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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200589039 審決 商標
無効200589076 審決 商標
無効200489106 審決 商標
異議200690007 審決 商標
無効200589025 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1043659 
審判番号 審判1999-35651 
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-11-09 
確定日 2001-08-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4051378号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4051378号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4051378号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲第一商標のとおりの構成よりなり、平成8年3月27日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年8月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録第1387409号商標は、別掲第二商標のとおりの構成よりなり、昭和50年9月18日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同54年8月30日に設定登録、同じく登録第1742581号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和57年6月19日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同60年1月23日に設定登録、同じく登録第2204518号商標は、別掲第三商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録、同じく登録第3127123号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第25類「帽子,その他の被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同8年3月29日に設定登録、同じく登録第4132921号商標は、「アルマーニ」の文字を横書きしてなり、平成8年7月30日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同10年4月10日に設定登録、同じく登録第1676476号商標は、「GIORGIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和56年7月28日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同59年4月20日に設定登録、同じく登録第1920034号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月1日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同61年12月24日に設定登録、同じく登録第1941608号商標は、別掲第四商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録、同じく登録第3123225号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同8年2月29日に設定登録、同じく登録第1640446号商標は、「Giorgio Armani」と「ジョルジョアルマーニ」の文字を上下二段に横書きしてなり、昭和52年3月15日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同58年12月26日に設定登録、同じく登録第1941539号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和59年8月1日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同62年3月27日に設定登録、同じく登録第2076955号商標は、別掲第五商標のとおりの構成よりなり、昭和59年12月5日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同63年9月30日に設定登録、同じく登録第2198023号商標は、別掲第六商標のとおりの構成よりなり、昭和62年2月23日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成1年12月25日に設定登録、同じく登録第2137697号商標は、「EMPORIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成1年5月30日に設定登録、同じく登録第2211610号商標は、「GIORGIO ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和61年12月3日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成2年2月23日に設定登録、同じく登録第2653840号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、昭和63年2月10日に登録出願、第23類「時計、眼鏡、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成6年4月28日に設定登録、同じく登録第4076267号商標は、「ARMANI」の文字を横書きしてなり、平成5年3月4日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器,貴金属製の花瓶および水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消しおよびろうそく立て,貴金属のがま口および財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉およびその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として、同9年10月31日に設定登録されたものである。

第3 請求の趣旨及び請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第160号証(枝番を含む。)を提出した。
1.請求の理由
(1)請求人は、世界的に著名なイタリアのデザイナーである「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の設立した会社であり、そのデザインに係る商品の取り扱い及び商標権等の知的財産権の管理を行っており、前記第2で示す各引用商標の実質的な権利者である。
イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、1975年にイタリアで紳士・婦人物既製品を扱うファッション・デザイン会社「ジョルジオ アルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の商標を付した紳士・婦人用既成服を製作、販売すると共に、1981年にはブランド「EMPORIO ARMANI」(エンポリオ アルマーニ)を発表した。
これらの他に、彼の手がけた主なブランドとしては、カジュアルウェアの「ARMANI JEANS」、婦人服の「MANI」、その他「ARMANI」、「A/X ARMANI EXCHANGE」、「GIO」等がある。
彼のデザインする上記各ブランドに係る商品は、紳士・婦人服だけではなく、ネクタイ・靴下・帽子・手袋・傘・眼鏡等の他、これらの商品と同一の流通経路、販売店で取り扱われるハンドバック、革小物等、さらには香水をはじめとした化粧品をも含み、非常に広範にわたっている。
そして、これらの各ブランドに係る商品は、そのデザイン及び品質において大変に優れていたことから、イタリアの国内のみならず、日本を含む世界各国に商品が輸出されるようになった。中でも、男性用の衣服については、世界的に注目を浴びるようになり、世界のファッションショーの桧舞台ともいうべきミラノコレクション、パリコレクシヨン、ニューヨークコレクション、東京コレクションで次々に発表し、1979年には「ニーマン・マーカス賞」、1980年、1981年、1984年、1986年、1987年の5度にわたり「カティ・サーク国際トップ・ファッション・メンズ・デザイナー賞」、1981年には最高のファッション・デザイナーを選ぶ「G/Q」雑誌より「メンズ・スタイル賞」、1983年にはアメリカ・ファッショノ・デザイナー協会より「国際デザイナー賞」、1988年にはアメリカ・ファッション・デザイナー協会より「メンズウェア・ライフタイム・アチーブメント賞」、マドリッドにて国際ベスト・デザイナーとして「クリスタル・バレンシアガ賞」、1989年には日本で繊研新聞より「繊研賞」等、数多くの賞を受賞した。
こうして「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)は、その名を世界に知られるに至り、今や「イタリアモード界の征服者」又は「キングオブブレザー」のように呼ばれ、ファション・デザイナーの世界的大御所となったものである。
また、彼のデザインする衣服が世界的に知られるようになったことから、度々映画の衣装にも取り上げられるようになり、映画「ブーメラン」で俳優エディ マーフィーが彼のデザインした服を着、さらに映画「逃亡者」で俳優ミッキー・ロークが彼のデザインした服を着、またこれらの映画がいずれも世界的に大ヒットしたことなどから、デザイナーとしての名声は益々高まった。
こうしてデザイナーとしての彼の名声が上がり、それに付随して彼のデザインする商品に付された商標に業務上の高い信用が化体するにつれ、そうした信用にフリーライドする模造品が世界各国で出回るようになってきた。請求人は、「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)のデザインする商品に化体した高い信用を保護すべく、上述の各ブランドに係る商品を指定商品として、世界各国で商標の登録を取得しているものである。
また、紳士・婦人服、ネクタイ、靴下、帽子、手袋、傘、眼鏡、ハンドバック、革小物、化粧品等の各ブランドに係る商品に実際使用している商標は、「GIORGIO ARMANI」のみならず、単に「ARMANI」の文字のみのもの、或いは「EMPORIO ARMANI」、「ARMANI JEANS」、「GIORGIO ARMANI JUNIOR」等の「ARMANI」と他の文字との結合したもの等、様々な構成、態様のものが存在し、これらの商標が付された商品は、いずれも彼のデザインした商品として高い信用を得ているものである。
(2)彼のデザインする上記各ブランドは、日本においても上記の取り扱いに係る商品を指定商品として商標登録を取得し、「ジョルジオ アルマーニ ジャパン 株式会社」を設立して、東京、大阪、名古屋、神戸、札幌等の日本各地に直営店を設けて販売の強化を図ってきたところであり、その売り上げも平成7年で約150億円にも達するほどである。
特に日本においては、紳士服をはじめとするこれらの各ブランドに係る商品は、「アルマーニのスーツ」、「アルマーニのジャケット」、「アルマーニの服」の様に「アルマーニの○○○」と呼ばれ、いずれも洗練された高品質の商品であり、請求人の長年にわたる継続的な努力によって、世界の超一流品としての極めて高い信用が形成されるに至ったものである。
こうした請求人の努力の結果、日本においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)及びその略称である「ARMANI」(アルマーニ)の名は、専門業者のみならず、一般消費者にも広く知られるに至り、彼本人及びそのデザインがファッション誌や雑誌、書籍にも多く取り上げられた。さらにデパート主催の写真展も開催されたほか、新聞、テレビ上でも数多く取り上げられ、その結果、フルネームのみならずその略称である「ARMANI」(アルマーニ)と共に、いまや老若男女を問わず誰でもが知っている程に著名になっているということができる。
以上に述べたイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称「ARMAN1」及び各引用商標の著名性については、各商標に対する登録異議の申立(甲第61号証ないし同第69号証及び同第99号証)において認められていることからも明らかである。
なお、「GIORGIO ARMANI」のブランドが世界的に著名であり、その模倣が多くあることから、その保護活動を世界的に行なっていることは、フランス国公益社団法人ユニオン デ ファブリカンも認めているところである。
従って、本件商標の出願当時1996(平成8)年にはもちろん、その査定時である1997(平成9)年においても、デザイナーとしての「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)及びその略称であり登録商標でもある「ARMANI」(アルマーニ)、そして彼のデザインする各ブランドに係る商品に付された各引用商標は、いずれも需要者・取引者の間に広く知られ、著名に至っているものである。
(3)本件商標は、「IARMANI」の英文字を装飾文字で表したと認識されるものであって、その構成される7文字の英文字のうち、語頭部を除いた残りの6文字の英文字が世界的に著名な請求人の商標「ARMANI」と全く同一の文字から構成されており、僅かに残りの構成文字である語頭の「I」においてその差異があるにすぎない。
してみれば、全体の文字が少ないとはいえないこれら両商標においては、この語頭における「I」の有無は、「I」の文字が数字の「1」や縦線「|」の如く見誤るおそれのある英文字であることも相俟って、この部分については看者が注意を払い難く、見過ごし易いものとなり、全体として世界的に著名な請求人の商標「ARMANI」と非常に紛らわしいものとなる。
従って、需要者が時と所を異にして両商標に接する場合には、外観において相紛れるおそれがあり、両商標は外観において類似する商標である。
特に本件商標登録出願前及びその査定時において、デザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称及び各引用商標が、「被服」などを指定商品とする本件商標の指定商品の取引界において、極めて良く知られ、「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」等の「ARMANI」の文字を含む商標が様々な商品に使用されていたという実情からすれば、取引者・需要者が本件指定商品である「被服」等に付された本件商標に接した場合、直ちに著名な「ARMANI」の文字が強く印象され、本件商標を著名な「ARMANI」の文字を装飾的にしたにすぎないものとして見間違って認識する可能性が高く、その場合にその商品について出所混同を生ずるおそれがある。
また、本件商標は、その構成から「アイアルマーニ」及び「イアルマーニ」の称呼が生ずるが、かかる称呼を聴取した取引者・需要者は、そこから著名な「ARMANI」(アルマーニ)を容易に想起すると考えられるから、その場合にデザイナー「GIORGIO ARMANI」のデザインする商品と何らかの関係がある商品であるとして、聞き間違えて認識する可能性が高く、その商品について出所混同を生ずるおそれがある。
さらに、本件商標はその全体として特定の観念を生ずるものではない。
従って、本件商標に接した取引者・需要者は、著名商標「ARMANI」(アルマーニ)と見間違え、また聞き間違えるおそれが高いから、本件商標はその外観及び称呼において著名商標「ARMANI」(アルマーニ)と類似する商標であるというべきである。
(4)本件商標は、上述のように世界的に著名なイタリアのデザイナー「GIORGIO ARMANI」の略称及び申立人及びジョルジオ アルマーニの使用する著名な商標「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の略称である「ARMANI」(アルマーニ)と同一の文字をその構成中に含むものである。また、その構成全体としては、何等の意味観念を生ずるものではない。
以上のことから、かかる著名な「ARMANI」の文字を含み、全体としては何ら特定の意味観念を生じない本件商標が、請求人が各引用商標を使用している前記商品と使用態様、使用目的等を全く同じくするその指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、そこから著名商標である「ARMANI」の文字のみを分離又は抽出して認識するものであるから、恰も本件商標が付された商品が請求人若しくはジョルジオアルマーニ又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、特に世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」のデザインする商品又はそのシリーズ商品であるかの如く認識し、アルマーニブランドの1つであるとして、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
また、出所の混同のおそれについては、第25類「被服」等を指定商品として出願(商願平6-83863号)された商標「ICHANELI」に対する登録異議申立事件及び第25類「被服」等を指定商品として登録された商標「ILANCELI」(登録第4101024号)に対する登録異議申立事件からも明らかである。
さらに、「ARMANI」(アルマーニ)の文字を含む各商標が、審査においても、著名な略称「ARMANI」を含むものであるから、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると認められている(甲第43号証ないし同第99号証)。これら「ARMANI」(アルマーニ)の文字を含む極めて多数の商標が、その商品について出所混同を生ずるおそれがあると判断されていることからも、本件商標においても、判断の統一の観点から同様の判断がなされるべきである。
(5)本件商標権者及び本件商標権者と住所が同一の各会社は、「ARMANI」「CHANEL」「DUNHILL」「adidas」「GUCCI」「CELlNE」などの各著名商標の前後に単に「I」を付加させただけのものや、これら著名商標の前に単に「EVE」「ER」「PASC」などの文字を付加させただけのもの、また著名商標「Lee」の後に品番として認識され得る文字である「HR」「XR」又は単に「bi-way」なる文字を付加させただけにすぎない商標、その他著名商標に類似すると思われる商標を多数出願している(甲第100号証ないし同第127号証)。
そして、「ICHANELI」「IADIDASI」「PASCADIDAS」の各商標は、すべて「株式会社メンズハウスサンロード」が出願した後、「イカネリ コーポレーション」、「キングズコート カンパニ」、「パスキャデイダス カンパニ」の各会社へと名義変更がされているものである。さらに、「株式会社メンズハウスサンロード」は、過去に、例えば、著名商標である「adidas」や「NIKE」の前に「PASC」や「BI-WAY」の文字を付加させたにすぎない「BI-WAYADIDAS」「BI-WAYNIKE」「PASC ADIDAS」の各商標、その他著名商標に類似すると思われる商標を多数出願している(甲第128号証ないし同第142号証)。
また、「株式会社セントローラン」は、例えば、著名商標である「LANCEL」の前後に単に「I」を付加させただけのもの、請求人が使用する著名な図形商標に極めて類似した外観を有するもの及び同様に著名商標である「POLO」や「LEE」の後に品番として認識され得る文字である「XX」「XZ」「GG」「ZR」又は単に「CLUB」や「BI-WAY」の文字を付加させたにすぎない商標を出願している(甲第145号証ないし同第150号証)。
上記の各会社の相互関係については、本件商標権者である「イアマーニカンパニ」を含めた同一の住所を有する米国の各会社及び株式会社メンズハウスサンロード及び株式会社セントローランの各会社(以下、これらを称して「セントローラングループ企業」という。)は、相互に密接な関係にある関連会社であることが、甲第101号証ないし同第128号証、同第143号証、同第151号証及び同第152号証により明らかである。
さらに、「セントローラングループ企業」は、いずれも上述のように著名商標の前後に単に「I」や「PASC」や「BI-WAY」の文字を付加させたにすぎないような商標を多数出願しているという共通点があり、その商標の採択・出願傾向は、いずれも「I+著名商標+I」「著名商標+PASC」「PASC+著名商標」「著名商標+BI-WAY」「BI-WAY+著名商標」「著名商標+CLUB」「著名商標+品番として認識され得る文字(XX、XZ、GG等)」のようなパターンからなるという点を共通にしている。
(6)「セントローラングループ企業」は、組織的に著名ブランドに類似した商標出願を行い、「株式会社セントローラン」を通じてそのブランドライセンスを行っているものであることが、「ブランドライセンスについてのパンフレット」及び「ブランドライセンスリスト」(甲第153号証ないし甲第155号証)より明らかである。
当該パンフレットは、「新ブランドのご案内 今、何故ブランドライセンスが注目されるのか」という見出しで始まり、「イカネリ コーポレーション」名義の商標「ICHANELI」について、その広告を出し、「ICHANELI JAPAN」を日本総代理店として日本におけるライセンシーを募集している。
また、「株式会社セントローラン」名義の商標「ILANCELI」についても、その広告を出し、また 「ILANCELI」及び[POLOBI-WAY」のブランドのラィセンス先として「株式会社岐阜武」なる会社に決ったことが報告されている。
さらに、「ブランド使用許諾について」のページにおいて、「株式会社セントローラン」はその使用許諾方法として「使用許可ラベルシールを契約日に購入し、製品一点につき、その使用許可ラベルシールを必ず添付して販売する」という方法をとっていることがわかる。この点に関し、請求人は「株式会社セントローラン」による前述の登録商標「ICHANELI」のタグを入手した(甲第156号証)。かかるタグは一見して著名な「CHANEL」を想起させるような態様となっているものである。
次に、「ブランドライセンスリスト」においては、「セントローラングループ企業」によって出願された著名商標に類似する各種商標をはじめとした計37のブランドが掲載されているが、該リストに掲載され又該パンフレット内で広告されている商標は、出願又は登録されている態様と異なった形で掲載されている。
特に、本件商標においては、一見して明らかなように本件商標とは態様が著しく異なった形で掲載されている。すなわち、登録された態様に比べて、より著名な「ARMANI」を容易に想起させる態様となっているものであり、著名な「ARMANI」を意識した形に商標を変更し、付記的部分(イタリアの服飾デザイナー「GIORGIO ARMANI」をイメージさせる「ITALY」の文字)を加えた不正な使用をしているものである。
これらパンフレットに見られる本件商標の使用態様はすべて、世界的な著名商標「ARMANI」の出所表示機能を希釈化させ、その名声を毀損させる目的をもって使用するものであり、世界的な著名商標について信義則に反する不正の目的で使用するものであるということができる。
したがって、本件商標は、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的)をもって使用するものである。言い換えれば、本件商標は、「世界的に著名な商標と同一又は類似の商標について、出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって使用するもの」であり、「世界的に著名な商標について信義則に反する不正の目的で使用するもの」である。
(7)このような本件商標を含めた多数の不正な使用の事実は、「ARMANI」を含む著名商標の持つ出所表示機能を希釈化させ、請求人及び著名商標主の業務に係る商品との出所混同を生じさせるおそれがあるだけでなく、請求人及び著名商標主の使用する商標に化体した高い名声と信用、顧客吸引力等を毀損させるおそれが十分にあるものであり、このような使用は、まさに「ARMANI」を含む著名商標に化体した高い名声と信用にフリーライドする目的を持って使用するものに他ならない、信義則に反する不正の目的での使用である。
そして、本件商標は、著名な「ARMANI」の文字が抜け出て看者に強く印象され、「ARMANI」の語頭に単に「I」の文字を付加したにすぎないものと認識される商標であるから、その一部に著名な略称及び登録商標「ARMANI」を偶然に含む商標として選定されたとみることはできない。
従って、本件商標の出願人が、著名な略称及び登録商標「ARMANI」の存在を知らずに、その語頭に「I」の文字を付加したにすぎないと認識される本件商標を偶然採択し、出願したものとは到底考えられず、出願当初より、著名な「ARMANI」の持つ名声と信用にフリーライドして使用する目的をもって商標を選定し、出願したものである。これら不正の目的をもって出願したという意図は、上記のパンフレットに見られる本件商標の不正な使用の事実から一見して明らかである。
なお、「セントローラングループ企業」による各商標出願に対しては、その著名商標主より多数の異議申立(甲第101号証ないし同第128号証、同第143号証及び同第150号証)がされ、取消決定がなされている。
(8)以上のとおり、本件商標は、請求人若しくは世界的に著名なデザイナー「GIORG10 ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の取り扱い業務に係る商品を表示するものとして著名な略称及び商標「ARMANI」(アルマーニ)の語頭に、単に「I」の文字を付加したにすぎない類似の商標であって、その実際の使用態様は著名な「ARMANI」を容易に想起させるものであること、著名な「ARMANI」に化体した業務上の信用にフリーライドする目的を持って使用するものであり、著名な略称及び登録商標「ARMANI」の語頭に、単に「I」の文字を付加したにすぎず、またその実際の使用態様からも明らかに「ARMANI」の著名性にフリーライドする社会一般道徳に反する商標といえるものであって、かつ、国際信義にも反する商標であること、その構成中に他人の著名な略称「ARMANI」(アルマーニ)を含むものであり、その他人の承諾を得ているものではないこと、請求人が引用する商標「ARMANI」と、その外観及び称呼において類似する商標であり、また同一又は類似の指定商品を含むものであるから、本件商標がその指定商品に使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあること、及び、世界的に著名なデザイナー「GIORGIO ARMANI」(ジョルジオ アルマーニ)の略称及び請求人が使用する商標として著名な各引用商標の略称及び登録商標「ARMANI」(アルマーニ)と全く同一の文字をその構成中に有するものであるから、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は、恰も請求人若しくはジョルジオ アルマーニ又はその関連会社の取り扱い業務に係る商品、またはそのシリーズ商品であるかの如く認識し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあることから、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第8号、同第11号及び同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号によって無効にすべきものである。
2.弁駁の理由
被請求人の答弁書における主張は一貫して、本件商標は極めてデザイン化された欧文字よりなるものであって、各文字が同書、同大、同間隔に一連に表示されているものであるから、「ARMANI」を想起させることはないというものであって、請求人が主張する不正の目的及び信義則違反、両商標の類似性、請求人の著名性、出所混同のおそれについては一切反論しておらず、ただ一体不可分の商標であると主張するのみで請求人の著名性等を一切考慮していない。
従って、本件商標が極めてデザイン化された欧文字よりなるものであるというだけでは、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第8号、同第11号及び同第15号に該当しないとはいえない。
特に、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについては、平成11年(行ケ)第217号判決及び平成11年審判第5934号審決により明らかである。
なお、被請求人は答弁書において、いわゆる「ノービゲン判決」と同様に判断されるべき旨の主張をするが、本件とは、商標の構成も商品の関連性も異なり、事案を異にするというべきである。

第4 答弁の趣旨及び被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第2号証を提出した。
請求人は、本件商標は、「ARMANI」の語頭に、単に「I」の文字を付加したにすぎないと主張しているが、本件商標は極めてデザイン化された欧文字よりなるものであって、各文字が同書、同大、同間隔に一連に表示されている。文字の種類や大きさが異なったり、途中に間隔を有する等の事情があれば、当然ある部分を抽出することも考えられるが、本件商標の構成から特定の文字部分のみを抽出するのは、いかにも機械的で不自然であると考える。
このように、本件商標は一体不可分の商標であり、「ARMANI」を想起させるようなものではない。
被請求人の上記主張については、本件商標に関する平成9年異議第90774号の異議の決定でも裏付けられる。
即ち、「本件商標は、極めてデザイン化された欧文字よりなるものであるが、各文字は同書同大同間隔に一連に書されており、構成文字数もさほど多くないものであるから、これより特定の文字部分のみを分離して称呼し、観念しなければならない特段の理由は見当たらない。したがって、本件商標は、かかる構成文字よりなる不可分一体のものと判断するのが相当である。」と判断されている。
しかも、本件商標は、極めてデザイン化され、簡易迅速を旨とする取引の実際においては、需要者・取引者は単なるデザインとして捉え、その各部分がどのような文字であるかを慎重に確認するようなこともない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第8号、同第11号及び同第15号の何れにも該当するものではない。
また、上記の主張は、平成6年(行ケ)第157号審決取消請求事件の判決(東京高等裁判所)においても支持されているものである。
即ち、上記判決では「ARMANI」と同じように、一部が著名であったとしても、「構成各文字が外観上まとまりよく一体的に表現されていて、しかも全体をもって称呼してもよどみなく一連に称呼し得ることや、結合商標の一部の文字部分の間に特に間隔があるわけでもなく、書体の大きさや表示態様を異にするものでもないような商標は、構成全体をもって一体不可分の造語よりなるものと認識し把握されるものとみるのが相当である。」と判断している。
その結果、問題となった結合商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものではないと判断しており、仮に、本件商標が通常の書体であったとしても、まさに本件商標と「ARMANI」の関係と同じような関係と考えられるものである。なお、上記事件は、上告されたが、その後判断が代わることなく棄却されていることを付け加えておく。
以上述べたように、本件商標は、一体不可分の商標であり、極めてデザイン化されていることも考えれば、商標法第4条第1項第19号、同第7号、同第8号、同第11号及び同第15号の何れにも該当するものではない。
なお、被請求人は、特許庁の審査、異議申立てについての決定を尊重して、取引を行なう姿勢であるが、審査、異議申立てについての決定で重ねて問題ないとされた商標が、本件審判によって覆るようなことがあれば、営業上の損失も発生することになってしまう。何卒、一貫した審理をされるよう希求する次第である。

第5 当審の判断
1.「ARMANI(アルマーニ)」標章の著名性について
本件審判請求の理由及び甲第19号証ないし同第42号証を総合してみるに、以下の事実が認められる。
(1)ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は、1935年生まれのイタリアの服飾等のデザイナーであって、1979年に「ニーマン・マーカス賞」を受賞、以後、数々の賞を受賞している。そして、1975年には紳士・婦人物既製服を扱う「ジョルジオ アルマーニ社」を設立し、以来、同社は、ジョルジオ・アルマーニのデザインに係る紳士・婦人服等の商品を製造・販売している。
そして、ジョルジオ・アルマーニのデザインに係る商品には、「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」「ARMANI JEANS」「ARMANI」等の文字よりなる標章(以下、これらをまとめて「アルマーニ標章」という。)が使用されている。
また、1991年から1992年頃に、世界的にヒットした映画「ブーメラン」や「逃亡者」において、俳優のエディ・マーフィーやミッキー・ロークがジョルジオ・アルマーニデザインの衣服を着用した。
(2)我が国においては、ジョルジオ・アルマーニのデザインに係る紳士・婦人服等の商品を輸入・販売するために「ジョルジオ アルマーニ ジャパン株式会社」が設立され、その直営店、販売店は日本各地に及び、1995年(平成7年)の予想小売り総売上高は150億円とされている。
(3)甲第20号証ないし同第42号証をみるに、例えば、雑誌「MEN’SCLUB8月号」(平成2年8月、婦人画報社発行)における「GIORGIO ARMANI」「EMPORIO ARMANI」の紹介記事の見出しに「着心地の良さとシンプルなエレガンスを追求したアルマーニのプロフェッショナルの服。」「イタリアン感覚を体験できるアルマーニの日本ショップ。」との記載、また、雑誌「MORE for MEN」(平成2年11月、集英社発行「モア」増刊号、)においては、その表紙に「アルマーニVSラルフローレンのスーツ」との記載、及び「GIORGIO ARMANI」の紹介記事の見出しでも「モダンに洗練された伝統が息づくアルマーニの完璧なスーツ。」との記載、さらに、「デザイナーズファイル」をタイトルとする「ぴあ」(平成5年、ぴあ株式会社発行)の表紙には、「ヘルムト・ラング」「ヴェルサーチ」「ミッソーニ」等と共に「アルマーニ」(記事内容は「Giorgio Armani」に関するもの)との記載があるように、アルマーニ標章が「ARMANI(アルマーニ)」の商標と呼ばれ、そのデザイナーである「Giorgio Armani」も「ARMANI(アルマーニ)」と呼ばれ、その名で知られていることを前提とした記事が多数掲載されている。
以上の事実によれば、遅くとも本件商標の登録出願時の平成8年には、アルマーニ標章は「ARMANI(アルマーニ)」の商標として、また、そのデザイナーも「ARMANI(アルマーニ)」と呼ばれて、紳士服、婦人服等について、ジョルジオ・アルマーニのデザインに係る商品に付される商標ないし同人の略称として、取引者・需要者の間に広く認識されていたものということができる。
そして、該「ARMANI(アルマーニ)」の著名性は、現在も継続していると認められるものである。
2.出所の混同について
本件商標は、別掲のとおりであって、スクリプト風の書体にデザイン化されてはいるが、全体の綴り字からみて「IARMANI」の欧文字よりなると容易に看取されるものである。また、本件商標を構成する「IARMANI」の文字は、何ら特定の意味合いを把握できない造語よりなるものと認められる。
そして、前記1.のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、アルマーニ標章が「ARMANI(アルマーニ)」の商標と、また、ジョルジオ・アルマーニが「ARMANI(アルマーニ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないし同人の略称として著名であったこと、本件商標は全体として特定の意味を把握できず、デザイン化された欧文字7字で構成されてはいるが冒頭の「I」の文字を除けば、著名な「ARMANI」標章と同一綴り字であること、及びアルマーニ標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品は、共にファッション関連の商品であって、同一又は高い関連性がある商品であること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「I」の文字を「ARMANI」の語頭に飾りが付されているにすぎないものである等と誤認して、その結果、著名な「ARMANI(アルマーニ)」標章を連想、想起し、それがジョルジオ・アルマーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものと判断するのが相当である。
なお、被請求人が挙げる判決例(平成6年(行ケ)第157号審決取消請求事件)は、本件とは、商標の構成も商品の関連性も異なり事案を異にするものであるから、これに基づく主張は採用の限りでない。
したがって、本件商標は、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 第一商標(本件商標)


第二商標(引用登録第1387409号商標)


第三商標(引用登録第2204518号商標)


第四商標(引用登録第1941608号商標)


第五商標(引用登録第2076955号商標)


第六商標(引用登録第2198023号商標)


審理終結日 2001-05-29 
結審通知日 2001-06-08 
審決日 2001-06-20 
出願番号 商願平8-33368 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保田 正文 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 鈴木 新五
泉田 智宏
登録日 1997-08-29 
登録番号 商標登録第4051378号(T4051378) 
商標の称呼 タルマン、ターマント 
代理人 足立 勉 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 敏博 
代理人 田中 克郎 

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