• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z03
管理番号 1045351 
審判番号 不服2000-12787 
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-11 
確定日 2001-07-17 
事件の表示 平成10年商標登録願第 98879号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第3類「せっけん類、香料類、化粧品、つけづめ、つけまつ毛」を指定商品として、平成10年11月16日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係において、通常の販売に供する際に用いられる容器の形状そのものの範囲をでないと認識されるにすぎず、自他商品の識別力を有しないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、惑星を思わせる数個の小さな丸形の模様を施した円盤状の円形の中央に立体円形を配し、全体として土星を思わせる形状よりなるところ、中央部に配された立体円形部分が商品を収納するための容器であると容易に理解させるものであって、本願の指定商品との関係においては、例えば、化粧品や芳香剤を収納する容器の形状としての一形態を表したと認められるものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の収納容器と認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は、「本願商標は3次元土星形状よりなるところ、これは極めてユニークな形状であり、日本及び世界において化粧品等の容器として普通に用いられている事例はなく、また、需要者、取引業者、一般使用者がこれを化粧品等に普通に用いられる容器形状であると考えることは決してない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号で規定する商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示するものではない。また、特許庁編集の商標審査便覧41.09には、識別力を有するものとは認められない立体商標の具体例として2例の香水類の容器が例示されているが、これらの事例は、その全体形状からして商品の容器であることが認識される程度のものであるのに対し、本願商標は、化粧品等の商品を入れる容器の形状を表してなるものと認識できるものではない。」旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品中の化粧品、芳香剤等の商品においては、商品の形状をその商品との機能、効果等から特定の形状にしなければならない必要性が薄く、商品等の外観上の特徴が需要者の購買心理、選択意欲、消費行動等に重要な影響を与えると考えられ、その商品に市場における流行や需要者の用途、嗜好等に合わせた各種の特徴的な変更、装飾等が施される実情が認められる。
その場合、立体的形状に施されたその種の変更、装飾等は、外観上同種の商品等の形状と比較し特徴的なものと認められるとしても、それらは専ら需要者が商品を選択するに際して、外観上の美感、若しくは魅力的な形状という嗜好上の意味合いを与えているにすぎず、それは未だその商品等の形状であると認識するに止まるものである。
したがって、そのような変更、装飾等は自他商品の出所を表示する識別標識として機能しているものとは認められないものであるから、その立体商標の形状の全体を観察しても識別力を有するものとは認められない。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、その形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
また、請求人は、前示のとおり「本願商標の形状は、極めてユニークな形状であるから、日本及び世界において化粧品等の容器として普通に用いられている事例はない。」旨主張するが、商標法第3条第1項第3号に規定する商品の品質・形状(包装の形状を含む。)等を表示する標章とは、商品の品質・形状(包装の形状を含む。)等を表示する標章として認識されるものであれば足り、その標章が現実に使用されていることは必ずしも要求されないものと解すべきであるから、請求人の該主張も採用することができない(東京高裁昭和52年(行ケ)第82号判決参照)。
さらに、請求人は「本願商標とほぼ同様な立体形状の商標出願が欧州共同体商標庁及び米国において登録になっている。」旨主張するが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張は採用の限りでない。

4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示してなるにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標

審理終結日 2001-02-01 
結審通知日 2001-02-09 
審決日 2001-02-27 
出願番号 商願平10-98879 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 小林 由美子
宮川 久成
代理人 室田 力雄 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ