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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z09
管理番号 1036971 
審判番号 審判1999-1562 
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-28 
確定日 2001-02-07 
事件の表示 平成 9年商標登録願第128657号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲した構成からなり、第9類「フラッシュ用光拡散防止具」を指定商品として、平成9年6月17日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、『フラッシュ用光拡散防止具』と記載された商品を指定商品としているところ、写真機械との関係では、発光器に例えば笠状器具を取り付けて光の調整をすることが普通に行われており、しかも、光の拡散を防止するのにも適していると考えられる被写体がある前方以外の方向を覆うかの如き形状より構成されている点を踏まえるならば、その指定商品の形状のひとつであろうと容易に想起させるものであることから、これを指定商品に使用したときは、その商品の形状を表示するに過ぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する」旨認定、判断し、同法第3条第2項の適用も否定して、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1) 平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的に表された標章であって、商品又は役務について使用をするものを登録する立体商標制度を導入し、その中には商品若しくはその包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含まれるとしても、商品等の形状は、それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、この商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは、前示したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品・役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感に関わる形状は、未だ、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないというのが相当である。
また、商品等の形状は同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人も使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係ない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標は、使用された結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品又は役務と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても、「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている形状について重ねて又はその権利消滅後商標登録することは、知的財産権制度全体に不合理な結果をもたらすことになる。
(2)これを本願についてみれば、本願商標は、その構成から明らかなように、奥行きのある扇形の光の反射笠部及びカメラ取付部からなるものであって、フラッシュ用光拡散防止具の一形態を表すものであるから、これを指定商品「フラッシュ用光拡散防止具」に使用しても、取引者、需要者は、単に、指定商品自体、すなわち、フラッシュ用光拡散防止具と認識するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、その指定商品に使用したときは、指定商品の形状を表示するにすぎないものというべきである。
(3)(イ)請求人は、本願商標に係るフラッシュ用光拡散防止具は、幌馬車をイメージしたユニークな形態である旨主張する。
しかしながら、前示認定のとおり、本願商標に係るフラッシュ用光拡散防止具は、奥行きのある扇形の反射笠部及びその下部のカメラ取付部からなるものであって、全体として観察するときは、フラッシュ用光拡散防止具の基本的な特徴を備え、その一形態を表示したものであるというべきものである。そして、前記奥行きのある扇形の反射笠部はストロボから発する光を自在にコントロールするために採択された形状と認められるものである(第12号証)。
そうとすれば、本願商標は、請求人主張のような特徴的な形状からなるものであっても、それがフラッシュ用光拡散防止具の本質的な機能に関わるものである以上、これに接する取引者、需要者は、当該商品フラッシュ用光拡散防止具の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
(ロ)請求人は、本願商標は日本を含めて世界的に販売され、広告されているから商標法第3条第2項の規定により登録されるべきである旨主張し、第1号証ないし第18号証を提出している。
しかしながら、請求書及び各号証によれば、請求人に係るフラッシュ用光拡散防止具がわが国において販売されていることは窺われるとしても、同フラッシュ用光拡散防止具は、「LUMIQUEST」「ルミクエスト」の商標の下で販売されていること、そして、発売開始時期が1995年であること及び販売数が各暦年一万台未満であることが認められる。
してみれば、請求人提出の各号証等によっては、本願商標に係るフラッシュ用光拡散防止具の形状が、その形状のみをもって、請求人の業務に係る商品として、商標法第3条第2項の規定を満たす程には、取引者、需要者の間において、認識されるに至っているものとは認め難いといわなければならない。
また、請求人の調査によれば、本願商標に係る形状のフラッシュ用光拡散防止具が他の企業によって生産、販売している事実があるということであるから、この点においても、本願商標について、商標法第3条第2項の規定を適用することは妥当でないというべきである。
(ハ)なお、立体的形状からなる商標であっても、商品又はその包装の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申P31参照)。
4 結論
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、正当であって取り消す限りでない。
よって結論のとおり審決する。
別掲 本願商標






審理終結日 2000-09-13 
結審通知日 2000-09-26 
審決日 2000-09-20 
出願番号 商願平9-128657 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 宮川 久成
久保田 正文
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 
代理人 足立 泉 
代理人 柳生 征男 

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