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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1025241 
審判番号 審判1998-35329 
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-07-17 
確定日 2000-08-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第3334322号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3334322号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1本件商標
本件登録第3334322号商標(以下、「本件商標」という。)は、「GRACIE JIUーJITSU」の欧文字を書してなり、平成6年10月26日に登録出願、第25類「被服,靴類(『靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具』を除く。),柔道着,運動用特殊靴(『乗馬靴』を除く。)」を指定商品として、平成9年7月25日に設定登録がなされたものである。

2請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、要旨次のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第33号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号違反について
本件商標が、いわゆる「グレーシー柔術」をさすことは明らかである。「グレーシー柔術」とは、エリオ・グレーシー氏の開発した柔術の指導方法のことである。
本件商標は、エリオ・グレーシー氏の開発した柔術の指導方法を示す商標であり、グレーシー柔術アカデミー若しくはその代表者ロリオン・グレーシーのみが登録・使用することができる商標であることは明らかである。
しかしながら、日本のみならず米国においても、本件商標を無断で使用し、グレーシー柔術アカデミーでの指導方法を示す「GRACIE JIUーJITSU」の信用に只乗りするばかりでなく、唯一の権利者であるグレーシー柔術アカデミーの指導方法の質を需要者に誤認させるような悪質な第三者が激増している。
かかる状況下、グレーシー柔術アカデミー及びロリオン・グレーシー以外の者の「GRACIE JIUーJITSU」商標登録を認めることは、正当な権利者の保護に欠けるばかりでなく、需要者に出所の混同・品質の誤認を生じさせるものである。
さらに、グレーシー柔術アカデミーの代表者たるロリオン・グレーシーは、アメリカ合衆国連邦裁判所から、商標「GRACIE JIUーJITSU」を他人が柔術の指導及び格闘技の名称として使用することを排除できる権利を得ている。
したがって、もし、日本において第三者の「GRACIE JIUーJITSU」商標登録により、グレーシー柔術アカデミー若しくはロリオン・グレーシーの商標が拒絶されることになれば、正当な権利者たるグレーシー柔術アカデミー若しくはロリオン・グレーシーが第三者の使用を排除し得ず、日本の法制度に対する国際信用を著しく低下させると言わざるを得ない。
上記の理由により、本件商標は、国際信義に反する商標を拒絶する規定である商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第8号違反について
「Gracie JiuーJitsu Academy」中の文字「Academy」は、学園・ 学会・協会等の意を表す英語として、団体名等に頻繁に使用される。
したがって、「Gracie JiuーJitsu Academy」はしばしば「Gracie JiuーJitsu」と略称される。本件商標は、「Gracie JiuーJitsu Academy」の著名な略称からなる商標であるので、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号違反について
グレーシー柔術アカデミーは、「Gracie JiuーJitsu」を柔術の指導方法を示す 商標としてばかりでなく、被服、特に、トレーニングの際の着用に適するスポーツウエア・ティーシャツ・タンクトップ・ポロシャツ・帽子等に付し、「Gracie JiuーJitsu Academy Wear」として販売しており、「Gracie JiuーJitsu」は、ヘリオ・グレーシー氏が創りロリオン・グレーシーが引き継いだグレーシー柔術アカデミーの商標として広く認識されている。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合には、グレーシー柔術アカデミーの業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

3被請求人の答弁
被請求人は、「本件請求は成り立たない。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第12号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号の違反について
請求人が商標権無効を主張している根拠である国際信義に反する商標を拒絶する規定について反論する。
「グレーシー柔術アカデミー」の著名性について、米国内はいざ知らず.日本国内においてはヒクソン・グレーシー(商標権者リクソン・グレーシーと同人物)のみが「GRACIE JIUーJITSU」の唯一の商標権者であり、現状において、この商標の信用に只乗りする者は目立って存在していないように思われる。
日本国内においては、ヒクソン・グレーシーによる活躍によってグレーシー柔術という格闘技の一形態が日本国内の格闘技マニアやプロレスファン等に浸透し、脚光を浴び、ヒクソン・グレーシーがもたらした彼のグレーシー柔術の信用に対して、只乗りする悪質な第三者がさらに増える可能性もある。
ヒクソン・グレーシーの有する本件商標は、ヒクソン・グレーシーのファミリーネームである「GRACIE」と日本人であれば知るところによる古来の格闘技「柔術」を組み合わせて作られたものである。また、日本国内のヒクソン・グレーシーファンであれば、彼の格闘技終了後に、ヒクソンをイメージして「GRACIE JIUーJITSU」と書かれたウェア等の商品を、おみやげや記念品として買い求めるのであり、日本国内において、グレーシー柔術はヒクソンその人を連想させるのであって、「GRACIE JIUーJITSU」が「Gracie JiuーJitsu Academy」の略称とは決して連想しない。それどころか、日本国内においては、一般の人は「Gracie JiuーJitsu Academy」もヒクソンその人を連想させるのである。
さらに、グレーシー柔術アカデミーを知っているのは、米国内でも格闘技のマニアか、一部の格闘技ファンであって、米国においても著名・周知とは思えない。
(2)商標法第4条第1項第8号の違反について
請求人は、本件商標は、「Gracie JiuーJitsu Academy」の著名な略称からなる商標であると主張しているが、日本国内においては、格闘技のマニアならともかく、一般の格闘技ファン、そして一般大衆までもが「グレーシー柔術」=ヒクソン・グレーシーと連想し、「Gracie JiuーJitsu Academy」もヒクソン・グレーシーを連想するのである。
よって、商標法第4条第1項第8号には、該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号の違反について
日本国内のヒクソン・グレーシーファンであれば、彼の格闘技終了後に、ヒクソンをイメージして「GRACIE JIUーJITSU」と書かれたウェア等の商品を、おみやげや記念品として買い求めるのであり、日本国内において、グレーシー柔術はヒクソンを連想しているのであって、「GRACIE JIUーJITSU」が「Gracie JiuーJitsu Academy」という団体の略称とは決して連想しない。それどころか、日本国内においては、一般の人は「Gracie JiuーJitsu Academy」もヒクソンその人を連想させるのである。したがって、日本では「ヒクソン・グレーシー」なしには「グレーシー柔術」(「GRACIE JIUーJITSU」)を語れないまでに、その知名度が高まっているのであるから、本件商標をその商標権者が使用することは商標法第4条第1項第15号に該当しないし、本件商標の指定商品が「グレーシー柔術アカデミー」という団体の業務にかかる商品と混同することはあり得ない。
よって、商標法第4条第1項第15号はその主張に根拠がない。

4当審の判断
請求人の提出に係る甲号証によれば、以下の事実が認められる。
「グレーシー柔術」とは、エリオ・グレーシー氏(請求人及び被請求人の父)の開発した柔術の指導方法であること、請求人は、アメリカ合衆国、90501 カリフオルニア州、トーランス、ウエスト・カーソン・ストリートにあるグレーシー柔術アカデミー(Gracie JiuーJitsu Academy)の代表者であること(甲第3号証No.2乃至No.6及び甲第4号証 第2頁同訳文)、GRACIE JIUーJITSU ACADEMYのホームページ「A Message from Grand Master Helio Gracie」には、「・・・ my eldest son Rorion has my blessing to select and prepare the instructors that will carry on the tradition and principles that I have spent my entire life upholding.」と記載されており(甲第4号証58頁)、その訳文には、「・・・私の長男であるRorionだけが、私が築きあげ保つのに私の一生を費やした伝統と主義を実行できる地位にある。」との記載があること(甲第4号証「エリオ・グレイシーの宣言書の訳文」)。
さらに、グレーシー柔術アカデミーは、本件商標をグレーシー柔術アカデミーの指導ビデオパッケージ(甲第17号証)、同ドキュメンタリービデオのパッケージ(甲第19号証)、グレーシー柔術トレーニングアソシエーショントーナメントのプログラム(甲第23号証)、1991年から1998年までの「Gracie JiuーJitsu News」(甲第29号証)に使用していることが認められる。
一方、被請求人提出の1994年8月ファイティングスピリットマガジン社発行のフルコンタクトKARATE(乙第1号証)、1995年6月8日日本スポーツ出版社発行のゴング格闘技(乙第2号証)、1996年8月11日ベースボールマガジン社発行の格闘技通信(乙第3号証)、1996年9月26日小学館発行の週間ヤングサンデー(乙第5号証)、1998年10月29日ベースボールマガジン社発行の週間プロレス 特別創刊号(乙第7号証)、1994年7月30日日刊スポーツ新聞、1997年10月12日スポーツニッポン、1998年10月12日報知新聞等の新聞(乙第10号証)等の被請求人に関する記事によれば、確かに、我が国においては「グレーシー柔術」は、被請求人によって、日本国内の格闘技マニアやプロレスファン等に「グレーシー柔術」という格闘技の一形態として知られるようになったことが窺える。
しかしながら、上記事実によれば、請求人がグレーシー柔術をエリオ・グレーシー氏から正当に承継した者と認められるから、本件商標は、請求人の承諾を得ていない被請求人が出願し登録を受けたものというべきであって、被請求人が、本件商標をその指定商品に使用することは、公正な競業秩序を乱すおそれがあり、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、請求人のその他の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものと認められるから、同法第46条の規定により、その登録を無効とすべきである。
審理終結日 2000-03-07 
結審通知日 2000-03-21 
審決日 2000-04-04 
出願番号 商願平6-108772 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (025)
T 1 11・ 271- Z (025)
T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 薫岩浅 三彦鈴木 茂久 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 大渕 敏雄
平松 和雄
登録日 1997-07-25 
登録番号 商標登録第3334322号(T3334322) 
商標の称呼 グレーシージュージツ、グレーシー 
代理人 森田 俊雄 
代理人 日高 一樹 
代理人 日高 一樹 
代理人 深見 久郎 
代理人 竹内 耕三 
代理人 重信 和男 
代理人 重信 和男 

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