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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111
管理番号 1029623 
審判番号 審判1998-30385 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-04-17 
確定日 2000-10-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2145918号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 商標法第50条の規定により、登録第2145918号商標の登録は、取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I 本件商標
本件登録第2145918号商標(以下「本件商標」という。)は、「NetCare」の欧文字を横書きしてなり、第11類「電気通信機械器具及び本類に属する他の商品」を指定商品として、昭和61年9月17日登録出願、平成1年6月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
II 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1.本件商標は、日本国内において3年以上、その指定商品について使用されていない。また、本件商標は、専用使用権者及び通常使用権者のいずれの登録もなされていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標が前権利者であるパラダイン コーポレーションから現権利者(被請求人)であるルーセント テクノロジーズ インコーポレイテッドに譲渡されてから、パリ条約第5条C(1)の「相当の猶予期間」を経過していないため、商標法第50第1項の適用を受けない旨主張するが、上記の「相当の猶予期間」とは、商標法第50条第1項における「三年以上」を意味することは明らかであり(甲第3号証)、同条項中の「継続して三年以上」の解釈が、商標権が移転した場合に、前商標権者の不使用期間を通算するか否かが問題になるところ、東京高裁昭55(行ケ)329の、いわゆるゴールドウエル事件(甲第4号証)において、前商標権者の不使用期間を通算する旨判決文中に述べられている。ちなみに、「継続して三年以上」の解釈で、前商標権者の不使用期間を通算することについては、わが国における通説においても支持されている(甲第5号証)。
したがって、商標法第50条第1項における「三年以上」とは、前商標権者から通算して「三年以上」であることを意味しており、このような解釈は、パリ条約第5条C(1)に反するものではない。
(2)被請求人は、本件商標を使用しているとして、乙第1号証ないし乙第6号証を提出している。
しかしながら、乙第1号証ないし乙第6号証は、いずれも「NetCare」の商標及び、1997年12月4日から1998年4月の日付が付されているとしても、当該証拠方法の詳細については、被請求人も認めるとおり、乙第1号証のみしか提出されていない。そこで乙第1号証をみるに、
▲1▼その1頁目には、「アプリケーションインテグレーションサービス」なる語が表示されており、被請求人自身においても、本証拠方法が、本件商標の指定商品に係るものではなく、役務に係るものであることを認識しているものと考えられること、
▲2▼2頁の本文第3行目には、「・・・今回のサービス内容・・・」の語句があり、乙第1号証が役務に係るものであることを直ちに認識させること、
▲3▼3頁目には、「全体コンサルティング」、「AUDIXシステムデザイン導入」、「システムアドミニストレーター トレーニングクラス」等の文言があり、これらの文言は、本件商標の指定商品の需要者においては、役務を意味する言葉、具体的には第41類及び第42類に属する役務として認識されることは確実であり、本件商標の指定商品に使用しているものとは絶対に認められないものであること、
▲4▼乙第1号証全体を見ても、請求人のみならず本件商標の指定商品の需要者においても、本件商標の指定商品ではなく、役務を表すものと認識される内容であることは確実であること、
▲5▼乙第1号証には、被請求人が主張する「音声処理電気装置」なる文言は一切ないこと、
▲6▼被請求人が主張する「音声処理電気装置」が、3頁における「ボイスメッセージシステム」を指しているとしても、乙第1号証は、本件商標と「ボイスメッセージシステム」の関係を示すものはなく、なおかつ、3頁において「ボイスメッセージシステムの導入にあたり」の文言があることから、乙第1号証がボイスメッセージシステムとは無関係であることと考えられること、
以上▲1▼ないし▲6▼により、乙第1号証が、本件指定商品について使用されていることを証明するものとは、到底認められないものである。
III 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1.本商標権についてパラダイン コーポレーションから被請求人へ移転登録があったのは平成9年11月17日であり、本件審判請求の5月ほど前にすぎない(甲第2号証)。
また、被請求人は、審判請求の2年ほど前の1996年に米国デラウエア州の法律の下で組織された法人である。
このように、被請求人が本件商標の商標権者となってから本件審判請求まで5月ほどしか経過しておらず、また、パリ条約第5条C(1)の「相当の猶予期間」を経過していないのであるから、被請求人は、商標権者等がそれぞれ3年以上権利者であることが基本的に前提とされていると解することができる商標法第50条第1項の適用を受ける商標権者ではなく、商標法第50条第1項の規定によって本件商標についての登録を取り消すことは認められない。
2.本審判請求に係る指定商品について、登録商標の使用の事実を以下に立証する。
(1)乙第1号証は、被請求人が製造販売する音声処理電気装置である「INTUITY AUDIX」(登録商標)及び「INTUlTYMESSAGE MANAGER」(登録商標)を販売するために、顧客にアプリケーンョンインテグレーションサービスを提案した提案書の写しである。
▲1▼この提案書により顧客に販売された音声処理電気装置は本件審判請求に係る指定商品である電気通信機械器具に属することは明らかである。
▲2▼この提案書表紙の左下部に記載された「NetCare」の標章は、本商商標と同一である(甲第1号証)。しかも、登録

▲3▼この提案書は商品を販売するために顧客に頒布されたものであり、商標法第2条第3項7号に基づき標章の使用に該当する。

の表示をして頒布している。
▲4▼この提案書が顧客に提出された日は1997年12月4日であり本件審判の請求登録の日より3年以内である。
▲5▼以上のように、被請求人は登録商標の使用をしていた。
(2)乙第2号証ないし乙第6号証はそれぞれ、乙第1号証と同様な提案書の表紙の写しであり、乙第1号証と同様に、被請求人は登録商標の使用をしていた。
IV 当審の判断
1.被請求人は、本件商標の前権利者から被請求人へ移転登録があったのは、本件審判請求の5月ほど前にすぎないものであり、パリ条約第5条C(1)の「相当の猶予期間」を経過していないから、商標権者等がそれぞれ3年以上権利者であることが基本的に前提とされていると解することができる商標法第50条第1項の適用を受ける商標権者ではなく、上記条項の規定によって本件商標の登録を取り消すことは認められない旨主張する。
しかしながら、パリ条約第5条C(1)で規定する「相当の猶予期間」は、わが国の商標法第50条において対応しており、「3年」というべきである。
そして、商標法第50条第1項に規定する「継続して三年以上」の「継続」とは、商標権の移転等の存在の有無にかかわらず、前商標権者、現商標権者を通しての期間をいうものと解するのが相当であり、したがって、同条第2項の規定より、第1項の審判の請求があった場合は、前商標権者、現商標権者にかかわらず審判請求の登録前3年以内の当該登録商標の商標権者(専用使用権者又は通常使用権者のいずれか)が、審判請求の登録前3年以内に、当該登録商標をその請求に係る指定商品(役務)について使用していることを、被請求人が証明しない限り、商標権者はその指定商品(役務)に係る商標登録の取消を免れないといわなければならない。
なんとなれば、当該登録商標の商標権につき、移転等がある毎に、その移転登録から3年以上使用されなかった場合とすれば、不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与える結果、国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなり、不使用取消審判制度の実効性が失われるからである。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
2.被請求人(商標権者)が本件商標を、本件審判の請求前3年以内に、請求に係る指定商品について使用していたか否かについて検討する。
(1)被請求人は、本件商標をその指定商品中の「音声処理電気装置」について、本件審判の請求登録前3年以内に使用しているとして乙各号証を提出している。
▲1▼使用に係る商標が本件商標と同一のものであること、使用の時期が本件審判の請求登録前3年以内であること、及び使用者が商標権者であることについては、当事者間に争いがなく、乙第1号証ないし乙第6号証を総合すれば、上記事実については、これを認めることができる。
▲2▼本件商標がその指定商品中の「音声処理電気装置」について使用されていたかについてみるに、乙第1号証(提案書の写し)の表紙には、「アプリケーションインテグレーションサービス」との記載が認められ、2枚目には、「ご提案書」と題し、さらに「弊社・・・は、Intuity Audix及びIntuity Message Managerアプリケーションインテグレーションサービスをご提供させていただく機会を得ましたことを・・・。今回のサービス内容は、システム導入サポートおよびトレーニングセッションのパートに分かれており、いずれもボイスメッセージシステムを、御社のビジネスにて最大限ご活用いただくために構成されております。」なる記載が認められる。
また、3枚目において、「全体コンサルティング」の項目では、「ボイスメッセージシステムの導入にあたり、システムデザイン、トレーニングの内容などにわたり、説明・・・を行います。各ボイスメールボックスの設定、オプション機能の導入などについても、ここで決定します。」と記載され、「AUDIXシステムデザイン導入」の項目では、「全体コンサルティングの内容に基づき、システム設定をデザインし、初期データーを投入します。・・・」とあり、「主な投入データー内容」として、「システムパラメーター、ネットワークパラメーター、Class Of Service、テスト用メールボックスデーター、ボイスポート設定データー、PBX接続設定データー」が記載されている。
その他、「システムアドミニストレータートレーニングクラス」、「Intuity Message Managerトレーニングクラス」と項目付けられていることが認められる。
▲3▼上記乙第1号証に記載の、例えば、「アプリケーションインテグレーションサービス」の語句は、「コンピューター処理の対象となる業務に関し、一つの全体システムを構築、保守、運用するサービス」なる意味合いを表すものと認められるものであり、「ボイスメッセージシステム」の語句は、「人間の声による伝言等を蓄積して保存し、これを交換するシステム」(日外アソシエーツ株式会社、1996年7月22日発行「英和コンピュータ用語大辞典 第2版」、「voice mail system」、「voice message」の項)を意味するものと認められ、乙第1号証を総合すれば、顧客が「ボイスメッセージシステム」(ボイスメールシステム)を導入するに当たり、被請求人がシステム設計をし、各種データーを投入するサービスやシステム管理者の養成サービスなどのサービス(役務)の提供と認められ、乙第1号証は、役務の提供に関するものとみるのが相当である。
そして、被請求人は、「ボイスメッセージシステム」が、被請求人のいうところの「音声処理電気装置」であることを認めるに足りる証拠を提出していないばかりでなく、該「ボイスメッセージシステム」が、商品として顧客に販売しているという事実を立証する証拠を何ら提出していない。
してみると、乙第1号証からは、本件商標をその指定商品中の「音声処理電気装置」について使用しているものとは認めることはできない。
また、乙第2号証ないし乙第6号証は、具体的に如何なる商品の販売、ないしは役務の提供をしているのか不明であるから、これらの証拠によっても、本件商標をその指定商品中の「音声処理電気装置」について使用しているものと認めることはできない。
そして、上記認定と同趣旨と認められる弁駁に対して、被請求人は何ら答弁するところがない。
3.以上によれば、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品について使用していたと認めることはできない。また、被請求人は、使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-09-29 
結審通知日 1999-10-19 
審決日 1999-10-29 
出願番号 商願昭61-97981 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (111)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富田 領一郎 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 小林 薫
茂木 静代
登録日 1989-06-23 
登録番号 商標登録第2145918号(T2145918) 
商標の称呼 1=ネットケア- 
代理人 三俣 弘文 
代理人 井桁 貞一 

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