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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) 117 |
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管理番号 | 1030044 |
異議申立番号 | 異議1997-90709 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-12-12 |
確定日 | 2000-09-07 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第4041602号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4041602号商標の登録を取消す。 |
理由 |
本件商標は、「POLOCITY」の欧文字と「ポロシティー」の片仮名文字を上下2段に書してなり、第17類「被服 布製身回品 寝具類」を指定商品とするものである。 登録異議申立人(ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ、以下「申立人」という。)の提出に係る甲第4証ないし同第8号証及び職権をもって調査した事項を総合すれば、「POLO」及びこれより生ずる「ポロ」の称呼は、わが国において、遅くとも昭和55年までには、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するためのものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認め得るところであり、本件商標の登録査定日である平成9年8月15日においてもその著名性は継続していたものと認められる。 ところで、本件商標は前記したとおりの構成よりなるものであるところ、全体として「ポロ都市」なる意味合いを看取させるものであるとしても、上記意をもって親しまれた都市が現実に存在し、かつ、一般世人によく知られているといった格別の事情が存するものとは認め難いところであり、前記認定の如く、「POLO」及びこれより生ずる「ポロ」の称呼が、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するためのものとして、取引者、需要者の間に広く認識されてる事情を考慮すれば、本件商標に接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」及び「ポロ」の文字部分に強く印象付けられ、ラルフ・ローレン、もしくは申立人を容易に想起させるとみるのが相当である。 してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、申立人の業務に係る商品、もしくはラルフ・ローレンと経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものと認める。 4 商標権者の意見 商標権者は、意見書を提出して概略次のように主張し、参考資料1ないし5を提出している。 (1)本件商標は、審査段階で商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶されたものであるが、この拒絶査定に対する不服審判事件において、平成9年5月6日付審決をもって、原査定を取り消したものであるにもかかわらず、本件取消理由通知は、上記拒絶査定の拒絶理由と全く同一の理由であり、上記審決の理由とは全く反対の結論である。 上記拒絶査定不服審判における審決からさして時間が経過していないにもかかわらず、また、上記審決以後何ら状況に変化がないにもかかわらず、特段の事情変更について何等認定をせずに、特許庁審判部という同一の部署が反対の結論を導くことは、法的安定性を欠き、商標の登録制度に対する予測可能性を奪うものであり、このような正反対の結論を導き出すべき根拠についての理由不備であって、それ自体違法であると言わざるを得ない。 (2)本件商標とラルフ・ローレン・ポロの登録商標との混同のおそれについて ▲1▼ラルフ・ローレンがデザインした紳士服、ネクタイ等に、前記の標章が付されてラルフ・ローレンの商品を示す標識として広く著名になったものは、「Polo」単独ではなく、「乗馬したポロ競技者がマレットを振り上げている図柄」、「Polo Ralph Lauren」、「Polo by Ralph Lauren」といった標章が組み合わされてなるものである。(以下、商標権者の主張に限り、これを総称してラルフ・ローレン・ポロ標章という。) ▲2▼「Polo」、「ポロ」は、一般に知られたスポーツ競技の普通名称(「広辞苑第5版」参考資料1)であり、ポロ競技は英国において、数百年の歴史をもって盛んに行われ、世界50か国以上で競技されている伝統的スポーツである。 そして、その競技の際に着用することを語源とする「ポロシャツ」(参考資料1)は、カジュアルウエアのごく一般的な商品を表すもので、わが国において、その名を知らない者はないほど有名な普通名称である。 ▲3▼前記▲1▼のように、固有名詞や図柄を含む商標によって、始めてラルフ・ローレン等への商標の識別性が是認されるのであり、これは、「Polo」、「ポロ」が普通名称であることからすれば、当然のこととして理解されるのである。 そして、ラルフ・ローレンが普通名称である「Polo」、「ポロ」を独占すべき根拠は全くないのであり、前記のような実際の使用態様で、ラルフ・ローレン・ポロ標章が使用されて著名になったからといって、「Polo」、「ポロ」なる標章がラルフ・ローレンの商品標識として通用していたわけではないのである。 ▲4▼現在、「POLO」を含む商標登録は、旧17類の被服を指定商品として多数存しており、また、日本での「POLO」関連ブランドは、約30種類あり、売上総額は年2000億円と言われている(「マンスリーブランドマーケットレポート」参考資料2、「’95ライセンスブランド&キャラクター名鑑」参考資料3)。 これらは、上記のような事情に基づくものである。 ▲5▼「POLO」を含む商標登録として旧17類等に商標登録されている具体例としては、[ビバリーヒルズポロクラブ」、「Polo Club」などの登録商標があり(商標公報、商標登録原簿;参考資料4、5)、これらは、わが国において多数の被服に使用され、市場に完全に定着している。 即ち、消費者は、「Polo」なる語句が標章中に含まれていても、それぞれを別個のものとして認識しているからこそ、「ビバリーヒルズポロクラブ」、「Polo Club」の商品化事業が繁栄したのである。 「ビバリーヒルズポロクラブ」、「Polo Club」の商品化事業が、仮に、ラルフ・ローレンのブランド力のフリーライドを目指していたとすれば、わが国において、現在のような受け入れられかたはできなかったといえる。 換言すれば、需要者は、ラルフ・ローレン・ポロ標章と「ビバリーヒルズポロクラブ」、「Polo Club」を完全に別のものとして識別しているものであり、そこには全く混同は生じていないものというべきである。 この事実が、逆に、少なくとも本件登録商標の出願時においては、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するための標章が、「POLO」またはこれより生ずる「ポロ」の呼称そのものでないことを物語っているのである。 ▲7▼以上より、本件商標とラルフ・ローレン・ポロ標章においては、両者に「POLO」なる語が含まれていても、消費者はこれらを別個のものとして認識するのであり、したがって、本件商標は、ラルフ・ローレン・ポロ標章との間にその出所において混同を生ずるおそれは存在せず、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではない。 (3)申立人の提出に係る甲第4号証ないし同第8号証からは、前記の取消理由通知のような事実関係を認定することはできず、特許庁がこのような事実認定を行うとすれば、採証法則を誤ったものと言わざるを得ない。 5 当審の判断 (1)商標権者は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて、特許庁審判部という同一の部署が反対の結論を導くことは、法的安定性を欠き、商標の登録制度に対する予測可能性を奪うものであり、このような正反対の結論を導き出すべき根拠についての理由不備であって、それ自体違法であると言わざるを得ない旨主張する。 確かに、審判部という同一の部署で反対の結論に達することは好ましいものとはいえないが、登録後の異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであり、第三者からの登録異議の申立てに理由があるとすれば、登録審決が覆ることもやむを得ず、その審決に拘束されるべきものではない。 したがって、上記商標権者の主張は採用できない。 (2)本件商標の商標法第4条第1項第15号違反について ▲1▼株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」(甲第4号証)、サンケイマーケッティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」の記載によれば、以下の事実が認められる。 アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年に服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。この頃から、その名前はわが国の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の各標章が使用され、これらは「ポロ」の略称で呼ばれるようになった。 ▲2▼株式会社洋品界(昭和55年4月)発行「月刊『アパレルファッション』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」の「ポロ/POLO」の項及びボイス情報株式会社(昭和59年9月)発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述、及び昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事によれば、わが国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、販売をしたことが認められる。 ▲3▼また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品については、株式会社スタイル社(1971年7月)発行「dansen男子専科」をはじめ、前記「男の一流品大図鑑」、株式会社講談社(昭和54年5月及び同55年6月)発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、「世界の一流品大図鑑’80年版」、株式会社チャネラー(昭和54年9月)発行「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」、婦人画報社(昭和55年12月)発行「MEN’S CLUB1980,12」などにおいて「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題のもとに紹介されていることが認めらる。 ▲4▼上記▲1▼ないし▲3▼で認定した事実及び商標「Polo Club」に関する東京高等裁判所の判決(甲第5号証)を総合すれば、「Polo」の文字をはじめとする「by RALPH LAUREN」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の各標章は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章として、遅くとも昭和55年頃までには、わが国において取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その認識の度合いは現在においても継続しているというのが相当である。 ▲5▼また、1989(平成1年)年5月19日付朝日新聞(甲第8号証)によれば、「昨年二月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の・・・『Polo』の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークを付けたポロシャツ・・・を売っていた疑い。」なる記事が認められ、昭和63年には既に、わが国において「Polo」の文字を使用した偽物ブランド商品が出回っていた事実が認められる。 ▲6▼ところで、本件商標は、前記構成よりなるものであるところ、構成全体をもって、わが国において親しまれた都市の名称を表すものとは認められないばかりでなく、その構成中、看者の注意を強く惹く語頭部分に、前記認定のラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、ネクタイ、婦人服等の被服などに使用され、わが国においても広く取引者、需要者に認識されている「Polo」、もしくは「POLO」と同一綴り文字よりなる「POLO」の文字を有しているものである。 してみると、本件商標は、これをその指定商品である「被服 布製身回品 寝具類」について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、「POLO」の文字部分に強く印象付けられ、該商品が申立人の業務に係る商品、もしくはラルフ・ローレンと経済的または組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。 ▲7▼上記認定に関し、商標権者は、「POLO(ポロ)」は、スポーツ競技の普通名称であり、該競技に由来する「ポロシャツ」は一般的商品を表すものであることから、「POLO」をラルフ・ローレンにのみ独占させるべき根拠がないこと、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等には、「Polo」単独ではなく、「乗馬したポロ競技者がマレットを振り上げている図柄」、「Polo Ralph Lauren」、「Polo by Ralph Lauren」といった標章が組み合わされて使用されていること、旧17類には「POLO」を含む商標が多数登録されており、実際の市場においても混同は生じていないことなどを挙げ、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない旨を主張する。 しかしながら、「POLO(ポロ)」がスポーツ競技の名称を表すものであるとしても、被服等を取り扱う分野においては、前記認定のとおり、「POLO」は、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、ネクタイ等を表示するためのものとして、わが国において極めて著名であり、その偽物が市場に出回っている事実をも考慮すれば、ラルフ・ローレン及びその関連会社以外の者が「POLO」を含む商標を被服等に使用した場合には、この種商品の取引者、需要者をしてラルフ・ローレン及びその関連会社の取扱いに係る商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがないと断ずることはできず、このことは、過去に「POLO」を含む商標がラルフ・ローレン以外の者により登録された事実が存在するとしても、今日の「POLO」標章の著名度からすれば、上記認定を左右するものではないから、上記商標権者の主張は理由がない。 (3)商標権者は、申立人の提出に係る甲第4号証ないし同第8号証からは、前記の取消理由通知のような事実関係を認定することはできず、特許庁がこのような事実認定を行うとすれば、採証法則を誤ったものと言わざるを得ない旨主張するが、登録異議の申立てについての審理については、特許庁による登録処分の見直しという登録異議申立制度の趣旨から、商標権者、申立人の主張に拘束されることなく、登録異議の申立てがなされた登録について取消理由の有無を職権で審理することができることは、商標法第43条の9第1項の規定より明らかであるから、上記甲第4号証ないし同第8号証から取消理由通知記載のの事実関係のすべてを認定することができないとしても、「職権をもって調査した事項を総合すれば」(取消理由通知)、前記(2)で認定したとおり、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるもの認められるから、商標権者のこの主張は採用できない。 (4)むすび 以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、通知した取消理由は、妥当なものであるから、本件商標登録は、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-05-27 |
出願番号 | 商願平3-37915 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(117)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大渕 敏雄 |
特許庁審判長 |
金子 茂 |
特許庁審判官 |
茂木 静代 小松 裕 |
登録日 | 1997-08-15 |
登録番号 | 商標登録第4041602号(T4041602) |
権利者 | ジャス・インターナショナル株式会社 |
商標の称呼 | 1=ポロシティ- 2=ポロ |
代理人 | 城村 邦彦 |
代理人 | 秋野 卓生 |
代理人 | 久保田 伸 |
代理人 | 田中 秀佳 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 早稲本 和徳 |
代理人 | 栗宇 一樹 |
代理人 | 岡田 稔 |
代理人 | 飯田 秀郷 |
代理人 | 江原 省吾 |
代理人 | 白石 吉之 |
代理人 | 黒岩 徹夫 |
代理人 | 和田 聖仁 |