標として「ウルソ」を採択して使用を開始した。その後、商品「消化器官用薬」は、利胆剤や肝・胆・消化機能改善剤として多用され、今日では、胃腸薬等の消化器官用薬の主要成分としても広く使用されている(丙第24号証)。そして、東京田辺製薬はこの商標「ウルソ」を東京田辺製薬の主力商品「消化器官用薬」として企業努力によって育てたものであり、医家向け薬剤と一般向け薬剤の両面で商品化の展開を行ってきた。すなわち、医家向けの薬剤としては、100mgの錠剤として「ウルソ100」、50mgの錠剤として「ウルソサン」を販売している(丙第24号証、同第27号証、同第28号証ないし同第31号証)。 なお、「ウルソ」及び「URSO」の使用開始時期は、薬品事典である「最近の新薬」(1958年版)には、「ウルソ散」と「ウルソ錠」が記載されている。その発売時期は、「ウルソ散」昭和32年9月10日、「ウルソ錠」昭和32年6月20日と明記されている(丙第393号証)。さらに、その当時の「ウルソ」関連商品の販売等の営業実績を示すための資料として、営業報告書を提出する(丙第394号証ないし同第402号証)。また、一般用薬剤としては、「ウルソS」(錠剤)、「ハイウルソ」(錠剤)、「ハイウルソ」(顆粒剤)、「ハイウルソエース」(内服液)、「ハイウルソグリーン」等、「ハイウルソ」のブランド(商標)を中心に販売している。 このように、「ウルソ」又は「ウルソ」を要部とする商標を統一的に採択・使用し、「ウルソ」シリーズの商品群として商品展開を行ってきた。その結果今日では、利胆剤、肝・胆・消化機能改善剤ないしは胃腸薬の有力ブランドとなっている。この「ウルソ」シリーズの薬剤の売り上げ高は次の通りである。まず、医家向けの商品については、1994年から1997年の間では、合計442億8400万円(丙第32号証及び同第33号証)。そして、一般向けの商品についての1994年から1997年までの売上額は、全体で約3億8607万円である(丙第34号証)。 この「ウルソ」シリーズ商品は、業界トップのシェアを占めている(丙第35号証)。「医薬品市場統計」は、分類「A 5A BILE THERAPY & CHOLAGOGUES/A5A利胆剤及び胆石治療剤」の医家向け薬剤、各頁の右上の箇所に「ETHICAL」と記載されているのが「医療用医薬品(医家向け薬剤)」に関する統計であり、1995年の統計を示し、「A5A 利胆剤及び胆石治療剤」の分野では、東京田辺製薬は、83.8%のシェアであることが示されている。(1996年では86.4%、1997年では88.3%である。丙第35号証)。 本件の出願当時においても、「ウルソ」シリーズの商品は、利胆剤について圧倒的なシェアを有している商品である。これは、該商品が東京田辺製薬の開発した薬剤であり、「ウルソ」シリーズの商標として、引用A商標ないし引用D商標をはじめとして、連合関係にあった「URSOSAN」(登録第1658787号)以下の商標を登録し、これらを継続的に使用することによって、商品取引の安全を確保するとともに、これらの商標に化体した信用の保護を図ってきたことによるものである。 (2)「ウルソ」シリーズの商標に関する広告実績 上述した「ウルソ」シリーズ商品の商品化・営業展開に伴って、東京田辺製薬は、引用A商標「ウルソ」を中心とした上記各商標を表示した広告.宣伝を継続的かつ広範囲に行っている。まず、医家又は薬局等に対しては、各種の業界誌において、「ウルソ」(顆粒剤「ウルソ100」(100mgの錠剤)、「ウルソサン」(50mgの錠剤)を表示した広告を行ってきた。この業界紙への広告は、「ウルソ」シリーズ商品の販売開始以降継続して行っている(1995年以降の掲載、丙第37号証ないし丙第131号証)。 また、一般向けとしては、引用D商標「ハイウルソ」関係の広告も販売開始以降継続して行っている(1995年以降の掲載、丙第132号証ないし丙第374号証)。その結果、少なくとも本件商標の出願時点においては、引用各商標は、東京田辺製薬の主力商品である前記した利胆剤、肝・胆・消化機能改善剤ないしは胃腸薬の商標として、取引者又は需要者間で周知・著名な商標となっていた。 なお、一般向けの薬剤「ハイウルソ」は、単なる胃腸薬ではなく、利胆作用を特徴にした胃腸薬として広告されている(丙第146号証ないし丙第374号証)。かかる意味において、「ハイウルソ」は一般向け薬剤としても周知・著名である。 したがって、「ウルソ」シリーズの著名性は、利胆剤であることを基盤として医家向け薬剤から一般向け薬剤の全体について統一して使用されているブランドの著名性として把握されなければ、取引の実体に合致しない。 さらに、「ウルソ」シリーズの商標に関する広告実績を詳述すれば、以下の通りである。 (イ)医家向け薬剤「ウルソ 100」の包装箱を印刷した証明書は平成6年4月より、382,778枚印刷した(丙第375号証)。 (ロ)東京田辺製薬の医家向け薬剤「ウルソ 100」の包装箱、10錠パック用を印刷した証明書で平成6年4月より、1,325,000枚印刷した(丙第376号証)。 (ハ)医家向け薬剤「ウルソサン」の包装箱を印刷した証明書、平成6年4月より、1,404,300枚印刷した(丙第377号証)。 (ニ)一般向け薬剤「ハイウルソ」の証明書、平成6年4月より、925,900枚印刷した(丙第378号証)。 (ホ)丙第50号証ないし同第90号証として提出する医学雑誌「日本消化器病学会雑誌」に、「ウルソ100」の広告を掲載(丙第379号証)。同広告は56回掲載。同雑誌の発行部数は、月平均で28,000部であるから、合計1,568,000部の雑誌に広告が掲載した。 (へ)医学雑誌「胆と膵」に、「ウルソ」、「ウルソ 100」、「ウルソサン」の広告を掲載(丙第380号証)。同広告は17回掲載された。また、同雑誌の発行部数は、月平均で6,000部であるから、合計102,000部の雑誌に広告を掲載した。 (ト)医学雑誌「肝胆膵」に、「ウルソ」、「ウルソ100」、「ウルソサン」の広告が掲載されたことの証明書である(丙第381号証)。同広告を48回掲載した。同雑誌の発行部数は、月平均で6,000部であるから、合計288,000部の雑誌に広告を掲載した。 (チ)「ウルソ」、「ウルソ 100」、「ウルソサン」の広告用チラシの実績である(丙第382号証)。平成6年から同10年までの間で、160,000部印刷、配布した。 (リ)週刊誌「週刊現代」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第383号証)。同広告は平成6年から同10年の間までに25回掲載した。雑誌の発行部数は、月2,848,000部(丙第146号証ないし丙第165号証)。 (ヌ)週刊誌「週刊文春」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第384号証)。同広告は平成6年から同10年の間までに24回掲載。発行部数は、月2,600,000部である。 (ル)週刊誌「週刊ポスト」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第385号証)。同広告は平成6年から同10年の間、26回掲載され発行部数は、月3,396,000部である。 (ヲ)週刊誌「週刊宝石」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第386号証)。同広告は平成6年から同10年の間、25回掲載した。同発行部数は、月1,680,000部である。 (ワ)新聞「日刊スポーツ」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第387号証)。同広告は平成7年から同10年の間、12回掲載した。同新聞の発行部数は、1日で2,000,000部である。 (力)新聞「中日スポーツ」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第388号証)。同広告は平成7年から同10年の間15回掲載し、発行部数は、1日で666,645部である。 (ヨ)新聞「東京中日スポーツ」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第389号証)。同広告は平成7年から同10年の間、14回掲載し、同発行部数は、1日で325,579部である。 (タ)新聞「報知新聞」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第390号証)。同広告は平成7年から同10年の間までに16回掲載した。、同発行部数は、1日で1,440,384部である。 (レ)新聞「スポーツニッポン」に、「ハイウルソ」の広告を掲載した(丙第391号証)同広告は平成7年から同10年の間、12回掲載され同発行部数は、1日で1,878,742部である。 (3)被請求人による本件商標の使用と出所混同のおそれ 被請求人は、本件商標「ウルソール」と被請求人の商品とは、「ウルソデオキシコール酸」を主成分とする一般向け胃腸薬に使用しているものである(丙第36号証の1及び同2)。 しかして、上述したように東京田辺製薬の「ウルソ」シリーズ胃腸薬等の商品が「ウルソデオキシコール酸」を成分とする胃腸薬等の薬剤でトップシェアを誇り、取引者又は需要者間で周知・著名となっている状況下では、被請求人の前記商品とそこに表示された本件商標に接する取引者又は需要者は、まず「ウルソール」中の「ウルソ」の文字部分に着目し、その使用に係る商品が「ウルソデオキシコール酸」を主成分とする胃腸薬であることからして、この商品を東京田辺製薬と参加人が新たに市場に投入した商品、又はそれと関連のある者が市場に投入した「ウルソ」シリーズに含まれる商品であるかの如く、その出所につき誤認混同を生じるおそれがある。 また、このような本件商標の使用行為は、東京田辺製薬がその「ウルソ」シリーズの商品を通じて、営々として営業努力を積み重ね、その結果顧客から得てきた信用にただ乗りする行為であり容認できないところである。 (4)本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に該当する理由 (イ)本件商標は、片仮名文字「ウルソール」を横書きしてなり、これよりは一連の称呼「ウルソール」の他に、単に「ウルソ」の称呼をも生じる。 本件商標は、その視覚上も強い印象を与える語頭以下の文字が前記した周知・著名な商標「ウルソ」と同一であるから、本件商標に接する取引者又は需要者は、指定商品中、特に「薬剤」との関係では、永年接している商標「ウルソ」を直感し、それ以外の部分を捨象して「ウルソ」と略称する場合が少なくないものである。 (ロ)引用A商標は、片仮名文字で「ウルソ」、引用B商標は、ローマ字で「URSO」、引用C商標は、片仮名文字で「ウルソサン」、引用D商標は、片仮名文字で「ハイウルソ」と各々横書きしてなるが、引用A及びB商標の構成文字より「ウルソ」、引用C商標は、東京田辺製薬の周知・著名な商標「ウルソ」の文字を含むので、著名商標部分に相応して単に「ウルソ」の称呼をも生じることは、かって連合関係にあったことからも明らかである。引用D商標は、この構成文字中の「ハイ」は誇称表示であり、かつ周知・著名な商標「ウルソ」の文字を含むので、著名商標部分に相応して単に「ウルソ」の称呼をも生じることは、かつて連合関係にあったことからも明らかである。したがって、本件商標と引用各商標とは「ウルソ」の称呼を共通にする商標であり、両者の指定商品とは相抵触し、その使用商品は全く同じ分野の商品である。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当するものである。 (5)本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当する理由 東京田辺製薬の商品「利胆剤」、「肝・胆・消化機能改善剤」又は「胃腸薬」につき、「ウルソ」シリーズの商標として周知・著名となっているものである。このような事情の下で、被請求人は、引用各商標に類似する本件商標をその指定商品中の「胃腸薬」に使用しているものである。そうすると、取引者又は需要者が、本件商標を東京田辺製薬の「ウルソ」シリーズの商標と誤認するおそれは十分にある。 また、本件商標に接する取引者又は需要者は、東京田辺製薬の「ウルソ」シリーズの商標を直感することは否定できない。そして、このような商標を他人である競業者が使用することは、東京田辺製薬が永年にわたって築いてきた業務上の信用にただ乗りし、著名ブランド(商標)の顧客吸引力を希釈化させるに至ることは必定であり、公正な商取引の秩序に混乱を及ぼすおそれが十分ある。 よって、本件商標は商標法第4条1項第15号の規定にも該当する。 (6)以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号の規定に該当するのであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。 (7)被請求人の答弁に対する弁駁 (イ)東京田辺製薬による「ウルソ」を要部とする商標の使用開始について 被請求人は、引用A、B商標の使用開始時期について、参加人の提出した丙第27号証には、昭和32年の記載がない旨主張している。 そこで、1958年版の「薬品事典」の証拠を補充する。「ウルソ散」については昭和32年9月10日、「ウルソ錠」については昭和32年6月20日に発売と明記されている(丙第393号証)。 さらに、その当時の「ウルソ」関連商品の販売等の営業実績を示すための資料及び営業報告書の写しを提出する(丙第394号証ないし同第402号証)。 (ロ)引用商標の著名性について 引用商標である「ウルソ」シリーズ商品の由来、商品「利胆剤」開発の状況は前述したとおりであり、医家向け薬剤の分類では、「ウルソ」及び「ウルソサン」の「ウルソ」シリーズの商品は、「利胆剤」の分類(カテゴリー)に属している。「IMS Japan K.K.」の「医薬品市場統計」において、分類「A 5A」の「BILE THERAPY & CHOLAGOGUES」で分類されている(丙第35号証)。 これについて説明すると、この「IMS Japan K.K.」の「医薬品市場統計」は、上記の分類「A 5A」の「BILE THERAPY &CHOLAGOGUES」とは、同統計分類対照表では「A 5A 利胆剤及び胆石治療剤」として分類されている(丙第403号証)。 「ウルソ」シリーズの商品は、本件商標の出願当時においても、利胆剤について圧倒的なシェアを有する商品である。これは、被請求人の本件商標に係る商品がそもそも請求人の製造した薬剤を使用してる事実にも表れているところである。 なお、東京田辺製薬は、前回提出した統計資料の対象年以前の統計についてみると、「IMS Japan K.K.」の「医薬品市場統計」を丙第406号証以下の証拠として提出する。1995年の統計「A 5A利胆剤及び胆石治療剤」の分野では、83.8%のシェアが示されている。(丙第35号証)「ウルソ」シリーズの商標の著名性は、利胆剤であることを基盤として医家向け薬剤から一般向け薬剤の全体について統一して使用されているブランドの著名性として把握されなければ、取引の実体に合致しない。 (ハ)商標の類似性について 被請求人は、本件商標と引用各商標とが類似しない旨の主張をするが、両者の類似性については、著名商標との付加的な文字との結合商標にあっては、著名商標の部分が取引上注意を引き、そのため著名商標に相当する部分の称呼をもって略称されることがしばしばあるという経験則が十分に考慮されるべきである。 (8)参加人の平成13年1月10日付け弁駁 (イ)被請求人は、引用商標が医者、医療機関、製薬会社などにおいては知られているかも知れないが、参加人が提出した丙第37号証ないし丙第374号証は、広告したという事実を証明するのみであり、また、雑誌、週刊誌及びスポーツ紙であるから、長期的に保存されない等により広く知られていることにはならないと主張している。 しかし、参加人が提出した雑誌、週刊誌及びスポーツ紙はいずれもわが国で有数の発行部数を誇る週刊誌やスポーツ新聞であって、一般大衆に愛読されているものである。そして、このような大衆的なメディアに繰り返し広告されることは商標の周知度を推認させるに十分なものである。 また、被請求人は引用商標が一般需要者に広く知られている旨の証明書が提出されていないとも述べているが、引用A及びB商標は、「日本有名商標集」に掲載されている著名商標である(丙第455号証)。 (ロ)「新・薬局で買うクスリがわかる本」、「病院のくすり・薬局のくすり…」、「薬の事典 ピルブック」は、いずれも一般の薬局で売られている医薬を含めて紹介しているものである(乙第4号証及び同第6号証)。 これらの文献は一般大衆向けに出版されているものであって、被請求人が、引用A、C、D商標の周知・著名性を立証していることに他ならない。 (ハ)被請求人は、本件商標は一般向けの医薬であり、引用A、C、D商標は医療機関向けの医薬であるとしているが、次の理由により誤りである。 (a)特許庁の類似商品・役務審査基準は、医家向けの医薬と市販の医薬を特に区別せず、これらを類似商品として扱っている。 (b)医薬分業が進んだ現状では、医家向け医薬と一般向けの市販薬が同じ薬局で取り扱われることがますます多くなっており、両社の流通範囲が異なるとの論は現実的でない。 (c)インフオームドコンセントが話題に上っているように、今日の需要者(一般消費者)は、医薬に関する情報に極めて敏感である。一般需要者は、病院で処方される医薬に対しても、また市販薬に対しても同様の関心を持っているものであって、特に、引用商標に係る製品は医家向けと市販薬の両方で製品化され、販売されているのであるから、その周知・著名性は一般需要者に及んでいる。 (ニ)被請求人は、本件商標に係る被請求人の製品が町中に存在する薬局、薬のチェーンストアで販売されている旨主張しているが、本件商標と引用商標との間において、商品の出所混同の危険性は極めて高いと言わねばならない。 第4 被請求人の答弁 被請求人は「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」として、乙第1号証ないし同第6号証を提出した。 (1)「胃腸薬」等の商品について、請求人の商標「ウルソ」および「ウルソ」を要部とする引用各商標と、本件商標「ウルソール」とは、明らかに非類似商標であり、請求人の商標「ウルソ」と本件商標「ウルソール」とは商品の出所の混同を生じるおそれがないものである。 (2)請求の理由における引用商標の周知・著名性について、 引用A商標「ウルソ」およびこれと同一の称呼を生じる引用B商標「URSO」を、昭和32年以降、取引者又は需要者の間に周知・著名になっているとのことである。 しかしながら、ウルソ顆粒の承認年月日は昭和38年12月26日とあり、さらに、発売年月日は昭和39年6月22日と記載されていて、昭和32年という記載は見当たらない(丙第27号証)。その上、商品「胃腸薬」特に、「健胃・消化薬」について商標「ハイウルソ」が記載されており、平成7(1995)年におけるこの種業界のシェアは2.2%、平成8(1996)年のシェアは2.1%、平成9(1997)年のシェアは2.1%(見込み)がそれぞれ記載されている。 (3)商品「健胃・消化薬」の分野において平成7、8、9年のシェアが2.1〜2.2%では、周知・著名であるとは認められない。専門家である医師や薬剤師にあっては正確に識別することができ、また、薬などの商品は主婦や子供達が手軽に扱える商品ではなく、多くの場合、店で薬剤師などの説明を受けて購入することが多い。取扱人は専門的な知識を有しているため、「ウルソ」「ハイウルソ」「ウルソサン」と本件商標とを誤認するおそれはなく、互いに自他商品の識別力を有するものであり、商品の出所混同を生じるおそれはない。 ここで、たとえ商標「ウルソ」が周知・著名であると仮定しても、商品「健胃・消化薬」として使用されている引用D商標は「ハイウルソ」であり、本件商標と比較すると、両者の語頭音が「ハ」と「ウ」の如く相違し、かつ、語尾音「ソ」は「オ母音」に連なり、さらにまた、語尾音「ル」は「ウ母音」に連なるものであって明らかに異なっている。 (4)引用D商標の発音は「ハ」「イ」「ウ」「ル」「ソ」の5音で構成されているのに対し、本件商標は「ウ」「ル」「ソー」「ル」の4音である。その上、前者のアクセントは、第1音の「ハ」と第3音の「ウ」とに位置するとするのが自然であるのに対し、後者のアクセントは、第1音の「ウ」と第3音の「ソ」とに位置するとするのが自然であり、このように両者の語調は明らかに相違するものである。 さらに、前者は音数が5音であり、後者は4音であり互いに相違する。しかも、互いにアクセントの位置がそれぞれ異なるものであるから、両者は明らかに相違する。 しかも、両者とも造語であり、比較すべくもなく互いに相違するものである。 (5)引用A商標「ウルソ」と本件商標とを比較すると、前者は極く少数音である3音に発音し、しかもアクセントは第1音の「ウ」に位置するとするのが自然である。 さらに、後者は4音に発音し、その上、アクセントは第1音「ウ」と第3音「ソー」の2ケ所に位置するとするのが自然である。 そのため、両者を比較した場合には、明らかに語調および語数が互いに相違し、かつ、両者とも造語であって比較すべくもなく、両者の観念も相違するものであり、互いに非類似の商標であって商品の出所の混同を生じるおそれはない。さらに、本件商標をことさら「ウルソ」と「ール」との2群に分断して発音しなければならない合理的な理由は何ら見当たらない。 特に、後方の「ール」は、単独では何ら意味をなさない語であり、前方に位置する「ウルソ」と一体不可分に連結したことにより全体で「ウルソール」というコンパクトにまとまった造語を形成したものであり、決して冗長な長さの語ではない。 したがって、両商標は明らかに相違し、たとえ、引用商標「ウルソ」が著名であると仮定しても、本件商標の登録性に付いては何ら関係がなく、十分に自他商品の識別力を有し、且つ、商品の出所の混同を生じるおそれはないものである。 (6)請求人は、ウルソデオキシコール酸の前から3文字を採用して商標「ウルソ」を選定したとのことで、「消化器官用薬」として医薬関係者などに注目されているのかも知れない。 しかしながら、少なくとも丙第34号証に示されているように約2%のシェアを有する商標は「ウルソ」ではなく「ハイウルソ」であり、大衆医薬品である商品「健胃・消化薬」としては到底周知・著名であるとは認められない。 (7)請求人の提出し多くの証拠類は殆ど週刊誌であり、読者が限られている。しかも、商品購入者がすべて週刊誌の読者であるとは限らないし、その上、前記したように大衆薬としての商品「健胃・消化薬」の平成7年ないし同9年のシェア程度では到底周知・著名であるとは認められないものである。 しかもその商標は引用D商標「ハイウルソ」であり、本件商標「ウルソール」とは相違するものである。 (8)「ウルソ」と「ウルソール」の類否については、上記に述べた如く相違しており、被請求人の商品には漢方薬の生薬が配合されているから、両者の商品は明らかに特徴が相違するものである。 (9)本件商標と引用各商標は、文字数の相違、音数の相違、長音記号を含むことによる語調の相違、アクセントの位置の相違などそれぞれ相違するものであり、商品の出所の混同を生じるおそれがないので、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 ましてや、請求人の商標「ウルソ」に業務上の信用にただ乗りしたとの主張に対しては受け入れられない。 ここで、百歩譲って請求人の商標に業務上の信用が化体されているのであれば、簡単には該化体された顧客吸引力を希釈化させることはあり得ないものと思われる。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定には該当するものではない。 (10)商品「ウルソール」は、請求人会社において製造した原材料「ウルソデスオキシコール酸」を使用して製造したものである。 請求人会社の製品を大阪に所在するライト株式会社が購入し、ついで、佐賀県に所在する西海製薬株式会社を経て弊社が購入し、製造販売の許可を得て製造販売をしているものである。 商品「ウルソール」は請求人の製造にかかる原材料の信用度を高めることはあっても、名前を希釈化することはないものである(乙第1号証ないし同第3号証)。 (11)請求人の所有する引用A、D商標「ウルソ」「ハイウルソ」と、本件商標「ウルソール」とは前記したように外観、称呼、観念いずれも相違して非類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しないし、また、引用A商標「ウルソ」が、長年使用されているとはいえ、大衆薬の「健胃・消化薬」につき、平成7、8、9年のシェアが約2.2%程度では周知・著名であるとは認められないので、本件商標「ウルソール」が引用A商標「ウルソ」と商品の出所の混同が生じるものであるとする主張は到底認めることができないものである。 (12)平成12年7月13日付け意見書 (イ)引用各商標が、それぞれ登録になっていることは認める。しかし、上記商標が取引者または需要者間において周知・著名な商標になっているとのことについては認めることができない。 (ロ)商標「ウルソ」「URSO」が、昭和32年から消化器官用薬として今日まで使用しているとのことであるから、医者、医療機関、製薬会社などにおいては知られているのかもしれない。 しかしながら、たとえ、医者、医療機関、製薬会社などの間に知られていると仮定しても、それが直ちに一般消費者の間に広く知られているとは限らない。少なくとも、一般需要者の間に広く知られているというのであれば、その事実を示す公的な機関が発行した証明書を提出すべきであると思われるが、参加人はそのような証明書を提出していない。 参加人の提出する証拠「日本薬事新報」「日本消化器病学会雑誌」等(丙第49号証ないし同374号証)は、雑誌や週刊誌やスポーツ新聞などを媒体とした広告、宣伝記事であり、該記事を掲載したという事実を証明する証拠にはなっても、それが直ちに一般消費者の間に広く知られている証拠として認めることはできない。 これらスポーツ新聞や雑誌はほとんど1回または数回読んだらそのまま廃棄されるものであり、長期間にわたって保存されるものではないし、繰り返し読み直すものでもない。 (ハ)被請求人は以下の証拠を提出する。 (a)株式会社メディカル綜合研究所、「新・薬局で買うクスリがわかる本」(乙第4号証)平成4年3月3日発行、聖路加国際病院内科副医長・内科専門医、西崎続著の第90頁に、「胆石や肝機能低下が心配なとき」の項に、ウルソデオキシコール酸などが配合された「ハイウルソ錠」が記載されている。その他に、「ガロニン錠」「三共グリーン胃腸薬錠」「シオノギS胃腸薬顆粒」「シオノギS胃腸薬錠」「センロック健胃薬」「タナべ胃腸薬」「タナべ胃腸薬U錠」「パネルA」の製品名が記載されているが、被請求人の製品である「ウルソール」は記載されていない。 (b)成美堂出版、「病院のくすり・薬局のくすり/くすりの事典12000」(乙第5号証)1994(平成6年)発行、北里大学病院薬剤部副部長、北里大学薬学部講師、小林輝明監修、の第36頁に、「ウルソデスオキシコール酸」を含む製品名として「ウルソ」「ウルソサン」が記載されており、さらに、「ゴクミシン」「シキコール」が記載されている。また、同書第184頁に成分名「ウルソデスオキシコール酸」を含む製品名「ウルソサン」、同書第185頁に成分名「ウルソデスオキシコール酸」を含む製品名「ウルソ」が記載されているが、被請求人の製品「ウルソール」は記載されていない。 (c)ソシム株式会社、「薬の事典 ビルブック 第11版、2001年版」(乙第6号証)平成12年6月20日発行、聖路加国際病院名誉医長 医学博士 橘敏也著の第45頁に、消化器官用薬を示した写真中に「ウルソ」および「ウルソサン」の錠剤の写真が掲載されており、第70頁に「ウルソデスオキシコール酸」に関する製品として「ウルソ」「ウルソサン」が記載されている。さらに、第299頁には製品「ウルソサン」、第300頁には製品「ウルソ」が記載されているが、被請求人の製品である「ウルソール」は記載されていない。 上記のように、請求人の製品である商品「胃腸薬」についての商標「ウルソ」または商標「ハイウルソ」は、乙第4ないし同6号証に掲載されているのに対し、被請求人の製品である商品「胃腸薬」についての商標「ウルソール」は、掲載されていない。 このように、請求人の商品は、もっぱら製薬会社と医者及び医療機関との間において行われるものであるが、医者の処方箋にしたがった薬は、患者(一般消費者)は病院の薬局の窓口で受け取っている。 医者からもらった薬として認識しても、薬の商標を認識する患者はなく、薬の製品名(商標)を理解している人はほとんどいないのが実情である。 これに対し、被請求人の商品は、町中に存在する薬局、薬チェンストアーなどで取り扱われており、薬剤師と一般消費者との関係として認識され、当該薬はほとんど包装容器(パケージ)単位で取り扱われる。 そのため、消費者は薬の製品名、該包装容器を取り扱うたびに商標を確認できる。しかし、医療機関で取り扱われている薬は、一般消費者にとってなかなか周知又は著名なものとして認識される可能性は低く、その結果、互いに取り扱われる段階や範囲が互いに相違するものであり、両製品は商品の流通過程において、出所の混同を生ずるおそれはないものである。 (d)被請求人による本件商標の使用と出所の混同のおそれについて、 請求人は、本件商標について、前半部分の「ウルソ」の3文字に注目して取り出し、引用A、D商標「ウルソ」、「ハイウルソ」と類似すると主張しているが、前述した如く非類似でありこの主張は受け入れられない。 本件商標は、一体不可分に構成した「ウルソール」であり、請求人の商標「ウルソ」「ウルソサン」「ハイウルソ」の有する信用をただ乗りする行為を行うものではない。 一体不可分の「ウルソール」を、「ウルソ」と「ール」とに分断しなければならないのか、その合理的な根拠を見出すことができないものである。もし商標「ウルソ」が著名・周知であるとするなら、なぜ公的な証明書が提出されていないのか。被請求人の製品は、請求人の製造した「ウルソデスオキシコール酸」を使用したもので品質は良好であり、請求人に対して品質面からも何らダメージを与える事はないと確信するものである。 したがって、本件商標は、商品の取引市場において十分に自他商品の識別力を有するものであり、請求人の商標「ウルソ」とは明らかに相違するものである。 第5 当審の判断 (1)審判請求人と参加人との関係について (イ)本件登録第4123918号商標の無効審判請求人は、当初「東京田辺製薬」であったが、その後、「三菱化学株式会社」(以下「三菱化学」という。)との合併により審判請求人は「三菱化学」となっている。 一方、参加人は、当初「ティ・ティ・ファーマ株式会社(「東京田辺製薬」と「三菱化学」との事業統合により設立された会社)」であったが、その後、名称変更がなされ「三菱東京製薬株式会社」(以下「三菱東京製薬」という。)となっているものである。 そして、「三菱東京製薬」は、「東京田辺製薬」より本件登録第4123918号商標の無効を主張するための根拠となっている引用登録第492420号外4件の商標権の譲渡を受け、現在その商標権者になっている。 (ロ)その後、請求人「三菱化学」は、本件審判の請求を取り下げた。 (ハ)現在、本件無効審判は、参加人と被請求人との間で続行しているものである。 (2)本件商標が、引用商標に対し商標法第4条第1項第11号に該当するか否かについて、 本件商標と引用AないしD商標の類否についてみるに、その構成は前記のとおりであるから、外観上、明らかに区別し得る差異を有するものである。 また観念の点についても、本件商標と引用商標は何ら特定の意味を有しない造語を表したと認められるので、両者は観念上比較すべくもないところである。 つぎに、称呼の点についてみるに、本件商標は、「ウルソール」の片仮名文字を同書体で一連に書き表してなるから、これより「ウルソール」の一連の称呼を生ずるものとみるのが相当である。 他方、引用A商標は「ウルソ」、引用B商標は「URUSO」の各文字よりなるから、これよりは共に「ウルソ」の称呼が生ずるというのが相当である。 また、引用D商標は「ハイウルソ」の商標から成るところ、構成中の「ハイ」の文字部分は、「高級」を意味する英語の「high」に通じ、商品の品質を表すものとして普通に使用されているものである。 そうとすれば、引用D商標からは、「ハイウルソ」の一連の称呼の他に構成中の「ハイ」の文字部分を略し「ウルソ」の文字部分から単に「ウルソ」の称呼をも生ずるものといえる。 そこで本件商標から生ずる「ウルソール」の称呼と引用A、B、D商標から生ずる「ウルソ」の称呼とを比較するに、両者は共に「ウルソ」の音を共通にしているものの、前者は長音を含む5音構成、後者は3音構成とそれぞれその音構成数が異なり、かつ前音の「ソ」の後の長音に続く「ル」の音も明確に聴取し得るものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは全体の聴感が異なり、称呼上十分聴別し得るものといわなければならない。 また、本件商標より生ずる「ウルソール」の称呼と引用D商標より生ずる「ハイウルソ」の称呼とは、その構成音の相違により明確に聴別し得るものである。 してみれば、本件商標と引用A、B、D商標とは、称呼上相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 つぎに本件商標と引用C商標の称呼についてみるに、本件商標は「ウルソール」、引用C商標は「ウルソサン」の各文字を表してなるものであるから、前者よりは「ウルソール」、後者よりは「ウルソサン」の称呼を生ずること明らかである。 そこで、本件商標から生ずる「ウルソール」の称呼と引用C商標から生ずる「ウルソサン」の称呼とを比較するに、両者は前半部の「ウルソ」の音を同じくするものの、後半部において「ール」と「サン」の音に顕著な差異を有するから称呼上十分聴別し得るものである。 してみれば、本件商標と引用C商標とは、称呼上相紛れるおそれのない商標といい得るものである。 したがって、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点よりしても相紛れない非類似の商標と認められるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 (3)引用商標「ウルソ」の著名性について (イ)参加人が本件商標の登録無効理由として引用する引用A商標「ウルソ」、引用B商標「URSO」、引用C商標「ウルソサン」、引用D商標「ハイウルソ」及びこれらの商標とそれぞれ連合関係にあった商標「URSOSAN」(登録第1658787号)、「ネオウルソ/NEOURSO」(登録第2024420号)、「URSO(図形付き)」(登録第2055785号)、「URSO(図形付き)」(2055786号)、「ハイウルソ(図形付き)」(登録2142933号)、「ウルソエース」(登録第2214132号)、「ハイウルソエース」(登録第2214133号)、「ウルソS」(登録第2387595号)、「ハイウルソ・エース」(登録第2602934号)、「ハイウルソエース内服液」(登録第2602935号 )、「ハイウルソエース」(登録第2602936号)、「スーパーウルソ/SUPERURSO」(登録第3109527)、及び「ウルソ/コール」(登録第3279913号)の各商標は、現在、三菱東京製薬がこれらの権利者となっていることが認められる。 そして、上記登録商標中、「ウルソ」を要部とする「ウルソ散」については、昭和32年9月10日、「ウルソ錠」は、昭和32年6月20日に発売されていることが認められる(丙第393号証)。 また、丙各号証によれば、「ウルソ」の文字は、「ハイウルソ」「ウルソサン錠」「ウルソ100」「ウルソ顆粒」「ハイウルソエース内服液」「ハイウルソ顆粒」のように参加人(請求人を含む)の消化器官用薬の商標の一部に使用され、「ウルソ」のシリーズの如く使用されていることが認められる。 (ロ)上記「ウルソ」シリーズ商標は、東京田辺製薬が昭和32年に消化器官用薬としての「ウルソデオキシコール酸」の開発・商品化に成功し、「ウルソデオキシコール酸」の一部の「ウルソ」の文字を商標として採択したことに始まったものである。その後、「ウルソ」は、利胆剤や肝・胆・消化機能改善剤の商標として使用され、現在も使用されているものである(丙第24号証)。 そして、該「ウルソ」シリーズの商品は、「医薬品市場統計」(丙第407号証ないし同第446号証)によれば、本件商標の登録出願時、利胆剤について相当なシェアを占める商品と認められる。 (ハ)参加人(請求人)の提出する「ウルソ」シリーズの商品は、医家向けには、「日本医事新報」「日本消化器病学会雑誌」等で、一般向けには、「週刊現代」「週刊文春」「週刊ポスト」「ディリースポーツ」等の週刊誌やスポーツ新聞等で長期に亘って繰り返し広告、宣伝されてきたことが認められる(丙第49号証ないし同374号証)。 以上、提出されている丙各号証を総合勘案すると、本件商標の出願・登録時には、「ウルソ」、「ハイウルソ」等「ウルソ」の文字が使用された商品「消化器用薬」は、東京田辺製薬の製造販売に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されるようになっていたものと認められる。 (4)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて 参加人(請求人)が「ウルソ」「ハイウルソ」「ウルソサン」等いずれも構成中に「ウルソ」の文字を含む商標を商品「消化器用薬」に昭和32年から永年に亘って使用し、これが本件商標の登録出願時に、取引者・需要者間に周知、著名となっていたことは上記(3)で認定のとおりである。 そうとすれば、「ウルソ」の文字を一部に有する本件商標を商標権者がその指定商品中の「薬剤」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、前記実情から、参加人の業務に係る周知・著名な商標「ウルソ」「ハイウルソ」等を容易に想起・連想し、該商品が参加人又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。 なお、被請求人は、医家向け医薬と一般向けの市販薬とはその取引状況が異なるから商品の出所の混同のおそれはないと主張するが、近年、インフォームドコンセントの意識も高まる状況においては、医家向けの医薬も広く一般需要者に知られているから、これに対する被請求人の主張は、認め難い。 また、本件商標は、上記商品以外の商品について使用しても、引用各商標の使用にかかる商品と生産者、販売店及び用途等を著しく異にするものであり、その商品の出所について混同を生じることはないものと認められる。 したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「薬剤」については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、この限りにおいて、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすべきである。 しかしながら、本件商標の指定商品中「薬剤」以外の残余の商品については、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとは言い得ず、この限りにおいては、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-26 |
結審通知日 | 2001-03-30 |
審決日 | 2001-07-16 |
出願番号 | 商願平8-10389 |
審決分類 |
T
1
11・
261-
ZC
(005)
T 1 11・ 262- ZC (005) T 1 11・ 263- ZC (005) T 1 11・ 271- ZC (005) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 小川 有三 |
特許庁審判長 |
寺島 義則 |
特許庁審判官 |
佐藤久美枝 小池 隆 |
登録日 | 1998-03-13 |
登録番号 | 商標登録第4123918号(T4123918) |
商標の称呼 | ウルソール |
代理人 | 矢野 公子 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 高尾 裕之 |
代理人 | 佐藤 英二 |
代理人 | 田代 和夫 |
代理人 | 光野 文子 |