• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z30
管理番号 1041900 
審判番号 不服2000-505 
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-14 
確定日 2001-06-13 
事件の表示 平成10年商標登録願第 79298号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第30類に属する商品を指定商品として、平成10年9月16日に立体商標として登録出願されたものであり、その指定商品については、平成11年10月27日付の手続補正書をもって「うまみ調味料(グルタミン酸ナトリウムを主成分とするもの)」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、その形状(収納容器)の一形態であることを容易に認識させる立体的形状を普通に用いられる方法をもって表してなるものであるから、これを本願指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、出願人は、資料1ないし16を提出し、容器について自他商品識別標識としての機能を有する旨主張しているが、本願商標は、指定商品の包装(収納容器)の形状として採択し得る一形態の範囲に止まるものと認識されるものであり、自他商品識別力を有しないものと判断するのが相当である。」旨の理由で本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の有する機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の有する美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
さらに、本来的には自他商品・役務を識別するための標識として採択されるものではない立体商標については、登録によって発生する商標権が全国的に及ぶ更新可能な半永久的な独占権となることを考慮すれば、その識別性について厳格に解釈し、適用することが求められるところである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
また、意匠法等により保護されている物品の形状等について、その理由をもって、当該形状が自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできないばかりか、意匠権等に重ねて又は、その権利の消滅後に商標登録することにより保護することは知的財産権制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることになる。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみるに、本願商標は別掲に示すとおり、キャップ部が赤色で、本体部が透明の材質よりなる容器の形状よりなるものであって、これを指定商品「うまみ調味料(グルタミン酸ナトリウムを主成分とするもの)」に使用しても、取引者・需要者は、それが指定商品を収納する容器としての一形態を表したものと認識するに止まり自他商品の識別標識とは認識しないと判断するのが相当である。
(4)請求人は、「本願商標に係る容器は、全体的にはキャップ部、容器本体の上部の細長い部分、膨張し丸味を帯びた容器本体の下部の3個の部分がそれぞれ約3分の1の割合で構成されており、さらに、容器本体の膨張し丸味を帯びた下部の断面は八角形になっており、各面に沿って本体の上部から底部にかけて角が出ている(平面的には線に見える)形状を有するものである。………また、本願商標はキャップ部が赤であり、本願の指定商品が入れられた状態(現実に本願指定商品が販売される状態)では、中身の「うまみ調味料」が白色であるため容器本体の色彩も白く見えるから、本願の願書に添付した商標見本に示すように、本願商標は、キャップ部分が赤く、本体部分が白くなり、色彩的にも全体が赤と白の目立つ構成である。
すなわち、本願商標はその構成及び色彩において顕著な特徴を有し、これらが組み合わされた点に他のびん又は容器には見られない独自性及び特徴を有するものである。」と述べている。
しかしながら、指定商品である「うまみ調味料」をはじめ、食品を取り扱う業界においては、液体や粉末状、顆粒状などの商品の収納容器の形状に関し、それぞれ特徴のあるものを採択し、販売することが一般に行われているところであって、これらの特徴は、商品の機能(持ち易さ・使い易さ)や美感(見た目の美しさ)を効果的に発揮させるための範囲のものというべきであり、本願商標は、その形状に特徴を持たせたことをもって自他商品識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないとしたこと前記(1)で述べたとおりである。
したがって、立体(容器)の形状に特徴を持たせたことをもって自他商品識別標識としての機能を果たし得る旨をいう請求人の主張は採用できない。
(5)請求人は、「本願商標は、1984年5月から使用されており、すでに16年もの間、出願人により本願指定商品について同じ形状で継続して独占的に使用され、本願の指定商品の業界において出願人の商品として周知著名である……から、商標法第3条第2項の規定により登録されるべきである。」旨主張し、原審においては意見書添付資料1ないし16を提出し、また、当審において甲第1号証ないし同第28号証を提出している。
そこで、以下、請求人の前記主張について検討する。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章との結合より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
ただし、使用に係る商標の形状の全体を観察した場合、その立体的形状部分と出願に係る商標とが同一であり、その立体的形状が識別標識として機能するには、そこに付された平面標章部分が不可欠であるとする理由が認められず、むしろ平面標章部分よりも立体的形状に施された変更、装飾等をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものと認められ、かつ、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、同業組合又は同業者等、第三者機関による証明)の提出があったときは、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として商標法第3条第2項の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る商標の立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断する必要があるというべきである。
そこで、これを本件についてみるに、まず、資料1ないし同10(1985年ないし2000年発行に係る、請求人の商品カタログと認められる)、同12及び13(新聞広告)、同14(請求人に係るいわゆるインターネットホームページにおける掲載)、同16(日本うま味調味料協会発行に係るパンフレットにおける掲載)、甲第5号証ないし同第27号証(テレビCMの写真)に表示された本願商標と同じ形状の商品「(うまみ)調味料」の容器には、「AJI・no・moto」、「味の素」などの文字が付されており、本願商標にはこれらの文字が付されてはいないから、使用に係る商標と出願に係る商標との同一性は認めらない。
そして、むしろ、これらの資料及び甲各号証に示された立体的形状は、商品「(うまみ)調味料」の収納容器の形状そのものを表したものであって、該商品は、「AJI・no・moto」、「味の素」などの文字により識別されているとみるのが相当であり、かつ、自然である。
次に、本願商標に係る立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて検討する。
まず、上記の各資料及び甲各号証に表された商標には文字が付されていることから、これらのみによっては、本願商標に係る立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っているとは認められない。
次に、資料15には、1996年から1999年9月までの「単一調味料」なる商品における「味の素」の購入金額シェアが示されているが、これをもってしては、本願商標が使用され、需要者により、その形状部分のみが独立して請求人の商品「うま味調味料」を表示する商標であるとの認識がされる状態に至っているとの直接的証左とはいえないものである。
甲第1号証の日本うまみ調味料協会専務理事による証明は、あらかじめ準備されたものと推認される「証明願」と題する用紙を用いたものであり、その証明内容も証明者がどのような事実をもとに当該形状の周知性を証明したのかが明らかでなく、さらに、「取引者及び需要者の間においては弊社味の素株式会社の業務に係る商品(「うまみ調味料」)であることを認識させるまでに周知されている」との記述があるが、証明者が何をもって他者である「取引者及び需要者の認識の程度」を、即日のうちに証明できるのかも定かではないから、本証明は客観性に欠けるものである。
このほか、各資料、甲各号証によれば、本願商標に係る形状をした収納容器に入った商品「うまみ調味料」が相当数取り扱われた事実は認め得るものの、該商品は、「AJI・no・moto」、「味の素」などの文字により識別されているとみるべきであって、各資料及び甲各号証を総合して検討しても、本願商標が使用された結果、これが取引者、需要者間において請求人の取り扱いに係る商品を表示するものと認識することができる状態に至っていると認めることはできないものである。
なお、出願に係る立体商標が商標法第3条第2項の要件を備えているか否かが争われた訴訟事件に関し、本件と同趣旨の認定・判断をした東京高等裁判所の判決(平成12年12月21日言渡、平成11年(行ケ)第406号)が存在する。

4 結論
してみれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を具備していないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本願商標


(この商標はカラー写真によって表されたものであるから細部及び色彩については原本を参照されたい)
審理終結日 2001-04-04 
結審通知日 2001-04-09 
審決日 2001-04-24 
出願番号 商願平10-79298 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧本 佐代子 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 久保田 正文
宮川 久成
代理人 大島 厚 
代理人 加藤 建二 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 中村 稔 
代理人 松尾 和子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ