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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z2426
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z2426
管理番号 1045361 
審判番号 不服2000-298 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-12 
確定日 2001-06-28 
事件の表示 平成10年商標登録願第 49985号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第24類「布製掛止補助具、布製掛架補助具、布製寝装品カバー掛止補助具、布製屋内装置品掛止補助具、布製屋内装置品掛架補助具」、第26類「衣服用ボタン止め具、衣服用ベルト止め具」を指定商品として、平成10年6月12日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、ひも状体の中央を環状にし、その両端を波状に詰めた立体形状よりなるから、これをその指定商品中、例えば、衣服用ボタン止め具について使用しても、この種業界の取引者をして通常採用し得る立体的形状のみからなるものと認識するに止まり、自他商品を区別する標識としての識別力は具有しないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、甲第4号証ないし同第7号証によれば、文字商標も使用されており、本願商標のみが指定商品に使用されているとは認めがたく、その著名性についても認められない。」旨認定し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている物品の形状等について、その理由をもって、当該形状が自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできないばかりか、意匠権等に重ねて又はその権利の消滅後に商標登録することにより保護することは知的財産権制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることになる。
(3)これを本願についてみれば、本願商標の立体的形状は、その指定商品中の「衣服用ボタン止め具」との関係においては、ひも状の中央の環状部分がボタンを掛ける部分、その両端の波状に詰めた部分がこれを布等に縫いつける部分とみられるものであって、当該指定商品の機能又は美感を発揮するために採用し得る形状を表したものとみるべきであるから、これを前記指定商品「衣服用ボタン止め具」に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は、「本願商標の形状は、指定商品等を表示したものとは認識し得ないものであり、外観上の美観、魅力的な形状という嗜好上の意味合いが薄く、流行と関係のない長年の恒常的需要があるものであるから、商標法第3条第1項第3号には該当しない。」旨主張している。
しかしながら、本願商標は、前記認定のとおり、衣服用ボタン止め具の機能又は美感と関係のない特異な形状とはいえないものであるから、この点に関する請求人の主張は採用することはできない。
また、請求人は、「本願商標は、昭和50年代に意匠登録がなされたものであり、使用開始当初より、出願人が長年にわたり広告、他業界への働きかけなどの企業努力を重ねた結果、指定商品であるとの認識が需要者間に確立し、出願人の業に係るものであることが当該取引業界において周知事実化している。」旨主張し、原審において甲第2号証ないし同第7号証(枝番を含む。)を提出している。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるためには、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、出願人がその商標が使用により識別力を有するに至ったものであることを書面等により立証しなければならないものと解される。
しかしながら、請求人提出の各号証によれば、請求人に係る衣服用ボタン止め具が昭和55年に意匠登録されたこと、釦手芸裁縫新聞の発行日である平成11年時点に広告・販売されていることは窺われるとしても、同衣服用ボタン止め具は、「DARIN」、「ダリンルーパー」の商標の下で販売されていることが認められ、さらに、それら各号証中には、例えば、商標の使用開始時期、生産・販売数量又は営業規模及び広告宣伝の回数等のほか、本願商標に係る形状がそれのみで自他商品識別機能を果たしていると認められる証拠もなく、提出された甲各号証をもってしては、本願商標が使用により識別力を有するに至ったものであると認めることはできない。
また、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った登録意匠の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、意匠登録による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることはできないばかりでなく、却って、意匠権消滅後は何人も実施が可能とされているものであるから、この点における請求人の主張も採用することはできない。
したがって、本願商標が使用により識別力を有するに至っているものと認定することはできないものというべきである。
なお、請求人は、「原審における平成11年4月19日付の拒絶理由は、審査官が本願商標を指定商品の形状表示と認識し得なかったことを明らかにするものである。」旨主張しているが、当該拒絶理由は、指定商品の内容及び範囲が不明確である旨を通知したものであって、商標自体の内容等に関するものではないから、本願商標の登録性の可否に影響するものではない。

4 結論
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標




審理終結日 2001-04-11 
結審通知日 2001-04-13 
審決日 2001-05-15 
出願番号 商願平10-49985 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z2426)
T 1 8・ 17- Z (Z2426)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正雄 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 宮川 久成
小林由美子
代理人 中島 純一 

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