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審決分類 審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 040
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) 040
管理番号 1045414 
審判番号 無効2000-35381 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-12 
確定日 2001-08-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第4094377号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4094377号の指定役務中「第40類 写真の引き伸ばし、写真の焼付け、写真用フィルムの現像、受託による写真を利用したテレホンカード・ポストカード・カレンダー・名刺・絵皿・パネルの作成」についての登録を無効とする。 その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4094377号商標(以下、「本件商標」という。)は、「こども写真館」の文字を横書きしてなり、平成7年2月23日に登録出願、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),裁縫,ししゅう,電気めっき,フライス削り,焼きなまし,焼戻し,溶融めっき,映画用フィルムの現像,写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,受託による写真を利用したテレホンカード・ポストカード・カレンダー・名刺・絵皿・パネルの作成,製本」を指定役務として、平成9年12月19日に設定登録がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第41号証を提出している。
1 無効理由について
(1)本件商標は、「こども写真館」の文字を一連に横書きにしてなるものの、普通の語である「こども」の文字と、「写場をもち、主に肖像写真の撮影を職業とする店。」(甲第1号証)、「写場をもち、客の注文に応じてその人の写真をとるところ。写真屋。」(甲第2号証)という意味を有する語である「写真館」の文字とを結合してなるにすぎず、全体としては「こどもの写真撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供するお店。」とか、「こども専門の写真屋さん。」と認識、理解されるものであることから、その指定役務中、写真に関する役務に使用した場合には、単に役務の質、提供場所等を表示するにすぎないものである。
従って、本件商標は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものである。
(2)本件商標の構成は上記(1)のとおりであるが、写真の撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供する業界において、「こども写真館」の文字は「こども写真スタジオ」を表す言葉として、遅くとも本件商標の登録査定時である、平成9年10月頃までには、一般的に普通に使用されている事実がある(甲第3号証ないし甲第41号証)。
このように、当業界の同業者間において、本件商標は、その指定役務中、写真に関する役務については、もはや単に慣用されている商標にすぎないものである。
従って、本件商標は、商標法第3条第1項第2号の規定に違反して登録されたものである。
(3)本件商標は上記(1)及び(2)のとおり、その指定役務中、写真に関する役務に使用した場合には、単に役務の質、提供場所等を表示するにすぎないものであり、また、写真の撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供する業界において、その指定役務中、写真に関する役務については、もはや単に慣用されている商標にすぎないものであるから、本件商標をこれら写真に関する役務以外の役務に使用する場合、役務の質の誤認を生ずるおそれがある。
従って、本件商標は、商標法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標は商標法第3条第1項第3号、同法第3条第1項第2号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第3条第1項第3号の無効理由について
本件商標「こども写真館」は、普通の語である「こども」の文字と、「写場をもち、主に肖像写真の撮影を職業とする店」「写場をもち、客の注文に応じてその人の写真をとるところ、写真屋」という意味を有する語である「写真館」の文字とを結合してなるにすぎなく、これよりは「こどもの写真撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供するお店」「こども専門の写真屋さん」と容易に認識、理解されるものであることは明らかであり、また、請求人が提出した甲第27号証ないし甲第41号証に示されているように、「写真館」においては、「写真の撮影」のみの役務を提供しているのではなく、本件商標の指定役務に含まれる「写真の焼付け、写真の引き伸ばし、ポストカードの作成」等をも行っている。
従って、「写真館」においては、本件商標の指定役務は一般的に提供されていないという被請求人の主張は何ら根拠がなく、本件商標「こども写真館」は、その指定役務との関係において、格別の意味合いを有しない造語であるはずがない。
さらに、「動物」や「結婚式」など特定の被写体の撮影を得意とする写真館が「動物写真館」「結婚写真館」と表示されることなく、単に「写真館」と称されていることや、「子供専門写真館」等、本件商標とは異なる様々な表示がなされていることなど、本件商標のことと無関係であることは言うまでもない。
よって、本件商標「こども写真館」は、その指定役務中、写真に関する役務に使用した場合、単に役務の質、提供場所等を表示するにすぎないものであり、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。
(2)商標法第3条第1項第2号の無効理由について
被請求人は、甲第27号証ないし甲第41号証の広告類は、およそ本件商標の登録査定時以降のものと推察しているが、例えば、甲第35号証、甲第39号証、甲第40号証はその郵便番号の記載が現在の7桁ではないので、平成10年2月以前、即ち、本件商標「こども写真館」の登録査定時以前に頒布されていることが充分にあり得、甲第33号証の一例のみをもって、甲第27号証乃至甲第41号証の広告類は本件商標の登録査定時以降のものと推察している被請求人の主張は認め難い。
また、本件商標のように「こども」部分をひらがなで表す「こども写真館」であろうが、甲第3号証乃至甲第15号証に示された「こども」部分を漢字で表す「子供写真館」であろうが、当然に「こども写真スタジオ」を表す言葉と理解されるものであることから、慣用商標にも基本的なものを中心として種々類似する態様があってしかるべきであり、しかも事実問題として、甲第3号証乃至甲第26号証の雑誌記事といった媒体には当然紙面の制約等があることから、「こども写真館」と「子供写真館」とは少なくとも実質的に同一性を有する慣用商標であるとするのが自然である。例として、慣用商標の「幕の内」「正宗」を「まくのうち」「マサムネ」と表した場合、これらも慣用商標とされると考えても無理はない。
尚、甲第3号証乃至甲第15号証のうち、例えば、甲第4号証の26頁や、甲第11号証の10頁には「こども」部分をひらがなで表す「こども写真館」の記載もある。
このように、請求人が提出した証拠は、本件商標「こども写真館」の登録査定時である平成9年10月頃までには一般的に普通に使用されている事実があることを示し、その後も当業界の同業者間において、広く一般的に普通に使用されている事実を示すものであるから、これら証拠でもって本件商標は、その指定役務中、写真に関する役務については、もはや単に慣用されている商標にすぎないものであることを充分に立証できるものである。
よって、本件商標「こども写真館」は、写真の撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供する業界において、「こども写真スタジオ」を表す言葉として一般的に普通に使用されている事実があることから、その指定役務中、写真に関する役務についてはもはや単に慣用されている商標にすぎないものであり、商標法第3条第1項第2号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。
(3)利害関係について
請求人は「子供の写真撮影」を内容とした写真スタジオを主たる業務としていることから、被請求人から差止請求を受ける等の法的紛争がおこる可能性があることを否定することはできない(東京高裁平成7年5月17日判決参照)。しかも役務の質の誤認を生ずるおそれがある本件商標の使用は公衆に不利益が及ぶことから、請求人は当然本件審判を請求する利益があり、請求人適格を有するのは明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。
(1)無効審判を請求できるものは、当該商標登録を無効とすることに関して利害関係を有する者であるところ、請求人はこの点についてなんら述べていない。
従って、請求人は本件審判を請求することについての利害関係を有するものではなく、請求人の適格を欠くものである。
(2)本件商標は、「こども写真館」の文字を横書きしてなるものであり、全体として格別長い構成を持たず、同書体で一連に書かれていることから、一体不可分の格別の意味合いを有しない造語であって、需要者が何人の業務に係る役務であるかを認識することのできる商標であるとするのが相当である。
「写真館」の語が、「写場をもち、主に肖像写真の撮影を職業とする店。」の意味を有する語であることは被請求人も認めるところであるが、「写真館」において一般的に提供される役務は第42類「写真の撮影」であって、たとえ写真に関連する役務といえども、本件商標の指定役務「写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,受託による写真を利用したテレホンカード・ポストカード・カレンダー・名刺・絵皿・パネルの作成」は、一般的に提供されていない。
また、一般の「写真館」は撮影対象を限定しておらず、「動物」や「結婚式」など特定の被写体の撮影を得意とする写真館でもあっても、一般的に「動物写真館」「結婚写真館」と表示されることはなく、単に「写真館」と称されている。
よって、本件商標「こども写真館」においても、請求人が主張しているような「こどもの写真撮影、その他その写真の現像などの各種サービスを提供するお店。」「こども専門の写真屋さん。」といった解説が含まれていないのであるから、本件商標からは、「こども」または「写真撮影」に関連するものであるとの意味合いが想起されることがあるとしても、本件商標の指定役務について、何ら具体的な役務の質や提供場所等を認識させるものではないとするのが相当である。
実際、本件商標の登録査定時頃、下記に述べるように、子供を専門にした新しい形の写真スタジオが、被請求人の関係会社をはじめとするいくつかの店舗で開始されたが、各店舗においては「子供専門写真館」等、本件商標とは異なる様々な表示がなされていた。
以上の理由により、本件商標は、需要者が何人の業務に係る役務であるかを認識できる商標であり、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものではない。
(3)本件商標の登録査定は、平成9(1997)年10月24日であるところ、甲第16号証乃至甲第26号証はそれ以降に発行された雑誌の記事となっている。また、甲第27号証乃至甲第41号証の広告類については、日付の記載が見あたらないため頒布された時期を特定できないが、甲第33号証中に「99年版カレンダー1枚プレゼント」との記載があることから、このチラシは1998年に頒布されたものと推察され、同様にその他の広告類も1998年以降のものであると推察される。
従って、請求人の添付した証拠のうち、本件商標の登録査定時における使用状況を示す資料は、甲第3号証乃至甲第15号証のみであるが、これらは全て同一の業界雑誌に掲載された記事であり、また、そこでの記載方法も本件商標と異なった「子供写真館」であって、「こども」部分が漢字となっている。
よって、これらの資料のみをもって本件商標が写真に関する役務について慣用されている商標にすぎないとする請求人の主張は、到底承服できるものではない。
ところで、子供の写真撮影に特化して、スタジオに撮影用衣装を用意し、着付けやメイクを無料で行ったのちに多数のポーズでの撮影を行い、撮影した画像を顧客にモニターで確認してもらった上で、顧客の希望する画像だけを焼き付けて料金を請求するという写真館のシステムは、請求人の提出した甲第9号証(スタジオ NOW 1996.2p.8)及び甲第15号証(スタジオ NOW 1997.8p40)にもあるように、北海道で始まった。
1990年頃に光誉写真株式会社が北海道で営業を始めたものが、その始まりだが、請求人、被請求人の関連会社とも、その頃当該会社より技術指導等を受けて同様の営業を開始している。
被請求人の関係会社である株式会社裕光商事は、乙第1号証(日本経済新聞 1993年7月26日の記事)にもあるように、上記の様な新しい形の写真スタジオの営業を開始するにあたって、1993年4月30日に開店した「こども写真館 トム・ソーヤー」の1号店において、本件商標の使用を開始している(現在、当該事業は引き続き、被請求人の関係会社であるスタジオプラン株式会社にて行っている。)。
このような、新しい形の写真スタジオについて、光誉写真株式会社は「こども専門のフォトスタジオ」「子供写真専門」と称していたが、その他、乙第2号証及び乙第3号証として添付した新聞記事にもある通り、本件商標の登録査定のなされた当時において、上記新しい形の写真スタジオは「子供専門写真館」「お子さま写真館」と表示されていたほか、「子供専用写真館」「チャイルドフォト」「キッズスタジオ」など様々に表示されていた。
従って、本件商標は、登録査定時において、その指定役務について慣用されている商標とはなっておらず、商標法第3条第1項第2号の規定に違反して登録されたものではないとするのが相当である。
(4)以上の通り、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示したものではなく自他役務の識別力を有する商標であり、また、その登録査定時に、写真の撮影、その他その写真の現像などの各種役務を提供する業界において、慣用されている商標であったとはいえないものであるら、その指定役務中いかなる役務に使用しても、役務の質の誤認を生じさせるおそれはない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものではないとするのが相当である。
(5)以上の理由により、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第3条第1項第2号及び同法第4条第1項第16号の規定に違反して登録されたものではなく、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
(1)まず、請求人が本件審判の請求をするについて当事者間に利害関係の争いがあるので判断するに、被請求人の提出に係る乙第2号証「朝日新聞」(1995年10月14日発行)によれば、請求人と認められる「株式会社スタジオ・アリス」(本部大阪)は、「子供専門写真館」という標章を使用して写真館の営業をしているものであるから、この標章の使用が引用商標の商標権の侵害であるとして、被請求人から当該商標の使用について差し止め等を受けるおそれがある。
したがって、請求人は、本件審判を請求することについて法律上の利益を有するものである。
(2)次に、本案に入って判断するに、我が国においては、子供の誕生記念、七五三の記念等に記念写真を撮る人々が少なくない。
そして、本件商標は、前記のとおり「こども写真館」の文字よりなるものであるが、請求人の提出した甲第3号証ないし甲第15号証の「スタジオNOW」(平成6年12月10日、平成7年1月10日…平成9年8月10日 株式会社プロメディア発行)の「子供写真館なる名称の写真館が全国的に急増している」旨の記事及び同第26号証「フォトマーケット増刊号(1999年度版)」(平成11年6月10日発行 編集兼発行人谷口寛)の「こども写真館の推移」の統計(表)によれば、「子供写真館」若しくはこれと同じ意味合いの「こども写真館」なる名称が、写真を取り扱う業界において、本件商標の登録査定時に、写真館の名称を表す語の一つとして普通に使用されていた事実を窺い知ることができる。
さらに、被請求人の提出した乙第2号証の「朝日新聞」(1995年10月14日発行)には、「子供専門写真館」の語が、本件商標の登録査定前より「子供の写真撮影、その写真の現像等のサービスを提供する店」の意味合いを表す語として、日本全国で広く使用されている旨が記載されている。
そして、「子供専門写真館」の語も、需要者間に「こども写真館」(子供写真館)と同様なサービスを提供する写真館を想起し認識させるものである。
(3)上記請求人の提出に係る甲第3号証ないし同第15号証及び被請求人の提出に係る乙第1号証及び乙第2号証を総合勘案すれば、「こども写真館」の文字よりなる本件商標は、本件商標の登録査定時に、写真を取り扱う業界において、子供の写真撮影のみならず、通常写真館が付随する業務として行なっている「写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,受託による写真を利用したテレホンカード・ポストカード・カレンダー・名刺・絵皿・パネルの作成」等、写真に関するサービスを提供する店を表す語として普通に使用されていたものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、これをその指定役務中「写真の引き伸ばし,写真の焼付け,写真用フィルムの現像,受託による写真を利用したテレホンカード・ポストカード・カレンダー・名刺・絵皿・パネルの作成」について使用する場合、その役務の質、提供場所を表示するにすぎず、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とすべきものである。
しかしながら、本件商標は、これを上記指定役務以外の役務について使用しても、その役務の質について誤認を生じさせるおそれはないから、その余の指定役務について、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-06-05 
結審通知日 2001-06-15 
審決日 2001-06-27 
出願番号 商願平7-16985 
審決分類 T 1 11・ 13- ZC (040)
T 1 11・ 16- ZC (040)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 大島 護 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 上村 勉
江崎 静雄
登録日 1997-12-19 
登録番号 商標登録第4094377号(T4094377) 
商標の称呼 コドモシャシンカン 
代理人 森 厚夫 
代理人 西川 惠清 

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