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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z29
管理番号 1039802 
審判番号 不服2000-7797 
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-25 
確定日 2001-05-09 
事件の表示 平成10年商標登録願第 49190号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、その構成を別掲に示すものとし、第29類「乳製品」を指定商品として、平成10年6月12日に立体商標として登録出願されたものであり、その後、指定商品については、平成11年11月9日付の手続補正書をもって「チーズ」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係からみれば、その商品の採用し得る一形状を表したものと容易に認識される立体的形状よりなるものであり、その立体的形状に文字が付されているものの、該文字は帯紐が巻かれていることによって、どのような文字であるか把握し得ないものであり、これを本願指定商品に使用しても、商品の形状そのものを表示するにすぎず、また、立体的形状に黄色い帯紐が放射状に掛け渡されているとしても、これは単に商品の包装のために巻かれているとみるのが相当であり、これをもって取引者、需要者が自他商品の識別標識と認識するとはいえないものである。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨の理由で本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法における立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみるに、本願商標は、別掲に示すとおり、略半球形状の立体的形状の上部に商品のラベルと思しき紙片を貼付し、これに頂部で交差するように六方向から黄色い帯紐が掛け渡されている立体的形状よりなるものであって、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品「チーズ」及びその包装の形状の一形態を表してなると認識するにすぎないと判断するのが相当である。
請求人は、「拒絶査定書における『本願商標に接する取引者,需要者がその黄色い帯を、図形と色彩との結合からなる自他商品の識別標識と認識するとはいえない』との認定は、商標法第2条第4項の解釈の判断を間違えた違法なものであり、本願商標は、ほぼ半球形の『立体的形状』と、その底面に数本の帯状の溝を設けてなる白色の商品チーズに複数本(6本)の黄色い帯状の紐を、頂部で交わるように放射状に掛け渡すことにより『立体的形状』の表面に現れる商品チーズ自体の白い『色彩』と、帯状の紐が成す放射状の『図形』と、帯状の紐の黄色い『色彩』との結合から成るものであり、このような『立体的形状』と『図形』と『色彩』とを結合したチーズは一般的なものであるとは到底言えるものではなく、自他商品の識別機能を有するものである。」旨主張している。
そこで、まず、請求人の「原査定は商標法第2条第4項の解釈を間違えている旨」の主張についてみるに、原査定は、本願商標の立体的形状が自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとしたのであって、本願商標が商標法第2条で規定する「商標」に該当しないとしたのではなく、また、「使用」の対象としての標章ではないとしたのでもない。本願商標のような立体商標が商標法第2条第4項で規定する「使用」の対象たる標章といえるのは当然のことであり、この点に関する請求人の主張は失当である。
次に、請求人の「本願商標は自他商品の識別機能を有する」旨の主張について検討する。
近時、本願指定商品を取り扱う業界においては、商品そのものの形状や包装、容器の形状及びこれらの色彩などに特徴をもたせたものを採択し、販売していることが一般に行われていることは顕著な事実であって、本願商標の場合、商品「白いチーズ」にラベルと思しき紙片を貼付し、これを黄色い帯紐で包装した商品の形状を表したとみるべきである。
そして、請求人の主張する本願商標の形状、色彩の組み合わせの特徴は、商品の見た目の美しさ(美感)を効果的に際立たせるための範囲のものというべきであって、本願商標が殊更ユニークな形状及び色彩の組み合わせを呈しているとはいえないものである。
また、商品に貼付されているラベルと思しき紙片自体が自他商品の識別標識としての機能を発揮する図形ともいえず、さらに、この部分から自他商品の識別機能を有する特定の称呼・観念が生ずるともいえない。
したがって、本願商標は、前記認定のとおり、商品の形状の一形態を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状及び色彩の組み合わせに特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められず、この点に関する請求人の主張は採用できない。

4 結 論
してみれば、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本願商標








(この商標はカラー写真によって表されたものであるから細部及び色彩については原本を参照されたい)
審理終結日 2000-12-05 
結審通知日 2000-12-12 
審決日 2000-12-28 
出願番号 商願平10-49190 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 啓之 
特許庁審判長 為谷 博
特許庁審判官 宮川 久成
久保田 正文
代理人 浜野 孝雄 
代理人 森田 哲二 
代理人 八木田 茂 

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