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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z16
管理番号 1033001 
審判番号 審判1999-35521 
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-24 
確定日 2001-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4152454号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4152454号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4152454号商標(以下「本件商標」という。)は、「ANTICA SELLERIA RITZ」の欧文字を横書きしてなり、第16類「革製書類ホルダー」を指定商品として、平成7年11月24日登録出願され、同10年6月5日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、第8号、第15号及び第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきであると主張して、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として甲第1号証ないし同第30号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであることについて
請求人の所有する登録第2089300号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第25類「フランス製の紙類、フランス製の文房具類」を指定商品として、昭和60年3月1日登録出願、同63年10月26日設定登録されているものである。
本件商標が、引用商標よりも後願に係るものであり、かつ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが抵触することは明白である。
さらに、本件商標から生じる称呼「アンチカ セレリア リッツ」は全体で10音の構成音数からなる極めて冗長な構成であるから、区切られている部分で分離して発音する可能性が極めて高いというべきである。また、このような場合、冒頭或いは末尾が注意を引きやすいところ、本件商標の権利者の名称との関係から、末尾の「リッツ」に注意が向けられるのが自然である。その上、本件商標の商標権者はイタリア法人であることから、本件商標はイタリア語では「古来の馬具店リッツ」なる意味で理解されるところ、前半部分の「古来の馬具店」と後半部分の「リッツ」との間には何ら観念上の関連はないから、取引の簡易、迅速を尊ぶ取引社会において本件商標が単に「RITZ」の文字から「リッツ」とのみ称呼される蓋然性は非常に高いというべきである。しかも、後述するように欧文字「RITZ」は、我が国でも極めて著名な世界有数の超高級ホテルの略称であるから、本件商標に接する需要者、取引者は後半部の「RITZ」に注意を惹かれ、これを単に「リッツ」と称呼する可能性はさらに高いというべきである。
したがって、本件商標からは「リッツ」の称呼が生じ、かつ「リッツホテル」の観念が生じる、というべきである。
一方、引用商標は別掲の構成からなるが、請求人はフランスでホテル業を営む法人であるから、引用商標中の「PARIS」の文字は単に役務の提供の場所を表すにすぎず、したがって、自他商品等の識別力を何ら有さないものである。したがって、引用商標からは「リッツ パリ」の称呼以外に「リッツ」単独の称呼が生じることは明らかである。
以上のことから、本件商標と引用商標とは、称呼上及び観念上類似する商標であるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものであることについて
請求人は、フランス国パリに所在する「RITZ HOTEL」(リッツ ホテル)を経営するイギリス法人である。
同ホテルは、1898年にセザール・リッツにより、彼が創設した最初の直営ホテルとして、パリのヴァンドーム広場に面する一角に設立されたことに端を発して、設立当初から今日に至るまで多大な経営努力を続けた結果、世界の超一流ホテルとして不動の地位を確保し、かつ、確固たる名声を獲得し続けてきた。
しかして、「RITZ」「リッツ」が、請求人の略称及び前記ホテルの略称として、我が国で周知、著名なものであることは、フランス大使館作成の証明書(甲第3号証)、さらに、特許庁及び裁判所における審・判決(甲第9号証の1ないし同第27号証)、また、請求人の有する商標「RITZ」(第42類)は、特許庁の「日本国周知・著名商標検索」において周知、著名商標として挙げられている(甲第4号証)ことから、「RITZ」及び「リッツ」の名称が我が国において極めて周知、著名であることは疑いない事実である。
パリの「リッツ ホテル」は、オープン当初から極めて高い評価をうけ、世界的な著名人が宿泊利用し愛用したホテルであり、また、昭和天皇も昭和46年秋にヨーロッパ各国を歴訪された折り、同ホテルに宿泊されている。また、日本人の利用率も高い。
また、大修館書店発行の「ジーニアス英和辞典」(甲第5号証)によれば、請求人の経営するホテル「ritz」に由来する派生語も存在することがわかる。かかる事実からも、請求人の経営するホテル「RITZ HOTEL」及びその略称「RITZ」の周知、著名性は疑いない事実である。
さらに、請求人は、我が国において、本件商標の指定商品である「革製書類ホルダー」と類似する万年筆等の筆記用具、ペンスタンドの他、スカーフ、ネクタイ、コーヒーカップ、スプーン、財布、時計、本、写真立て等極めて多種多様な商品の販売活動を行っており(甲第6号証ないし同第8号証)、また、我が国における営業のため、その著名な商標「RITZ」「リッツ」を含む商標を多くの類に出願し、登録になっているものも数多く存在する。
このように、「RITZ」「リッツ」の表示が請求人の営業に係る標章として自他商品等識別力を有する商標であることは明らかである。そして、該表示が請求人及び請求人が経営する「RITZ HOTEL」「リッツホテル」の略称及び請求人の商標として、本件商標の出願日である平成7年11月24日より相当以前から我が国において極めて周知、著名になっていたことは疑いない。
一方、前記のとおり本件商標は、「ANTICA SELLERIA RITZ」の欧文字よりなるものであるから、全体として特定の意味を表示するような語義的一体性はなく、また、その他に全体が一体のものとして把握、認識されるものとすべき理由もないから、これは「古来の馬具店」を意味する「ANTICA SELLERIA」の文字と、「RITZ」の文字とを結合させてなる商標として認識されると考えられる。したがって、本件商標が請求人の周知、著名な略称「RITZ」をその構成中に含むことは明らかである。しかして、本件商標は、その構成中に請求人の周知、著名な略称「RITZ」を含むものであるにも拘わらず、商標権者はその登録について請求人から承諾を得ていない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであることについて
前記のとおり、請求人の経営する「RITZ HOTEL(リッツホテル)」は、世界的な超一流ホテルであり、単に「リッツ」という略称で呼ばれている。しかして、かかる事実は本件商標の出願日である平成7年11月24日より相当以前から我が国において周知、著名なものとなっていたことは明らかである。また、請求人は、我が国において、本件商標の指定商品「革製書類ホルダー」と抵触する万年筆等の筆記用具を含む幅広い分野において多種多様な商品を販売している。
かかる事実に鑑みれば、請求人の周知、著名な略称及び商標である「RITZ」と称呼上類似であって、かつ、該文字をその構成中に含む本件商標が指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、当該商品が請求人あるいはこれと何らかの関係があるものによって製造、販売された商品であるかの如く誤認し、商品の出所について混同を生じる可能性が高いというべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するものであることについて
前述のように、請求人は、幅広い分野において、優れた品質の商品の製造、販売を行っている。したがって、請求人の周知、著名な略称であり、且つ商標である「RITZ」「リッツ」と称呼上類似し、若しくは、これをその構成中に含む本件商標が指定商品について使用された場合、需要者、取引者は、請求人の業務との間に出所の混同を生じるばかりでなく、「RITZ」又は「リッツ」の高級イメージから、該商品が請求人の商品と同等の品質を備えた高級品であるかの如く商品の品質の誤認を生じるおそれがあるというべきである。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。

3 被請求人の答弁
被請求人は、答弁していない。

4 当審の判断
(1)「RITZ」の著名性について
請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、イギリス法人であり、同人の経営する「RITZ HOTEL」は、1898年セザール・リッツによりパリのヴァンドーム広場にオープンしたホテルである。ルイ14世風の典雅な造りの建物やルイ15世・16世スタイルの典雅な家具その他の調度品の優美さ、豪華さにおいてオープン当初から極めて高い評価を受け、オープン一年目の顧客リストには世界の大富豪、王侯貴族たちの名が連ねられていた。昭和天皇も昭和46年秋にヨーロッパ各国を歴訪された折り、同ホテルにも宿泊されている。
(イ)同ホテルの位置するパリの一角は、ルーブル博物館、オペラ座等の有名な歴史的建造物の存在や、有名なファッションの店舗のある場所で、毎年フランスを訪れる何千もの日本人旅行者に非常に人気のある場所である。そして、数多くの日本の旅行代理店及び旅行業者が、カタログ、パンフレットにおいても同ホテルについて言及している。
また、同ホテルは世界の著名な映画にも登場しており、中でも「昼下がりの情事」「巴里のアメリカ人」「雨の朝巴里に死す」の映画の舞台になったことは有名である。
そして、日本で発行された英和辞典によれば、「ritz」の語は、「見せびらかし、誇示」等を意味する語として記載されているが、高級ホテル「ritz」の名に由来する旨の記載も認められる(甲第5号証)。
(ウ)「RITZ HOTEL」「リッツ ホテル」及びその略称である「RITZ」「リッツ」の著名性については、請求人の提出している判決並びに審決及び登録異議の申立てについての決定においても認められている(甲第9号証の1ないし同第30号証)。
前記の事実よりすれば、「RITZ」の表示は、請求人の経営に係る「RITZ HOTEL」を指称するものとして、我が国においても、遅くても本件商標の登録出願日前には広く知られていたと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(2)商品の出所の混同のおそれについて
(ア)本件商標は、「ANTICA SELLERIA RITZ」の欧文字よりなるものであるところ、前半部の「ANTICA SELLERIA」の語は、イタリア語で「古来の馬具店」の意を有するものと認められ、後半部の「RITZ」は本件商標の権利者の名称の一部と認められることから、全体からは「古来の馬具店リッツ」の意を有するものである。
しかし、本件商標の構成は冗長であり、我が国においてイタリア語は英語ほどに広く知られている語ではなく、本件商標の後半部の「RITZ」の語は、前記のとおり我が国においては請求人の経営する「RITZ HOTEL」の略称として広く知られているものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の後半部に請求人の経営に係るホテルの著名な略称であり、商標としても使用されている「RITZ」の文字を有してなるものとみるのが相当である。
(イ)請求人は、我が国において、本件商標の指定商品である「革製書類ホルダー」と類似するペン、ペンスタンド、等の文房具類の他、食器類、ネクタイ、スカーフ等の被服、かばん類、袋物、時計、等各種商品を販売している。
そうすると、被請求人が本件商標をその指定商品に使用する場合には、前記のとおり請求人にかかる「RITZ」の著名性、及び請求人が日本においても各種商品を販売している事実を考慮したとき、これに接する取引者、需要者は、本件商標中の「RITZ」の文字に注目し、前記周知になっている請求人にかかる商標を連想、想起し、請求人又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのようにその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

5 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、請求人の主張する他の無効理由について論及するまでもなく、同法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲 引用商標


審理終結日 2000-07-19 
結審通知日 2000-08-01 
審決日 2000-08-21 
出願番号 商願平9-124490 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z16)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩内 三夫井岡 賢一大森 友子 
特許庁審判長 佐藤 敏樹
特許庁審判官 杉山 和江
田代 茂夫
登録日 1998-06-05 
登録番号 商標登録第4152454号(T4152454) 
商標の称呼 アンティーカセッレリーアリッツ、リッツ、アンティーカセッレリーア 
代理人 清水 徹男 
代理人 松尾 和子 
代理人 大島 厚 
代理人 中村 稔 
代理人 加藤 建二 
代理人 醍醐 邦弘 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 井滝 裕敬 

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