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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない 018
管理番号 1041888 
審判番号 審判1999-2852 
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-22 
確定日 2001-05-25 
事件の表示 平成 8年商標登録願第111410号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成からなり、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、平成8年10月1日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、アメリカ合衆国ニューヨーク州在の『ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ』がラルフローレンのデザインに係る『ネクタイ、シャツ、ジャケット』等に使用し、我が国においても本願出願当時すでに『ポロプレーヤーマーク』と称し、需要者の間に広く認識されていた『乗馬中の人物がマレットを振りおろしていると思しき図形』の商標と酷似の図形であるから、出願人がこれを本願指定商品に使用するときは、恰も前記会社若しくはデザイナーの製造販売する商品又は前記会社若しくはデザイナーと何らかの関係のある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定判断して、本願を拒絶したものである。

第3 請求人の主張の要点
請求人は、審判請求書及び平成12年6月21日付け証拠調べ通知に対する同8月21日付け意見書において、要旨以下のとおり主張した。
1 引用商標の図形は、(1)馬上に人が乗り、人は先端がT字型の棒を肩の上に振り上げて掲げており、顕著な躍動感ないしスピード感のない静止的な図形であり、(2)図形は極度に写実的でなく、多数の白抜き線で区切られた「印影」状態で描かれており、(3)馬及び人ともに左側のほぼ正面図形として描かれており、(4)馬の前足は地面からわずかに離れているが、両足とも概ね地面に接近した状態で描かれて構成されている。
一方、本願商標は、(1)馬上に人が乗り、人は先端がT字型の棒を、地面にあるボールを打ち込むために振り下ろす直前の状態として描かれており、顕著に躍動感ないしスピード感があり、流動的な図形であり、(2)図形は引用商標の図形に比較すると極めて写実的であって、「印影」状態で描かれておらず、(3)馬及び人ともに右側側面図形として描かれており、(4)馬の後足は両足とも地面に接しているが、前足は両足とも地面から大きく離れている。
このように引用商標の図形部分と本願商標とは、外観上、著しい相違があり、類似していない。離隔的観察手法によっても、取引者、需要者は、本願商標から引用商標の図形部分を連想、想起することはあり得ず、本願商標をその指定商品に使用しても、その商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
2 証拠調べ通知書で指摘された証拠は、本願商標に係る指定商品第18類に関する、「図形部分」の著名性の事実を立証する証拠ではない。また、引用商標の図形部分が、単独でも「ポロ」の略称で呼ばれているという事実も証明されていない。
3 証拠調べ通知書で掲げる証拠などから事実認定される周知、著名標章の図形は、上記1中、引用商標における(1)ないし(4)で概略特定される図形の外観であって、引用商標から共通項として抽出された「ポロプレーヤー」という観念及び「概念」における周知、著名性は証拠から証明されていない。
「ポロ競技」は、我が国において馴染みの薄いスポーツであるならば、取引者、需要者が引用商標に含まれる図形をみて、これから「ポロプレーヤー」という「観念」を認識することはない。そして、引用商標に含まれる図形の周知、著名性は、「外観」上の周知、著名性に限定解釈されるべきであって、他の図形とを比較して観察するときに、その共通要素として「ポロプレーヤー」という「観念」を持ち出すことは妥当ではない。
また、「ポロの略称」とは、「ポロ競技」の「ポロ」を示すものではなく、ラルフ・ローレンの「ポロ」を示している。そうだとすれば、引用商標に含まれる図形から生ずる略称も、ポロ競技としての「ポロ」ではなく、ラルフ・ローレンの「ポロ」である。よって、引用商標に含まれる図形から、共通項としての「ポロプレーヤー」の観念は生ずることはない。
よって、引用商標の図形部分から「ポロプレーヤー」という共通要素を観念及び外観において引き出すことは失当であり、両商標の比較判断は、個別具体的に事実認定し、判断されるべきである。

第4 当審の判断
1 「POLO」「ポロ」「Polo」の商標の周知、著名性について
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」及びサンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典 ’84ザ・ブランド」の記載によれば、次の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立し、ポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服のデザインにも進出、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。そのころからその名前は我が国服飾業界において知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形の各商標(以下「引用商標」という。)が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、株式会社洋品界昭和55年4月15日発行「海外ファッションブランド総覧1980年版」における「ポロ/Polo」の項及びボイス情報株式会社昭和59年9月25日発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略 ’85」の「ポロ・バイ・ラルフローレン」の項の記述並びに昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴等、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。
また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、例えば、株式会社スタイル社1971年7月発行「dansen男子専科」を始め、前記「男の一流品大図鑑」、「世界の一流品大図鑑 ’79年版」(株式会社講談社 昭和54年5月発行)、別冊チャネラー「ファッションブランド年鑑 ’80」(株式会社チャネラー 同54年9月発行)、「男の一流品大図鑑 ’81年版」(株式会社講談社 同55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑 ’80年版」(株式会社講談社 同55年6月発行)、「世界の一流品大図鑑 ’81年版」(株式会社講談社 同56年6月発行)、前記「舶来ブランド事典 ’84ザ・ブランド」、「流行ブランド図鑑」(株式会社講談社 同60年5月発行)のそれぞれにおいて、眼鏡については、前記の「世界の一流品大図鑑 ’80年版」、「ファッションブランド年鑑 ’80」、「男の一流品大図鑑 ’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「ポロ」、「Polo」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)183号、平成3年7月11日判決言渡)及び及び東京地方裁判所の判決(平成8年特(わ)1519号、平成9年3月24日言渡)があるほか、上記商標の周知性を認めた判決として、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同289号(以上11年12月21日言渡)等がある。
さらに、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成1年5月19日付朝日新聞夕刊、同4年9月23日付読売新聞(東京版)朝刊、同5年10月13日付読売新聞(大阪版)朝刊、同10年6月8日付朝日新聞夕刊等において報道され、これらの記事中では引用商標が「ポロ」、「Polo」、「POLO」等と称されている。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、「ポロ」、「Polo」、「POLO」と略称され、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として、遅くとも本願の登録出願時までには既に我が国において取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は、本願商標の出願時はもとより、現在においても継続しているというのが相当である。
2 商品の出所の混同のおそれについて
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、本願商標と引用商標の図形部分の描き方は相違するが共にポロプレーヤーを表してなるものである。
また、本願商標の指定商品は、かばん類、袋物、傘等を含むものであり、これらの商品と引用商標が使用されている被服類及び眼鏡類とは、共にファッションに関連した商品であって、統一ブランドの下にファッションをまとめようとする昨今にあっては少なからぬ関係を有するものといえる。
他方、上記のとおり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識されている引用商標は、「ポロ(競技プレーヤー)」の観念及び「ポロ」の称呼を生ずるものといえる。
そうとすると、上記認定のとおり、我が国において遅くとも本願商標の登録出願時までには引用商標が取引者、需要者の間に広く認識されていたという取引の実情を考慮すると、本願商標は、その指定商品に使用する場合には、引用商標と構成上相違する点があるとしても、時と処を別にしてこれに接する取引者、需要者は、前記した実情から、本願商標のポロプレーヤーの図形より、上記周知、著名な引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
3 請求人の主張について
本願商標と引用商標には、その構成に係る図形に請求人主張のような相違があるが、本願商標のポロ競技者の図形と引用商標のポロプレーヤーの図形とは、ポロ競技者が馬上からT字状の棒(マレット)を持ち、これを上から振り下ろさんとする様子において共通し、類似性があるものと認められる。そして、引用商標は、ザ・ポロ・ローレン・カンパニー・パートナーシップが被服類に長年使用し、本願商標の登録出願前には既に周知、著名な商標になっていたことを、以上認定した事実に合わせ考えれば、本願商標と引用商標との間の請求人主張の前記差異点は、微差にすぎないものと認められる。
そうすると、本願商標は、これに接する取引者、需要者に対して、引用商標と相紛らわしい印象を与えるものとなっており、ラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがある商標であること、上記認定のとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとするとして本願を拒絶した原査定は妥当なものであって、これを取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>

本願商標



審理終結日 2001-03-13 
結審通知日 2001-03-27 
審決日 2001-04-09 
出願番号 商願平8-111410 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (018)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加園 英明寺光 幸子 
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 酒井 福造
田口 善久
代理人 宮崎 伊章 

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