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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 117 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 117 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 117 |
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管理番号 | 1041988 |
審判番号 | 審判1992-18163 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2001-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1992-09-22 |
確定日 | 1997-06-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2182407号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.本件登録第2182407号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ホフリッツ」の片仮名文字及び「HOFFRITZ」の欧文字を上下二段に書してなり、昭和62年10月15日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、平成1年10月31日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 2.請求人は、「本件商標は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第59号証を提出している。 (1)本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第15号及び同第16号の規定に該当し、本件商標の登録は商標法第46条の規定により無効にされるべきである。 (2)商標法第4条第1項第11号に関する主張 請求人が所有し本件商標登録の無効の理由として引用する登録第2164972号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙に表示した構成からなり、第17類「フランス製の被服(運動用特殊被服を除く)フランス製の布製身回品(他の類に属するものを除く)フランス製の寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和60年3月1日に登録出願、平成1年8月31日に登録がなされ、現に有効に存続しているものである。 以上の事実から、本件商標が引用商標よりも後願にかかるものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が抵触することは明らかである。 本件商標は、前述の構成からなるから「ホフリッツ」の称呼が生じることは疑いない。 さらに、本件商標から単なる「リッツ」の称呼が生じる可能性があるというべきである。 本件商標は、全体で5音の構成音からなるが、第3音の「リ」は促音「ッ」を伴っているから本件商標の称呼中で最も強く発音される。したがって、本件商標は、前半部の「ホフ」と後半部の「リッツ」の間に一呼吸おかれて発音され、「リッ」が最も強く発音されることから、後半部の「リッツ」が特に聴者の印象に残るというべきである。さらに、後述のとおり「リッツ/RITZ」といえば、我が国において極めて周知、著名な請求人の略称かつ商標であり、しかも本件商標中の「リッツ/RITZ」はそのスペルまで全く同一である。したがって、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標中「リッツ/RITZ」の部分に特に注意をひかれるというべきである。 したがって、本件商標に接する需要者、取引者は本件商標を単に、「リッツ」と称呼するというべきである。 これに対し、引用商標は、別紙に表示した構成からなり、中央部に「RITZ」の文字が顕著に表されているから、これから「リッツ」の称呼が生じることは明らかである。 したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標である。 以上述べた理由により、本件商標と引用商標は、外観及び観念上の類似性について論じるまでもなく、称呼上類似する商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。 (3)商標法第4条第1項第8号に関する主張 ▲1▼ 請求人の略称及び商標「RITZ」「リッツ」の著名性について 請求人「ザ リッツ ホテルリミテッド」は、フランス国パリに所在する世界的に著名な「RITZ」HOTEL(「リッツ」ホテル)を経営するイギリス法人である。「RITZ」HOTEL(「リッツ」ホテル)は1898年に「ホテル王」と称され近代ホテル経営の範を作ったセザール・リッツにより、彼の初めての直営ホテルとしてパリのバンドーム広場に面する一角に設立されたのが始まりであり、それ以後現在に至るまで、世界のホテル界をリードする存在となっている。該ホテルは、セザール・リッツの高級ホテルに対する考え方が結集された傑作であり、イギリス、アメリカ、オーストラリア等において、古くから新聞、雑誌等さまざまな刊行物に紹介され(甲第3号証乃至同第20号証)、その名声の高さはヨーロッパにおいてのみならず、世界的に周知、著名なものであり、我が国においても雑誌等にしばしば紹介され、また旅行案内書においては必ずパリの高級ホテルの第1に挙げられ、英和辞典においても「RITZ」の語は「RITZ HOTEL、豪華なホテルの名」と説明され、さらに「RITZ(虚飾、見せびらかし、誇示)」、「PUT ON THE RITZ(派手に暮らす)」、「RITZY(いやにハイカラな、豪華な)」等、「RITZ HOTEL(リッツホテル)」が豪華なホテルであることに語源を発する言葉も実際に存在するほどであり(甲第21号証の1及び同第21号証の2)、その著名性は我が国においても相当以前から確立していたことは明らかである。さらに、該ホテルは、設立当時からヘミングウェイ、チャップリン、シャネルらが愛用したホテルとして広く知られており、現在では世界でも屈指の超高級ホテルとしてその名は不動のものとなっている(甲第22号証乃至同第59号証)。 さらに、請求人は、我が国において、現実に、スカーフ、ネクタイ、バスタオル、バスローブ、コーヒーカップ、ジャム壷、スプーン、トング、シャンパングラス、財布、カード入れ、灰皿、ボタン、ダイアリー、ペン、ペンスタンド、時計、本、写真立て等幅広い範囲の商品の販売活動を行っており(甲第36号証乃至同第38号証及び甲第43号証乃至同第50号証)、また、我が国における営業のため、その著名な商標「RITZ、リッツ」を含む商標を多くの類に出願し、登録になっているものも数多く存在する(甲第52号証)。 このように、「RITZ、リッツ」は、請求人及び請求人が経営する「HOTEL RITZ、ホテルリッツ」の略称及び請求人の商標として相当以前から我が国において、極めて周知、著名となっていたことは疑いない。 ▲2▼ このように、「RITZ」といえば、請求人及び請求人の経営する「リッツホテル/RITZ HOTEL」の略称として、本件商標の出願日である昭和62年10月15日には我が国において極めて周知、著名なものとなっていたものである。 したがって、本件商標は、その構成中に請求人の周知、著名な略称「RITZ」を含むものであるから、商標法第4条第1頃第8号に該当するというべきである。 (4)商標法第4条第1項第15号に関する主張 前述したように、請求人の経営する「RITZHOTEL/リッツホテル」は、世界的な超一流ホテルであり、単に「リッツ」という略称で呼ばれ、かかる事実は古くから我が国においても確立されており、少なくとも本件商標の出願日である、昭和62年10月15日より相当以前から我が国において周知、著名なものとなっていたことは明らかである。また、添付の証拠からも明らかなように、請求人は、幅広い分野における商品を販売している。 しかして、本件商標は、第17類に属する「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品とするものであり、これらの商品中のタオル、バスローブ、トレーニングウエア、セーター等を請求人は実際に販売している(甲第36号及び同第37号証、同第44号証、同第47号証等)。 また、バスローブ、タオル等はホテルの部屋に備え付けられ、一般の泊まり客によって使用され、これらのバスローブ、タオル等には当該ホテルの名称、マークが付されている。 しかして、かかる事実に鑑みれば、請求人の周知、著名な略称及び商標である「RITZ」「リッツ」と類似し、あるいはこれをその構成中に含む本件商標が、指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、当該商品が請求人あるいはこれと何らかの関係がある者による製造、販売に係る商品であるかの如く商品の出所について誤認、混同を生じる可能性が高いというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1号第15号に該当するというべきである。 (5)商標法第4条第1号第16号に関する主張 前述のように、請求人は、幅広い範囲において、優れた品質の商品の製造、販売を行っている。したがって、請求人の周知、著名な略称であり、かつ、商標である「RITZ」「リッツ」と称呼上類似し、あるいはこれをその構成中に含む本件商標が指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、請求人の業務との間に出所の混同を生じるばかりでなく、「RITZ」「リッツ」の高級イメージから、該商品が請求人の備品と同等の品質を備えた高級品であるかの如く商品の品質の誤認を生じるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するというべきである。 (6)以上、詳述したように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第15号及び同第16号に該当するものであるから、その登録は、商標法第46条の規定により無効にされるべきである。 3.被請求人は、これに対し、何等答弁していない。 4.よって判断する。 (1)本件商標及び引用商標の構成は前記のとおりの構成よりなるものであるから、その外観においては、明らかに区別し得る差異を有するものである。 次に、称呼の点についてみるに、本件商標は、「ホフリッツ」及び「HOFFRITZ」の文字を書してなるところ、これらの文字は同じ書体、同じ間隔、ほぼ同じ大きさで表されており、これから生ずるものと認められる「ホフリッツ」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るばかりでなく、他に例えば、「ホフ」と「リッツ」に分断して称呼すべき特段の事情も存在しないものであるから、本件商一標は、「ホフリッツ」の一連の称呼のみを生ずるものとみるのが相当である。 一方、引用商標は、別紙に表示したとおり盾のような図を有する図形と「RITZ」及び「PARIS」を二段に併記してなる文字との結合よりなるところ、これらを常に一体のものとしてのみ把握しなければならないとする特段の事情を見出せないものであるから、該文字部分のみでも、独立して自他商品の識別標識として機能を果たし得るものとみるのが相当である。 そして、該文字部分は、構成全体から「リッツパリス」の称呼を生ずるほかに、「RITZ」及び「PARIS」の文字は上下二段に表示してなるのみならず、「PARIS」の文字が、フランスの首都である「パリ」を表す都市名であり、商品の産地、販売地を表し、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものと認められるから、該文字部分において識別力を有する部分は「RITZ」の文字にあり、これから「リッツ」の称呼をも生ずるものとみるのが相当である。 そこで、「ホフリッツ」と「リッツパリス」及び「リッツ」の称呼とを比較すると、これらは、音構成及び音数を異にするものであるから、それぞれを全体として一連に称呼する時は、紛れて聴取されるおそれのないものとみるのが相当である。 さらに、観念の点についてみるに、本件商標は、特定の観念を有しない造語よりなるものであるから、観念においては、比較できないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということができない。 (2)以上のとおり、本件商標は、構成する欧文字及び片仮名文字のそれぞれ全体が一体不可分のものとして認識し把握されるものであるから、構成中に「RITZ」及び「リッツ」の文字を有してなるとしても、取引者、需要者がこれより請求人を想起し、同人の著名な略称を含んでなるものと認識するとは判断し得ず、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものということができない。 (3)また、本件商標と引用商標とは、前述のとおり、外観、称呼、観念のいずれにおいても明らかに区別し得る差異を有するものであって、本件商標には、引用商標を想起させるに足る共通性は見い出し得ないものであるから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということができない。 (4)さらに、本件商標は、前述のとおり、「RITZ」及び「リッツ」の文字部分が独立して認識されるものではないのみならず、これが具体的にどのような品質を表すものか必ずしも明らかでない。そうすると、これをその指定商品に使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものとはいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものということができない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同8号、同15号及び同16号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【別記】 |
審理終結日 | 1996-12-16 |
結審通知日 | 1997-01-07 |
審決日 | 1997-01-14 |
出願番号 | 商願昭62-116664 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Y
(117)
T 1 11・ 262- Y (117) T 1 11・ 23- Y (117) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹内 弘昌、佐藤 敏樹 |
特許庁審判長 |
秋元 正義 |
特許庁審判官 |
大橋 良三 渡邊 健司 |
登録日 | 1989-10-31 |
登録番号 | 商標登録第2182407号(T2182407) |
商標の称呼 | 1=ホフリッツ |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 加藤 建二 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 松尾 和子 |