• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 039
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 039
管理番号 1025517 
審判番号 審判1999-35189 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-04-22 
確定日 2000-09-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第3102888号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3102888号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「軽急」の文字を横書きしてなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月17日に登録出願され、第39類「軽貨物自動車による輸送」を指定役務とし、特例商標及び重複商標として、同7年12月26日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第3190248号商標(以下「引用商標A」という。)は、別掲(2)のとおり、「京急」の文字を横書きしてなり、平成4年9月22日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,ガスの供給,電気の供給,水の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,コンテナの貸与,パレットの貸与,自動車の貸与,船舶の貸与」を指定役務として、同8年8月30日に設定登録されたものである。同じく登録第3087966号商標(以下「引用商標B」という。)は、別掲(3)のとおり、「けいきゅう」の文字を横書きしてなり、平成4年9月28日に登録出願、第39類「貨物車による輸送・旅客車による輸送,貨物自動車による輸送・タクシーによる輸送・バスによる輸送,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」を指定役務とし、特例商標及び重複商標として、同7年10月31日に設定登録されたものである。同じく登録第3190249号商標(以下「引用商標C」という。)は、別掲(4)のとおり、黒塗り四角形中に「KEIKYU」の文字を白抜きに横書きし、その下部に「京浜急行」の文字を横書きしてなり、平成4年9月22日に登録出願、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,船舶による輸送,航空機による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,船舶の引揚げ,水先案内,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,ガスの供給,電気の供給,水の供給,倉庫の提供,駐車場の提供,コンテナの貸与,パレットの貸与,自動車の貸与,船舶の貸与」を指定役務として、同8年8月30日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張の要旨
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第8号証を提出している。
(1) 利害関係について
請求人は、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して、出願し登録された引用商標Bを所有している。
しかして、本件商標の指定役務を含む輸送業全般について、サービスマーク登録制度導入の平成4年4月1日以前から、各引用商標を使用し、宣伝に努めてきた結果、各引用商標は、日本国内で周知・著名となっていたものであり、現在ではなお一層周知・著名となっているものである。
一方、被請求人も、同じく、使用に基づく特例の適用を主張して、出願し登録された本件商標を所有している。
各引用商標が周知・著名であるため、本件商標を使用して行われる役務が、各引用商標を使用する請求人の営業に係わる役務と誤認混同されるおそれがあるばかりでなく、請求人と被請求人との間に系列関係などの緊密な営業上の関係が存するものと誤信されるおそれもある。
さらに、請求人が、例えば、CI(コーポレート・アイデンティティ)等で、「ケイキュウ」の称呼を生ずる新規の社章(図形、装飾文字の組合わせ等)を創案し、特許庁に商標登録出願した場合、本件商標と類似するとの理由により拒絶されてしまうことになり、また、請求人がその使用を開始した場合、被請求人からその使用差止を請求されるおそれがあり、前記CI計画にも支障を来している状態である。
以上のとおり、請求人は本件無効審判を請求するについて、重大なる法律上の利害関係を有するものである。
(2) 本件商標の出願日は、サービスマーク登録制度導入の平成4年4月1日~同年9月30日の特例期間中であり、請求人は、前記特例期間の以前から引用商標が周知・著名であったことを主張、立証する。
請求人の商号は、京浜急行電鉄株式会社であり、その商号の略称である「京急」は、1964年(昭和39年)10月1日、それまでの略称「京浜」から変更し(甲第5号証)、それ以降、継続して使用し、宣伝広告に努めてきたものである。
平成4年当時の請求人の会社概要は、大蔵省印刷局発行の「有価証券報告書総覧『京浜急行電鉄株式会社』(平成4年3月)」(甲第6号証)のとおりである。
請求人の旧会社は、明治31年2月25日に創立され、終戦後の昭和23年6月1日、現在の商号、京浜急行電鉄株式会社として、新会社が創立された。
その後、平成4年3月期における資本金は31,847,373千円、従業員4,743人、鉄道事業のみではなく、自動車事業、その他の付帯事業をも、東京都、神奈川県を基盤に、多角的、かつ、積極的に推進してきた。
さらに、「京急グループ」という名の企業集団として、商号の要部に「京急」を採択する会社が多く、例えば、「京急不動産(株)」、「京急開発(株)」、「(株)京急百貨店」、「京急都市開発(株)」、「京急建設(株)」、「(株)京急ストア」、「京急観光(株)」、「京急更埴陸送(株)」、「京急横浜自動車(株)」等、枚挙にいとまのない程である(甲第6号証40~42頁)。
特に、本件商標の役務と関連の深い貨物自動車運送業については、前記の「京急更埴陸送(株)」の他11社が営業している(甲第6号証55頁)。
なお、平成4年度より、前の最近5連結会計年度に係る売上高等の主要な財務指標は、甲第6号証57頁のとおりである。
このように、請求人は我が国の私鉄の大手であって、特に、その商号の略称である「京急」は、本件商標の登録出願のときに、既に周知・著名になっており、また、本件商標の登録出願前から、請求人を中心とする企業グループに属する企業は、子会社64社及び関連会社6社の多数で構成されており、「京急」の名を冠して営業するグループ企業の事業分野も多岐にわたることから、請求人が多角的経営を行う会社であるというイメージも既に一般に定着していたことが認められる。
したがって、周知・著名な引用商標「京急」と称呼を同じくする本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とされるべきである。
(3) 被請求人が、本件商標をその指定役務について使用するときは、請求人の周知・著名である商号の略称「京急」と称呼を共通にする類似商標であるため、これに接する取引者、需要者が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者が提供する役務であるかのように出所の混同を生ずるおそれがある。
かかる事実は、本件と事案を同じくする「阪急明星」と「阪急」について「請求人(阪急明星(株))がその指定役務について使用するときは、その前半に『阪急』の文字を有しているため、取引者、需要者が申立人あるいは申立人と経済的または組織的に何らかの関係がある者が提供する役務であるかのように誤認混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。」とされた先例(平成6年審判第18096号・・・第7号証)、さらには、「MEIJI」(著名商標「Meiji」)が、商標法第4条第1項第15号に該当するとされた先例(昭和59年審判第3898号登録異議の決定・・・第8号証)等に徴するも明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすべきである。

4 被請求人の答弁の要旨
(1) 本件商標は、役務の商標が新規に制定されることになり、特例としての重複登録がなされたものであり、請求人の請求には根拠が無いものと考える。
なお、重複登録に基づく商標権の存続期間の更新については、経過処置として、最初の更新に限り、更新出願によることとなっているので、著名商標であるかないかは、その時点で判断されるべきである。
(2) 利害関係について
請求人と被請求人の会社規模において差があるのは理解できるが、京浜急行電鉄株式会社が「ケイキュウ」として圧倒的に周知であるかについては異論がある。一般的に「ケイキュウ」としては一部地域の周知事項であることは明白である。
さらに、請求人の営業にかかわる役務と誤認混同されるおそれがあり系列関係等が有ると誤信されるおそれがあるとしているが、そういう誤信はむしろ被請求人において迷惑である。ただし、現在においてその迷惑を被ったことはない。
なぜならば、日本国内の各種商標において特に漢字を使った商標の場合、商標の半分の文字が意味も字画が異なった場合誤認される事はきわめてまれであることは明かである。
軽貨物の健全な普及に願いを持つ被請求人としては誤信されることを喜ぶどころか大いに不満に思うものであり、そのような事実があれば本件商標を出願するはずはない。
さらに、請求人がCI等で新しい商標を出願した場合、拒絶される理由はないし、被請求人が使用差し止めを請求する理由もなく、請求人はいたずらに被害者を装い被請求人を非難し、自社の権利のみ守ろうとするエゴの結果としか思われない。
(3)無効理由について
請求人は会社規模、歴史についての内容に終始しているが、単に規模の大小で判断されるべき性質のものではなく、周知としての理解については見解を全く異にするものである。
例として述べられている「阪急明星」と「阪急」は、字体が全く同じであり、同じく「MEIJI」と[Meiji」も同様で、この件についてはむしろ「軽急」と「京急」が全く誤認のおそれがないことの逆説的証明になるものと理解できる。

5 当審の判断
(1) 先ず、本件審判請求の利害関係の有無について判断するに、本件審判請求は、被請求人の所有に係る本件商標と請求人の所有に係る各引用商標とが類似するかどうか、また、各引用商標が周知・著名なものであるために本件商標を使用して行われる役務が請求人の営業に係る役務と誤認混同されるおそれがあるかどうかに係るものであるから、請求人がこれを請求するにつき利害関係を有することは明らかというべきである。
(2) 次に、各引用商標の周知性について検討するに、請求人の提出に係る甲第5号証及び甲第6号証によれば、請求人「京浜急行電鉄株式会社」は、明治31年(1898年)の創立に係る「大師電気鉄道株式会社」に始まり、昭和23年に「京浜急行電鉄株式会社」として新会社が創立され、同39年(1964年)に会社の略称を「京浜」から「京急」に変更したことが認められ、また、請求人は、鉄道事業のみならず、自動車事業、その他の付帯事業をも多角的に行い、「京急グループ」として企業集団を構成し、商号の一部に「京急」の文字を含む関係会社を多数有していること、平成4年3月期における資本金は31,847,373千円、従業員4,743人に達していることが認められる。これらを総合すると、請求人は我が国の私鉄の大手として知られ、「京浜急行」及び「京急」の文字は請求人の商号の略称を示すものとして本件商標の出願時には既に需要者間に広く認識されていたものといえる。
しかして、引用商標Aは、別掲(2)のとおり、上記周知となっている「京急」の文字を書してなるものであり、また、引用商標Cは、別掲(4)のとおり、上記周知となっている「京浜急行」の文字を含むものであり、いずれも鉄道による輸送、車両による輸送等について使用する商標として本件商標の出願時には既に需要者間に広く認識されていたものというのが相当である。しかしながら、引用商標Bは、別掲(3)のとおり「けいきゅう」の文字を書してなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して登録出願され、特例商標及び重複商標として設定登録されたものであるが、請求人の提出に係る各証拠を徴しても、これが使用された結果、需要者間に広く認識されているものと認めることはできない。
(3) 以上を前提として、本件商標と各引用商標との関係について検討するに、本件商標は、別掲(1)のとおり「軽急」の文字を書してなるところ、該構成文字に相応して「ケイキュウ」の称呼を生ずることは明らかである。他方、各引用商標もそれぞれの構成文字に相応して「ケイキュウ」の称呼を生ずるものといえる。
しかしながら、本件商標は全体として既成の観念を有する熟語を表したものではないとしても、漢字は表意文字であることから、「かるい。目方が少ない。手がるな。」等の意味を有する「軽」の文字と「いそぐ。にわか。さしせまっている。」等の意味を有する「急」の文字を結合したものであると容易に理解し認識することができるものである。同様に、引用商標Aも「みやこ。首都。京都。」等の意味を有する「京」の文字と上記「急」の文字を結合したものであると容易に理解し認識することができるものであって、上記周知となっている請求人の商号の略称を想起せしめることもあるものといえる。また、引用商標Bは、平仮名からなるものであるため、「勁弓」、「軽裘」、「警急」等の漢字熟語の読みに相応するほか、「ケイ」と読む漢字と「キュウ」と読む漢字との組み合わせが多数考えられ、直ちに特定の漢字ないしは観念を想起し得ないものである。さらに、引用商標Cは、その構成中の「KEIKYU」の文字部分から「ケイキュウ」の称呼を生ずるとしても、「KEIKYU」の文字自体は、その下段に書された「京浜急行」の文字と相俟って、上記周知となっている請求人の商号の略称たる「京急」を想起せしめることはあっても、それ以外の特定の漢字を想起し得ないものである。
してみれば、本件商標と各引用商標とは、外観において明らかに相違し、観念上も明確に区別し得るものであって、それぞれから受ける印象が著しく異なるものというべきである。
しかして、これらの外観、観念及び称呼に基づく印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察し、さらに各引用商標の使用の実態とその周知性をも併せ考慮すると、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が各引用商標を連想、想起するようなことはなく、役務の出所について誤認混同するおそれはないといわざるを得ない。
そうすると、本件商標と各引用商標とは、たとえ称呼を共通にするものであっても、そのことのみをもって互いに類似するものとすることはできない。また、上記のとおり、本件商標をその指定役務について使用した場合に、請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く役務の出所について混同を生ずるおそれもない。
(4) 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号の規定に違反して登録されたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
(1)本件商標

(2)引用商標A

(3)引用商標B

(4)引用商標C


審理終結日 2000-06-21 
結審通知日 2000-07-04 
審決日 2000-07-17 
出願番号 商願平4-187620 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (039)
T 1 11・ 271- Y (039)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小宮山 貞夫前山 るり子佐藤 淳 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 寺光 幸子
小池 隆
登録日 1995-12-26 
登録番号 商標登録第3102888号(T3102888) 
商標の称呼 ケイキュー 
代理人 大塚 誠一 
代理人 山田 恒光 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ