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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z09
管理番号 1028749 
審判番号 審判1998-18267 
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-18 
確定日 2000-10-17 
事件の表示 平成 9年商標登録願第101830号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別掲に示すものとし、第9類「電気磁気測定器、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、電池、電線及びケーブル」を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願、その後、指定商品については、最終的に平成10年11月18日付けの手続補正書により「携帯電話機」と補正されたものである。

2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その構成中の、例えば、幾つもの楕円形が電話番号等のプッシュボタンを、その上部の四角形状の輪郭が電話番号等のディスプレイ部を、さらには、中央部から突き出た棒状のものがアンテナを表したものと認められ、結局、全体としては中央部で開閉できるようになっているタイプの携帯電話機を表示したものと容易に認識されるものであるから、これをその指定商品中、携帯電話機に使用したときは、その商品の形状(品質)を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定して本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている形状について、その理由をもって、当該形状が自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできないばかりか、意匠権等に重ねて又は、その権利の消滅後に当該形状を商標登録することにより保護することは、知的所有権制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(2) これを本願についてみれば、本願商標は、別掲に示した構成のとおり、液晶画面、プッシュボタンによる操作部、スピーカー、アンテナ、充電部等を有し、コンパクトになるように中央部で開閉できる折り畳み式の形状よりなるものであるところ、その指定商品との関係においては、全体として携帯電話機の形状の一形態を表したものと認められるから、これをその指定商品「携帯電話機」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
(3) 請求人は、一般の携帯電話機とはその形状において特徴的であって、グッドデザイン金賞を受賞していること、また、本願商標の立体的形状を模倣したおもちゃが日本国内で指定商品以外の業界の業者が製造し販売されていることをもって本願の立体的形状に識別性がある旨主張するが、本願商標に係る携帯電話機の形状が他社の製品のものとは異なる新規な形状を示してはいても、それは専ら、商品の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであることは前記(1)で述べたとおりであり、それをもって直ちに本願商標に関し自他商品の識別性に影響を与えるものとは認め難く、これに接する取引者・需要者もまた、携帯電話機の形状の範囲のものと認識するに止まり、前示の形状をもって自他商品の識別標識として機能するとは認め難いと言うべきである。
(4) また、請求人は、本願商標の形状については、意匠登録を受け、これより、この立体的形状は、新規性と創作非容易性が認められたものであり、他の周知の携帯電話機から容易に創作できない、特徴を有する立体的形状であることを意味する旨主張する。
しかしながら、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであって、これらに従った登録意匠の実施と商標の使用とは明らかに異なるものであるから、意匠登録による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることはできないばかりでなく、却って、意匠権消滅後は何人もの実施が予定されているものであるから、請求人の主張は採用できない。
(5) さらに、請求人は、本願商標は、請求人がその製造販売に係る商品について専用し、既に「移動体電話機」業界、その関連業界において周知となっていて、本願商標は、商標法第3条第2項の適用を受けるべき商標である旨主張し、本願商標の指定商品を「携帯電話機」と補正するとともに、証拠方法として甲第8号証乃至同第61号証を提出している。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品(役務)と出願に係る指定商品(役務)も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が、立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一ではないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできない。
そこで検討するに、提出に係る前記甲各号証の広告又は紹介例において表された商品は、携帯電話機と認められ、その商品自体に「StarTAC」、「IDO」等の文字からなる商標が表示されており、また、商品カタログ等には「MOTOROLA」、「モトローラ」、「StarTAC」、「スタータック」、「IDOタックスミニモ」等の各文字が表示されている。
そうとすれば、携帯電話機自体に前記の文字を表示してなるものは、立体的形状と文字の平面標章より構成されており、本願商標と使用に係る商標が同一のものとはいえないものである。そして、甲各号証における携帯電話機は、いずれもその商品自体を広告、紹介したものであって、むしろ、そこに表示された前記の文字(商標)によって、商品の出所について識別されているものとみるのが商取引の実情に照らして自然というべきであり、これらによって、本願商標の立体的形状それ自体が自他商品の識別標識として認識されたということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備しているものとも認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標

審理終結日 2000-05-09 
結審通知日 2000-05-19 
審決日 2000-05-30 
出願番号 商願平9-101830 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 栄二 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 寺光 幸子
宮川 久成
代理人 大貫 進介 
代理人 本城 雅則 

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