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審決分類 審判 一部無効 商品(役務)の類否 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 005
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 005
管理番号 1045451 
審判番号 審判1998-35679 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-28 
確定日 2001-08-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4125604号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4125604号の指定商品中「湿布剤,プラスター」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4125604号商標(以下「本件商標」という。)は、「ThermoGel」の文字よりなり、平成8年8月19日登録出願、第5類「湿布剤、プラスター、包帯」を指定商品として、同10年3月20日に登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3239310号商標(以下「引用商標」という。)は、「サーモゲル」の文字よりなり、平成6年6月29日登録出願、第1類「化学剤、その他の化学品、土壌改良剤、植物成長調整剤類、のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く)、高級脂肪酸、原料プラスチック、工業用粉類、植物生育用人工土壌、肥料、試験紙」を指定商品として、同8年12月25日に登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第3号証並びに参考資料1ないし4を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、「ThermoGel」の文字よりなるものであるから、これより「サーモゲル」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標は「サーモゲル」の文字を書してなるものであるから、「サーモゲル」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは一方が英字表記、他方が片仮名表記の相違はあるものの称呼が同一であるから、同一又は類似の商標というべきである。
次に、本件商標にかかる指定商品中第5類「湿布剤、プラスター」と、引用商標にかかる指定商品中第1類「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは、他類間類似商品の関係にあるから、類似の商品というべきである。
したがって、本件商標にかかる指定商品中「湿布剤、プラスター」については商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)本件商標の指定商品「湿布剤」について
「湿布剤」と同義の関係にあるものとして、請求人提出に係る「第十三改正日本薬局方」第一部に記載のパップ剤が挙げられる。
該「第十三改正日本薬局方」第一部の製剤総則の欄第15頁「23.パップ剤」の項には「(1)パップ剤は、通例、医薬品の粉末と精油成分を含むもので、泥状に製するか、又は布上に展延成形して製した、湿布に用いる外用剤である。」と記載されている。
この記載のとおり、「パップ剤は、・・・湿布に用いる外用剤」とあることから、「パップ剤」と「湿布剤」は多くの部分で同義であり、「パップ剤」と「湿布剤」との商品としての区別をつけること自体極めて困難である。
次に、「パップ剤」は、製剤の剤型の表示であることは前記した「23.パップ剤」の項の記載より明らかである。そしてパップ剤は、「通例、医薬品の粉末と精油成分を含むもの」が成分とされていることから、「パップ剤」の成分本質は医薬品であり、精油成分等の添加剤が加えられたとしても医薬品として取り扱われる。
したがって、日本薬局方でいう「パップ剤」は、通例、医薬品として取り扱われるものであり、「パップ剤」と同義の関係にある「湿布剤」もまた、通例、医薬品として取り扱われるものである。
(2)同「プラスター」について
医薬業界においての「プラスター(plaster)」とは、前出「第十三改正日本薬局方」第一部に記載の「硬膏剤(Plasters)」であることは、当業者において自明のことである。
該「第十三改正日本薬局方」第一部の製剤総則の欄第8頁「11.硬膏剤(Plasters)」の項には「(1)硬膏剤は、通例、常温では固形で、布、紙又はプラスチック製フィルムなどに延ばし、皮膚に粘着させて用いる外用剤である。」と記載されている。
前記より「プラスター」は製剤の剤型の表示であり、医薬品として取り扱われる。
したがって、医薬分野において、「硬膏剤」は、通例、医薬品として取り扱われるものであるから、「プラスター」もまた医薬品として取り扱われ、そして医薬品は第5類の薬剤(01BO1)に含まれることから、「プラスター」は第5類の薬剤(01BO1)に関わる。
(3)引用商標の指定商品「植物成長調整剤類」について
「植物成長調整剤類」は、農薬の一つであることは被請求人の答弁にもあるとおりであって、他の農薬と同様に第5類の薬剤(01BO1)に関わる。
また農薬において、これを製造、販売又は販売のために輸入する者は、医薬品における薬事法の規定と同様に、農薬取締法の規定により、事前に登録しなければ、販売することができない規定となっている。このため、同一企業が、医薬品と同時に、医薬品の成分本質と同一の成分を有効成分とする農薬を、製造し販売するところは多い。
また農薬の剤型については、エアゾール剤、液剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、散剤、錠剤、注射剤、軟膏剤、パップ剤、ローション剤等があり、硬膏剤やパップ剤等は、例えば基剤を調整することにより有効成分が徐々に放出される性質等があり、これを樹木幹の支管部分等に貼り付けるものもある。
したがって、「湿布剤」及び「プラスター」は、薬剤(製剤)の剤型の中の一つの剤型を示すに過ぎず、さらに医薬分野に限らず、農薬分野でも用いられると考える。
(4)まとめ
「湿布剤」及び「プラスター」は、第5類の薬剤(01B01)に関わる。またこれらは薬剤(製剤)を剤型から分類した場合の表現であるから、医薬分野に限らず、農薬分野でも用いられる。
一方、「植物成長調整剤類」は、第1類の植物成長調整剤類(01B01)に関わるが、第5類の薬剤(01B01)の中の農薬の一つであることは明白である。またこれは薬剤(製剤)を薬効・用途から分類した場合の表現である。
つまり、「湿布剤」及び「プラスター」と、「植物成長調整剤類」とは、それぞれ異なる薬剤(製剤)の分類方法に基づく表現であるから、そもそも両者を区別すること自体が困難であり、両者は重複しているといわざるをえない。
さらに、同一企業が、医薬品と同時に、医薬品の成分本質と同一の成分を有効成分とする農薬を製造し販売するところは多いことからも、「湿布剤」及び「プラスター」と、「植物成長調整剤類」とは、出所の混同を引き起こす可能性がある。
したがつて、本件商標の指定商品「湿布剤、プラスター」と引用商標の指定商品「土壌改良剤、植物成長調整剤」とは類似の関係にあるから、被請求人の主張は成り立たない。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1および第2号証並びに参考資料1ないし3を提出した。
1 答弁の理由
本件商標と引用商標とが同一又は類似する商標であることは認める。
しかしながら、本件商標に係る指定商品中「湿布剤、プラスター」は、薬剤そのものにあたる商品を区分した『第5類の薬剤(01BO1)』に属するものではなく、『第5類の医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド(01CO1)』に属するものであり、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤」とは非類似である。以下、詳述する。
(1)「湿布剤」は『第5類の薬剤(01BO1)』に属しない。
本件商標に係る指定商品中「湿布剤」とは、湿布に用いる薬剤そのものを指すものではなく、例えば、消炎鎮痛剤や清涼剤等を有効成分として、これを経皮吸収的に生体内に投与する外用貼付剤の一形態としての商品をなすものである。
したがって、本件商標に係る指定商品中「湿布剤」は、『第5類の薬剤(01BO1)』に属するものではなく、『第5類の医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド(01CO1)』に属するべきものであり、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤類」(『第1類の植物成長調整剤類(01BO1)』に属する。)とは他類間非類似商品であって、類似の商品ではないから、請求人の主張は明らかに失当である。
(2)「プラスター」は『第5類の薬剤(01BO1)』に属しない。
「プラスター」を「膏薬」という意味で用いた場合、一般に取引者・需要者は、これを外用貼付剤の一形態として認識しているものであって、決して、その有効成分の薬剤そのものを示すものとして認識していないのである。
これは、「物の破損した所を紙や布の小片で、膏薬を貼ったようにつくろうこと」を「膏薬貼(こうやくばり)」と表現し、普通に使われていることからも明らかである(「広辞苑」(岩波書店発行)の「膏薬(こうやく)」の項)。
つまり、一般に、紙や布等の小片に薬剤を塗って外皮に貼付できるようにした品を「膏薬」と称して、認識しているのである。
したがって、取引者・需要者が、商品「プラスター」を「膏薬」として認識した場合、これを膏薬における有効成分の薬剤そのものであるとして品質誤認をすることは皆無である。
ところで、付言するに、医薬業界において「プラスター(plaster)」とは、「ギブス(plaster cast)」或いは「ばんそうこう(sticking plaster)」などの患部を固定化、保持するものであるとし認識されている場合もあるが、このことから当然に、医薬業界において「プラスター(plaster)」は、『第5類の薬剤(01BO1)』に属するものではなく、『第5類の医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド(01CO1)』に属するべきものと判断される。
即ち、本件商標に係る指定商品中「プラスター」とは、膏薬に用いる薬剤そのものを指すものではなく、一般に「膏薬」として、外用貼付剤の一形態としての商品をなすものであり、また、医薬業において、患部を固定化、保持するための「ギプス」或いは「ばんそうこう」等として認識されている場合もあるものである。
したがって、本件商標に係る指定商品中「プラスター」は、『第5類の薬剤(01BO1)』に属するものではなく、『第5類の医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド(01CO1)』に属するべきものであり、一方、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は『第1類の植物成長調整剤類(01BO1)』に属するものであるから、両者は、他類間非類似商品であり、したがって、請求人の主張には、根拠がなく、明らかに失当である。
(3)ところで、商品の類否は、同一の商標を対比される商品に使用した場合に、取引上の経験則上それら商品の取引者・需要者が商品について一般的出所の混同を生ずるおそれがあるか否かによって判断されるべきものであると考えられている。
そして、本件商標に係る指定商品「湿布剤」や「プラスター」は、主に医療業界などで用いられるものであり、一般に、取引者・需要者は薬局や病院において、この商品を取引するものである。
一方、引用商標に係る指定商品「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は、主に農業資材取引業界や農業分野で取引されるものであり、一般に、取引者・需要者は農業資材取引店、園芸用品店などにおいて、この商品を取引するものである。
したがって、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とは、その属する分野が異なり、この商標を付した商品の取引業界も異なるものであるため、商品の取引者・需要者が一般的出所の混同を生ずるおそれはなく、よって、請求人の主張は、明らかに失当である。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、「ThermoGel」の文字を書してなるものであるから、これより「サーモゲル」の称呼を生ずるものであり、他方、引用商標も、「サーモゲル」の文字を書してなるものであるから、これより「サーモゲル」の称呼を生ずるものであり、一方が英字表記、他方が片仮名表記の相違はあるものの、称呼が同一であるから、同一商標又は類似の商標であるが、本件商標に係る指定商品中「湿布剤、プラスター」と、引用商標に係る指定商品中「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは非類似の商品であり、したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、よって、同法第46条第1項の規定には該当しない。

第5 当審の判断
本件商標および引用商標は、その構成前記のとおり、前者が「ThermoGel」、後者が「サーモゲル」の文字よりなるものであって、いずれも「サーモゲル」の称呼を生ずるものであるから、その称呼において共通する互いに類似の商標というべきものであり、被請求人もこの点については明らかに争わないところである。
つぎに、両商標の指定商品について、その類否を検討するに、まず本件商標の指定商品中の「湿布剤、プラスター」についてみると、「湿布剤」とは、布片あるいはガーゼに浸し皮膚の局所に一定時間密接させる液剤であって、多少の殺菌および収斂の作用を有するものが用いられ、一般に外用薬として「薬剤」の範疇に入る商品と理解されているものであり、また、「プラスター」は、「しっくい、石膏」を意味する場合もあるが、医薬分野においては、水飴様の硬さを有する膏薬で、布にのばして貼用する「硬膏(剤)」を指す語として知られており、皮膚に膠着して、皮膚を保護しまたは浸軟する作用があって、やはり一般に外用薬として「薬剤」の範疇に入る商品と理解されているものである。
ところで、「湿布剤」又は「プラスター」なる商品表示は、注射剤、錠剤、カプセル剤、丸薬、散薬等と同様に剤型による分類法に基づいて表記したものであるから、原則として薬効又は用途による分類法に基づく現行の商品分類第5類における商品表示とは合致しないものであるが、単なる分類法の違いからくる表示上の違いであって、いずれも薬剤の範疇に入ることに変わりはない。
一方、引用商標の指定商品中の「土壌改良剤、植物成長調整剤類」は、農業用に使用される薬剤(いわゆる「農薬」)の範疇に入る商品と一般に理解されているものである。
しかして、本件商標の指定商品中の「湿布剤、プラスター」と引用商標の指定商品中の「土壌改良剤、植物成長調整剤類」とは、前者が主として人又は動物を対象とするのに対し、後者が植物を対象とする点でその用途は異なるものの、いずれも薬剤の範疇に入る商品であって、同一の企業により製造、販売される場合が少なくないものである。
そうとすると、本件商標の指定商品中の「湿布剤、プラスター」は、引用商標の指定商品中の「土壌改良剤、植物成長調整剤類」と類似する商品といわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中「湿布剤、プラスター」については、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、上記商品については同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-06-12 
結審通知日 2001-06-22 
審決日 2001-07-03 
出願番号 商願平8-92814 
審決分類 T 1 12・ 264- Z (005)
T 1 12・ 262- Z (005)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 幸一 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 八木橋 正雄
鈴木 新五
登録日 1998-03-20 
登録番号 商標登録第4125604号(T4125604) 
商標の称呼 サーモゲル、サーモ 
代理人 澤 喜代治 

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