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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z32 |
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管理番号 | 1043660 |
審判番号 | 審判1999-35275 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-06-07 |
確定日 | 2001-07-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4227376号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4227376号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4227376号商標(以下、「本件商標」という。)は、「こんぴら地ビール」の文字を横書きしてなり、平成9年4月28日に登録出願、第32類「ビール」を指定商品として、平成11年1月8日に設定登録されているものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証(枝番を含む)を提出している。 (1)本件商標は、平仮名及び漢字・片仮名で「こんぴら地ビール」と横書構成されて成るものである。この構成から、本件商標の自他商品の識別力は、「こんぴら」にあることは明らかである。何故なら、「こんぴら」の文字を除いた「地ビール」の文字は、単に「商品名でありかつ生産・販売地」を表示しているものに過ぎないからである。それは、一般的に、「地ビール」とは、「地元のビール・地方のビール」を意味し、特定の地方あるいは、特定の地元においてのみ生産・販売されるビールを意味する用語として普通に使用されている用語だからである。とすれば、これらの意味から「地ビール」とは単に、「特定の地方あるいは地元において製造・販売されるビール」を意味し、何ら商品について識別力を有する文字ではないと言うことができる。これゆえ、本件商標の識別力は「こんぴら」にしかないものである。 (2)「こんぴら」とは、今日、宗教法人金刀比羅宮を指し、かつその「金刀比羅宮」の略称として、著名なものである(甲第1号証乃至甲第18号証)。 本来「こんぴら」は「クンビーラ」で、サンスクリット語で「鰐」を意味する語で、漢字で「金毘羅」と表示され、神格化されたものであると言われている(甲第1号証、甲第4号証、甲第9号証など)。この神格化された「クンビーラ」が仏教の守護神の1つとなり、日本へも古くに流入し、日本の古来の神と習合し、日本の神を表示するものともされた。即ち、金刀比羅宮の祭神である「大物主命」は、「コンピラ神」であるとされたと言われている(甲第9号証)。「コンピラ神」は、水の神であり、このため「大物主命」、即ち「コンピラ神」を祭神とする金刀比羅宮は「海上安全の神」とされるようになったものである(甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証、など)。因に、「大物主命」は、「大国主命」とも言う。そして「大国主命」は、別名「大黒様」としても人々に親しまれている神でもある。 この「金毘羅神」即ち「大物主命」を祭神とする「金毘羅宮」はもとは、松尾寺という寺の境内に松尾寺の伽藍守護神として祀られていたのが、その後、「金毘羅信仰」が隆盛を極めるに従って、寺は潰れ、「金毘羅宮」のみが現在地に残ったと言われている(甲第4号証)。この「金毘羅信仰」が、特に盛んに行われ、今日までも続いているそもそもの原因は、瀬戸内海の塩飽島の人々に寄る他、江戸時代に入って、唯一庶民に許された物見遊山は、伊勢参りと、この金毘羅参りであり、特に、江戸時代の著名人、「十返舎一九」や「与謝蕪村」などの小説や俳句などにより、さらに「こんぴら参り」に火が付けられたと言われる(甲第5号証、甲第9号証、甲第14号証など)。 このため、日本の各所に「こんぴら(金毘羅)講」ができ、多くの人々が、「金毘羅参り」をしたのである。今も残っているが、そのため「金毘羅宮」へ向う多くの道が作られていた。例えば、「丸亀道」「多度津道」「宇多津道」などがあり、これらの街道をも含めて、「こんぴら道」と言われ、全ての道は「こんぴらに集まる」とまで言われ、それらの道にも「こんぴら」に関する様々な建造物があり、人々のエピソードがあったと言われている(甲第6号証、甲第9号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第16号証、甲第17号証など)。 これ程に日本国内の人々は、「金毘羅参り」に集中して来たものである。この伝統は今日においても、なお続いているものである。「金毘羅参り」が盛んになるに従い、「金毘羅宮」の地には、様々な催し物が生じたと言われており、その1つが「こんぴら歌舞伎」と言われるものである(甲第9号証、甲第10号証)。この「こんぴら歌舞伎」は、今日においても隆盛で、歌舞伎界の一流の役者が出演して、毎年4月に琴平町の「金丸座」で行われている。 また、「金毘羅参り」に来る人々を当てこんで、土産品などが作られている。その土産品の中には「人形」「鈴」「犬」などがあり、これらの品々にも、全て「こんぴら」「金毘羅」などの「金毘羅宮」と深いかかわりのある名前を使用しているものである(甲第7号証、甲第13号証)。今日においても「こんぴら犬」・「こんぴら樽」などは、金刀比羅宮のお守りとして人々に授与されているし、また「こんぴら樽」は、金刀比羅宮への奉納物として人々に使用されているものである。更に「こんぴら」は歌にまでなっている(甲第12号証)。 このように旧くから「金毘羅」即ち「大物主命」を祀る「金毘羅宮」は、「こんぴら(金毘羅)」として、人々に知られ、親しまれて来たものである。しかし、その後、日本の歴史上からも明らかな如く、神仏混交は明治時代になり、許されなくなったものである(甲第3号証)。そのため「金毘羅宮」も、神社名を変更し、明治元年七月に「金刀比羅宮」と改称した。しかし、明治4年に政府の書類に誤って、別表示で記載されたが、明治二十二年に、現在も使用している「金刀比羅宮」に戻ったとされている(甲第9号証)。その後、第二次世界大戦などがあり、神道指令などがあっても、この名称「金刀比羅宮」は変ることなく、今日まで続き、今日宗教法人としての名称として、使用し続けているものである。 旧くからの歴史的伝統と、多くの参拝者の信仰心、そして地元やその他の観光アピールなどによって、今日でも「金刀比羅宮」は、「こんぴら」「こんぴらさん」などと略称で親しまれ続けているものである。今日、「金刀比羅宮」を「こんぴら」あるいは敬称を付して「こんぴらさん」と、その略称で呼んでいるのが通例である(甲第1号証、甲第1号証(1)、甲第2号証、甲第8号証、甲第10号証、甲第12号証、甲第17号証(1)〜(5)、甲第18号証(1)〜(6))。 これらの中には、「こんぴらさん、正式には金刀比羅宮。」、「金刀比羅宮と呼ぶよりも、気易く『こんぴらさん』で結構」とか「こんぴらさん(金刀比羅宮)の」とか表示して、「こんぴら」が「金刀比羅宮」であることを表示しているし、また「金毘羅さん(香川県琴平町金刀比羅宮)に・・」と表示し、明らかに「こんぴら」が「金刀比羅宮」の略称であることを表示しているものである。更に「こんぴら」が「金刀比羅宮」の略称であることが当然であることを前提に、例えば、「『さぬきのこんぴらさん』と昔から親しまれている金刀比羅宮は…」とか、「”さぬきのこんぴらさん”として有名な金刀比羅宮は…」「『こんぴらさん』の名で親しまれる金刀比羅宮は…」「はるか昔から『こんぴらさん』と親しまれる金刀比羅宮を…」とか、また「金刀比羅宮よりも、こんぴらさんの方がよく似合う。」「こんぴらさんとして知られている金刀比羅宮の…」とか表現され、「こんぴら」が「金刀比羅宮」を表示する略称であることを当然の事実として認識しているものである。これらの他にも甲各号証で使用している「こんぴら」あるいは「こんぴらさん」の表示は、ほとんど「金刀比羅宮」を指すもので、かつ「金刀比羅宮」の略称で、著名であることを認識して使用しているものである。そうでなければ、甲各号証の本の題名や、カタログ、パンフレットの表題、あるいは記事内容に、何らの説明もなく、いきなり「こんぴら」と「こんぴらさん」あるいは「金毘羅」「金毘羅さん」と表示されたり、記されたりしても、読者や、パンフレット、カタログ等を見る人には、何のことやら理解できないことであるのは当然である。 しかるに、これら甲各号証は、何らの説明もすることなく、いきなり「こんぴら」とか、「こんぴらさん(金毘羅さん)」の用語を使用しているのは、「こんぴら」「こんぴらさん」などは、金刀比羅宮の略称として、昔から著名、有名であること、そして多くの人々もそれを当然知っているということを前提に表示し、記載しているものであることは明らかである。このように、甲各号証からしても、「こんぴら」は、「金刀比羅宮」の著名な略称であることは明らかである。 (3)そこで、「こんぴら」が、「金刀比羅宮」の著名な略称であることから、本件商標はその構成に「こんぴら」を含み、かつ唯一識別力を有する語が、この「こんぴら」であるにも拘わらず、「他人」である「金刀比羅宮」の許可、あるいは承諾を何ら得ていないものである。 従って、これは明らかに商標法第4条第1項第8号の規定に反して登録されたものである。 また「こんぴら」が「金刀比羅宮」の著名な略称であることから、「こんぴら」の略称を使用することにより、あたかも金刀比羅宮が本件商標の指定商品の提供に何らかの関係を有するものであるかの誤解・誤認を生じさせる虞れがあるものである。「こんぴら」の使用を認めた以外の者が「こんぴら」をその指定商品に使用するならば、明らかに、その商品出所に誤認混同を生じさせる虞れがあるものである。 従って、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定にも反して登録されたものである。 第4 被請求人は何ら答弁していない。 第5 当審の判断 本件商標は、上記した通り「こんぴら地ビール」の文字よりなるものである。 ところで、四国の香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」(請求人)が、古くから人々に「こんぴらさん」「こんぴら」等と親しみを込め称されてきたことは、請求人の提出した甲各号証をみるまでもなく、全国的にもよく知られているところである。 そうとすれば、本件商標は、その構成中の一部に、上記「宗教法人金刀比羅宮」の著名な略称と認められる「こんぴら」の文字を有するものである。 また、本件の商標権者は、本件商標の登録を受けることについて、請求人の承諾を得ていない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-05-14 |
結審通知日 | 2001-05-25 |
審決日 | 2001-06-18 |
出願番号 | 商願平9-111897 |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Z
(Z32)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩本 和雄 |
特許庁審判長 |
寺島 義則 |
特許庁審判官 |
上村 勉 江崎 静雄 |
登録日 | 1999-01-08 |
登録番号 | 商標登録第4227376号(T4227376) |
商標の称呼 | コンピラジビール、コンピラ |
代理人 | 阿部 佳基 |