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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200017141 審決 商標
不服20006895 審決 商標
審判199916888 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z33
管理番号 1037743 
審判番号 不服2000-6894 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-10 
確定日 2001-03-30 
事件の表示 平成 9年商標登録願第101508号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第33類「ウイスキー」を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるものといわざるを得ないから、これをその指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、商品の形態を不正競争防止法により保護を求めた事件の判決においても、例えば、「商品の形態自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させあるいはその美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所を表示することを目的とするものではないけれども、二次的に出所表示の機能を備えることもありうべく、この場合には商品の形態自体が特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」(東京地方裁判所 昭和50年(ワ)第3035号 昭和52年12月23日判決言渡【最高裁判所事務総局発行 無体財産権関係民事・行政裁判例集第9巻第2号769頁】)との判示がなされているところである。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、黒色の瓶形の正面上部と中央部に、輪郭が波形状の横長又は長方形のラベルを添付した構成よりなるところ、黒色の立体的な全体形状は、液体等を収納する容器そのものを表したものであり、また、2カ所に添付されたラベルは、液状の商品を収納するガラス瓶等の容器に商標や品質表示等を記載するために、一般的に用いられているラベル形状の一形態と認められるから、これをその指定商品(ウイスキー)に使用しても、取引者・需要者は、全体として、ウイスキーの包装(収納容器)の形状を表示するにすぎないものと理解するに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
請求人は、「ウイスキーの瓶には、色々な形状をした瓶が用いられており、本願商標が表す瓶の形状はウイスキー瓶の形態として必然的なものではなく、また、ウイスキーその他の洋酒について、他に全体が黒く本願商標と同様な形状をした瓶を販売しているメーカーはない。」旨主張する。
しかしながら、「ウイスキー」を取り扱う業界においては、その取り扱う商品が液体であるが故に、特徴をもたせた形状の容器を多種類採用し、その容器に商品を収納して販売していることは一般に行われているところであって、本願商標を構成する収納容器の特徴は、商品等の機能(飲み易さ、持ち易さ等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特異なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって、自他商品の識別力を有するものとは認められないことは前示(1)で述べたとおりである。
(4)請求人は、「本願商標は、昭和15年以来、60年もの間、継続して使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る商品『ウイスキー』であることを認識することができるに至っているものであるから、商標法第3条第2項により登録されるべきである。」旨主張し、原審において添付書類1乃至同9を、当審において製品カタログの表紙写を提出した。
そこで、以下、請求人の前記主張について検討する。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることができない。
ただし、使用に係る商標の形状の全体を観察した場合、その立体的形状部分と出願に係る商標とが同一であり、その立体的形状が識別標識として機能するには、そこに付された平面標章部分が不可欠であるとする理由が認められず、むしろ平面標章部分よりも立体的形状に施された変更、装飾等をもって需要者に強い印象、記憶を与えるものと認められ、かつ、需要者が何人かの業務に係る商品等であることを認識することができるに至っていることの客観的な証拠(例えば、同業組合又は同業者等、第三者機関による証明)の提出があったときは、直ちに商標の全体的な構成が同一ではないことを理由として商標法第3条第2項の主張を退けるのではなく、提出された証拠から、使用に係る商標の立体的形状部分のみが独立して、自他商品又は役務を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて判断する必要があるというべきである。
そこで、これを本願についてみれば、請求人提出の「サントリー70年史写(添付書類1)」、「’98サントリー製品一覧写(添付書類2)」、「1997年10月4日付け読売新聞広告(添付書類6)」「1997年10月6日付け日本経済新聞広告(添付書類7)」及び「’96・’97・’98・・’99・2000版商品カタログ写(添付書類8及び審判請求時提出資料)」及び「講談社発行世界の名酒事典写(添付書類9)」に示された本願商標と同一と認められる収納容器には、いずれも「SUNTORY OLD WHISKY」等の文字と図形が表示されており、使用に係る商標と出願に係る商標との同一性は認められない。そして、むしろ、これら各号証に示された立体的形状は、商品「ウイスキー」の収納容器そのものを表したものであって、該商品は、「SUNTORY OLD WHISKY」等の文字、図形、若しくは、これらと立体的形状との組み合わせにより識別されているとみるのが相当である。
次に、本願商標に係る立体的形状部分のみが独立して、自他商品を識別するための出所表示としての機能を有するに至っていると認められるか否かについて検討するに、請求人は、本願商標に接する取引者・需要者は、本願商標(瓶の形状)をみれば、それに付されているラベル或いは文字や図形の商標をみなくても、その瓶の形状自体により、出願人の製造するウイスキーの出所を示す商標として広く知られるようになっている旨主張し、その根拠として、「主要銘柄知名率調査写(添付資料3)」及び「銘柄想起調査(CLT)結果報告書写(添付書類5)」を提出した。
しかしながら、主要銘柄知名率調査は、消費者が想起し得るウイスキーの銘柄を答える「非助成知名率」とウイスキーの銘柄名称入り銘柄写真を呈示して知っている銘柄をあげる「助成知名率」とからなるものであって、その結果から、サントリーの製造販売に係るウイスキーの銘柄である「オールド」の知名率は計れるとしても、出願に係る商標自体の知名率、すなわち、出願に係る商標の著名性が計れるものとは認められない。
また、銘柄想起調査(CLT)は、調査対象者に本願商標をみせて、それからどのような商品を想起するかを調査するものであるが、調査対象者が200人と少ないこと及びアンケート用紙の配布方法等が明確に示されていないこと等からして、これをもって本願商標が使用をされた結果、需要者により請求人の取り扱いにかかる商品「ウイスキー」を表示する商標であるとの認識がされる状態に至っているとの直接的証左とはいえないものである。
その他、請求人提出の参考資料を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、先の認定を覆すに足りない。

4 結論
してみれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項の要件を具備していないとした原査定の認定、判断は妥当なものであって取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本願商標







審理終結日 2001-01-16 
結審通知日 2001-01-19 
審決日 2001-02-05 
出願番号 商願平9-101508 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z33)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高山 勝治小林 薫 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 宮川 久成
小林 由美子
代理人 足立 泉 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 

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