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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 014
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 014
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 014
管理番号 1037262 
審判番号 審判1998-35605 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-02 
確定日 2001-02-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第3063582号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3063582号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「Bon Marche」の文字(「Marche」中の「e」の文字にはアクセント記号が付されているが、該記号は省略する。以下、「Marche」又は「MARCHE」の表記において同じ。)と「ボンマルシェ」の文字を二段に横書きしてなり、平成4年9月14日に登録出願、第14類「貴金属,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製宝石箱,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く),カフスボタン,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として同7年7月31日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第70号証を提出している。
(1) 請求人は、1852年に世界初のデパートとしてパリセーヌ河の左岸サンジェルマン・デ・プレ地区に誕生した「Bon Marche」(「ボン・マルシェ」)の所有者である。(正式には、定冠詞「Le」(「ル」)がついて、「Le Bon Marche」となる。)同デパート「Bon Marche」は、薄利多売、定価表示などの革新的販売方法により飛躍的発展を遂げ、世界各地の百貨店経営に刺激を与えたのである。
したがって、請求人の所有するデパート「Bon Marche」は、著名であり、「小学館ロベール仏和大辞典」に掲載される程であり(甲第1号証)、我が国においても、本件商標の出願時はもとより登録査定時においても周知であった。
請求人は、本願の指定商品を初め各種の商品を、「LE BON MARCHE」の商標の下に本願の出願のはるか以前から今日迄引き続き販売している。
また、請求人は、商標「LE BON MARCHE」を、本願の指定商品はもとより、各種の商品及び役務につき、日本、フランス、マドリツドプロトコル加盟国、インドネシア、アンドラ、韓国、台湾の各国で、商標登録を得ている(甲第10ないし第24号証)。甲第27ないし第30号証は、請求人の所有するデパート「LE BON MARCHE」を紹介した雑誌記事(日本、フランス、スペイン)であり、いずれも「LE BON MARCHE」の周知性、長年にわたる歴史に言及している。したがって、甲第27ないし第30号証からも、審判請求人が世界的に著名なデパートであることは、明白である。
上記のように、本件商標の出願時はもとより、登録査定時においても、「LE BON MARCHE」は、請求人が世界的に著名なデパート「LE BON MARCHE」の所有者、経営者として、その取扱にかかる、本件商標の指定商品はもとより、各種商品に使用する商標として周知であった。
(2) 被請求人は、東京都北区志茂に所在する株式会社であるが、被請求人が「Bon Marche/ボンマルシェ」からなる本件商標を、自己の商標として採択する必然性は無く、偶然にこれを採択したものとも解されない。
即ち、被請求人は、「LE BON MARCHE」が請求人の著名なデパートの名称であり、請求人が本件商標の指定商品を含む各種商品に使用する商標であることを知って、本件商標を出願登録したものである。
(3) かかる著名な「LE BON MARCHE」と類似する本件商標を請求人と全く無関係な被請求人が自己の商標として採択し、これを本願の指定商品に使用することは、請求人の所有経営するデパート「LE BON MARCHE」及び請求人が本願の指定商品等に使用する商標「LE BON MARCHE」の著名性に只乗りせんとする行為であり、また、請求人の日本における事業の展開に支障を来すおそれのある行為であり、事実、請求人が我が国において「LE BON MARCHE」を本願の指定商品に使用するべく出願したときに、本件商標を引用して拒絶査定が出されている(甲第25及び第26号証)。
したがって、本件商標を被請求人が使用することは、国際信義に反し、また、請求人の営業及び商標の周知性に只乗りせんとするものであり、商標法の確立維持せんとする健全な流通秩序を害するものであって、社会公共の利益又は一般的な道徳観念に反するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
更に、本件商標を被請求人が使用するときは、本件商標を付した商品が請求人の営業に係る商品又は請求人と何らかの経済的関係にある者の営業に係る商品であるとの誤認を生ずるおそれのあるものであるから、本件商標は同法第4条第1項第15号に該当する。
(4) 既述の如く、請求人の「LE BON MARCHE」の第14類への出願は、本件商標を引用して拒絶された。よって、請求人には、法律上正当な審判請求の利益がある。
(5) 答弁に対する弁駁
被請求人の答弁の理由は、要するに、「『ボンマルシェ』は、日本では、フランスのデパート名として、著名でも周知でもない」というにある。
しかしながら、かかる主張は理由がない。既に提出した証拠及び甲第31ないし第70号証から明らかなように(なお、甲第31ないし第70号証は最近のものであり、ごく一部である。)、「Bon Marche」、「ボンマルシェ」は、請求人の名称として、日本において著名である。以下において詳述する。
(イ)請求人は世界最古のパリの老舗のデパートとして、「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」は世界最古のパリの老舗のデパートの正式名称として、また「Bon Marche」「ボンマルシェ」は世界最古のパリの老舗のデパートの名称として、それぞれ日本においても著名である。最近のものを取り上げただけでも、これだけ多数の雑誌等で紹介されるのであり、また、第三者の開設したホームページ(甲第69及び第70号証)で、「世界で最初にオープンしたパリのデパート・LE BON MARCHE(ボンマルシェの特別イベント)」として紹介され、また、<パリ道中記>で、「パリの百貨店」として、請求人が「BON MARCHE(ボン・マルシェ)」として紹介される程である。
請求人は、現に、日本に広報事務局を開設している程であり、如何に日本において請求人、請求人の正式名称、請求人の名称が著名であるかを物語る。そして、当該広報事務局作成の案内(甲第31及び32号証)は日本全国の百貨店、専門店に配付されている。即ち、請求人がフランスの老舗のデパートであること、「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」が請求人の正式名称であること、「Bon Marche」「ボンマルシェ」が請求人の名称であることは、我が国の取引者及び需要者に著名である。
なお、付言するに、請求人の商号「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」は、我が国においては、「Bon Marche」「ボンマルシェ」と略称認識される。これは、日本語は冠詞をもたない言葉であるため、冠詞「Le」「ル」は容易に省略されるものであることによるものである。更に、我が国におけるフランス語教育及びフランス語の普及度、特に、ファッション指向の取引者や需要者及びこれに係る出版等においては、フランス語は極めて頻繁に使用されることに鑑みれば、「Le」「ル」がフランス語の定冠詞であり、「Bon Marche」「ボンマルシェ」が要部であり、「Le」「ル」を省略しても意味に変化を来さないことは一般に理解されるところである。
したがって、「Bon Marche」「ボンマルシェ」が請求人「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」のことであり、請求人の正式名称「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」と類似することは明白である。
(ロ)「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」は、請求人の名称であると同時にハウスマークである。請求人のような老舗デパートにおいて本願の指定商品である貴金属や宝石や身飾品を取扱うことは常識であり、現に、ジュエリー(宝石)やアクセサリー(身飾品)等が請求人において販売されている事は、雑誌等で紹介されたりしている(甲第49、第53、第54、第56及び第62号証)。
したがって、「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」は、本件商標の指定商品や衣類や家具や化粧品等の諸々の商品について、請求人のハウスマークとして、我が国においても著名である。
(ハ)そして、被請求人において、本件商標を採択する何らの必然性も無いのであり、かつ、被請求人は業者として請求人がフランスの著名な老舗のデパートであること知悉していたことは当然であり、被請求人による本件商標「Bon Marche/ボンマルシェ」の出願登録は、かかる著名性に便乗する目的の下になされたものというほかないものである。
(ニ)以上述べたことから明らかなように、被請求人が被請求人の著名正式名称、ハウスマーク「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」と類似し、その著名な名称「Bon Marche」「ボンマルシェ」と同一の本件商標を使用することは、健全な流通秩序を害し、かつ、国際信義に反するものである。
(ホ)また、今日、ダイエーがフランスのデパート「オプランタン」のライセンシーとなり、イギリスのデパート「Harrods」がブランドとしてライセンスされていること等に照らせば、請求人の著名正式名称、ハウスマーク「Le Bon Marche」「ルボンマルシェ」に類似し、その著名な名称「Bon Marche」「ボンマルシェ」と同一の本件商標を付した商品は、請求人又は請求人と何らかの経済的関係に立つ者によって製造販売されたものであるとの誤認を需要者、消費者に生じさせるものである。
(ヘ)加えて、「Bon Marche/ボンマルシェ」は請求人の著名な名称であり、被請求人は、本件商標を請求人の承諾もなしに出願し登録したものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
(6) よって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号により、無効とすべきものである。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
「ボンマルシェ」は、日本では、請求人の主張するようにフランスのデパート名として、著名でも周知でもない。「ボンマルシェ」が日本で使用される場合は、たとえば、メルシャン株式会社製造のワインの名称のように、「お買い得」という意味での普通名詞として使用されるのが一般である。
また、第14類の需要者間でも、フランスのデパート名としての「ボンマルシェ」を知っている日本人はごくまれである。現に、被請求人から貴金属等を購入する顧客が、フランスの著名なデパートの商品だと誤認する者は皆無である(「皆無」というのは、ごくまれにフランスのデパート名としての「ボンマルシェ」を知っている日本人顧客がいた場合でも、その顧客は、出所の混同などしないということである。)。
したがって、フランスのデパート名としての「ボンマルシェ」が日本人需要者間で周知でも著名でもない以上、請求人が、「被請求人が請求人の営業及び商標の周知性に只乗りせんとする」と主張することは勘違いも甚だしく、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかである。また、需要者にとって、出所の混同は皆無であるので、同項第15号に該当しないことも明らかである。

4 当審の判断
(1) 引用標章の周知性について
請求人は、「Le Bon Marche」、「ルボンマルシェ」ないしは「Bon Marche」、「ボンマルシェ」(以下、これらをまとめて「引用標章」という。)が請求人の名称及びハウスマークとして著名である旨主張し、証拠を提出しているので、この点について検討する。
請求人の提出に係る証拠によれば、請求人の所有するデパート「Le Bon Marche」がパリに存在し、仏和辞典(甲第1号証)に記述されてていることは認められる。しかしながら、該仏和辞典は発行日が不明であるほか、上記証拠中、本件商標の登録出願前の発行に係るものは甲第3号証(「LE BON MARCHE」カタログ1990年冬号)のみであり、その他はいずれも本件商標の登録出願後やごく最近に発行されたものであることが認められる。
しかして、上記デパートについて一部の仏和辞典に記述されているという事実のみによって上記デパートの名称が一般に広く認識されているということはできないし、上記証拠によれば、最近では、上記デパートについて我が国においても雑誌等に紹介されていることから、引用標章は、我が国においてもある程度知られていることが窺えるとしても、本件商標の登録出願時においては、我が国はもとより外国においても取引者、需要者間に広く認識されていたということはできない。
また、請求人が挙げる各国の商標登録例は、いずれも本件商標の登録出願後のものであるし、元来、ある商標が各国に登録されたことのみによってその商標が周知著名になるものでもないから、上記登録例をもって引用標章が取引者、需要者間に広く認識されていたとはいえない。
(2) 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、引用標章が著名であることを前提として、被請求人が本件商標を使用することは、請求人の営業及び商標の周知性に只乗りするものであり、国際信義に反し、社会公共の利益又は一般的な道徳観念に反する旨主張している。
しかしながら、(1)で述べたように、引用標章は本件商標の登録出願時には取引者、需要者間に広く認識されていたものではなく、また、本件商標を構成する「Bon Marshe」の文字は「安い、廉価の」の意味を有するフランス語であることからすれば、被請求人が引用標章の存在を知った上で、これに只乗りする意図をもって本件商標の登録出願をしたとはいい難く、被請求人が本件商標を採択し出願したのは偶然の一致といわざるを得ない。
そして、本件商標は、その構成上記のとおりであって、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その指定商品に使用することが国際信義に反し、社会公共の利益又は一般的な道徳観念に反するものともいえない。また、法律によって使用が禁止されているものでもない。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるとすることはできない。
(3) 商標法第4条第1項第8号について
請求人は、「Bon Marche/ボンマルシェ」は請求人の著名な名称であり、被請求人が請求人の承諾なしに本件商標を出願し登録したものである旨主張している。
しかしながら、(1)で述べたように、引用標章は本件商標の登録出願時に取引者、需要者間に広く認識されていたものではなく、請求人の名称は「オー ボン マルシェ メゾン アー ブシコー」であり、「Bon Marche/ボンマルシェ」が請求人名称の著名な略称として広く認識されていたということもできないから、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものであるとすることはできない。
(4) 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用標章が著名であることを前提として、本件商標を被請求人が使用するときは、本件商標を付した商品が請求人の営業に係る商品又は請求人と何らかの経済的関係にある者の営業に係る商品であるとの誤認を生ずるおそれがある旨主張している。
しかしながら、(1)で述べたように、引用標章は本件商標の登録出願時に取引者、需要者間に広く認識されていたものではないから、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用標章を連想、想起するようなことはなく、該商品が請求人又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
してみれば、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとすることはできない。
(5) まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号及び同第15号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
本件商標

審理終結日 2000-09-04 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-06 
出願番号 商願平4-186425 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (014)
T 1 11・ 271- Y (014)
T 1 11・ 23- Y (014)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 実 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 小池 隆
寺光 幸子
登録日 1995-07-31 
登録番号 商標登録第3063582号(T3063582) 
商標の称呼 ボンマルシェ 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 伊関 正孝 
代理人 高橋 利全 
代理人 佐藤 睦美 

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