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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 117
審判 全部無効 称呼類似 無効としない 117
管理番号 1025644 
審判番号 審判1997-9100 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-05-30 
確定日 2000-07-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第2715642号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2715642号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおりの構成よりなり、平成3年4月3日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、その他本類に属する商品」を指定商品として平成8年8月30日に設定の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至同第6号証(枝番を含む)を提出している。
1.請求人が引用する商標
請求人は別紙(2)に表示したとおり「MERCEDES-BENZ」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年8月28日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同61年11月27日に設定登録され、その後、平成9年2月27日に商標権存続期間の更新登録がなされている登録第1915776号商標(以下「引用商標」という。)を引用し、本願商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから無効とされるべきであると主張している。
2.商標法第4条第1項第11号について
そこで、本件商標と引用商標の称呼について比較検討するに、本件商標からは「ベンズ」の、また引用商標からは「メルセデスベンツ」の他、その構成より「メルセデス」又は「ベンツ」の略称をも生ずるものである。
ところで、本件商標に対する登録異議申立ては「理由がない」との決定がなされ、その理由として、「両者の3音という簡素な音構成と本願商標が前記構成にあって、末尾の『ズ』の音が比較的強く、明確に発音されるものと言えることも併せ考慮すれば、称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとは言えず、それぞれを一連に称呼する場合にも、該差異をもって両者を明確に聴別し得るものと判断するのが相当である。」と述べているが、3音構成で語尾音が他の2音より比較的強く発音されるとする見解には明らかに誤りがあるといわねばならない。
一般に3音構成の場合アクセントは語頭音にあるのが普通であり、「べ」の後は下がり、末尾は意識的にアクセントを置かない限りあいまいな音となるものである。また、「ベンズ」の「ズ」は「ベンツ」の「ツ」の濁音「ヅ」とほとんど同音といってよく、故に「ズ」と「ツ」又は「ヅ」と「ス」は清音と濁音の関係にあり、語尾音における清音と濁音は明確に聴別しにくいとされている。
よって、「ベンズ」と「ベンツ」の称呼は類似と判断するのが従来の類否規準に則ったものと考える(甲第5号証)。
なお、被請求人(出願人)は平成5年8月24日付提出の答弁書において第三者の登録第713269号商標「Benz/ベンツ」の権利が存続中に引用商標が登録されているから、引用商標から「ベンツ」の略称は生じないと主張するが、引用商標が拒絶されなかったのはその時点でハイフォンが前後を結ぶ一体性を強調したものと判断された結果であって、仮に登録異議申立てを受けていたらどうなっていたかわからないし、正にその判断は一過性のものであり、商標の類否は商標の比較のみならず、査定時における指定商品に関する取引の実情を総合して商標ごとに判断されるべきものであるから、「Benz/ベンツ」と「MERCEDES-BENZ」との類否が、後者と本件商標との類否に影響を及ぼすものではない。
2.商標法第4条第1項第15号に関する主張
請求人の商標「BENZ」が乗用車について周知著名なものであることは詳論するまでもないと思われるが、この点においても本件商標の使用により商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、その登録は無効とされるべきものである(甲第6号証)。
上記の如く、本件商標はと引用商標とは称呼において類似し、かつその指定商品を同じくするものであるから、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりこれを無効にすべきものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を概要次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第12号証を提出している。
1.本件商標の登録異議申立ての答弁書において述べたように、本件商標は、請求人の引用商標とは非類似の商標である。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)引用商標の称呼について
引用商標の構成は、欧文字「BENZ」ではなく、その前に「MERCEDES」の語を含むものであり、「MERCEDES-BENZ」である(乙第3号証)。
そして、引用商標は、欧文字を同書・同大・同間隔に書してなり、外観上もまとまりよく一体的に構成されているものである。
また、その全体の称呼も「メルセデスベンツ」の8音と冗長でなく、また極めて自然なので、「メルセデスベンツ」が唯一の自然称呼である。これに反する請求人の主張は、合理的な理由がない。
また、後述するように第12類の自動車の分野はともかくとして、第17類における服飾の分野においては、更に単なる「ベンツ」の略称は自然とはいえないものである。
故に、引用商標よりは、「メルセデスベンツ」が唯一の自然的な称呼である。
次に、重要なことは第17類において「BENZ/ベンツ」は、「MERCEDES-BENZ」と類似と判断されておらず、第三者に登録第713269号商標として登録されていた事実である。
しかし、当該商標は昭和61年7月14日に存続期間の満了により既に消滅しているものである(乙第1号証及び同第2号証)。
また、もし請求人の主張するように引用商標より「ベンツ」の略称が生じるのであれば、引用商標は、登録第713269号商標に類似するとして公告されないはずである。しかし、そのような事実はなく、お互いに独立の商標として登録されたものであることは明らかである(乙第2号証及び同第4号証)。
請求人は、このことについて引用商標が拒絶されなかったのはその時点でハイフンが前後を結ぶ一体性を強調したと判断された結果であって、仮に登録異議申立てを受けていたらどうなるかわからないし、まさにその判断は一過性のものであり、本件審判との類否に影響を及ぼすものではないと主張している。請求人も認めているように、引用商標が登録されたのは、ハイフンが強調された結果、「メルセデスベンツ」が唯一の自然的称呼と判断されたのが理由である。
また、引用商標のときの判断と本件審判の判断では、その判断時点が相違するので商標の類否において、その称呼の認定が相違することは問題がないとの主張は合理的な理由がない。商標の称呼は、特段の事情がない限り、当該商標が審査されたときと常に一定でなければ、商標類否の審査の公正を期すことができないことは明白である。
他方、第12類においては、自動車に使用する商標「MERCEDES-BENZ」は、請求人の主張するように「ベンツ」の略称でも有名であるので、登録第1706220号商標の商標「BENZ」と「MERCEDES-BENZ」の商標は、登録第1706220号商標と同第490539号商標、同第490540号商標の如く、連合商標制度が存在したときには、相互に連合商標として登録されていたものである(乙第5号証乃至同第10号証)。上記商標の審査経験則からみれば、第12類においては「MERCEDES-BENZ」と「BENZ」が、類似商標であると判断されている。
しかしながら、第17類においては、上述の如く「MERCEDES-BENZ」より、更に「ベンツ」の略称は生じないと判断されていることは明々白々の事実である。
(イ)本件商標の称呼について
本件商標は、欧米人のありふれた名前の欧文字「BEN」と「〜のもの」を意味するアボロフィーエス「’S」を上段に、片仮名文字「ベンズ」を下段に配した構成よりなるものである。
したがって、本件商標より「ベンズ」の称呼が生じることは明白である。
(ウ)本件商標と引用商標の比較について
本件商標より生じる「ベンズ」と引用商標より生じる「メルセデスベンツ」とは、その語頭部分に「メルセデス」の語を有するか否かの顕著な相違があるので、例え時と処を変えて一連に称呼されたとしても、彼此誤認混同を生じる虞れのない非類似商標であることは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
引用商標からは、「メルセデスベンツ」が唯一の自然的な称呼と考えられるが,たとえ「ベンツ」の称呼が生じたとしても、本件商標とは非類似商標である。
すなわち、本件商標の登録異議決定書に述べられている如く、両者はともに3音より構成され、第1音「べ」と「ン」の2音を共通にするが3音という簡素な音構成と本件商標にあっては末尾の「ズ」の音が比較的強く、明確に発音される音といえることを併せ考慮すれば、称呼全体に及ぼす影響は、決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼する場合にも該差異音をもって両者を明確に聴別し得るものである(乙第11号証)。
この登録異議決定には、請求人が主張するような語尾音が他の2音より比較的強く発音されるとは、どこにも述べられていない。当該決定は、本件商標が3音と極めて簡潔なので、通常は語尾音の「ズ」は、弱音と考えられるが本件商標においては「ズ」も明確に聴取されると述べているものである。
故に、両者は3音と極めて簡潔な商標において第3音に濁音の「ズ」と清音の「ツ」の明瞭な差があるので自他商標を区別できる非類似の商標である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人が本件商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとの根拠は、高級自動車に使用する引用商標「MERCEDES-BENZ」より「ベンツ」の称呼及び略称が生じることを前提とすることは明らかである。
被請求人も請求人の商標「MERCEDES-BENZ」が、自動車の分野である第12類においては著名商標であり、また「ベンツ」の略称も周知性を有することは認めるものである。
しかしながら、自動車とは何らの関係を有さない被服、布製身回品等の分野において引用商標より「ベンツ」の略称が周知であるとの主張については、到底これを認めることはできない。
事実、請求人の上記主張を認めるに足りる何らの証拠も提出されていない。
また、請求人は第21類の「BENS」に対する登録異議決定を引用して、第17類においても「ベンツ」の略称が生じると主張するものである。
しかしながら、本件商標は第17類の商品であるのに対し当該登録異議決定の事例は第21類であり、また商標自体が相違するので、本件事案とは何ら関係のない事柄である。本件審判事件に関係するのは、上記の登録異議決定である。
更に、第17類において引用商標からは、「BENZ」或いは「ベンツ」の略称が生じないことは、上述した通り第17類の審査経験則よりも明らかである。
したがって、第17類においては自動車において周知な商標「MERCEDES-BENZ」と同様な構成の引用商標であるとしても、「メルセデスベンツ」の称呼のみしか生じるものではない。
故に、本件商標より生じる「ベンズ」の称呼と引用商標より生じる「メルセデスベンツ」とは、明らかに相紛れるおそれがない非類似の商標であることは前述した通りである。
したがって、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生ずる虞れがあるという主張は理由を有さないものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
以上述べたとおり、本件商標と引用商標との間には商標の類似関係がないので混同を生じさせる虞はなく、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものではない。
第4 当審の判断
そこで、本件商標についての無効事由の有無について判断するに、
1.商標法第4条第1項第11号について
本件商標及び引用商標は、それぞれ別紙(1)及び(2)に表示したとおりの構成よりなるものであるから、両商標は外観上互いに区別し得る差異を有するものである。
次に、これを称呼上よりみるに、本件商標は、「BEN’S」の欧文字とその字音の「ベンズ」の片仮名文字とを二段に書してなるものであるから、これよりは書された文字に相応して「ベンズ」の称呼を生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、「MERCEDES」と「BENZ」の両欧文字とを連結記号のハイフンを用いて「MERCEDES-BENZ」と書してなるものであるところ、両欧文字は、同書・同大に連結記号のハイフンを用いて、外観上まとまりよく一体的に構成されてなるばかりでなく、これより生ずる「メルセデスベンツ」の称呼も格別冗長なものとも言い得ないものであるから、引用商標よりはその構成文字に相応して「メルセデスベンツ」の称呼を生ずるものと判断するのが相当である。
そして、「ベンズ」の称呼と「メルセデスベンツ」の称呼とは、語頭部において「メルセデス」の音の有無という顕著な差異を有すものであるから、称呼上明確に区別し得るのである。
更に、観念においても、本件商標は、特定の意味合いを生じさせない造語よりなるものと認められるものであるから、引用商標がいかなる観念を生じさせるものであっても、この点での両者は比較すべきもない。
なお、請求人が主張する如く、引用商標中の「BENZ」の文字部分より単に「ベンツ」の称呼をも生ずる場合があるとしても、本件商標より生ずる「ベンズ」の称呼と引用商標より生ずる「ベンツ」の称呼とは、共に3音と比較的短い構成よりなるものであるから、いずれの構成音も一音一音明瞭に聴取されるばかりでなく、相違する語尾音の「ズ」と「ツ」の音にしても、濁音の「ズ」と清音の「ツ」と相違するために、これらの差異が称呼全体に及ぼす影響は大きく、両者は互いに聞き誤るおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても非類似の商標と認められるものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものとする請求人の主張には理由がないものと言える。
2.商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標は、上記のとおり商標において相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであるから、仮に引用商標が、本件商標出願前より、我が国の取引者・需要者に請求人の業務に係るものとして広く認識されているものであっても、本件商標が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如くその商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認め難い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものということができないから、同法第46条第1項により、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1999-01-12 
結審通知日 1999-02-02 
審決日 1999-02-15 
出願番号 商願平3-34202 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (117)
T 1 11・ 271- Y (117)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄小松 裕 
特許庁審判長 寺島 義則
特許庁審判官 澁谷 良雄
箕輪 秀人
登録日 1996-08-30 
登録番号 商標登録第2715642号(T2715642) 
商標の称呼 1=ベンズ 
代理人 清水 三郎 
代理人 加藤 義明 
代理人 滝口 昌司 
代理人 中里 浩一 
代理人 武田 正彦 

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