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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審判199831206 審決 商標
審判199930539 審決 商標
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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 112
管理番号 1029550 
審判番号 審判1998-30663 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-07-01 
確定日 2000-12-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第2701329号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2701329号商標の指定商品中「船舶並びにこれらの部品及び附属品,タイヤ・チューブ修繕用ゴム貼付片,気体クッション式輸送機械器具,及びこれらの類似商品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2701329号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成2年11月5日に登録出願、第12類「船舶、航空機(航空機のタイヤ、チューブを除く)ロケット、鉄道車両並びにこれらの部品及び附属品、人力車、荷車、馬車、リヤカー、手押し車、うば車、そり、これらの部品及び附属品、タイヤ・チューブ修繕用ゴム貼付片、気体クッション式輸送機械器具」を指定商品として、同6年12月22日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第6号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、指定商品中の「船舶並びにこれらの部品及び附属品、タイヤ・チューブ修繕用ゴム貼付片、気体クッション式輸送機械器具、及びこれらの類似商品」について継続して3年以上日本国内において使用されていない。また、本件商標には、商標登録原簿によれば、専用使用権者、通常使用権者は存在しない。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、上記の指定商品についての商標登録は取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 被請求人は、答弁書中で「本件商標は商標権者の商号商標および社章商標であり」「本件商標が商号商標である」と繰り返し述べているが、本件商標の態様は、基本的にはαに由来し、右側を二重に表した描き文字を左に、右側に「ALPHA」のローマ字を「A」の横線を削除し、全体としてデザイン化を施したものと認められるが、この構成の中には会社の種類が全く表示されていないので商号商標であるとするのはいかなる意味か、理解に苦しむと言わざるを得ない。また、社章商標でもあるとするが、具体的に社章としている資料はない。
被請求人は、防衛的な商標も取消審判で取り消すことは法制度の趣旨に反するとしているが、本件商標は平成6年12月22日に登録されてから4年近くも経過していることになる。
本件商標は取消審判を請求した指定商品について、その間使用されていないことは確実である。このような不使用の商標権の存在を許すこと自体が、他人の商標選択(採択)の自由を故なく奪うという意味で公序良俗に反するとして法改正がなされたものである。
イ 被請求人は、「本件商標は、権利者を表示するものとして既に著名性を獲得している〜これに類似する商標については商標法第4条第1項第15号の規定により登録が排除されるとし、取消をしても、第三者の登録の余地のない商標について〜商標権利者が応答する〜権利者の負担は過大〜」と答弁している。しかし、著名性を獲得していると主張しながらその事実を窺わせる証拠方法は皆無で、何時あるいは何時ごろよりから使用を開始し、どのような商品に使用してきているか、本件商標を付した商品の売上はどの程度であったのか、広告宣伝に費やした金額や頻度等について全く言及していない。
また、一般的には権利者が指定商品に商標を使用しているのであればその事実を提示した答弁で足り概ね簡単ですみ、使用していないのであれば権利として保護に値する実体のない商標権を整理する意味で応答せず放置すれば足りるので「負担が過大である」とするのは事実に反する。
ウ 一方、被請求人の会社名の要部である「アルファ」と同一の称呼が生じることが確実な被請求人以外の所有する登録商標で、被請求人が社名を変更した1990年(平成2年)以前の登録である旧々分類以前の登録商標は甲第5号証に示すとおりであり、被請求人が社名を変更する以前の出願に係るもの及び社名変更した以降に出願し登録されている旧分類の登録商標は甲第6号証に示すとおりであり、枚挙に暇がないほど存在する。
「アルファ」はギリシャ文字の「a」に該当するもので様々な分野で商品商標として採択使用されてきていることが窺われる。「アルファ」に類似する商標は、被請求人の社名との関係で商標法第4条第1項第15号の規定に該当するとの主張は、同一称呼の商標の登録例からして、また過去の審査、審決例も提示できない被請求人の独善的な願望である。
なお、被請求人は、答弁書で「〜交渉を進める予定」と述べているが、具体的な進展がないことを付言する。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証を提出した。
(1)本件商標は、商標権者の商号商標及び社章商標であり、本件が取消されても、それにより第三者が本件の登録の権利範囲において新たな登録が認められるものではないので、登録を取り消すべき本来的な審判請求の利益のないものである。
(2)不使用取消審判の法制定趣旨
不使用商標の整理
不使用取消審判は、使用しない結果、保護すべき信用が蓄積されない商標の整理を行い、商標使用希望者の商標の選択の余地を開けることを目的としているものである。
本件商標は、商標権者の商号商標であり、商標自体が商標権者を表示するものであり、保護すべき信用が化体していることは明らかである。したがって、単なる個別商品の商標が使用されていないことと同列に論じられるべきものではない。つまり、商号商標が個別商品について使用がないからといって直ちに不使用取消審判により個別商品ごとに整理の目的とされるべきものではない。
むしろ、企業の多角経営化が一般的になっている現代においては、権利者が、本件商標の指定商品に業務を展開する可能性があり、業務を展開するについては、事前に商号商標を登録し使用の用意をしておく必要がある。まして、第三者が使用した時には、混同の生じる可能性のある範囲にあたる商品については、商号商標を防衛的に登録しておく必要がある。
このような防衛的な登録までも、不使用取消審判により取消すことは、不使用取消審判の法制定の趣旨に反するものである。
イ 新規出願者の商標選択の自由の確保
不使用取消審判の法目的の一つに、商標使用希望者の商標の選択の余地を開けることがあるが、第三者の商標選択の自由といっても自ずと限界がある。すなわち、他者の商号の使用は、例えその指定商品が異なるとしても、認められるものではない。また、他者の商号と類似する商標についても、同様に使用を認めるべきものではない。
したがって、他者の商号商標を取消してまで、商標使用希望者の商標の選択の余地を開ける必要があるとはいえないものである。
さらに、商号商標である本件商標を取消しても、本件商標は、権利者を表示するものとしてすでに著名性を獲得しているものであり、これに類似する商標については、商標法第4条第1項第15号の規定により登録が排除されるものである。したがって本件商標を取消しても、第三者に登録の余地を開くことにはならないものであり、取り消すことの利益がないものであり、審判請求の利益のないものである。
上記のような、取消をしても、第三者に登録の余地のない商標について、取消審判がある度に商標権利者が応答するとすれば、権利者の負担は過大なものとなり、到底その煩にたえないものである。
ウ 審判請求の実質的利益の欠如
平成8年の法改正により、不使用取消審判については、利害関係人であることを要しない旨の改正が行われた。その理由として、不使用取消審判が公益的なものであることが挙げられている。しかしながら、個別商品商標についての不使用取消審判については、この法理が妥当するとしても、商号商標について同一の法理が妥当するものではない。何よりも、商標自体が商標権利者を表すものとして広く知られているものであり、業務上の信用が化体されているからである。単に、不使用商標を整理するだけであれば、公益的なものとして利害関係を要求する必要はないが、本件のような場合にも同様に利害関係が必要ないといえるものではない。
エ 後願商標の非類似性
先登録商標と類似することを理由として、後願商標の出願が拒絶理由を受けた場合に、後願商標の出願人は、先登録商標との非類似を主張すべきである。非類似の主張が認められるならば、先登録商標を引例されたことを理由とする不使用取消審判は、実質的な利益のないものとなるからである。
本件商標は、権利者の商号商標であり著名性を獲得しているものであるから、本件商標との1音相違の後願商標は、1音の相違によっても容易に区別されるものである。
本件商標権者は、請求人の出願に係る後願商標について、これを排除する意思はないので、審査において、後願商標が本件商標と類似しないことが認められ登録になることが当然であると考えるものである。
(3)審判請求の実質的理由
平成8年の法改正により、不使用取消審判につき、利害関係の主張を要求されなくなり、本件審判請求の利害関係の主張がなされていないので、請求人の実質的な目的が本件審判請求書類だけからは知ることができない。
しかし、請求人は、第12類において商標「ALFAN」の出願(商願平9‐26093号)をし、平成10年4月14日の拒絶理由通知書により、本件と連合関係にあった商標を引用され、本件審判を請求したものと思われる。
しかしながら、被請求人(権利者)は、請求人の後願商標とは、非類似と判断しており、出願人との間に後願の登録・使用について合意を形成することも可能なものである。このような商標につき、不使用取消審判により登録が取り消されるとするなら、不使用取消審判制度の制度目的に合致しないものである。
さらに、被請求人は、本件審判の取下と後願の登録の同意、又は後願を本件商標権利者名で登録し出願人に再譲渡するなどの交渉を進める予定である。
以上のとおり、本件審判請求は、不使用取消審判の法制定の目的に反し、請求の利益のない審判であるので、本件商標は、商標法第50条の規定によって取り消されるべきものではない。

4 当審の判断
商標制度は、商標の保護を通じて商標に化体している商標権者の業務上の信用の維持を図ることを主要な目的とするものであるところ、この信用は、商標の使用をする者により商品や役務に一定の商標が継続的に使用されることにより形成されるものである。しかし、不使用商標は、このような業務上の信用が形成されていないから、本来、商標制度をもって保護すべきものに該当しないものである。
商標法第50条による商標登録の取り消し審判(以下、「不使用取消審判」という。)制度は、そのような観点に沿って設けられているものであり、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか、あるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その登録商標の存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなるから、請求をまってこのような商標登録を取り消そうとするものである。
ところで、被請求人は、本件審判請求について不使用取消審判の法制定の目的に反し、請求の利益のない審判である旨主張しているが、請求人の主張する本件審判の請求の理由及び被請求人の答弁に対する弁駁をみるに、当該審判は、被請求人を害することを目的とするものではないから、その請求は、権利の濫用と認められるものではないばかりでなく、商標制度の目的に反するものでもないから、請求の利益を有する正当な審判請求であるということができる。そうとすれば、被請求人の前記主張は採用できない。
そして、不使用取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取り消しを免れない。
しかるところ、本件審判の請求に対し、被請求人は、前記3の答弁をするのみで、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していることを何ら答弁、立証するところがない。
してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、被請求人により本件審判の請求に係る商品「船舶並びにこれらの部品及び附属品、及びこれらの類似商品」について、使用されていたものとは認められず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとは認められない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定商品中の「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものとする。
なお、被請求人は、答弁において「本件審判の取下と後願の登録の同意、又は後願を本件商標権利者名で登録し出願人に再譲渡するなどの交渉を進める予定である」旨及び平成11年4月7日付け上申書において「今後、後願の登録と、本件審判の取下について交渉の成立が見込まれるので、交渉が成立するまでの間暫く本件審理を猶予願いたい」旨述べているが、その後、相当の期間が経過するも何ら具体的進展がないので、上記のとおり審理した。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
本件商標


審理終結日 2000-10-05 
結審通知日 2000-10-20 
審決日 2000-11-02 
出願番号 商願平2-124158 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (112)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹内 弘昌江崎 静雄高山 勝治早川 文宏 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 三浦 芳夫
原 隆
登録日 1994-12-22 
登録番号 商標登録第2701329号(T2701329) 
商標の称呼 アルファ 
代理人 小川 順三 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 中村 盛夫 

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