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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない 028
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 028
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 028
管理番号 1029506 
審判番号 審判1998-35095 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-11 
確定日 2000-11-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4074134号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4074134号商標(以下「本件商標」という。)は、別記の構成よりなり、平成8年2月9日登録出願、第28類「釣り具」を指定商品として、平成9年10月24日に設定の登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効にする、との審決を求め、次の趣旨の理由を述べるとともに証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出している。
1 本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第15号及び同第16号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)商標権者株式会社スポーツザウルス(以下、「ザウルス」という。)は、本件商標を取得した。
(2)ザウルスは、かねてから評価の高い名品「フィリプソン」に目を付け、そのコピー商品(贋物)を作成することを企画した。
(3)そもそも名品「フィリプソン」とは、アメリカのバスフィッシングの歴史の中で生み出されたグラスロッドであり、製造者はアメリカ人技師ビル・フィリプソンであった。
「フィリプソン」は、創始者ビル・フィリプソンの名前そのものを商標としたものであり、その氏名を本体とするものであり、この商標、商号は、ビル・フィリプソン、同氏の死後は、相続人であるドナルド・E・フィリプソン氏が使用に関する権利を留保している。
右氏名部分に関して、同権利者が請求人に使用を許諾した事実はない。
彼の作り出す優秀なグラスロッドは、世界を席巻し釣り竿業界では知らぬものがないほどになった。その特徴は独特な製法で作られたエポキサイトといわれる材料で作られており、一本づつ手作業で糸が巻かれ、焼きを入れ、すべての行程が手作りで行われるというもので、生産量は極めて少ない上、製造者が皆高齢化しており、製造はとぎれがちであった(甲第1号証)。
このため、希少価値ゆえに価格も高騰しマニアの垂泡の的とされてきた。
(4)こうした希少価値に目を付けたザウルスは、コピー商品を作るべく、釣り具メーカーの株式会社天竜(長野県飯田市長野原700番42所在)(以下、「天竜」という。)に対し、日本製のPグラス樹脂を使用し、国産のグラスロッドの製法に従って、色、形が酷似したものを、同社に偽物である事を隠して、大量に機械生産させた。
この際、天竜には、コピー商品を作るという真相を明示せず、すべての権利を取得したという趣旨の説明をしていたという。
天竜では、エポキサイトなどはまったく使用せず、純日本製の製品として天龍製Pグラスを利用して製造しているということであり、「フィリプソン」とは素材においても、製法においても、全く異なるものであり、「フィリプソン」の完全復刻版などではないことを、消費者に明言している。
(5)ところが、ザウルスは、ザウルスが発行する「SAURUS」というパンフレットカタログにおいて次のように明示し、その説明をしている。
「かつてトップウオータープラッキングが隆盛だったアメリカで、トップウオーターロッドの極致として名声を博した、あの名作グラスロッド・フィリプソンの完全復刻だ。…日本にはついに数本しか入らず、いまはもう伝説になっているこの醍醐味を、是非味わっていただきたい。」(96年版パンフレット雑誌 甲第2号証)、「このロッドは、かつてアメリカでトップウオーターロッドの極致として名声を博した、あのグラスロッド・フィリプソンの完全復刻だ。」(同97年版 甲第3号証)として、アメリカ製フィリプソンを、忠実に再現して、製造したことを明示した。
更にロッドの説明として、「往年の名品バスティマーBC60Lを完全復刻。シャフト素材はBC60Lと同じエポキサイトグラス。ブランクカラー、スレツドカラーはもちろん、ガイドもオリジナルと同じカーボンガイド。グリップも完壁にオリジナルを再現した。」と表示し、販売を始めた。
(6)そのため、市場において、消費者から本物の「フィリプソン」として評判を集め、購入者は皆、アメリカで正規に製造され、正規の製品検査を経た本物「フィリプソン」と誤認して、購入した(被害者約5000人)。
(7)請求人、は米国において、現在唯一の「フィリプソン」の商標登録権者であり(甲第4号証)、製造販売権を有するものである。
現在、請求人は、かって製造し、保管してきたエポキサイト製の部品を丹念に手作業で完成させるという作業により、1本1本丹念に製造している。
その主任監督者は、かつてビル・フィリプソンと一生に働き、ともに製造を担当した当時のチーフビルダー、ポール・ハイタワー氏が担当している。
その製法は、かつてのままであり、まさに完全なフィリプソンのグラスロッドである(甲第5号証)。
請求人は、ザウルスに対して、商標の使用や、商品名「フィリプソン」の使用を許諾した事実はなく、ザウルスは過去においても右商品名の利用許諾を与えられたこともないし、製品の販売権を取得した事実もない。
(8)請求人は、本年9月ころから、日本において本格的に販売を開始し、その宣伝を始めた(甲第6号証及び甲第7号証)。
(9)しかるところ、違法なコピー商品(日本製グラスロッド)を、エポキサイト製であると偽り、更にアメリカ製グラスロッド「フィリプソン」の「完全復刻」と明示して、消費者に誤認される商標、商品名「フィリプソン」を明示して、本来の正規の商品と混同させている。
既に、公正取引委員会に対して被害届が多数出されており、被害者の会も発足していると言われている。各地の釣具店では、購入者からの苦情と、返品引き取り要求が出され、対応に苦慮していると言う。
(10)商標権者は釣り具販売業者であり、「フィリプソン」の商品名を周知し、その名声を利用しようと企てたことは明白である。前述のように、「あの名作グラスロッド・フィリプソン」「完壁にオリジナルを再現した。」「完全復刻版」と表示し、他人の商品の存在を知り、且つ当該他人の商品名「フィリプソン」が周知著名であることを利用している点で、その点も明確に認識していること、かつ消費者には「完全復刻」「完壁にオリジナルを再現した」と訴えることで、日本製のカーボンロッドを「フィリプソン」のロッドであると誤認させることを狙っている点で、品質誤認商品の混同を認識し、かつ容認している。
3 被請求人の答弁に対して請求人は何ら弁駁していない。
4 請求人は、平成10年10月12日付けで、「本件無効請求に係る証拠は、現在整理中であり、近日中に提出予定であるので、今後の審査は、その証拠を検討してから、進めていただきたい。」旨上申書を提出しているので、当審において、平成10年12月8日付け審尋書をもって請求人に上記証拠の提出を求めたが、請求人は、何ら提出していない。

第3 被請求人の主張
請求人は、本件審判の請求を棄却する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号は、人格権保護の規定である。したがって、本号に基づいて他人の商標登録を阻止し、無効としようとするものは、当該他人の商標が自己(請求人)の人格権を侵す関係にあることが条件となる。すなわち、本号に基づく無効審判請求における請求の利益を有するものは、当該登録商標と同一の名称又は著名な略称を有するものでなければならない(乙第1号証、昭和56年審判第11562号審決)。
しかるに、本件審判請求人は「有限会社リックスロッズ」であって、本件登録商標「Phillipson」とはその称呼においても共通するところは全くない。すなわち、審判請求人の人格権は、本件登録商標が商標権者(被請求人)により使用されることによって、何ら侵されるものではない。
したがって、請求人は、本件8号に関する請求につき、請求の利益を有しない者であるから、この部分について請求は却下されなければならない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求の利益
商標法第4条第1項15号はいわゆる私益保護の規定であるから、その請求人は当該著名な商標を有するものに限られる(乙第1号証、昭和56年審判第11562号審決)。
請求人「有限会社リックスロッズ」は、その主張する周知著名な商標「フィリプソン」の正当な権限を有するものであると主張し、甲第4号証を提出する。しかし、甲第4号証は、請求人が「PHILLIPSON ROD COMPANY」なる商標(「PHILLIPSON」ではない)を米国特許商標庁へ出願した事実を単に証するものに過ぎない。すなわち、甲第4号証は、請求人がその主張する周知著名なビル・フィリプソンの商標「フィリプソン」の正当な承継人であると認めるべき証拠でも、周知著名な商標「フィリプソン」が存在すると認めるべき証拠でもない。なお、もし、請求人がビル・フィリプソンの商標「フィリプソン」の正当な承継人であるならば、前記出願における使用開始日はビル・フィリプソンの使用開始日に遡って記載されているべきものである。しかるに、前記出願には、その使用開始日が1997年1月2日とされている。つまり、請求人は、その引用する「著名商標」を有する者ではない。
したがって、請求人は、本件15号に関する請求につき、請求の利益を有しない者であるから、この部分について請求は却下されなければならない。
・申請人の主張する登録商標について
「異議申立人(請求人の意味か?)は米国において、現在唯一のフィリプソン商標登録者であり」と主張し、甲第4号証を提出する(無効原因7)。
しかし、甲第4号証からは、「Richard Gottednker」なる者が「PHILLIPSON ROD COMPANY」なる商標を、「グラスファイバー製の釣り竿」を指定商品として、1997年9月25日に商標登録出願を行ったことが理解できるのみである。
ここにおける出願人は請求人と異なり、商標も「フィリプソン」ではない。そして、出願されているにすぎず、商標登録はされていない。
しかも、その出願書類によれば、米国における使用開始日は1997年1月2日であって、本件登録商標の出願日である1996年2月9日よりも後のことである。
したがって、商標の使用あるいは登録出願の先後関係において、請求人は被請求人に何ら優越する立場にはない。
請求人は「右申請人(請求人か?)は、ザウルスに対して、商標の使用や、商品名「フィリプソン」の使用を許諾した事実はなく、ザウルスは過去においても右商品名の利用許諾を与えられたこともない」(無効原因7、9行目)と述べるが、請求人はいかなる権限に基づきザウルスに対して商標の使用許諾をしようというのであろうか。被請求人が商標登録出願をしたのは、請求人が使用を開始する約1年も前のことである。
・申請人の主張する事業の承継について
請求人は、かつての「フィリプソン」釣り竿の製造者である「ビル・フィリプソン」の事業の承継人であるかのごとく主張するが、両者の関係を示す証拠は何ら提示されていない。
請求人が、自己の製造する製品の正統性を立証する根拠として提出する甲第5号証は、「1962年のフィリプソンのカタログ」と認められるものであって、請求人および請求人の商品とは全く関連が認められない。「その製法は、かつてのままであり、まさに完全なフィリプソンのグラスロッドである(資料5)」という主張(無効原因7、7行目)は何ら甲第5号証によって裏付けられるものではない。また、同じ物を作るということと「事業を承継する」ということは全く次元の異なることである。
次に、請求人の提出する甲第6号証、甲第7号証は、羽田クラフトが米国でフィリプソン社の最終「デッドストック」を購入し、それを販売していることを証するに過ぎず、請求人がかつての「フィリプソン社」の事業の正当な承継人であることを証するものではない。すなわち、羽田クラフトの広告によれば、「1997年秋、わたしたちはフィリプソンのあったデンバーに25年間眠っていたフィリプソン社の最終デッドストックを発見。すべてを買い取ることに成功しました。」(甲第6号証、羽田クラフトの広告)とある。この広告は、羽田クラフトが「デッドストック」を購入したことを言っているに過ぎず、請求人が「フィリプソン社」の事業の正当な承継人であることを証するものではない。
おそらく、請求人は、米国で「フィリプソン社の釣竿」を単にデッドストックしていただけと思われる。これを羽田クラフトが発見し、日本で販売しようとしたが、本件登録商標の存在を知ったため、急遽請求人が米国で商標登録出願したものと思われる(出願時期は羽田クラフトがデッドストックを発見した時期と符合する)。
(2)周知性
請求人は、「フィリプソン」が釣り竿の名品で、著名商品名であると主張する。しかし、請求人の主張及び提出する証拠は、いずれも「ビル・フィリプソン」が使用した商標に関するものであり、請求人の商標として「フィリプソン」が周知著名であることを証明するものは全く存在しない。
そして、商標法第4条第1項15号は私益規定であるから、そこで引用する商標は請求人の商標でなければならない。
すなわち、本件において商標「フィリプソン」が請求人の商標として周知著名であることは何ら主張・立証されていない。
したがって、商標法第4条第1項15号に係る主張はその前提を欠くものであり、棄却されなければならない。
(3)出所の混同
商標法第4条第1項15号における「出所の混同」は、具体的な出所の混同である。したがって、引用商標を使用した商品が現実に市場に流通していることが前提となる。また、当然のこととして、引用商標の使用は「正当な使用」でなければならない。
しかるに、請求人は「フィリプソン」なる商標を使用した釣り具の販売に関して、「本年9月ころから、日本において本格的に販売を開始し、その宣伝を始めた。」(無効理由8)と述べている。そして、「アメリカ製フィリプソン」は1974年に製造が中止されている。
本年9月(1997年9月)からの使用であれば、本件登録商標の出願後であり、本件登録商標に対して「先使用権」を主張する余地はなく、その使用は「正当な使用」ということはできない。むしろ、わが国における使用者である羽田クラフトは、本件登録商標に係る商標権を侵害している立場である。
したがって、羽田クラフトが使用する商標と本件登録商標が類似することをもって、「出所の混同」が生じるおそれがあると主張することはできない。
以上より、本件15号に関する請求は却下されなければならない。
3 商標法第4条第1項第16号について
(1)周知性
請求人は、引用商標「フィリプソン」の周知著名性に関し証拠を提出するがそこで具体的な主張も立証もされていない。そして、乙第2号証として提出する「英和商品名辞典」にも掲載がなく、その周知性は認められない。
請求人が著名性の立証証拠として唯一提出する甲第1号証は、以下の理由により著名性を立証するものとは認められない。
1)甲第1号証は、雑誌「Rod and Reel」1997年12月号、とされているが、発行日、発行者を確認することができない。
2)甲第1号証には、「日本でもアメリカでも、幻のブランドとしていまなお高い人気をもつフィリプソンのロッド」その他その周知性を伺わせる記載が認められる。しかしながら、これらの記載がいかなる事実に基づき記載されたものであるかの裏付けは全く存在しない。甲第1号証からは、単に1952年から1972年頃にかけて製造販売された釣り竿の商品名であったこと、ビル・フィリプソンという名人が製造した釣り竿であったことが伺えるにすぎず、これらが事実であったとしても、単にこれらの事実の存在によって、引用商標「フィリプソン」(態様不明)が「周知・著名」であったということはできない。
3)甲第1号証の記事自体は、客観性がない。一般の記事ではなく「パブリシティー」あるいは「タイアップ記事」の可能性が高い。記事中に「大森のビンテージショップ、「ハネダクラフト」」と言う記載があり(甲第1号証61頁第4欄10行目)、またこの記事は「本誌特別洋行局」なるものの執筆であるが、「メンバーは洋竿鑑定師・田長石英、「ハネダクラフト」のミヤコ嬢様。そしてご存知「道楽」の松本くん。ロッドビルダーとしての経験も豊富で、なによりフィリプソンの信奉者なのである。」(甲第1号証61頁、第4欄下から13行目以下)との記載から、これらの者が「本誌特別洋行局」なるもののメンバーと認められるが、メンバーの一人は「羽田クラフト」の従業員である。これらの事実から、この記事は、「ビンテージもののフィリプソン」を販売する「羽田クラフト」がその宣伝のために、当該雑誌の編集部に持ちかけて(あるいはタイアップして)記事としたものである可能性が高い。
ちなみに、近年の雑誌記事においては、パブリシティ一記事やタイアップ記事の比率が高くなっており、その記事の体裁は一般記事と区別がつきにくい形となっていることは、周知の事実である。
そうすると、甲第1号証に書かれた「フィリプソン」釣り竿に対する評価は、これを客観的な記述と認めることはできず、これをもって「周知・著名」ということはできない。
(2)品質の誤認
商標法第4条第1項16号における「品質の誤認」とは、商標の構成態様のみから判断されるものとされている(乙第3号証、網野「商標」第4版389頁)。
しかるに、請求人が「品質の誤認」に関連して主張するところは、本件商標の構成に関するものではなく、ビル・フィリプソンなる者が製造販売した釣り竿との比較に基づくものにすぎない。本件商標は、その構成において、何ら意味を持たない造語であって、商品の品質を認識させるものではない。したがって、「品質の誤認」に該当するものではない。
(3)補足
もし、商標法第4条第1項16号における品質誤認について、商標の構成態様のみならず取引の実情(他人の著名商標などの存在)を考慮するものであるとしても、以下の通り本件商標が品質の誤認を生ぜしめるものではない。
まず、請求人が引用する商標「フィリプソン」(態様不明)は、上記の通りわが国における取引者・需要者の間で周知著名であるとは認められない。
したがって、請求人が本件登録商標に類似した商標を使用したとしても、請求人が主張するような「アメリカ製のフィリプソン」なるものと品質の誤認を生じるおそれはない。
すなわち、取引の実情を考慮すべきとする立場であっても、品質の誤認が生じるというためには、引用商標「フィリプソン」が周知・著名であることにより商標「フィリプソン」に接した取引者需要者が、その商標が使用された商品を「アメリカ製の一定の特徴を備えた商品」であると認識すると認められる事情がなければならない。
しかしながら、請求人が引用する商標「フィリプソン」(態様不明)が周知であるとは認められない以上、被請求人が本件登録商標に類似した商標を使用したとしても、それに接した者が一定の特徴を備えた商品であると認識すると考えるべき蓋然性は存在しない。
したがって、「品質の誤認」を生じるおそれはないというべきである。
4 請求人の主張に対する反論
請求人は、取消原因として被請求人の行為に対して論難しているので、以下の通り反論する。
(1)被請求人の商品
請求人は、被請求人の商品を「コピー商品(贋物)」(取消原因2)であるとし、「市場において、消費者から本物の「フィリプソン」として評判を集め、購入者は皆、アメリカで正規に製造され、世紀の製品検査を経た本物「フィリプソン」と誤認して、購入した(被害者約5000人)」(取消原因6)と主張する。
しかし、被請求人は、その商品が「本物」ではなく「復刻」であることを明記して販売しているのである。「コピー商品」を「本物」と称して、あるいはあたかも本物のように販売するのが「贋物」であり、「本物」ではないことを明記して販売している以上、これが「贋物」として非難を受ける理由はない。
そして、「被害者約5000人」と主張するが、その根拠は何ら示されておらず、被請求人の知らないところである。
(2)誤認混同について
請求人は、被請求人の販売する釣り竿につき誤認混同が生じ、被害が多数発生していると主張するが(取消理由9)、全て「伝聞」であり、主張を裏付ける証拠は存在しない。
5 むすび
以上のとおり、請求人は請求の利益を有していない。また、請求人の主張は、証拠がなく、全て独断に基づくものである。
したがって、本件審判請求は理由がないものであり、棄却されるべきものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号について
請求の理由によれば、請求人は、本件商標は、ビル・フィリプソン氏の著名な略称を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当する旨主張しているものと判断されるところ、請求人提出の甲1号証ないし甲10号証によっては、「Phillipson」がビル・フィリプソンの略称表記として認識されているとは認めがたい。
したがって、「Phillipson」はビル・フィリプソンの著名な略称とは認められないから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものではない。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、「フィリプソン」又は「Phillipson」の文字からなる商標(以下、「引用商標」という。)との関係で、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張していると判断されるので、以下、引用商標の著名性について検討する。
甲第1号証「Rod and Reel」によると、1945年頃から1974年頃までアメリカ合衆国において釣り竿に引用商標が使用されていた事実がうかがえるが、我が国における引用商標の周知性をうかがわせる客観的な事実は記載されておらず、被請求人の主張するように該雑誌の記事は、パブリシティーあるいはタイアップ記事の可能性が高いものであるから、甲第1号証によっては、引用商標の著名性は認められない。
甲第2号証及び甲第3号証は、ザウルスの釣り竿のカタログの写しと認められ、該カタログ中には「トップウォターロッドの極致として名声を博した、あのグラスロッド・フィリプソンの完全復刻版だ。」の記載がある。しかし、一般にカタログは商品の製造、販売者がその商品の販売促進のために制作するものであり、販売に有利な内容にすることもあるから、甲第2号証及び甲第3号証のカタログでは、引用商標の著名性は認められない。
甲第4号証は、リックスロッズ社が商標「PHILLIPSON ROD COMPANY」を「グラスファイバー製の釣り竿」を指定商品として1997年9月25日に米国に商標登録出願を行ったことは認められるが、該商標は本件商標と異なるばかりでなく、その商標の米国における使用開始日も1997年1月2日であって、本件商標の出願日後であるから、引用商標の著名性を何ら立証するものではない。
甲第5号証は、パンフレットのコピーと思われるが、その配布場所、配布数等が不明であり、しかも英語で作成されているから、我が国で多数配布されたとは考えられず、また、本件商標の出願日より20年以上も前の1973年頃に作成されたものと思われるから、甲第5号証よりは、引用商標が本件商標の出願時に著名であったと認めることはできない。
甲第6号証及び甲第7号証は、羽田クラフトの広告であり、販売者が広告の記載を販売に有利な内容とすることは一般に行われているところである。さらに、掲載している雑誌の発行日、発行部数が不明であるが、該広告中に「1997年秋、わたしたちはフィリプソンのあったデンバーに25年間眠っていたフィリプソン社の最終デッドストックを発見。そのすべてを買い取ることに成功しました。」の記載があることから、該広告の掲載誌は本件商標の出願日後である1997年秋以降に発行されたことは明らかである。そうとすると、上記証拠より、引用商標が本件商標の出願時に著名であったと認めることはできない。
甲第8号証は、フィリプソン ロッド社の釣り竿のパンフレットのコピーであるが、その配布場所、配布数等が不明であり、しかも英語で作成されているから、我が国で多数配布されたとは考えられず、また、1972年より前に作成されたものと思われるから、甲第8号証よりは、引用商標が本件商標の出願時に著名であったと認めることはできない。
その他、請求人の提出にかかる甲各号証を総合勘案しても我が国において引用商標が本件商標の出願前に需要者に広く知られていたことは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第16号について
商品の品質について誤認を生じるおそれは、商標を構成する文字が商品の普通名称その他直接的に商品の性質を表す場合であって、その商品と関連する指定商品等とするときに生ずるものである。本件商標を構成する「Phillipson」の文字は、商品の普通名称その他直接的に商品の性質を表す語ではなく、本件商標の指定商品の品質表示として取引上普通に使用されている事実は認められない。
してみれば、本件商標は、商品の品質について誤認を生ずるおそれがないものであるから、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものということはできない。
4 したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標


審理終結日 2000-04-03 
結審通知日 2000-04-14 
審決日 2000-04-25 
出願番号 商願平8-12284 
審決分類 T 1 11・ 272- Y (028)
T 1 11・ 271- Y (028)
T 1 11・ 23- Y (028)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 小林 薫 
特許庁審判長 板垣 健輔
特許庁審判官 上村 勉
内山 進
登録日 1997-10-24 
登録番号 商標登録第4074134号(T4074134) 
商標の称呼 フィリップソン 
代理人 有近 紳志郎 
代理人 牧野 二郎 
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